前科 単語


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ゼンカ

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前科とは、黒歴史であり、烙印である。

  1. 過去に刑事裁判の結果、何らかの刑事処分をうけた人。「彼には傷害罪の前科がある」
  2. 1より、過去に後ろめたいこと、悪いことや失敗をした人に対して用いたり、自戒として用いる。「彼にこの仕事をやらせたら、失敗した前科があるから今回は任せない」

本記事においては1について解説する。

概要

一般的な意味合いとしては過去に刑事罰を受けた人について用いる。前の科(トガ)と読み下し、科は過ちを指す。古くは犯罪者のことを咎人(とがびと)などとよんだがその名残といえよう。

刑事手続上の意味合いでは法律上の定義は存在しないものの、国家資格の根拠法に記載されている欠格要件などをみる限リ、起訴されて刑事裁判を受けた結果、罰金刑以上の刑を受けた人(禁錮・懲役・死刑も含む)について用いることが多い。

また、刑事手続においては起訴されず検察庁までの段階で完結する場合もあるが、この場合は前歴と区別する。いわゆる不起訴処分や微罪処分に該当するアレである。この場合は検察庁や警察庁に記録は残るものの、前科と異なり多くの場合は国家資格の登録に障りはないし、市町村に保管される犯罪人名簿にも記載されないという違いがある。

前科は社会的に大きなダメージを負うものとして認識されている。隣近所ではどうしても噂になるし、一定の職業にも一定期間とはいえ就けなくなってしまう。一定以上の犯罪ともなれば実名報道もされてしまうのでこの場合はSNSやブログに保存されて半永久的に残ってしまうし、就職などでも大きな障害となってしまうので近年では忘れられる権利として、その制限が大きな議論の対象になっている。

また、自分自身以外にも家族や交友関係にも少なからず支障が出るので警察のご厄介になるようなことは避けたいものである。

前科の範囲・効力

先にも上げた通り、刑事裁判を受けて有罪判決を受けた場合はほとんど該当するといって良い。

ただ、概要に資格の制限を述べたが、これは永続するわけではなく各資格の根拠法に定められている期間(だいたい5年から10年程度)経過すればなかったことになって再度登録が行えるようになる。

刑法上では罰金や科料の場合は支払ったないし労役を終えた後から5年、禁錮以上の場合はその満期から10年経過で消滅すると定められている(刑法34条の2)。執行猶予がついた場合はその猶予期間を取り消されることなく満了した場合、その時点で消滅する。

ただしこれはあくまで刑の執行や、刑そのものの法律的なデメリットが消滅するというだけの話で、犯罪を犯した事実そのものとそれに紐づいた個人情報は検察と警察に死亡するまで保管される。そのため、身の回りで事件が起きた場合、一度でもそういう形で警察に関わったことがあれば一般人よりも警察に疑われやすいという事は念頭に置くべきだろう。

再犯した場合の量刑にも大きく悪影響を及ぼし、形の執行を終えてから5年以内に再犯した場合は累犯として扱われて厳しく評価される(懲役刑の上限が2倍になる)し、累犯の状態で更に罪を犯せば三犯以上の累犯として扱われ比較的軽い罪でも実刑回避は極めて困難になる。累犯扱いはされないが、刑の消滅に至らない期間は俗に準初犯と呼ばれることもある。

また、一般的には逮捕されたり、警察に事情を聴かれただけで初犯でなくなると勘違いされることもあるが、刑事手続上はあくまで「刑事裁判で有罪判決を受け、その確定判決の執行を終えた」場合で初めて一犯とカウントされる。概要にも書いたが、不起訴処分や微罪処分で公判に至らなかったり、起訴されても無罪判決を得た(前歴どまり)場合は仮にその後、書類送検など刑事手続の対象になっても”初犯”扱いとなるので注意(ただしその場合は不起訴で済まなくなるなど検察の判断の上では不利になる)。

前科とプライバシー

前科及び犯罪経歴(以下「前科等」という。)は人の名誉、信用に直接に関わる事項であり、前科等のあるものもこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する

― 1981年4月14日 最高裁判所第三小法廷判例要旨より

前科というものはこれまで上げた通りその人にとって最大のプライベートな事象であり、みだりに知られればその人の将来がボロボロになる可能性がある。それは再犯を防止し、秩序ある社会を築くという刑事法の目的を達成する上では大きな障害となってしまう。

そのため、1981年に最高裁ではこのように前科は守られるべき情報として保護に値すると判断を示した。これは弁護士が京都市に対して前科照会を行った際に、京都市長がそれを受けて前科があると回答(実務上は窓口になった伏見区役所なので伏見区長となる)した事につき、開示された原告がプライバシー侵害であると提訴した事件であった。地裁は全て棄却し、高裁は一部認容となり、最高裁もこれを支持して原告に対して被告の京都市へ損害賠償25万円の支払いを命じた。

これは前科の回答を弁護士からの請求だからと漫然と京都市長が自動的に回答してしまったことを公権力の違法な行使とみなされた重要な判例で、憲法のプライバシー権の分野では必ず触れるものである。

ただ、最高裁でこう判示されたにも関わらず、近年では実名報道がなされ、SNSの普及で半永久的に記録が残ってしまい、十分に守られていないのではないかという指摘もまま見られる。一方で前科の照会はやったことの報いと、市民の知る権利であるとして公開を求める意見も根強く、対立が続いている課題である。

関連項目

  • 法律
  • 刑法
  • 加害者
  • 加害者の未来
  • 忘れられる権利
  • 実名報道
  • 股尾前科

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最終更新:2025/12/21(日) 14:00

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