メイズイ 単語


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メイズイ

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メイズイとは、競馬漫画の主人公馬かライバル馬みたいな競走生活を途中まで送り、フラグの力を日本の競馬ファンに教えてくれた元競走馬・元種牡馬である。

※当記事ではメイズイの活躍した時代に合わせて馬齢を旧年齢表記で記載しています。

デビューまで

生まれはダービー馬や帝室御賞典馬を何頭も輩出している名門・千明牧場。

父は現役時代の馬主がエリザベス2世で英ダービー2着の実績を持ち、種牡馬としても重賞勝ち馬を何頭も輩出していた「女王の馬」ことゲイタイム。念のため言っておくと、この名前はニュージーランド原産の椿に由来するとされていて、間違ってもゲイ♂タイムだったりはしない。あと、戦後初めて日本に輸入された種牡馬である。
母はそのゲイタイムとの間にスプリングステークス勝ち馬のメイタイを輩出するなどして、名繁殖牝馬と呼ばれだしていたチルウインド。

そんな良血馬であるメイズイは当然ながら生まれる前から活躍が期待されており、メイズイ自身も生まれた年の7月には名伯楽・尾形藤吉に調教師に「チルウインドの最高傑作だ」と評価されて、その場で尾形厩舎に入厩することが決まったほどの素質馬だった。

すくすくと成長したメイズイは、3歳になると
「大器晩成のすごい馬にしたい」という牧場側のリクエストもあり、メイズイは3歳いっぱいは調教をみっちり積んで、明けて4歳のデビュー戦に備えることとなった。

あ、この「大器晩成になりますように」も微妙だけどフラグです

デビューからの快進撃

4歳になって名手・保田騎手を背にデビューを果たしたメイズイは大器晩成という牧場側の願いとは裏腹に、一気にクラシック候補へと駆け上がっていった。
デビュー戦は2着に10馬身差をつける逃げ切り勝ち、2戦目はレコードタイムで逃げ切り勝ち、3戦目も2着に4馬身差をつける楽勝である。

競馬ファンや評論家はクラシック戦線の主役候補の登場に湧き、尾形厩舎や保田騎手もクラシックでのメイズイの活躍に胸を踊らされていた……と思いきや、メイズイ陣営には一つの悩みがあった。

それが、メイズイの同僚馬であるグレートヨルカの存在だった。
母の父に大種牡馬ネアルコを持つという、当時の日本においてはメイズイも驚きの超良血馬であったグレートヨルカは、前年の朝日杯3歳ステークスを制して最優秀3歳牡馬に選ばれるなどすでにクラシック戦線の主役に名乗りを挙げていたのだが、主戦騎手がメイズイと同じ保田騎手だったのである。

同じ牡馬クラシック戦線に出場する以上はこの両馬の対決は避けられず、メイズイにとってのデビュー4戦目、東京競馬場で行われる東京記念でその機会が巡ってきてしまった。
保田騎手の体は一つしかないのでメイズイかグレートヨルカのどちらかを選ばなければならない。
非常に贅沢な悩みだが、逆に馬主サイドからしてみたら当時の日本競馬における最高の騎手である保田騎手に降りられたら、それだけでライバルに勝てる可能性が減ってしまう。
そう考えたグレートヨルカの馬主は、なんと馬房の前で座り込みパフォーマンスを開始。そんなこともあり、保田騎手はグレートヨルカに騎乗、メイズイには保田騎手の弟弟子であり、次世代を担う新星と言われていた森安騎手が騎乗することとなった。

MG対決

前年の3歳王者と新進気鋭のチャレンジャーの東京記念での対決はその頭文字をとって「MG対決」と呼ばれ、グレートヨルカが1番人気、挑戦者という立場であり騎手の腕も劣ると見られたメイズイは2番人気に甘んじた。
他の馬が出走回避をしたことで4頭立てとなったこのレース、打倒グレートヨルカに向けて気負いすぎたのかメイズイはスタートでゲートに鼻をぶつけて出遅れてしまう。
それでも道中で一度は先頭に立つが、無理のあるスパートに加えて鼻出血をしていたこともあって失速。グレートヨルカの2着に敗れてしまった。 

フラグ乱立と皐月賞戦線

さて、東京記念で初の敗戦を喫したメイズイだが、これはあくまでも負傷の影響があってのこと。
そしてなにより、メイズイにはこの時点でフラグが立ちまくっていたのである。

  • ライバルは自分よりすごい超良血馬
  • ライバルの実績は自分より上である
  • 自分のパートナーであるベテランをライバルに奪われる逆境
  • しかもパートナーを奪われたのは実力以外の理由が原因
  • ライバルに対して一度敗戦を経験済み
  • 新パートナーは若手の新星でベテランとは因縁浅からぬ関係
  • 世間の評価はライバル>自分

創作物ではよくある敗戦からの逆転フラグが乱立しまくっていた。
そのフラグ通り、次のMG対決となったスプリングステークスではスタートから快調に逃げて、グレートヨルカに4馬身差をつける完勝。兄のメイタイもスプリングステークスを勝っているため、兄弟同一重賞制覇を果たした。

さて、これで勝敗は1勝1敗。フラグは消化したので次は素のままの状態で対決することに……と思ったら今度は別の方向からフラグがやってきた。
厩務員組合のストライキの影響で、皐月賞の中山競馬場での開催が不可能となり、東京競馬場での代行開催が決定となったのである。
東京競馬場といえばグレートヨルカに負けた舞台。そして逃げ馬のメイズイにとって、直線の長い東京競馬場は直線の短い中山競馬場よりもずっと不利な条件であり、皐月賞本番ではまたもやグレートヨルカに次ぐ2番人気に甘んじることとなった。

だが、これがフラグ的な意味でメイズイにプラスに働く。

  • 自分に有利だった条件が不利なものに変更される
  • そのことによって自分が不利になったと世間に認知されている
  • 戦いの場は以前ライバルに負けた因縁の地

スプリングステークスの時みたいに乱立ではないが、またもや勝利フラグがたつ結果になっていたのだ。
そしてそのフラグを回収するかのようにメイズイは逃げを打ち、「幻の馬」トキノミノルのレースレコードを更新する走りで2着グレートヨルカに2馬身差をつける完勝。クラシック一冠目を手にすることとなった。 

フラグクラッシュ・日本ダービー

続くダービーでは、メイズイとグレートヨルカの枠連は1.7倍で、初めて1番人気に推されたメイズイの単勝1.8倍よりもオッズが低いという人気を集めた。
メイズイ敗戦&人気薄馬が2着に突っ込んでくるというフラグにもなりかねない人気の集中ぶりだったが、メイズイはスタートダッシュを決めると1000m通過1分1秒(当時としてはハイペース)というタイムで順調に飛ばし、最後の直線では2着のグレートヨルカに7馬身差をつける圧勝劇。ちなみにハイペースで逃げて逃げ切ったのはこの後のフラグである。
タイムの2分28秒7は日本レコードを0.1秒縮める快挙であり、ダービーレコードに至っては1.5秒も短縮してしまった。

不利なフラグを弾き返し、ライバルと呼ばれた馬には大差をつける圧勝で二冠達成。もはやこの世代はメイズイ一強であり、秋にはセントライト以来の三冠馬が誕生するんだと評価されるようになってきた。

フラグの咲き乱れる秋

夏を休養に充てたメイズイは、秋になると菊花賞に向けて始動した。秋初戦のオープン戦では古馬の一級線を破り、関西に移動してのオープン戦も楽勝。
三冠へ向けて視界良好であり、強敵は何かという質問に対して森安騎手が「時計(レコードタイム)が強敵だよ」と答える舐めっぷり順調さを見せるメイズイ。
逆にライバルのグレートヨルカはセントライト記念を勝った後に負傷してしまい、予定していた京都杯を使えなかったために評価を落としており、他にライバルが見当たらない以上はメイズイの三冠達成は確実なものと言われていた。

ファンも当然ながらメイズイの三冠達成を期待しており、10頭立て(同期馬がメイズイと戦うのを嫌がった結果の頭数)の菊花賞当日の単勝支持率は菊花賞史上最高となる83.2%で単勝オッズがもちろん1.0倍。
あのハイセイコーのダービーが単勝支持率66.6%、ディープインパクトの菊花賞ですら79.0%だったのだから、いかにメイズイの勝利を確信していたファンが多かったかがわかるだろう。
勝利を確信していたのは日本中央競馬会も同じで、菊花賞に向けてメイズイ三冠達成おめでとうのくす玉を用意していたほどだった。

ここまでの状況をまとめると

  • 目標に向けてとても順調
  • 最大のライバルは負傷により評価を落とす
  • パートナーが調子に乗りまくっている
  • ほとんどの人は負けると思っていない
  • 勝つこと前提の特別な演出を企画

どう見ても死亡フラグです。本当にありがとうございました。

レースが始めると、逃げようとするメイズイに2番人気のコウライオーが競りかけてくる展開。メイズイも突っつかれたことで森安騎手と一緒に引っかかり、コウライオーが控えた後も順調に飛ばす。800m、1000mのラップタイムは共に11秒台を記録し、明らかに早い。
それでも「ダービーだってハイペースで逃げ切ったメイズイなら平気!」と思ったのか、一向にメイズイを止める気配はなく、向こう正面で後続に30馬身差をつける超大逃げを打ってしまう。いおいツインターボか?いや、菊花賞だからスティールキャストか。
人気薄の馬がやるならともかく、ぶっちぎりの1番人気馬の大逃げである。「おいおいやばいんじゃないのこれ」「いやいや、メイズイだからきっと逃げ切るんだよ」「にしてもペース早くね?」と競馬場はざわつき、くす玉準備中のスタッフは顔面蒼白。
尾形調教師も「自然に逃げろとは言ったけどこんなの想定してねーよ」と絶句。 
2周目の第3コーナーで早くも失速するメイズイのレースぶりに激怒するかのように、ものすごい勢いでかわしていく馬が1頭いた。MGの片割れ、グレートヨルカである。
先にメイズイをかわして先頭に立っていたコウライオーを差し切ったグレートヨルカは、春の雪辱を晴らす形で待望のクラシック戴冠を果たす。 

死亡フラグを乱立していたメイズイとは逆にグレートヨルカは、「本番前に不利が伝えられて評価が落ちる(当日3番人気)」「かつて評価が自分より下だったライバルに屈辱の完敗を経験」「ライバルから眼中にないと言われる」と勝利フラグを建てていたのだった。
だが、鞍上の保田騎手はグレートヨルカの勝利以上にメイズイがあまりに理不尽な騎乗で負けたことに怒り、ゴール後にメイズイと森安騎手(6着)を待ち受けて、「このバカヤロー!」と怒鳴ったと言われている。
また、MG両馬の調教師である尾形調教師も保田騎手が引き上げてくるまでは呆然としており、保田騎手に言われるまでグレートヨルカの勝利に気づかなかった。 

ちなみにこの勝利をみんなが確信→あっさり敗戦のトラウマがファンに刻まれたのか、翌年三冠を達成することとなるシンザンは菊花賞で2番人気に甘んじている。

その後

菊花賞後、保田騎手とのコンビを復活させたメイズイはクモハタ記念を快勝するものの、有馬記念はリユウフオーレルの2着に敗る。この年はそのリユウフオーレルと共に年度代表馬に2頭同時選出されることとなった(年度代表馬の2頭同時選出は2012年現在、この1963年のみとなっている)
翌年も現役を続行してスワンステークスを勝利するが、肝心の天皇賞・有馬記念に勝つことはできず前年に比べて尻すぼみな成績に終わり、デビュー前の「大器晩成にしたい」という千明牧場の願いもひっそりとクラッシュされてしまった。

ただ、森安騎手とメイズイをフォローするなら、メイズイは血統や成績から見ても中距離馬であり、暴走がなくても菊花賞は勝てなかったかもしれないし、天皇賞や有馬記念で勝てなかったのも納得が行く話である。それでも暴走は擁護できないけど。

種牡馬入り後は「産駒で三冠に挑戦を!」と期待されたが人気を集めながらも目立った産駒が出せず、三冠の夢にリベンジどころか重賞を勝つ馬すら輩出出来なかった。

……が、メイズイが菊花賞で暴走してからちょうど20年後の1983年にメイズイの全姉であるメイワのひ孫・ミスターシービーが三冠を達成。メイズイの無念を晴らすと共に生産者の千明牧場にとってのリベンジも成功させた。

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関連項目

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