ザクI(MS-05 ZAKU I)とは、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するジオン公国軍の機動兵器モビルスーツである。通称は「旧ザク」。作中では形式番号から「05(ゼロゴー)」と呼称される事もある。
概要
宇宙世紀0071年、ジオン軍は来るべき地球連邦との戦争に備え、ジオニック社、ツィマッド社、MIP社に新兵器の開発を命令。競合の途中でMIP社は特殊環境向けの兵器開発を担う事になり、ジオニック社とツィマッド社の一騎打ちとなる。
ジオニック社はモビルスーツの原型となる汎用民生重作業機を設計・製造した実績があり、そのノウハウを活かして汎用性に長けた人型兵器の開発に着手。その結果、「MS-05 ザク」が誕生した。対するツィマッド社は高性能を追求した「YMS-05 ヅダ」を開発。主力兵器の座を賭け、両機体は数々のテストを行った。
パワーもスピードもヅダの方が上で、性能では確実に劣勢だった。一部の軍幹部からは「ヅダ勝利」の声が上がり始め、一時は敗色濃厚に陥る。しかし、ここで思わぬ事態が起きる。ヅダが飛行試験中に爆発事故を起こしたのである。この事故に加え、ヅダの生産コストがザクの1.8倍になる事が問題視され、軍は汎用性に長けたザクを採用。逆転勝利を飾った。ツィマッド社のテストパイロットだったジャン・リュック・デュバル少佐は「(採用を得るために)ジオニック社が汚い手を使った」と主張しているが、詳細は不明。
宇宙世紀0074年2月、試作機が完成。7月に量産化が決定し、8月に記念すべき一号機が完成した。そしてジオン軍はザク27機で教導大隊を編成し、実戦投入に向けて様々な研究を行った。ジオンの不審な動きを察知した連邦軍が探りを入れてきたが、サイド3は月の裏側にあって目が届きにくい事、ジオニック社が流した「教育用ロボットを開発している」という偽情報を真に受けた事により、恐るべき兵器が産声を上げているのに見過ごしてしまった。教導大隊による運用実績や研究によって得られたデータを参考に、決定版となる改良型のMS-05Bが量産体制に入った。
漫画『ガンダムレガシー』では、宇宙世紀0078年7月に革命勢力への援助という名目でサイド6にザクの小隊を派遣。これがMS初の公式実戦記録だった。パイロットのガデム曰く「銃を向けただけで勝手に降参した」との事。サイド3コロニーキンツェムで反ザビ家勢力が蜂起し、大使館を占領した時にも出動。通常兵器ではザクに歯が立たず、たやすく鎮圧されている。
ジオン軍にMSのノウハウを授けたザクであったが、同時に欠点も露呈し始めた。まずミノフスキー・イヨネスコ型核反応炉から生じる熱を逃がす技術が未熟で、稼働時間に制約がついて回った。また白兵戦能力も低かったため、これも今後の課題とされた。その後、これらの欠点を改善した後継機であるザクⅡが宇宙世紀0077年に開発され、ザクの生産はストップした。ザクⅡとの見た目の違いは動力パイプが露出してない、モノアイレールの中央に仕切りがある、右肩のシールドがない、左肩の肩アーマーにスパイクがない、など。ザクⅡが普及する以前はランバ・ラルや黒い三連星といったエースパイロットも愛用していた。
0079年1月3日、一年戦争開戦。既に一定数以上のザクⅡが量産されていたので、その地位をザクⅡに取って代わられた。本来は「ザク」と言えばこのザクIを指すのだが、前述の通り兵器としてはザクⅡの方が流通したためザクIは通称「旧ザク」と呼ばれる事が多い。とはいえ劈頭のブリティッシュ作戦やルウム戦役ではザクⅡの不足を補うために相当数のザクⅠが投入され、連邦宇宙軍に壊滅的打撃を与える事に成功。続く地球降下作戦では他の兵器ともども大地に降り立ち、補給部隊などの後方部隊や特殊工作部隊、あるいは作業用機体として運用され、戦線を維持する一助となった。物資集積所の警備、船に乗せて通商破壊、占領地域の治安維持、発着する艦の誘導など、旧式と言えどモビルスーツ不足の地域では引く手数多であった。一部の機体は最前線で連邦軍と干戈を交えていた様子。
ザクⅠに愛着を持つパイロットは多く、ザクⅡが充足した後も使い続けたいという声があったため、更なる改良を加えたMS-05Q(通称Q型)が162機以上生産された。主なパイロットは地球に降下する前のノリス・パッカード大佐。戦争末期のア・バオア・クー攻防戦でもベテランパイロットがザクⅠを好んで使い、投入された模様。OVA「MS IGLOO」では黒色に塗装したザクⅠが、着岸してきたジム2機をマシンガンで撃破するシーンがあり、寡兵のジオン軍にとってザクⅠも貴重な存在だった。ザクⅡより生産数は少なかったが、一年戦争終結後も生き残った機体がジオン残党軍に運用されている。
また、純粋なバリエーション機としてザクⅠスナイパータイプが存在している。これはザクⅠにゲルググ開発の際の試作型ビームスナイパーライフルと補助ジェネレーター搭載型ランドセル、右ひざに安定用ランディングギアの装備、頭部カメラをザク強行偵察型の物に換装し頭部バルカンの設置などのカスタムを施し狙撃型の支援機として特化させたものである。機動性は悪化したものの、類まれな火力と狙撃能力を備え、腕次第では相当な戦果を出せる機体となっている。
劇中の活躍
ファーストガンダム本編中では補給艦パプアの艦長ガデムが使用していた。卓越した操縦技術で、ガンダム相手にショルダータックルで喰らわせる活躍を見せたが、絶望的な性能差は覆せずビームサーベルで真っ二つに切り裂かれた。ちなみにファーストガンダムでは、ザクⅠはガデム機しか登場していない。
外伝OVA「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」ではオデッサから敗走してきたジオン兵トップが搭乗する機体として登場している。世にも珍しいブレードアンテナ付きである。食糧を求めてキキの村へとやってきた。最初は穏便に済ませようとしていたが、部下の暴走により村民ゲリラの反感を買って攻撃を受ける。シローの身を呈した攻撃により行動不能にさせられ、リンチへの恐怖からゲリラに対人兵器を使用。多くの村民を殺傷した。これに激昂したシローにコクピットへロケット砲を撃ち込まれ、撃破された。
ゲーム「ジオニックフロント」では、ガンダム6号機マドロックを撃退する大活躍を見せた。知る人は少ないが。
ファーストガンダム再構成作品「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」ではシャア・アズナブル仕様のMS-05も登場。後に立体化された際に「MS-05S」となっている。こちらは原典以上に急ピッチで開発されたMS-06用のパーツの試験評価を目的とした過渡期の機体で、武装や各部アーマーが06仕様になっている。また、黒い三連星仕様の同機も登場。同作以前に挿入されていたゲーム媒体でのムービー以外でも映像化している。
武装
- ZMP-47D 105mmザクマシンガン
銃身の右側に備え付けられた縦置き式ドラムマガジンが目に付く初期型ザクマシンガン。105mmザクマシンガンは本機特有の武装といえるが火力と弾数が不足しがちで、さらにマガジン交換が面倒であったため、ザクⅡでは改良された120mmザクマシンガンを採用している。『MS IGLOO』では物資不足からか105mmザクマシンガンを装備した黒色のザクⅠが出撃しており、ア・バオア・クー表面に取り付いたジム2機を一挙に撃破する戦果を挙げた。余談だが、ヒルドルブも近接防御用に装備している。
- M-120A1 120mmザクマシンガン
ザクの主兵装だが、ザクⅠも携行していた。ドラムマガジンを上部に移動し、換装を容易なものにしている。また口径が巨大化したため破壊力も向上。ザクⅠの主力武器である。
- ザクバズーカ
対艦用に設計された口径280mmのバズーカ砲。ルウム戦役では核弾頭を使用しており、マゼラン級を一撃で葬る威力を見せたが、南極条約締結後は核が使えなくなったため通常弾頭に変えている。
- Type3 ヒートホーク
ザクⅠ向けに製造された初期型ヒートホーク。対MS戦を想定していないため、対艦や対戦闘機用に使用される。刃部分は4~5回の使用で交換が必要になる。
- スパイク・シールド
ザクの盾に3本の打突用スパイクを付けた携行用の盾。元々はザクⅠの武装ではなかったが、0083にスパイク・シールドを付けたゲルググ・マリーネが登場した事でザクⅠの武装に含まれた。
- シュツルムファウスト
使い捨てのロケットランチャー。無誘導のため命中させるのは難しいものの、当たれば強力な威力を発揮した。ザクⅠに限らず、多くの機体が装備している。
- Sマイン
対人近接防御兵器。空に向けて発射し、小型の鉄球を周囲に降らせる。『第08MS小隊』でトップ機が使用、群がるゲリラを殲滅した。
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関連項目
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