対戦車ライフルとは、第一次世界大戦末~第二次世界大戦頃まで使用された、対戦車戦闘用の大型小銃である。
第一次世界大戦末のドイツで、分隊、もしくは小隊単位で配備、使用が可能で戦車に対抗できる銃器として開発された兵器である。
おおよそ人が扱える弾薬、銃器としては最大クラスの物で、鉄やタングステンの徹甲弾を使用して装甲の薄い部分や銃眼、視察窓、履帯等の弱点を貫き、内部の人員や機関部にダメージを与え、無力化を行う。
しかしその貫通力は、あくまで弱点を狙えば貫ける程度の物で、その有効射程もせいぜい100m程と短く、第二次世界大戦以降の重装化し極力弱点となりうる部分を排除した戦車や戦闘車両には対応できず、また射手の負担は極めて大きいものであったため、携行ロケット発射機や無反動砲、ATMに置き換えられていった。
現代では同様に大型の弾薬を使う銃が対物ライフルとして運用されており、ちょっと前までよくメディア等で混同して扱われていたりもしたが、設計や性能はともかく、思想や任務は別物である。
第一次世界大戦に於いてイギリス軍が投入し、機関銃や小銃の攻撃をことごとく跳ね返し、膠着した戦場を一方的に突破する事を可能とした「戦車」に対し、ドイツ軍は当初野砲で対抗していたが、数に限りがあり機動性の低い野砲では限界があった。
そこで、戦車に対抗しうる威力、機動性、量産性を追及した結果、歩兵が取り扱えるギリギリのサイズまでスケールアップした小銃でなんとか倒せるんじゃねーかという案の下、直径13mmの徹甲弾を800m/sの初速で撃ち出すマウザーM1918対戦車ライフルが開発され、対戦車ライフルというジャンルを確立したのである。
当事の戦車は歩兵小銃や機関銃に対する防弾のみを考えていた為、10mm~30mm程度の装甲しかなく、装甲素材の防弾性能自体も低い物だった為、容易に貫いて機関部や人員を殺傷する事が可能であった。
その有用性により戦車は普及したが、同時に対戦車戦闘も研究され、通常の野砲部隊とは別に編成された「対戦車砲」、もしくは対抗する戦車によって敵の戦車を処理する戦法が生まれるが、機動力があり小回りが利く対戦車兵器として使用され続け、開戦当初のドイツや西欧諸国が装備していた戦車にはそれなりに有効に戦闘が行えたようである。
が、独ソ戦が勃発し、ソビエトロシアの前面80~100mm、側面でも80mmの装甲を誇るKV-1、全面40mmの傾斜装甲を持つT-34が出現し、対するドイツも同格以上の装甲を持つティーガーやパンターを開発、従来型のⅣ号戦車やⅢ号戦車も増加装甲や、多田野薄鉄板だが対戦車ライフルの弾丸を防弾鋼で弾ける程度まで減速させられる「シュルツェン」を装備する等して対抗し、戦車の設計自体も銃眼や視察窓等の弱点を排除する事で対戦車ライフルで危害を加える事は極めて難しくなっていった。
また、アメリカのバズーカやドイツのパンツァーシュレック、パンツァーファウスト等のHEAT弾兵器が実用化されるとその有用性がほとんど無くなり、HEATの開発に遅れていたソビエトや、外部装備破壊等のいやがらせ攻撃に使用された程度で、第二次世界大戦終結後はほぼ使用されなくなった。
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最終更新:2025/12/24(水) 09:00
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