Rust(プログラミング言語)

Rustとは、メモリ安全性^[1]や並列処理の安全性に注目して開発されたプログラミング言語である。

概要

速度、安全性、並行性が特徴のプログラミング言語である。C++と遜色ない実行速度を誇り、GCがないにも関わらず手動のメモリ管理は不要で、しかもメモリ安全である。また、並列処理に起因するバグをコンパイル時に検出することができる。

構文はCライクであるが、型を後置したりする。また"fn" "Vec"のようにキーワードや識別子の省略を多用するのが特徴^[2]。関数型言語の影響を受けて代数形やタプル、高階関数、型クラス（トレイト）などをサポートしており、関数型っぽいパラダイムでのプログラミングも可能ではあるが、関数型プログラミング言語を目指して開発されてはいない。

コンパイラが親切なのもRustの特徴である。分かりやすいメッセージで、問題のあるコード部分に下線を引いて注釈を入れ、時には正しいコードを示してくれたりもする。また、言語仕様や標準ライブラリは最初の安定版リリース以降後方互換を保っている。すなわち、処理系のバージョンが上がっても昔のコードが壊れることはないのだ。

入門者にとって厳しい言語であることで有名である。自動メモリ管理のための機構である「所有権(Ownership)」の概念を把握できていないと頻繁にコンパイルエラーに遭遇し、しかも意味がわからないのである。基本的にRustコンパイラのエラーメッセージは親切でわかりやすいのだが、所有権周りは理解しがたいエラーが出やすい。
ある程度習得できていればひと目見て解決できる問題であったりする場合が多く、所有権を理解しないまま何時間も試行錯誤するのは時間の無駄である。早めにRustユーザに質問したりして、エラーの原因を理解することを勧める。また、ドキュメントやサンプルも眺めておこう。

歴史

2006年頃からMozilla社員であるGraydon Hoareの趣味として開発が始まった。2009年にMozillaによる支援が開始され、現在まで続いている。2010年にOCamlからセルフホスト(コンパイラがコンパイルする言語自身で書かれていること)に移行した。

月日は流れ、2015年に初の安定版であるRust1.0がリリースされた。これほどまでに時間が掛かったのは、前述した後方互換性を保つため、1.0リリース時に存在したAPIや機能を削除したり大きく変更したりできない為である。以降は6週間毎に安定版のマイナーバージョンが上がる列車方式のリリースが行われている。

Firefox 48以降で徐々にコンポーネント単位でRustに移行している他、次世代ブラウザエンジンであるServoの開発にも用いられている。Mozillaの外では、DropboxやnpmがWebサービスのバックエンドに用いている他、ドワンゴも分散型ファイルシステムの開発にRustを用いているという。

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関連項目

• プログラミング言語
• Mozilla
• Firefox

脚注

1. *メモリ安全とは、メモリの扱いに起因するバグが発生しない性質のこと。nullポインタによる実行時エラーやセグメンテーション違反、バッファーオーバーフロー、ダングリングポインタの発生、free漏れなどといった問題が起こらない。
2. *キーワードを5文字以内に揃えるという規則がかつては存在したらしい。