概要で示されているように一般的に誤用として広まっているが、間違いではないという説もある。
実際、一部の辞書には明確に「汚名挽回」は誤用ではないとわざわざ記されている。
一度デマが広がると否定するのにコストがかかるのと同様の例だといえる。
「挽回」という言葉には「巻き返しを図って本来の良い状態に戻る」という意味がある。
そのため「汚名挽回」は「汚名を被っている状態から元に戻る」という解釈が可能なため、「汚名返上」と同じ意味であるととらえることもできる。
似たような用法の言葉として「疲労回復」を思い浮かべれば理解しやすいだろう。
また、同じ「挽回」を用いた言葉でも「遅れを挽回する」「劣勢を挽回する」という言葉が一般的に使われているが、これも遅れや劣勢をもう1度得る、と言う意味では使われない。
なお、この説を正とする場合、「汚名挽回」は「汚名の有る状態から、良い状態へと回復する」と言う意味である。
「汚名返上」は、汚名を返上した後の状態を問わないため、根本的に意味の違う新語である、とする説もある。
また、「(悪い意味で)汚名をもう1度得る事」と言う意味で「汚名挽回」を使ってしまった場合、「挽回」を誤った意味で用いていることになるため、明らかに日本語の誤用となる。
恥ずかしいので使わないようにしよう。
そもそも「汚名返上」「名誉挽回」と言う言葉が正しい熟語として存在するのだから、
それらを使わずわざわざ別の熟語を使おうとするのはおかしい、と言う物がある。
例えば「変幻自在」を「変幻自由」と言う事はない。「一刀両断」を「一太刀両断」とは言わない。という主張である。
しかし、これは最初から4文字熟語として成立しているものに対して言えるものであり、2文字熟語の組み合わせである本項に対しては妥当なものではない。
1985年に出版された『指揮者の戦訓』(図書出版社)(筆者:森松俊夫、1920年・京都府生まれ)17ページに、以下の一文がある。
天皇は殊のほかご機嫌がよく、山下は恐悦して退出、先年の汚名挽回のため、一層の働きを心に誓った
また、2006年6月27日に出版された『戦場の名言』(草思社)226-227ページにも、「汚名挽回」の文字がある。
こちらは、1950年前後生まれの方4名の編著。以下がその一文。
これで敗北に打ちのめされていた太平洋艦隊の衆心は、がっちりと一つに固まった。新しい司令長官は、汚名挽回のチャンスを与えてくれたのだ。これで士気が上がらないわけはない。
また、文化庁の調査によると、40代~60歳以上で「汚名挽回を使う」と答えた人が44.0~50.0%。
文化庁は、これを含めた3つのアンケートの結果から「本来とは異なる言い方が,高年層で高い割合」と結論付けたが、上記2つの例文を見ると、昔は正しいとされていた可能性も見えてくる。
(2004年に行われたアンケートなので、40代以上は1964年以前に生まれた人になる。)
当然、文化庁の結論が正しい可能性もあるが……。
2014年5月1日、国語辞典編纂者の飯間浩明氏のツイートが話題となった。
概ね、上記の「挽回」に関する件を『三省堂国語辞典』第7版に記述した、とのこと。
同氏は、1976年の『死にかけた日本語』(英潮社)の指摘が原因なのでは、と推測している。
書籍によって誤った知識を植え付けられる事例は、「ゲーム脳」などの疑似科学を扱う本が記憶に新しいか。
そもそも「汚名」は「雪ぐ」ものであって「返上」するものではない、という説もある。
その証拠になるかは不明だが、青空文庫内で「汚名(を)返上」という文が見つからなかったという報告がある。
「名誉挽回」という語にも異議を唱える声がある。
「名誉」は自力でどうにかできない面もあるため、「名誉恢復(名誉回復)」のほうが正しいのではないか、という説が挙がっているらしい。
「汚名挽回」という言い回しは、書籍などでも当たり前に使われていた時代に学んだ人たちが制作した古いアニメを見ているとよく散見される。
たとえば1983年7月に放映開始された「キャッツアイ」(第1シリーズ)がニコニコアニメチャンネルで放映されたときにも何度も汚名挽回というセリフが出てきては視聴者のツッコミが入っていた。
しかし、決定的にサブカルチャー業界に広まったのは、ガンダムシリーズの富野由悠季監督の「トミノ語」がきっかけとされる。
1985年(昭和60年)3月23日に初放映されたアニメ『機動戦士Ζガンダム』の第4話「エマの脱走」において、脚本のミスかジェリド・メサ(及び受け答えをしたバスク)が以下のセリフを発するシーンがある。
| バスク | 正攻法で、アーガマの新型モビルスーツを略奪してもらいたいのだ。 中尉ならできるはずだ。 私に意見をするほどの、器量をお持ちだからな。 |
| エマ | しかし。 |
| バスク | なにも一人でとは言わない。 ライラ隊との共同戦線を張ることを許可しよう。 3機のガンダムMk-Ⅱを使っても良い。 |
| ジェリド | 大佐、ガンダムMk-Ⅱを使わせていただけるのならば、自分が汚名挽回をしたく…。 |
| バスク | 汚名挽回? その言葉は実績を見せた者がいうことだ。 どうかね、エマ・シーン中尉? |
-------------------------------------------------------> 《 参考動画 》
セリフとして「汚名挽回」を発していたのは検証した結果この4話だけであったが(なお、劇場版や漫画『機動戦士Ζガンダム Define』では「汚名返上」に変更されている)、ジェリドがセリフではなく実際に行動でも汚名挽回を繰り返すため、いつしか「汚名挽回」を代表するアニメキャラとなったのである。(詳しくはジェリド・メサの項目を参照)
| なお、当記事更新前に、ジェリド・メサが何度も汚名挽回と言っていたような誤った記述をしていたことをお詫びします。掲示板の指摘を受け調べましたが編集者のうろ覚えでした。ジェリドの汚名返上のため謹んで訂正いたします。 |
また、『Zガンダム』より1年前の1984年(昭和59年)3月3日から放送したアニメ『ルパン三世partⅢ』の第2話でもやはり次元大介が「とっつぁんに汚名挽回のチャンスを~」と言っている場面がある。こちらはDVD版でも修正されずそのままである。製作者としては当たり前に使ってきた言葉を使っただけなので当たり前ではある。
このように「汚名挽回」というセリフはアニメ業界において今でも語り継がれるような名作アニメ上でも多用されたため、「誤用じゃない!(誤用じゃない!)ホントのコトバ~♪」(これはZZか)としていつしか妙な市民権を得ていったのである。そしてまた、それらのアニメを見て育った日本人の脳裡にも、汚名挽回という言葉は焼き付いた。
しかし、21世紀以降のアニメでは、前述のデマを信じた人々からすぐツッコミが入るようになったためか、汚名挽回というセリフを見かけることは少なくなった。そのため現在ではボケとして使われることが一般的。
似たようなものにCLANNADの春原の汚名万来という誤用もある。
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最終更新:2025/12/24(水) 11:00
最終更新:2025/12/24(水) 11:00
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