タイマイ(玳瑁)とは、動物の一種である。
概要
ウミガメ科タイマイ属の動物。本種のみで属を構成している。英名は「hawksbill turtle」または「hawksbill sea turtle」、学名は「Eretmochelys imbricata」。和名の「タイマイ」は漢字で「玳瑁」と書き、中国語で「とても美しい」を意味する。また一説には「太曼儀」(タイマンイ、中国語で「とても美しい姿の亀」という意味)が訛って伝わったともされる。
分布域は熱帯・亜熱帯にあるインド洋・太平洋・大西洋のサンゴ礁。日本では沖縄本島以南の島々に生息している。日本はタイマイの生息域の北限にあたり、八重山諸島などで産卵が行われている。
甲長は70~90cm、体重は30~70kg。背甲の色は黄色と褐色の斑紋、腹甲の色は黄色。英名「hawksbill turtle」の由来になっている鋭いくちばしは、サンゴの「カイメン」をついばむことができる。
IUCNのレッドリストでは「絶滅寸前種(CR)」、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧IB類(EN)」に選定されている。1990年代までは食用・工芸品の材料用に乱獲されたことで激減したが、近年タイマイの個体数に大きな影響を与えているのは、生息地であるサンゴ礁の減少である。また砂浜の消失や護岸工事、リゾート施設からの騒音が、タイマイの上陸・産卵の大きな障害となっている。さらにタイマイの消化器からは大量のプラスチック片が見つかることもあり、対策としてプラスチック製使い捨て食器の提供を自粛・禁止する動きが年々広まっている。
鼈甲(べっこう)
タイマイの甲羅は、べっこう細工としてかんざしや櫛などに加工される。その歴史は古く、日本ではべっこう細工の施された琵琶や宝飾鏡が東大寺正倉院に収められている。現在はワシントン条約によって原料の輸入ができないため、禁止前に確保した在庫や余った端材でべっこう細工が作られている。
その鮮やかな黄色い模様から、「べっこうあめ」の名前の由来にもなっている。
余談だが、「鼈甲」の「鼈」は「スッポン」を意味する漢字である。スッポンは獰猛で外敵に噛みつこうとするが、タイマイは大人しい性格であり、両者は全くの別物だ。ではなぜタイマイの甲羅が「鼈甲」と呼ばれるようになったのかというと、江戸時代の倹約令でべっこう細工の櫛・かんざしが禁止された際、「これはタイマイではなくスッポンの甲羅(鼈甲)でできたもの」という言い逃れが広まったからだとか。
潜水艦
アメリカ海軍のバラオ級潜水艦、SS-366ホークビルはこのウミガメにちなんで名付けられた。“Hawksbill”ではなく“Hawkbill”なのは就役時の綴り間違いによるものとされる。ホークビルは対日戦で戦果をあげ、この艦名は戦後の原子力潜水艦SSN-666へと(スペルミスもそのままに)受け継がれた。
関連動画
関連項目
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