軍人皇帝 単語

グンジンコウテイ

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軍人皇帝とは、ローマ帝国のセウェルス朝滅亡後、3世紀半ばに多数現れた皇帝の総称である。

概要

235年、セウェルス朝のアレクサンデル・セウェルスの殺害後、ディオクレティアヌスの284年の即位まで半世紀にわたってローマ帝国は混沌の時代に陥った。ローマ帝国の皇位争いのみならず、皇帝を名乗りつつもガリア地域のみを統治する、いわゆる「ガリア帝国」まで現れたほどである。

しかし、論争自体はあるものの、ウァレリアヌス、ガリエヌス父子を境に、皇帝推戴に変化が見られ、ディオクレティアヌスもあくまでもこの流れに乗った前代との連続性が強調されるようになった。

なお、これまでに比べても帝位がくるくる変わるので、まとめて紹介する。

マクシミヌス・トラクス

インペラトル・カエサル・ガイウス・ユリウス・ウェルス・マクシミヌス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス・アウグストゥス(在位:235年~238年)

アレクサンデル・セウェルス殺害後、軍隊に推戴された。ゴルディアヌス父子の反乱を鎮めた後、暗殺死。

ゴルディアヌス1世、ゴルディアヌス2世父子

二人ともインペラトル・カエサル・マルクス・アントニウス・ゴルディアヌス・セムプロニアヌス・ロマヌス・アフリカヌス(在位:238年)

属州プロコンスラリスの総督とその息子。マクシミヌス・トラクスに反乱を鎮圧され1世は自害、2世は戦死。

プピエヌス、バルビヌス

それぞれインペラトル・カエサル・マルクス・クロディウス・プピエヌス・マクシムス・アウグストゥス、インペラトル・カエサル・デキウス・カエリウス・カルウィヌス・バルビヌス・ピウス・フェリクス・アウグストゥス(在位:238年)

元老院がマクシミヌス・トラクスに対抗するために選出した老人2人。仲たがいの結果、そろって親衛隊に撲殺。

ゴルディアヌス3世

インペラトル・カエサル・マルクス・アントニウス・ゴルディアヌス・ピウス・フェリクス・アウグストゥス(在位:238年~244年)

ゴルディアヌス1世の孫。まだ幼い少年で、ペルシア遠征中フィリップスに殺されたとも、戦傷がもとで亡くなったとも。

フィリップス・アラブス

インペラトル・カエサル・マルクス・ユリウス・フィリップス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:244年~249年)

ゴルディアヌス3世の近衛長官で、通称「アラビア人」。反乱が恒常化し、デキウスとの戦いで戦死。

デキウス

インペラトル・カエサル・ガイウス・メシウス・クイントゥス・トライアヌス・デキウス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:249年~251年)

保守的な元老院議員。クニウァ率いるゴート人に敗れ戦死(外敵との戦いで戦死した最初の皇帝)。

トレボニアヌス・ガルス

インペラトル・カエサル・ガイウス・ウィビウス・トレボニアヌス・ガルス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:251~253年)

下モエシア属州総督で、デキウスと共にゴート人と戦っていた。アエミリウス・アエミリアヌスに敗死。

アエミリウス・アエミリアヌス

インペラトル・カエサル・マルクス・アエミリウス・アエミリアヌス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:253年)

上モエシア属州総督。トレボニアヌス・ガルスの救援に来たウァレリアヌスに敗死。

ウァレリアヌス

インペラトル・カエサル・プブリウス・リキニウス・ウァレリアヌス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:253年~260年)

ラエティア等の属州総督。息子・ガリエヌスと共に帝国を分割統治し、上級武官から元老院議員を排除し、軍事エリートを登用、中央軍の増強などの諸改革に努めた。その結果同じ軍人皇帝時代とはいえ、これまでの皇帝推戴が属州総督などを担ぎ上げ、イタリア本土の弱体な中央軍を粉砕して皇帝位につく、の繰り返しだったのに対し、恒常的な中央機動軍によってスムーズに次の皇帝が決まるようになった、とも言われているが、息子のガリエヌスとどちらの功績が上か、という点ではまだ決着がついていない。

最終的にはササン朝ペルシアのシャープール1世に捕らえられ、以後消息不明。

ガリエヌス

インペラトル・カエサル・プブリウスリキニウス・エグナティウス・ガリエヌス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:253年~268年)

ウァレリアヌスの息子で西方を担当していた。ウァレリアヌスの死後、西方の「ガリア帝国」、東方のパルミラに帝国が3分割され、ウァレリアヌスの改革と合わせて、残ったバルカン地域のイリュニア人が軍事エリートとして高位につくきっかけを作ったともいわれている。軍事行動の傍ら、哲学や芸術にも造詣が深く、「ガリエヌス・ルネサンス」を起こしたとも。最期は軍事行動中暗殺される。

クラウディウス・ゴティクス

インペラトル・カエサル・マルクス・アウレリウス・クラウディウス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:268~270年)

ゴート戦争で活躍し「ゴティクス」の異名をとる。病没。

クインティルス

インペラトル・カエサル・マルクス・アウレリウス・クラウディウス・クインティルス・インウィクトゥス・ピウス・フェリクス・アウグストゥス(在位:270年)

クラウディウス・ゴティクスの弟。アウレリアヌス擁立の陰で部下に見捨てられ殺害。

アウレリアヌス

インペラトル・カエサル・ルキウス・ドミティウス・アウレリアヌス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:270年~275年)

クラウディウス・ゴティクスの配下の将軍。パルミラ、「ガリア帝国」を滅ぼし帝国再統一をしたが、暗殺。

タキトゥス

インペラトル・カエサル・マルクス・クラウディウス・タキトゥス・ピウス・フェリクス・アウグストゥス(在位:275年~276年)

出自が謎の老人。遠征中殺害されたとも、病死したとも。

プロブス

インペラトル・カエサル・マルクス・アウレリウス・プロブス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:276年~282年)

軍司令官。開墾事業などの内政に取り組んだが、反乱で殺害。

カルス

インペラトル・カエサル・マルクス・アウレリウス・カルス・ピウス・フェリクス・インウィクトゥス・アウグストゥス(在位:282年~283年)

プロブスの近衛長官。雷に打たれ死亡。

ヌメリアヌス

インペラトル・カエサル・マルクス・アウレリウス・ヌメリアヌス・ピウス・フェリクス・アウグストゥス(在位:283年~284年)

カルスの次男。推戴されたものの、そのままイタリアに到着した際、死体となって発見された。

カリヌス

インペラトル・カエサル・マルクス・アウレリウス・カリヌス・ピウス・フェリクス・アウグストゥス(在位:283年~285年)

カルスの長男。ディオクレティアヌスに敗死。

ガリア帝国の皇帝

ポストゥムス

在位:260年~269年

ウァレリアヌス没後独立勢力となる。ラエリアヌスの反乱で死亡。

ラエリアヌス

在位:269年

ポストゥムスを結果的に殺したことであっけなく支持を失う。死因不明。

マリウス

在位:269年

鍛冶屋らしい。個人的な口論で絞殺。

ウィクトリヌス

在位:269年~271年

ポストゥムスの部下。占領したオータンの町で役人の妻を誘惑した結果殺害。

テトリクス

在位:271年~274年

アクイタニア総督。アウレリアヌスにあっけなく降伏した。

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関連項目

  • 世界史
  • ローマ帝国
  • アレクサンデル・セウェルス
  • ディオクレティアヌス

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最終更新:2025/12/06(土) 20:00

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