新幹線大爆破

新幹線大爆破とは、1975年に公開された東映製作のパニック映画である。日本よりも海外での評価が高い。

概要

「新幹線がある一定速度以下に速度を落とすと爆発する」という状況下で繰り広げられる犯人グループと国家の攻防劇。爆弾を仕掛けた犯人グループ、パニックに陥る乗客、危機回避に全力を尽くす国鉄、ほんの僅かな糸口を頼りに犯人グループを徐々に追い詰めていく警察の姿で構成される。

犯人サイドの人生背景にも切り込んでおり、町工場の経営に失敗した男、過激派崩れ、集団就職で沖縄から来た青年が何故犯行に至ったのか、高度経済成長時代への皮肉を込めながら明らかになっていく。犯人側にも感情移入させる演出と相まってただのパニック映画として括れないのが好評価につながっている。しかし海外版では犯人グループの人生背景については日本人にしか理解できない演出（万歳三唱など）などと一緒にカットされている。

ストーリー

ある朝国鉄に「ひかり109号に爆弾を仕掛けた」という脅迫電話がかかってきた。犯人は新幹線に爆弾を仕掛け、誰も殺さず・殺されずに莫大な金額の身代金を手に入れようと完全犯罪を計画した。果たしてひかり109号は無事に停車し、乗客は助かるのか。

主なキャスト

犯人グループ

• 高倉健：沖田哲男
• 山本圭：古賀勝
• 郷鍈治：藤尾信次
• 織田あきら：大城浩

国鉄関係者

左はひかり109号に乗務中の乗務員、鉄道公安官。右はその他国鉄関係者。

千葉真一：青木運転士 小林稔侍：森本運転助士 福田豊土：田代車掌長 山下則夫：清水専務車掌 滝沢双：河村専務車掌 竜雷太：菊池（鉄道公安官）

宇津井健：倉持運転指令室長 山本清：高沢新幹線運転車輌部長 原田清人：三宅新幹線技師長 渡辺文雄：宮下義典国鉄鉄道公安本部長 千葉治郎：救援車運転士 中田博久：東京運転所係員 高月忠：浜松駅係員 志村喬：国鉄総裁 永井智雄：国鉄新幹線総局長

警察関係者

久富惟晴：広田警視庁特捜係長 青木義朗：千田刑事 浜田晃：長田刑事 近藤宏：松原刑事 田中浩：堤刑事 田島義文：佐々木刑事

鈴木瑞穂：花村警察庁捜査第一課長 丹波哲郎：須永警察庁刑事部長 川地民夫：佐藤刑事 黒部進：後藤刑事 河合絃司：部長刑事

ひかり109号について

劇中に登場するひかり109号は当時実在した東京駅9時48分発の博多行ひかり109号がモデルである。途中停車駅は名古屋、京都、新大阪、新神戸、姫路、岡山で岡山から先は終点まで各駅停車といういわゆる「Aひかり」だった。

東海道・山陽新幹線全線を直通運転するひかりはのぞみの大増発によって既に姿を消している。

撮影

国鉄は新幹線のイメージダウンに繋がる本作の撮影に非協力的だった。一応「タイトルを変えれば協力する」と譲歩する姿勢を見せたが、東映側がタイトル変更を拒否したため国鉄の撮影協力なしで撮影が行われることになった。

まずひかり109号の客室や運転席は、国鉄に実際に部品を納入している会社から部品を買い集めてセットを組んだ。東映に部品を売った各社は後に国鉄から怒られたとか。

新幹線の走行シーンは裏ルートでの取材、隠し撮りなどを駆使しそれでは補いきれない部分はミニチュアを制作して特撮技術を駆使して行った。ミニチュアの新幹線は1両の長さが1mで、2編成分の24両を制作した。特撮シーンは成田亨が手がけた。模型そのものには動力を組み込まず、撮影所の中庭に設営した線路のセットに微妙な傾斜をつけて走らせた。このミニチュアセットはウルトラマン80、大鉄人17にも使用され、ひかり109号が爆破されるイメージカットは東映の特撮ドラマなどにも流用されている。
特撮シーンの撮影には当時最新鋭のシュノーケル・カメラを借りている。レンタル料は1日100万円。なお映画の撮影にシュノーケル・カメラを利用したのは本作が初めてで、同じカメラがスター・ウォーズの撮影に利用されたとか。

新幹線司令室も当然国鉄から資料は提供されなかったので独自に取材してセットを組んだ。本作の監督によると「国鉄は外国人に弱いという噂を聞き、日本では無名の外国人俳優をドイツの鉄道関係者に仕立て、デザイナーを案内役にして盗み撮りしてきた」とのことである。

冒頭で爆破される夕張線貨物5790列車は本物の蒸気機関車と貨車を爆破している。撮影は国鉄線内ではなく北海道炭礦汽船真谷地炭鉱専用鉄道と三菱大夕張鉄道の一部を引き継いだ専用線で行った。

オープニングに登場する東京駅のホームの階段はセットを撮影所に設営した。線路が見えるところや、犯人グループの1人の古賀が線路を渡って逃げていくシーンは西武線で撮影された。夕張の貨物駅は秩父鉄道広瀬川原車両基地を用いた。なお東京駅からひかり109号が発車するシーンなど本物の東京駅のシーンは明らかに盗み撮り。

興行成績・評価

国内での興行成績は成功とは言えなかった。上映においても1本立てではなく、ずうとるびのドキュメンタリー風中編映画との併映だった。

興行成績では失敗だったものの、1975年度キネマ旬報ベストテン第7位、読者選出第1位を獲得。テレビ放送やビデオソフト化によって徐々に再評価されるようになった。

日本ではヒットしなかったが、フランスに赴任していた東映国際部の杉山部長が本作を「日本よりも外国の方が売れるのではないか」と社長に進言。封切り公開終了後にアメリカのジャーナリストを集めて本作を上映したところ高い評判を呼んだ。その評判が世界中に流れ、「それまで商売をしたことのないような国からも引き合いがきた」とのこと。ミラノ国際見本市に本作を出品したらこれまた大好評。更に多くの国から輸出の引き合いが殺到した。
特にフランスでは本作の人気が高く、8週間のロングランヒット、44万人の動員、100万ドルの外貨を稼いだという。犯人・国鉄両方で労働者にスポットがあてられたことからか、東ドイツなど共産圏の国々でも人気だったという。

余談

• イギリスで本作がノベライズされている。日本語訳版も存在する。
• 速度がある一定値を下回ると爆発するというシチュエーションは映画『スピード』や『劇場版名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』、『ニンジャスレイヤー マグロ・サンダーボルト』などで見られる。
• 烈車戦隊トッキュウジャー第8話では車掌役の関根勤が千葉真一の物まねをするなど本作を意識したシーンが見られる。
• 庵野秀明は本作の大ファンである。

関連動画

関連項目

• 東映
• パニック映画
• 映画の一覧
• 東海道新幹線