Affinity(アフィニティ)とは、日本語で「親和性」の意味を持つ英単語である。
ここでは、イギリスのSerif社が開発したグラフィックソフトウェアを解説する。
マジック:ザ・ギャザリングの能力については「親和」を参照せよ。
想像の自由
(プロ品質を、無料で)
Affinity公式サイトから
「Affinity」とは、イギリスの会社である〈Serif Europe.Ltd〉が開発し販売を行っているグラフィックソフトウェアシリーズの総称である。
まず【Serif】という会社。世辞抜きに耳にしたことがないと思われる会社なのだが、起業は1987年とグラフィックソフトウェア業界ではかなりの古参である。最初に開発したのは、Windows用の〈デスクトップパブリッシングソフトウェア〉いわゆる〈DTP〉ソフトの「PageStar」。
その後もいくつかのソフトウェアを開発し販売するのだが、近年になって既存ソフトウェアのコード(つまり設計図)を捨てて、全てをゼロから作り直すことにした。[1]
決断を下した理由は大まかに二つ。
このことから、全てを一新したソフトウェアシリーズ「Affinity」の開発がスタートする。
2014年に配信を開始した「Affinity Designer」を皮切りに、名を冠している二つのソフトウェアと共に、定期的な機能アップデートが繰り返されている。
2022年11月9日には、アップグレード版となるV2(Version2)が配信開始。
2024年4月に、serif社がオーストラリアのオンライングラフィックソフトウェアを配信する会社の『Canva』に買収される。
2025年10月31日に「Affinity by Canva」が無料で配信開始。バージョンナンバーが3.0.0で、これが事実上のV3。
現在は、WindowsStore、macOS AppStore、iOS AppStore(iPad専用アプリ)、AffinityStore(ライセンスコード形式、各OS対応のインストーラー配布)で下記のソフトが配信されている。
「Affinity by Canva」事実上のV3からは、なんと無料。それも永久だとか。AIを使う機能だけは端末だけで完結させられないサービスの側面があるからか、別途サブスクリプションとして用意されている。
新バージョンが登場すると、旧バージョンの新規購入が不可能になる。(V1、V2)
購入済みのアカウントを持っていれば、引き続きダウンロードと利用することが可能だ。
V2時に使用していたアカウント(Affinityアカウント)は、V3登場とともにCanvaアカウントと連携できるようになった。
追加のブラシ、グラフィックを、〈アドオン〉という形で購入することができる。こちらも任意の買い切り。ほしいと思ったら別途購入しよう。
Photoshopのブラシアドオンだったり、スウォッチも対応している。
グラフィックソフトウェアという時点で、特にコンピューターグラフィックスソフトウェア最大手Adobe社製ソフトと比較対象にされてしまうのは、どうしても避けられない部分である。
PhotoはAdobe PhotoShop、DesignerはAdobe illustrator、PubrisherはAdobe InDisign、といった具合だ。
Affinityが優れている点として、様々な効果を付け加えるその“効果”のほとんどが「非破壊編集」で済ませられる点だろう。
どんな効果を付け加えようが、元の画像データはもとのままで何も変わらない。効果を消せばもとの画像に元通り。いくらでも試行錯誤できてしまうのだ。間違って保存したとしても、画像データはもとのまま。安心して保存しよう。
グラフィックソフトウェアとして、脱Adobe筆頭ソフトとして代表されているぐらいにかなりの注目を集めている。
特筆すべきなのは、やはりソフトウェア自体が買い切り、Affinity by Canva(V3)からは無料である点だ。
無料となってしまったことで『テキトーにおすすめして、テキトーにインストールしてお触りする』なんてことが楽にできるようになってしまった。
仕事としてPhotoshopやillustratorを使うならまだいいとして、個人利用目的としては月額のサブスプリクションがかなりの負担となる。『趣味で扱ってみたい』という人達に安価で触ることのできるソフトウェアというのは、それだけでかなりの利点となる。
肝心の機能面に関してだが、ほぼほぼ遜色ない。仕事用途として扱っても問題ないレベルの完成度を誇っている。一部はAdobeと比べて扱いやすい点もあり、こちらに完全移行したユーザーも存在する。
そして、デスクトップ版とiPad版の基本機能の差異はない。各機種間の互換性も完璧で、iPadで軽くラフスケッチして、デスクトップで本格的に仕上げるということもできてしまう。
ついでにいうと、Adobeソフトと比べてとても軽い。
Appleと仲のいい関係らしく、Metal、AppleSiliconへの対応が製品のローンチで行われたり、Macの製品紹介ページで使われていたりと、Appleからも製品のお供にどうですかと看板製品としておすすめされている。伊達に数々の賞を受賞していない。
「PhotoshopやIllustratorのようなソフトが欲しいけど月額なのが……」と思っている人がいるのなら、それらに付随するファイルの互換性もある程度あるので、個人用途としてかなりオススメできるソフトウェアだ。
Affinityは、Adobeと比べたらSerif自体が従業員100人以下の小規模な会社であることは否めない。しかし、ソフトウェア自体の品質はとても高い。日本語のサポートはある程度対応し、ソフトウェア内に各機能のヘルプ、ウェブサイト上でチュートリアルの動画も完備している。
対するAdobeは、買い切りであるAffinityと違ってサブスプリクション形態ではあるのだが、サブスクならではの機能を多々提供している。フォントの提供だったり、クラウドストレージだったり、画像だったりだ。一線級の仕事をしているからこそ、やはりAdobeのサービスが最良というのも、当然のことだろう。
Adobeソフトと比較して、この機能が存在していないというのもある。しかし、普通に扱う分には困ることはない程度には機能が盛りだくさんだ。もしかしたらアップデートで追加されるかもしれないので、その場合は大型アップデートが来るまで気長に待とう。
もし購入しようとする場合は、所持または使用する端末が対応しているかどうかの確認を忘れずに。特にiOS版に関してはiPad専用として出しているため、iPhoneでは使用することができないことに注意が必要だ。
日本語を扱う日本人として、Affinityを扱う以上最低でもこれだけは理解してもらわないといけない。
日本語組版には非対応だ。
つまり「縦書き」「句読点やらの調整」もろもろ、そのすべてが非対応だ。
公式も要望があることはわかっているらしく、日本のインタビューのときに話題に上がったことでもあった。どうしても開発の優先度が低いのだろう。テキストエンジンを新たに作るのが必要なのだとか。データで見ると、日本ユーザーはiPadのみで完結させている人が多いとも語っていた。
英語に関しては問題ない。イギリスの会社なのだからそりゃそうなのだが。
(そもそも日本語組版への対応はかなり大変なのだとか。InDesignに至っては「いちから作り直した」と公言されているほど。日本ユーザーが増えたら市場が大きくなって対応される可能性わんちゃん……と、ユーザー間で話題にしたりする。ここでも見ればいやでも理解するかも)
PSDの互換性はほぼ大丈夫。AIの互換性はまあまあ。過信しないように。
編集データに関しては、上位互換があって下位互換がない。V2のデータをV3で閲覧・編集・保存もろもろできるが、V3のデータをV2で開くことはできない。注意してほしい。
写真をRAWデータを管理して一括現像できるような機能、つまりはAdobeLightroomのようなことはできない。というかそういうソフトじゃないので、そこは諦めて別のソフトを使ってほしい。
少なくともこのスペックを満たしていれば、Affinityシリーズは全て動作する。デスクトップ版は、1280x768以上のディスプレイ解像度が必要になることにも留意しよう。
2010年代前半のオンボードPCでも普通に動くくらいには、凄まじく軽いのだ。
Affinity by CanvaからはCanvaアカウントへの登録が必須になった。これも動作条件かもしれない。
プロ仕様のこういったソフトウェアは「一つのフォルダに機能が詰めてあります」と、初心者からすればとてもややこしく分かりにくい構造になっているのが一般的。
一方でAffinityは、それら機能を区分するために
例:Designer)ベクター形式は「デザイナー」、ラスター形式は「ピクセル」
と言った具合に、各機能に明確なテーマをつけ「ペルソナ」として分けられている。
デスクトップ用ソフトウェアでありがちな上部メニューバー(コンテキストメニュー)のみにある機能というのは基本的に無く、使用したい機能を『ペルソナという〈フォルダ〉』で分けることにより、情報過多による初心者ユーザーの混乱を招かないようなインターフェイスにもなっている。
iOS版は右下に機能名を表示してくれる?マークもあり、いちいちこれはなんなのかと調べる必要が無いのも追記しておこう。
どうしても画面が小さかったりで情報が制限されてしまうタブレットでは特に有用。ちょっと上級的な書き出し機能もペルソナとして区分されている。
V3からは「スタジオ」という名称に変更。なんと好きにツールバーをいじって、自分だけのスタジオを作ることができるようになった。
Publisherに搭載されている技術。
Publisher使用時に、「Designer」「Photo」の機能を当該ソフトが起動していない状態で扱えるようにする技術。
DesignerとPhotoがインストールされていなければ使用することはできないが、画像編集のために別ソフトへ切り替える必要がなくなり、Publisher単体で十二分な画像編集機能を取り揃えられ、利用できるようになる。
まさに「Affinity親和性」の名にふさわしい機能である。
逆にPublisherにしかない機能も、一部は予めプロジェクトファイルに保存していれば、Designer・Photoでも扱える。
V3ではほぼ空気になったかもしれない。
Affinityシリーズは、全てのソフトウェアが同一のエンジンで開発されている。
もっとわかりやすく解説すれば「PhotoでもDesigner、Publisherの機能を扱えるよ」ということ。
各種ソフトの作業ファイルは、それぞれ拡張子は異なっているのだが、実は内部的には同一ファイル。あくまで使用したソフトで作業ファイル拡張子が違うだけ。
PhotoにDesignerの作業ファイルを放り込んだとしても、問題なく読み込んでくれる。あまつさえ、多少の編集と微調整もできる。新規追加は当該ソフトでなければできないので注意。
PhotoshopとIllustratorなどの同社Adobeソフト間でもエンジンが違うだけに互換性が怪しい部分があることを考えると、何げにトンデモなことである。
V3はこれが本領発揮にでもなったのだろう、三種全てが合体して1つのソフトとして新生することになった。
2014年に配信を開始したベクター形式のドローイングソフトウェア。同様のソフトとしてAdobe Illustratorが上げられる。
Illustratorと違う点は、ベクター形式だけではなくラスター形式も標準でサポートしている点。そして多少なりの画像編集機能を備えている。
画像の単色背景の切り抜きなどでPhotoshopなど別ソフトで出力・編集してから追加していたことからすれば、それが単一ソフトで済む点は余りある利点と言える。
画像の3D化が弱いということだが、一般ユーザーからすればまず困らないだろう。
V3における『ベクタースタジオ』のやつ。
2015年に配信を開始したラスター形式のグラフィックソフトウェア。同様のソフトとしてAdobe PhotoshopやGIMPが上げられる。
業界標準の機能は基本的に搭載済み。慣れれば他のグラフィックソフトウェアと遜色無いモノが作れる。
V3における『ピクセルスタジオ』のやつ。
2019年に配信を開始したパブリッシングソフトウェア。同様のソフトとして、AdobeInDesign、AdobeFreamMakerなどが上げられる。
(パブリッシング:編集に対し割り付けを行うソフトウェア。デスクトップパブリッシングソフトウェア、DTP)
MicrosoftOfficeWordなどでチラシのデザインをやったりする人もごく少数いると思うが、それ専用のソフトウェア。縦書きなどの日本独自とも言える機能の数々はサポートされていない。
iPad版は2022年11月9日に、V2とともに配信が開始された。
V3における『レイアウトスタジオ』のやつ。
2025年10月31日に配信開始をしたソフト。バージョンナンバーが3.0.0で、これが事実上のV3。
Designer、Photo、Publisherが、すべてまとまって一つのソフトして新生。これだけで画像系のものはほとんどを賄えることになってしまった。
2024年にCanvaに買収されてからAffinityが初めて見せた大きな動きが、まさかの無料化。
「無料化、ということはこれは機能制限版か?」と思う人もいるだろうが、なんと!減った機能は一切無し!むしろ増えた!どういうことなの……。
じゃあどこで収益をあげるのかというと、月額のサブスクリプションが任意で乗っかることに。創作系ソフトで色んな意味で話題にがあるAI機能の『Canva AI』が主なもの。これはCanvaのサブスクなので、契約済みなアカウントがあればAffinityでもそのまま扱えるようになる。
2.6で実装されていた機械学習による機能はAIに関係ないからか、サブスク関係なしに引き続き利用可能。
これも正式名称なのだろうが、上記の名称の他にソフトをダウンロードするところにいくと、このソフトのこと『Affinity Studio』と書いてあったりする。ちょっと詳しい人はこの名称で呼んだりもしている。
まあ、このソフトはとりあえず『V3』『Affinity by Canva』『Affinity Studio』のどれかとでも呼んであげよう。
借りる時代は、もう終わり
ここからは、あなたのものだ
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/30(火) 16:00
最終更新:2025/12/30(火) 16:00
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