王道進行とは (オウドウシンコウとは) [単語記事]

王道進行とは、J-POPでよく使われるコード進行である。

世の中に多数あるコード進行のうち王道的に使われるものが王道進行……なのだが、昨今の日本において「王道進行」と呼んだ場合はその中の「IV→V→IIIm→VIm」と表される進行を指すことがほとんどである。以下、この進行について記述する。

コード進行に罪はありません　_by音極道

概要

JPOPサウンドの核心部分が、実は１つのコード進行で出来ていた前編によると、30年以上の長きに亘り日本で愛されている進行であり、J-POPのサビの部分で多用されている。

ディグリーネーム表記だと「IV→V→IIIm→VIm」で、ローマ数字部分をつなげて「4536進行」と呼ばれることもある。Cメジャー(ハ長調)だと「F→G→Em→Am」。コレを繰り返したり、後にツーファイブを繋げたりしてフレーズを作ることができる。

小室コード(逆循環)のように一アーティストが同じコード進行を様々な楽曲に用いるというケースはよくあることである(この王道進行についても後述のサザンやカーペンターズが当てはまる)が、多くのアーティストが同じコード進行を積極的に好んで用いるというケースは特筆すべきである。音極道氏は「王道進行」と名付けたが、冒頭に記した氏の箴言や後述の氏の意見からわかる通り、決して単純に悪者呼ばわりしている訳ではない。しかしながら、このコード進行を擁護する側には、王道進行の呼び名が定番と言うより「本来の意味の『王道』に当たる『楽な道』、『安易な道』を辿って日本のミュージシャン達が楽曲を量産している」との揶揄を込めて「王道進行」という言葉を使っているように聞こえてくるようである。

近年のパクリ騒動について、前掲動画を投稿した音極道氏は、後編動画において、パクリとされている元ネタにもオリジナリティは殆ど感じられない、今後こういう騒動が増える可能性は高いが、盗作というよりも(この進行によって)J-POPサウンドの形骸化が進んだ故の必然ではないかと述べている。一方で、この進行を使っているから手抜きだ・パターン化しているというような短絡的な話ではない、問題なのはコード進行に依存しすぎて「新しさ」の追求をおろそかにした作り手側の「姿勢」にあるとも述べている。

ジャズやロック等では「IIIm→VIm→IIm→V→I」等の五度圏の理論やツーファイブ、スリーコードといった所謂お決まりのパターンが(批判もあるとはいえ)「理論」として確立・常用されているのに対し、J-POPにおいては決して理論として持ち上げられることは無く、禁忌的なものとして暗黙のうちにあつかわれている。

なお、著作権法上「盗作」が問題になるのは「一定の小節数を超えるメロディーラインの一致」であり(判例:記念樹事件ただしあくまでも「編曲権」、即ち二次的著作物として解釈した場合である)、コード進行はいくらでも使い回しができる。著作権で保護されているのはあくまで「具体的な創作表現」に係る部分のみであって、誰が作っても似たようなものとなる「ありふれた表現」や、「選択の幅が狭い表現」まで著作権で保護してしまうと却って創作活動を阻害してしまう、と考えられているからである。
これをストーリー作品で言うとメロディーラインは「ストーリーの中身そのもの」であり、コード進行は「その作品の世界観や基本設定」に例えることが出来る。例えば「魔法少女もの」や「女子高生ものの4コマ漫画」といった設定そのものに著作権を与えてしまうと、たちまち創作に行き詰まってしまうことは想像に難くないであろう。

たくさん売れる魔法のコード

作り手の姿勢が批判される一方で王道進行を使った楽曲がヒットしていることは事実である。また音極道氏曰く、売れてなかったアーティストにこの進行の歌曲を提供したところたちまちヒットしたという逸話もあり、そのことがかえって(少なくとも、利益を求めなければならない産業音楽における)作り手の手法を保守的にしてしまったともいえる。

2010年8月現在CDとしては最大売り上げを記録しているサザンオールスターズのTSUNAMIも、コードだけをみてみればカノンコードと王道進行、そしてツーファイブの組み合わせだけで殆成立している楽曲であり(それらが使われていないBメロも、既述の五度圏の進行や循環コード等今まで用いられ続けてきた真新しくもなんともないコードでできている)、神話を裏付ける一事例となっている。

一方、「王道進行を使ったのにまったく売れなかった」という事例はあまり喧伝されない。探せばたくさん出てくるかもしれない。

小悪魔コード進行

日本を代表する音楽プロデューサーの亀田誠治は、NHKの番組「亀田音楽専門学校」の中でこのコードを「小悪魔コード進行」と名づけ、集中的に特集した。興味がある者は調べてみてほしい。

ピコカキコで

その他関連楽曲

JPOPサウンドの核心部分が、実は１つのコード進行で出来ていた前編に例として挙げられていた楽曲
- 瞳をとじて　[平井堅]
- オリビアを聴きながら　[杏里]
- いとしのエリー　[サザンオールスターズ]
- 悲しい色やね　[上田正樹]
- シーズン　イン　ザ　サン　[TUBE]
- 世界で一番熱い夏　[プリンセス・プリンセス]
- ロビンソン　[スピッツ]
- White　Love　[SPEED]
- Loveマシーン　[モーニング娘。]
- Everything　[MISIA]
- Fragile　[Every Little　Thing]
- さくら　[ケツメイシ]
JPOPサウンドの核心部分が、実は１つのコード進行で出来ていた前編では直接触れられてはいなかったが、それっぽく聞こえる楽曲
- ガチャガチャきゅ～と・ふぃぎゅ@メイト
- みくみくにしてあげる♪
- きしめん / true my heart
- 奴隷人生 / あいつこそがテニスの王子様
- ○○がトレーニング / お願いSweet heart
- God knows...
- エアーマンが倒せない
- あんこ入り☆パスタライス / STAR RISE
- RIP=RELEASE
- 時報を歌にしてみたら原形がなくなった的な感じ風のノリみたいなアレ
- 情熱大陸
- Super Driver(Bメロ前半・サビ3フレーズ目)
- only my railgun(Bメロ)
- 恋スルVOC@LOID
- 歌に形はないけれど
- 負けないで(Aメロ1フレーズ目)
- 100万の微笑み(Aメロ)
- BLUE BIRD(浜崎あゆみ　Bメロ)
- ブルーバード(いきものがかり　間奏・Bメロ)
- もう恋なんてしない
- コネクト(魔法少女まどか☆マギカ)
- forフルーツバスケット
- 甲賀忍法帖
- 虹(Aqua Timez)
- ポッピンキャンディ☆フィーバー！
- 可愛くてごめん
- シル・ヴ・プレジデント
- うまぴょい伝説
- 旅立ちの日に
- 恋愛レボリューション21
- ホタルノヒカリ
- 怪物
- ロマンスの神様
- LOVE & JOY
- ルカルカ☆ナイトフィーバー
- Daydream café

進行パターン

この項目は精査が必要です。
ここに書かれている楽曲が各亜種に該当しない可能性や、ここに書かれていない亜種がある可能性があります。掲示板での報告をお待ちしています。

Ⅳ | Ⅴ | Ⅲm | Ⅵm

最も基本的なパターン

Ⅳ | Ⅴ | Ⅲ(or Ⅲ/#Ⅴ or #Ⅴdim) | Ⅵm

3つ目をメジャーにしたパターン、7thをいれてドミナントセブンスにしたり、ルート音を変えてⅤ-Ⅲ/#Ⅴ-ⅥmやⅤ-#Ⅴdim-Ⅵmにすることで半音上昇に出来る
・みくみくにしてあげる♪、可愛くてごめん、ポッピンキャンディ☆フィーバー！

Ⅳ | Ⅴ | Ⅲm Ⅲ(or Ⅲ/#Ⅴ or #Ⅴdim) | Ⅵm

上二つを合わせたパターン、Ⅲm-Ⅲ/#Ⅴ-ⅥmやⅢm-#Ⅴdim-Ⅵmの場合もある
・虹(Aqua Timez)、はやくそれになりたい！、走れメロンパン

Ⅳ | Ⅴ | Ⅲm | Ⅵ

4つ目をメジャーにしたパターン、7thをつけることが多く、次に来るのはⅡmであることが多い
・GO MY WAY!!(Bメロ後半)、きしめん(サビ後半)、キラメキラリ(Bメロ)、はやくそれになりたい！(Bメロ後半)

Ⅳ | Ⅳ | Ⅲm | Ⅵm

2つ目が変わらないパターン
・トンデモワンダーズ、Butter-fly、ロミオとシンデレラ(Bメロ)、めてお☆いんぱくと

Ⅳ | Ⅳm | Ⅲm | Ⅵm

2つ目がサブドミナントマイナーになるパターン、ⅣmM7・Ⅳm7・Ⅳm6・Ⅳdimなどが使われる
・パステルレイン、Mela!、花ハ踊レヤいろはにほ、カブトムシ、えんどろ〜る！、明日も

Ⅳ | Ⅴ/Ⅳ | Ⅲm | Ⅵm

ベースのみを維持したパターン
・旅立ちの日に、全力少年、うまぴょい伝説、ロビンソン、もう恋なんてしない

Ⅳ | Ⅳ/Ⅴ(or Ⅱm/Ⅴ) | Ⅲm | Ⅵm

ベースのみを動かしたパターン、Ⅱm-Ⅱm/Ⅴのことも多い
・Daydream café、人生イージー？、ときめきLOOPにのって

Ⅱm | Ⅴ | Ⅲm | Ⅵm

最初をツーファイブの形にしたパターン
・Daydream café、宝箱のジェットコースター、シュガーソングとビターステップ、ときめきLOOPにのって

Ⅳ | Ⅴ | Ⅲm | ♭Ⅲdim( or ♭Ⅲ or ♭Ⅲm or Ⅰm/♭Ⅲ)

次にⅡmが来る場合、半音で下降することになるパターン、♭Ⅲdimはパッシングディミニッシュ、♭ⅢはⅥmの裏コード、♭ⅢmはⅢmからⅡmへのスムーズな下降として用いられる
・カブトムシ、す、好きじゃない！、えんどろ〜る！

Ⅳ | ♭Ⅶ | Ⅲm | Ⅵm

Ⅳから♭Ⅶへ強進行するパターン
・ススメ☆オトメ～jewel parade～、ぷ・れ・あ・で・す！

日本以外での使用

後編動画でも指摘されているとおり、洋楽ではユーロビートブーム前後で多少もてはやされた程度で、決して支配的な進行であるとはいえないが、ユーロビートブームの少し前にカーペンターズのトップ・オブ・ザ・ワールドや青春の輝きなどで用いられ、当時のロック全盛期において一線を画すサウンドとなっていた。

近代以前の所謂クラシックにおいては殆ど使われなかったといっていい。F.ショパン作曲のノクターン第2番変ホ長調Op.9-2では、主題においてII-V7-III7-VIという似たような進行がでてくるが、楽節(文章における文節みたいなもん)をまたいだ進行(IIは前半、他は後半の楽節) なので既述の進行とは効果・役割が違う。

また、クラシックやジャズ、ロック、ポップス等で幅広く使われている基本的な進行、IV-V7-I-VIも似た響きを持つように聞こえるが、Iの部分で一度解決してしまっている為、緊張感の物足りない進行といえる。