E-8 単語


ニコニコ動画でE-8の動画を見に行く

イーエイト

3.1千文字の記事
これはリビジョン 2748488 の記事です。
内容が古い・もしくは誤っている可能性があります。
最新版をみる

E-8 JSTARS (Joint Surveillance and Target Attack Radar System:ジョイント・スターズ)とは、アメリカ空軍が運用する地上部隊指揮・管制航空機である。

概要

JSTARSはAWACSに似ているが、AWACSが航空戦を管理するように作られているのに対し、JSTARSは地上戦を支援する役目を与えられている。

JSTARSは機体下部に複数のモードを持つレーダーを搭載している。一つは広域監視・移動目標を表示するドップラーレーダー(WAS/MTI)で、WASなら大規模な機甲師団の動きを発見でき、MTIなら個々の車両を表示する。このモードでは5万平方キロの地域をカバーできる。もう一つのモードは合成開口レーダー(SAR)で、目標地域の地図や軍事施設の映像を作るだけでなく、地下に埋められている金属製構造物も見つけられる(特定可能深度は機密)。湾岸戦争ではクウェート南部にあったイラク軍が敷設した地雷原を発見することに成功している。[1]

開発

AWACSは空中における航空機の指揮管制機能を備えているが、そのレーダーはあくまでも空中を高速で移動する物体=航空機を対象としている。

では、AWACS同様に空中から地上を移動する車両を追跡することで、地上部隊の指揮を円滑にすることができるのではないだろうか? という発想が生まれた。もっとも技術的なハードルは高く、実現したのは1980年代末になってからである。

理由は簡単で、地上を移動する物体の速度の遅さがすべての原因だった。レーダーは電磁波の反射をとらえて目標の方位と距離を測るが、それを空中から地上に向ければ、関係のない地上や建物などから反射した電波(グラウンドクラッタ)も拾ってしまう。高速で移動する物体であれば、これらのノイズの中から移動しているものを選別することは容易なのだが、地上車両はせいぜい時速50km前後、どんなに速くても100kmは超えない。つまりノイズの中に埋没してしまう。これらの雑多な情報から必要な情報を切り分けるためには、特定範囲を精細に計測する解像度(分解能)の高いレーダーが必要だった。この問題をクリアするため航空機に搭載可能な合成開口レーダーの実用化を待つ必要があった。

通常レーダーとは電磁波の反射により測距する。目標をどれだけとらえるか、高解像度(分解能)をあげるためにはできるかぎり高い波長の周波数とアンテナの大きさが必要になる。(レーダーの性能の一つであるビームの指向性だが、これはλ(波長)/D(アンテナ直径)によってビーム指向性が求められる。極端に言えば波長が短ければ短いほど、アンテナが大きければ大きいほどよい。マイクロ波(cm単位)よりミリ波(mm単位)レーダーがより分解能を上げることができる。極端なことを言えば人間の目が高解像度なのも光の波長をとらえているから、ということになる。ただし波長が短ければ短くなるほど(つまり周波数が高くなればなるほど)、大気などで減衰しやすい。)

では遠距離からより精密に分解能を上げるためにはどうしたらよいのか。その答えが合成開口レーダーである。つまり移動しながら計測したい範囲に対して収束したマイクロ波を向けて送受信することで見た目上のアンテナ(開口)を広げてしまえばいいということで原理は簡単だが、実現には高いハードルがあった。移動しながら送受信をして、なおかつそのズレ(位相)を把握する必要がある。地表に設置された場合や移動軌道がはっきりしている衛星の地上観測用であればまだしも航空機に搭載するためには正確な航法装置と高速で大量のデータを処理できるだけのコンピュータが必要だった。またノイズの除去にもコンピューターの能力が必要になる。

つまりこれだけの設備を航空機に搭載できるまで時間を必要としたのである。

1980年代に入って実現に目途がついたこともあり、米空軍・陸軍共同の計画としてスタートした。Joint Surveillance and Target Attack Radar System = 統合警戒・目標攻撃レーダーシステムという味もそっけもないが頭文字をつなげるとJ-STARSという名前になるのもアメリカ軍お得意の語呂合わせというところだろう。

初飛行は1988年。中古のB-707(アメリカ空軍のAWACS E-3セントリーやE-6、はてはエアフォース・ワンにのベース機体としても有名)をベースに必要な機材を積み込んで初飛行に成功。試験を重ねていたところに湾岸戦争が勃発。あわてて当時の2機を送り込んだ。

砂漠地帯ということもあり彼我の陸上車両部隊の移動パターンを追跡しやすく、合成開口レーダーではなくビームを絞ったドップラーレーダー・モードにすることで特定目標を追跡しやすくすることも容易だったらしい。かなりの高い評価を得た(なんでも車両のタイプまで判別したという)。

現在、E-8Cに搭載されているAN/APY-7レーダーは地上移動目標モード(GTMI)、固定ターゲットモード(FTI)、合成開口レーダー・モード(SAR)の三つの機能を備え、それぞれ状況に応じて使い分けているとされている。

もっともレーダーでとらえた情報をいかにして地上部隊に伝達するのか、という点においては課題を残したと見えて、2000年代のRMAなどC4Iの向上を促す原因にもなったという。最新のE-8Cはこれらの情報をデータリンクで地上部隊に転送する能力を備える。

現有機体は17機。最初の2機がE-8Aとされ、新型機の開発が計画されたがキャンセル。中古のB-707をベースに搭載機材をアップデートしたE-8C(と、既存のE-8AがE-8C相当へと改造されたもの)がある。湾岸戦争以降、アメリカ軍が参加した戦闘のほとんどに参加。アフガニスタンでも警戒にあたっているが、目標が車両ではなく人間であるということもあって課題を残している。

後継機

米空軍は後継機としてE-10Aの開発を進めていたがこれは2007年にキャンセルされた。これを受けてE-8Cのエンジンを交換する計画を立てたが、これも2012年に白紙化。2015年度よりE-8Cのミッション機器をより小型の機体に移植、あるいは新システムを開発する、JSTARS RECAP(Recapitlization:再構築)計画を開始している。JSTARS RECAPではボーイング、ロッキード、ノースロップが主導する3チームが参加している。[2]

その他

1991年の湾岸戦争当時、水平距離で100キロメートルも離れた地点の上空から地上を見張ることができる航空機はこのE-8だけだった。その後「合成開口レーダー」の技術が航空機用の比較的軽量なシステムにも応用されるようになり、E-8のような大型機でなくても遠距離からの地上監視が行えるようになっている。例えば英空軍ではカナダ製の双発ビジネスジェットにAESAレーダーを搭載した対地偵察機「センチネル」を開発し、これを5機保有している。高度1万5000メートルを飛べば、水平に160キロメートルも離れた場所にいる敵歩兵の動きを探知できる。[3]

関連動画

関連項目

  • 軍事
  • 軍用機の一覧
  • AWACS

脚注

  1. *「戦場の未来 兵器は戦争をいかに制するか」ジョージ・フリードマン レディス・フリードマン 関根一彦:訳 徳間書店 1997 p.133
  2. *「E-8CジョイントSTARSとJSTARS RECAP」石川潤一 航空ファン2018年2月号
  3. *「兵頭二十八の防衛白書 2016」兵頭二十八 草思社 2016 p.322

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
大和(艦これ)[単語]

提供: カミカゼ

もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2026/01/10(土) 22:00

ほめられた記事

最終更新:2026/01/10(土) 21:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP