暗視装置とは、夜間や暗所などで、人間が視界を得るための装置の総称である。
暗視装置の第1世代は、第二次世界大戦中に実用化された。アクティブ式赤外線暗視装置と呼ばれるもので、こちらから相手に赤外線を照射し、反射してきた赤外線をセンサーが捉える。当然ながら相手が赤外線感知装置を持っていれば、こちらの存在を暴露してしまう。このタイプは1960年代から徐々に姿を消し始めた。
第2世代は、ベトナム戦争中にアメリカが開発した。月や星のような極弱い光源の光が物体に反射してくるのを電子的に数千倍に増幅することで映像を得る。光が殆ど無い夜間でもフクロウのように見えることから「アウル・アイ」、あるいは「スターライト・スコープ」とも呼ばれた。
1970年代末から、第3世代の暗視装置が実用化され始めた。パッシブ式赤外線暗視装置、あるいは熱線映像装置(サーマル・イメージャー)と呼ばれるもので、物体が放出する赤外線を高感度の赤外線センサーで捉え、映像化する。パッシブ式なので使用していることを敵に気づかれない。また昼間でも使用でき、カムフラージュ用に切り取られた枝葉と「生きている」木を区別できたり、多少の霧や煙も透かして見ることができる。例えば湾岸戦争ではイラク側が油井に放火することで黒煙を発生させて相手の視界を妨げようとしたのだが、第3世代の暗視装置を使っていた多国籍軍側の視界を妨げることはできなかった。
アメリカ陸軍は2017年に、歩兵用の新型暗視装置を10万個発注している。このゴーグルは視野角40度の映像を得られるが、「スターライト・スコープ」と「サーマル・イメージャー」の両方のモードを搭載しており、必要に応じて切り替えられる。
また、小火器に取り付けた暗視照準装置の映像を無線データリンクを経由してゴーグルの中央にインポーズすることができるので、自分のゴーグルは小隊長のハンドサインが見える方位に向いたまま、小銃を水平に振ることで周囲の警戒を同時に行なえる。射撃の際もゴーグルに表示される照準視野を頼りに、物陰からライフルだけを持ち上げて射撃することが可能になっている。
暗視装置の形状は様々であるが、基本的には個人使用するものは双眼鏡や単眼鏡(暗視スコープ、暗視ゴーグル)で、兵士個人に配布されるモノはヘルメットからつりさげることが可能なように作られてたりする。
パッシブ式赤外線暗視装置は、以前は内部部品を極度に冷却しなければならない関係上、装置としては大きくならざるを得なかったが、最近は冷却不要な部品が開発されて小型化を実現し、従来の仕組みを採用した個人用の暗視装置に機能の一つとして追加される程になってきている。戦闘機に搭載されるIRSTもこの仕組みを利用している。
ちなみに、よく暗視装置で出力される映像は緑色をしているが、単に人間にとって緑色が最も知覚しやすい色であるというだけで、その気になれば青色とか赤色とか光の強さによって色分けとかも原理的には可能である。また、フィクションではよく強い光で暗視装置が破壊される、あるいは強い光をさらに増幅した超強力な光が出力されて使用していた者の視力を奪うという描写があるが、現代の暗視装置には一定値以上は光を増幅しないという安全回路が組み込まれており、裸眼では見えないような、強い光の周りに何があるかを見ることすら出来ると言われている。
用途としては軍用の他に、現在では天文(微弱な光を発する星を観測するため)や、自動車(夜間の視界確保、またドライブレコーダーの機能の一つとして)でも使用されている。また、玩具としての暗視装置も存在する。
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最終更新:2025/12/09(火) 03:00
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