格安SIMとは、通信会社が提供するSIMカードのうち月次の利用料金が廉価に抑えられているものを指す。
格安の端末についてはこちらを参照 → 格安スマホ
格安スマホ/SIMの取り扱いブランドについてはこちらを参照 → 仮想移動体通信事業者 (MVNO)
概要
NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルといった大手キャリアから回線を借用して通信事業を営む、仮想移動体通信事業者(MVNO)が提供するSIMカードのことをこう呼ぶ事が多い。既存の大手キャリアの料金体制と対比しての呼称である。
中にはそれらキャリアが提供する端末と比較し、性能・機能を必要最小限に抑え、価格を下げたスマートフォン端末やタブレット端末をSIMカードとセットで販売している事業者もあり、「格安スマホ」とまとめて呼ばれることもある。[1]
MVNOではなくソフトバンクのサブブランドで、回線を自ら保有するワイモバイルも、ソフトバンク本体などと比較すると安価での利用が可能となっているため、格安SIMに含めることがある。
ワイモバイルはMVNO事業者同様、SIMカードのみのサービス提供も行っているのが特徴である。
MVNO事業者は「接続の手続きは自分でやる」「端末の設定は自分でやる」と、大手キャリアでは店舗側で行うようなサービスをカットし、人件費などコスト削減を行うことで料金を抑えている面も存在する。[2]
更に後述する通り、大手キャリアで提供されているサービスの多くが利用できなくなったり、通信の快適性でキャリア契約と比べると差が出るケースも存在する。
そのため値段の安さにだけ惹かれて契約すると、後悔する可能性もそれなりにあるといえる。利用にあたっては格安SIMの特徴、提供各社のサービス内容をよく理解しておくことが重要といえるだろう。
SIMの種類
- データSIM
- データ通信のみが利用可能で、携帯電話番号を用いた通話が不可能なSIMカード。
- ただしデータ回線を利用したIP電話は使えるのが一般的である。
- データ通信専用のタブレットに使用する場合は問題が起きることは少ないが、スマートフォンや通話可能なタブレット(ファブレット)の場合だと電池を異常消耗させるセルスタンバイが起きる可能性がある。セルスタンバイは「SMS+データSIM」か「音声SIM」を使うことでほぼ確実に回避できる。
- 高速通信が可能な量は事業者やプランによって異なる。
- 今日では月3GB程度の高速通信が可能なSIMが一般的となっている。毎日ないし3日間での利用量に別途制限がかけられている事業者も存在する。
- 低速通信のみを利用可能としたり、月の高速通信利用量にとって通信料金が変化したり(従量制SIM)、通信速度は抑えられるが月の利用量に制限がなかったりするSIMカード(無制限SIM)も存在する。
- データSIM+SMS
- データ通信に加え、ショートメッセージサービス(SMS)が利用なSIMカード。
- au回線を利用するMVNOでは標準仕様で無料となっていることが多いが、契約時にSMSオプションを選択しないと付いてこないケースもあるので注意。ドコモ回線やソフトバンク回線を利用するMVNOの場合、月100~150円程度データSIMより割高になる。特にソフトバンク回線の場合、ドコモ回線よりも割高になるケースがあり、月に200円近くも高くなっているケースもある。
- SMSが使えることで、「SMSが必須のサービス認証」と「セルスタンバイの回避」の2つが可能になる。
- 他にも近年は2段階認証をセキュリティの関係上で導入しているサイトも増えてきたため、二段階認証にSMSが必要となるケースの場合、使えないと困るケースが出てくることも。
- とはいえ、SMSに関しては基本的に音声SIMを1枚でも持っていれば何とかなる。ただし普段の通話を固定電話やIP電話、無料通話アプリ(LINE、Skype、Messenger、Viberなど)に頼り切っていて、音声SIMを節約のために1枚も持っていないケースも無いとは言い切れないので、その場合はSMS付きデータSIMを持っていた方が保険になる。
- 音声SIM
- データ通信に加え、携帯電話番号による通話が可能なSIMカード。
- データSIMと比較すると月600~700円程度割高になるのが一般的であるが、ソフトバンク回線の場合は1000円近く高くなるケースもある。
- 高速通信の容量についてはデータSIMの場合と変わらない。
格安SIMの利点
- 料金が安い
- 同じデータ通信可能量であっても大手キャリアの半分以下の通信料金に収まるケースが多い。
- ただし、音声通話に関しては後述するが定額プランがオプションになっていることから、この限りではないこともある。
- 身の丈に合ったプランを選択可能
- 大手キャリアではプランの改廃により選択肢が失われ、必要もない量のデータ通信契約を結ばされることや、通話定額プランをほとんど音声通話をしなくても選択させられるケースも現れている。
- また端末を安価に販売する代わり、有料オプションを利用者が必要なくても契約させる事例も存在する。
- MVNOでは音声通話の有無、データプランの容量の差と選択肢が分かりやすくなっているのが一般的であり、キャリアと契約する場合と比較して自身の需要にあったプランを選択できる可能性が高くなる。
- ただし後述する通り、音声定額を提供しているMVNOは数が限られるため、
MVNOの音声定額はオプション扱いであり、別途の申し込みや追加料金が必要。また完全定額制のプランはMVNOには存在しないので、それらを踏まえるとキャリアと契約した方がいいケースも少なからず存在する。
- 契約期間の縛りがない
- 大手キャリアでは「2年縛り」と呼ばれる、2年間隔の特定月に解約を行わないと違約金が取られる契約を結ぶのが一般的である。
- 格安SIMの多くはこのような縛りがなく、サービス内容が合わないと思えば他の会社に移ることが容易となっている。
- ただし音声SIMに関しては最低1年という契約下限期間を設けているところが多い(MNPでの転出にのみ制限をかける会社もある)。また大手キャリア同様に2年縛りが存在する会社・プランも存在する。
格安SIMの欠点
- キャリアのメールアドレスが使えない
- @docomo.ne.jpや@ezweb.ne.jpのような大手キャリアが提供するメールサービスを使うことが出来ないため、GmailやYahooメールなどで代替する必要がある。
- 特にキャリアメールでは、PCでも使われるこれらからのメールを迷惑メールのフィルタリングで弾く設定をかけているケースが有り、知人にこれらキャリアメールを使うものがいる場合、設定がそのままだとメールのやり取りが出来なくなる可能性もある。
- ただしUQモバイルとY!mobileの2社はキャリアのサブブランド扱いになっているため、キャリアメールと同等のメールアドレス取得が可能。ただしMVNOでは主要勢力となっているdocomo系格安SIMにはサブブランドが存在しないため、docomo系格安SIMの単独利用の場合はキャリアメールの取得が出来ないことには変わりない。
- キャリア決済が出来ない
- アプリの購入代金やゲーム内の課金などを携帯電話の代金と合わせて請求する、キャリア決済のサービスが利用できなくなる。
- これらのサービスを利用しているユーザーの場合、決済手段をクレジットカードによる直接決済やプリペイドカードによる購入に変更する必要がある。
- 例外的にソフトバンクとauのサブブランドであるワイモバイルとUQモバイルは例外的にキャリア決済が可能。
- だからといってソフトバンクやauの子会社になったLINEモバイルとBIGLOBEモバイルではキャリア決済の利用は不可能なので勘違いしないように注意。
- キャリアの公衆無線LANサービスが利用できない
- キャリアからMVNOへ移った場合、これにより月の通信量が増加する可能性がある。
- BBモバイルポイントやWi2 300など、有料公衆無線LANのいくつかを利用可能なMVNOも存在する。
- LINEでの年齢認証ができない
- LINEの年齢認証機能はキャリアとの契約を結んでいる場合に限り利用可能。このためID検索が利用できなくなる。
- そのLINEが提供するLINEモバイルに限っては、この年齢認証が可能となっている。
- 通話定額プランがないオプション
- 大手キャリアでは一般的となった通話定額のプランがほとんどなく、
基本的に通話は従量料金となるため、通話時間が長いユーザーの場合はキャリアと契約するより割高になる事例も存在する。
- 2017年以降、主要どころの大手MVNOの場合は、基本的に通話用のアプリを通じて料金を下げたり、条件が限られるが通話が定額となるプランを提供したりしている。
- ただしMVNOの通話用アプリは通常通話に比べて品質が低下する。また定額プランもオプションのことが多いので、通話の多いユーザーの場合は通話費だけに限ればキャリアのほうがお得になるという構図に変化はない。
- ワイモバイルとUQモバイルでは、10分(UQモバイルの場合は5分)以内の通話が無条件で無料になる定額サービスを提供しているが、いずれも2年契約前提のプランとなっているため、こっちはこっちでキャリア契約に近いという弱点を抱えている。
- 通信速度が遅くなるときがある
- MVNOは大手キャリアから借りた回線を又貸しする形でサービスを提供するため、大手キャリアと比べると使える通信帯域(容量)が狭くなり、ユーザーが多い時間帯は目に見えて通信速度が遅くなることがある。
- 特に繁忙時間帯である平日の昼間12~13時台は、通信速度が1Mbpsを割り込むのが現在では恒常化している。
- サブブランドのワイモバイルとUQモバイルの場合は、平日の12~13時台でも通信速度がキャリアと同等の通信速度を維持している。しかしサブブランドがないdocomo系格安SIMの場合だと、その時間帯の通信速度に関しては期待しないほうがよい。
- 一応の代替案としてdocomo本家には永年1500円引きが適用される、docomo withが存在する。一人用プランではそこまで旨みはないが、シェアパック5かベーシックシェアパック(5GB以内)を3回線以上で利用することで最低料金の計算ではサブブランドなみに料金を抑えることが可能になる。とはいえあくまで最低料金の場合であり、通話定額プランを契約したりデータを使いすぎたりするとあっという間に高くなるため、家族全員がライトユーザーでもない限りはサブブランドより高くなるケースがほとんどである。そういうシビアなプランであることを理解した上で家族間以外に電話をほとんどかけないのならば、確かに安くなるのだが……
- 端末故障時のサポートが少ない
- 大手キャリアの窓口で行われているような、端末故障・不良時の受付を行っている通信事業者は少なく、不具合の場合などは自身で端末の製造メーカーとやり取りする必要があるケースが多い。
- 代替機のサービスもないため、予備機を保有していない場合は故障時は通信手段を失うことも考えられる。
- 最近は端末保障があるMVNOも増えてきているが、「実店舗の窓口がない」「キャリアほど手厚い保障ではない」「端末費からすると割高」などの理由から、キャリアの端末保障に比べると利用しにくい部分は相変わらず多い。
- 格安スマホの場合はキャリアの監修がない端末のため、キャリアの白ロムでもない限り、端末自体が安全かどうかも自己責任になる。特に中華製品やベンチャー企業のスマホはコストパフォーマンスは高いものの、一方で黒い噂(初期状態でトロイの木馬やマルウェアが入っている…etc)のニュースもたびたび話題に上がるため、そのあたりを許容できるかも重要になってくる。
- 決済手段がクレジットカードに限定される
- MVNOではデビットカードや口座振替での利用が可能な事業者はまだ少ない。
- クレジットカードが金融事故歴や属性の関係で持てないものは、選択肢が限られることとなる。
関連動画
関連項目
- SIMカード
- 格安スマホ
- 仮想移動体通信事業者
- スマートフォン
- タブレットPC
脚注
- *MVNO事業者が販売するこれら端末は、キャリアによるSIMロックがかけられていないSIMフリー端末であるのが一般的である。
- *最近は、楽天モバイルのように独自に店舗を設けて端末・SIMカードの販売を行う事業者や、UQモバイルのようにキャリア店舗の一部を借用して販売を行う事業者も現れている。大手家電量販店の中にはMVNOを専門に扱うカウンターを設けているところもある。