バーチャロンとは、セガの開発したロボット対戦アクションゲーム「電脳戦機バーチャロン」シリーズの総称である。
愛称は『チャロン』。
本項ではそれらを総合的に扱う。
概要
初作はアーケード用に開発された、3次元ロボット対戦アクションシューティングゲームであり、以後のシリーズもこれに範をとった形で製作されている。
本シリーズ第1作登場直前、1995年のゲームセンターでは、『バーチャファイター2』(セガ1994年)・『鉄拳2』(ナムコ1995年)など3D対戦格闘ゲームが流行していた。これらは3D表現されてはいたが、自キャラと敵キャラを結ぶライン上での2次元的な攻防を原則とするもので、このラインから外れる方向への移動はほとんどできず、(当時氾濫していた)2D対戦格闘ゲームの延長線上にあるゲームだった。
他方、『サイバーコマンド』(ナムコ1994年)のように3Dを活用した対戦型ファースト/サードパーソン・シューティングゲームも出てきていた。しかしこれは移動が自由である一方で、見失った敵機を簡単に捕捉しなおす方法がなかった。加えてステージが広く遮蔽物が多いことも手伝って、その対戦はいかに相手の視界・射界に入らずに敵機を自分の射界に入れるかを争うという、FPSとしては当然だが当時のアーケードゲームとしては斬新でわかりにくいものだった。
そのような中登場した『電脳戦機バーチャロン』は、基本的には自機後方視点のサードパーソン・シューティングゲームであるが、
- 「自機をジャンプさせれば敵機の方向に向き直る」「ダッシュ攻撃をさせれば敵機の方向に回頭する」など、視点移動を伴うアクションで画面外にいる敵機を簡単に再捕捉できる。
- 自機を視認できるうえに弾の速度が遅いため、相手の射撃を移動やジャンプ等で回避することが容易である。逆に攻撃を当てるためには相手に接近する必要がある。
という特徴をもっていた。その結果対戦の内容は、互いに相手を(勿論自機も)画面内に捉え続け、遮蔽物に隠れる必要もなく相手に接近し、攻撃を避けては撃ちまくる(さらには近接攻撃をする)という3D対戦格闘ゲームや2Dシューティングゲームに近いものになった。
こうしたことから、『バーチャロン』はそうしたゲームに慣れた(そして飽きてきていた)アーケードゲーマー達に、新鮮でありながら親しみやすい対戦アクションゲームとして受け容れられ、また一方では、(フィクショナルなアニメなどに登場する類の)ロボット愛好家を中心に大きな支持を得た。
アーケードで展開されたシリーズなので、対人対戦プレイをメインにしてプレイできることもあり、対戦ゲームとして楽しむプレイヤーを中心に根強い支持を受けている。
また、シリーズタイトルごとに毛色がかなり異なり(ゲームスピード、対戦人数等)、タイトル毎に異なる層のファンがついているのも特徴。どのタイトルも同じ操作ながら違ったやりこみ要素が存在してどれも奥深い。
メカデザインはシリーズを通してカトキハジメが手掛けており、ゲーム内容とは独立してメカデザインや背景設定等に魅力を感じるユーザーも存在する。
シリーズ
電脳戦機バーチャロン
登場:1995年末
略称:OMG、O.M.G
機種:アーケード、セガサターン、Windows、PS2、ケータイアプリ、
. PSN、XBOX360(Xbox Live Arcade)
シリーズの基礎を作ったタイトル。1on1の対戦ゲーム。セガサターンでは本作専用に近いコントローラーとして「ツインスティック」が発売された。
荒削りながら「相手を追い詰め、隙を狙って攻撃を当てる」という詰め将棋的な駆け引きと当時の3D作品屈指の操作性とスピード感が最も活きたゲーム性が高く評価された。
一躍流行となり、本作に牽引されるようにコピーまがいの作品が乱立されながら、ゲーム業界全体で「ロボットアクション」というジャンルが洗練されてゆくこととなる。その先鋒を担った歴史的作品。
電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム
登場:1998年3月
略称:オラタン、VOOT、OT
機種:アーケード、ドリームキャスト、Xbox360(Xbox Live Arcade)
OMG同様1on1の対戦ゲーム。2000 EDITIONという準メジャーバージョンアップ作もある。
CG技術、スピード感の大幅な向上により、1on1の高速ロボットバトルとしては本作を愛好するプレイヤーも多く、10年以上前のゲームなのにも関わらずいまだ筐体を置いているゲームセンターも見かける事が出来る。
人間の反射神経・判断力の限界に挑んだとも称される群を抜くスピード感による撃ち合いに特化した作品。
読み合い、詰め将棋的要素が最大化され、コアなゲーマーを囲い込む反面、高すぎる機体性能を活かしきるまもなく脱落するライト層も多かった。
高まった機体性能を水準レベルで活かせるプレイヤーならば機体性能の格差もステージとの相性で丸くなるなど常に白熱した戦いが繰り広げられる珠玉の対戦ツールに化ける。
電脳戦機バーチャロン フォース
登場:2001年10月
略称:フォース、VO4
機種:アーケード、Xbox360(パッケージ販売)
2on2のチーム対戦形式を取った作品。カードによるプレイヤーデータ保存を軸にしたサービスも特徴。4人対戦用の大型筐体と、カード更新用筐体のセットで提供される。
本作の成功を通じて、プレイヤーデータをカードに保存すると言うシステムが一般的になった。
ゲームとしては、あえてそれまでのシリーズにあったスピード感を落として、4人同時対戦を主眼として設計されている。
が、ゲーム性そのものが大きく変貌、特に爽快感の要であったゲームスピードが落ちたことは賛否両論ある。(特にオラタン愛好者の中には、VO4が馴染まない人も多かった)
1対1の読み合いの要素をそのままに仲間との連携という要素で詰め将棋的要素を打ち砕き、広い層に楽しめるようになった。
バリエーション機も含めて、膨大な機体数が存在する。カードの戦績によって新たな機体カラーや新たな機体を支給されて乗り換えることが出来、基本的に派生型などは支給で手に入れることになる。(現在の搭乗機と交換方式)
電脳戦機バーチャロンマーズ
登場:2003年5月
略称:MARZ、マーズ、マズー
機種:PS2、PS2アーカイブス
家庭用コンソール向け作品。一人用アクションゲームをメインとする。(対戦ゲームのモードも搭載)。
一人用のゲームシステムを念頭仕上がっているものの、参戦機体のチョイスが微妙かつ偏りが大きく、どの機体よりも主人公機である「747テムジンJ」が優秀で、これでなければ一人用ミッションの攻略が困難になるゲームバランス、VO4を踏襲していても対戦モード以外の複数人プレイが不可能等、全体的に低クオリティが指摘されている。
とはいえ、それまで紙面上の設定に過ぎなかったハッター軍曹や白虹騎士等の人物が登場する、ゲーム内のストーリーも世界観に基づいたものであり、ファンアイテムとしての価値は高い。また、永遠の17歳が演じたタングラムが異様にエロい。
派生:スーパーロボット大戦 参戦
「MARZ」自体の評価は低いものの、ロボットものの王道を行くシナリオや独特の台詞回しによってVRとそのパイロット(顔は出ず、VRの頭部グラフィックで代用される)に独特の魅力がある作品であるからか、ロボゲーの最高峰シリーズ、スーパーロボット大戦へお呼びが掛かる。
「第三次スーパーロボット大戦α」には本作よりゲスト出演があり、主人公であるMARZのテムジンにはそちらで声がついた。
「スーパーロボット大戦K」においては携帯機ながらシナリオも設けられており、バーチャロン部分だけは高評価。
どちらも異様に再現度が高いアクションを見せていた事でも有名。それもそのはず、実はプロデューサー瓦氏を中心としたバーチャロンチームが監修に付いていたのだ。スパロボチームがチャロン好きなのは推して知るべし。
ついにはSEGA×VOCALOIDのコラボで生まれたキャラクターが「スーパーロボット大戦UX」にまんま参戦するニュースに大いに沸いた。 → 詳細は「フェイ・イェンHD」にて。
派生:とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)
小説版刊行:2016年5月10日 全1巻
ゲーム版登場:2018年2月15日(体験版配信は17年12月14日)
ゲーム版機種:PS4、PlayStation vita
人気ライトノベル「とある魔術の禁書目録」とのコラボ作品であり、「とある」側の作者・鎌池和馬自らが執筆した、「とある」側の世界観をベースに「バーチャロン」を組み込んだ異色コラボタイトルの外伝ストーリー。双方の世界観ががっちりと絡み合い、濃密なクロスオーバーを果たした作品。
作中ではポイント加点制の独自レギュレーションを取っており、原作のエッセンスそのままに独自の戦略・駆け引きが描かれることとなった。
2017年3月12日、本コラボタイトルの単独ゲーム化が告知された。
コラボタイトルとはいえ、バーチャロン側からすれば「マーズ」以来、実に15年越しの久々の新規作品である。
シリーズの経歴と再生
このシリーズを語る上で外せないのは、本シリーズは『消滅するはずだった作品』というエピソードである。
まず「初代」は『3Dという表現を活かしたロボットアクションゲーム』の企画を持ち込む若手に反面教師的な教訓を与えるべく通した企画が発端。
当時はいわいるロボゲーに良い印象が無く(ガンダムやトランスフォーマーをモチーフとした粗製乱造キャラゲーの失敗もその背景にある)、開発中に上層部からのいやがらせが少なからずあったとかなかったとか。
だがツインスティックという斬新かつロボット作品の心を打つ操作系とガンダム・センチネルの縁でメカニックデザイナーにカトキハジメを迎え入れるなど、作り上げられたものはまさに未来を生きるSEGAらしい3Dアクションを象徴する高いクオリティの作品であり、小さな社会現象というレベルまで人気を博した。
が、期待された続編である「オラタン」はあまりに高度化したテクニックに対戦人口が減少して過疎化、逆に「VO4」はゲームの魅力が知れ渡り、人気が出る前にSEGA側が販路の見切りを付けてしまっていた等、どちらもゲームの完成度ではなく、ビジネスやマーケティングとして敗北した作品でもあった。SEGAではいつもの事ですな。
無理矢理PS2の開発環境を押し付けられたこともあって「MARZ」も低評価の末に惨敗。『バーチャロンは売れない』という意識をSEGA内に植え付ける結果となってしまった。
その中で本作の失敗や成功は現実的なゲーム開発現場に起こる様々なノウハウを与えた事は多くのスタッフによって語られている。例えば「ボーダーブレイク」はバーチャロンチームの助言や反省点が活かされ、大成したことは有名であるが、それは別の話。
シリーズ作品は殆ど音沙汰なしの状況。スーパーロボット大戦シリーズへの参戦など、嬉しい一報があるものの、このまま時代の波の中に消え去ると思われていた本シリーズであるが、2009年に転機が訪れる。
SEGA社内のとあるプログラマーが、終業後に趣味の範疇で手を加えていた『電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム』がXBOXに移植可能の完成度に達したという一報。
「出来たなら出そう」ということで、Xbox Live Arcadeとして流通する事が決定するも、宣伝費≒売り上げ本数というこのご時勢で宣伝費の支援一切無し(0円)という嘘のような体勢からスタートした。
だが、隠れた名作として潜在していた需要がこの一報で文字通り爆発。ドリームキャスト当時は不可能であった理想的な対戦環境もあいまってその年のダウンロードランキング1位に輝くこととなった。
この結果から本シリーズは再起。
HOLIから完全受注生産ながらもツインスティックが販売されることに端を発し、『電脳戦機バーチャロン フォース』 のXBOX移植...
貴重な世界観を示す小説である『電脳戦機バーチャロン・オフィシャルストーリー#2.42『One-Man Rescue』』の販売....
MODEL2基盤復刻シリーズに『電脳戦機バーチャロン』が名を連ねる(これも暴走プログラマーによる計略があったりなかったり)など、メジャータイトルとは行かないまでも徐々に規模を拡大させつつあるとのこと。
そしてコラボタイトルながら、2018年に15年ぶりの新作タイトルとして『とある魔術の電脳戦機』のゲーム化が決定した。
『もし、利益の出るコンテンツである事を証明できれば……』 と歯切れが悪いながらも汚名払拭を目標に、慎重で小規模な体制であるが本シリーズは尚も続いている。
関連動画
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関連コミュニティ
関連項目
- 電脳戦機バーチャロン
- 電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム
- 電脳戦機バーチャロン フォース
- 電脳戦機バーチャロンマーズ
- とある魔術の電脳戦機 / とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)
- セガ
- バーチャロイド : 登場ロボット(バーチャロイド)の一覧
- 電脳戦機バーチャロン・オフィシャルストーリー#2.42『One-Man Rescue』
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