ヒ素とは、古くから暗殺に使われた元素である。漢字では「砒素」だが、常用漢字外のためカタカナで表記される。
概要
- 原子番号は、33、元素記号は、“As”、分類は、半金属。
- ギリシア語の「黄色色素、強く毒を作用する(arsenikon)」に由来する。
- 発見:13世紀、硫化ヒ素を石鹸と熱して単離した。
- 利用例:ガリウム-ヒ素、インジウム-ヒ素などの半導体材料、携帯電話、発光ダイオードなど
毒性
かなり昔から毒物として知られていた存在であり、その毒性から農薬や殺鼠剤、また殺菌力から防腐剤としても使われてきた歴史があり、決して危険なだけの代物ではなかった。現代においても、発光ダイオードや半導体の材料としてヒ素化合物が使われている。よいこは半導体を食べたりしないように。
その強烈な毒性から古来暗殺に使われてきた毒素であり、近年でも1998年の和歌山ヒ素入りカレー事件などが記憶に新しい。一方で、人体に多く残留することから検出が容易(死因を特定しやすい)で、毒殺が明らかになってしまうことから「愚か者の毒」という別名も持っていた。
ヒ素は主に地中から鉱脈として産出されるもので、このため自然界にはヒ素の鉱脈は割と色々なところに広がっている。中には地中のヒ素鉱脈によって汚染された地下水や河川もあり、これによるヒ素中毒も後を絶たない。その最たるものとして有名なのがかの恐山であり、硫砒鉄鉱(ヒ素と鉄の硫化鉱物。通称、毒砂)が普通に転がっているというオソロシイ場所である。恐山は世界でも有数の金鉱脈であるともわかっているのだが、膨大なヒ素の存在が(普通に採掘が危険という意味と、金を取り出す際に気化したヒ素が生成されてそれが有機ヒ素になってヤバいという意味で)金鉱としての恐山の開発を無理ゲーとさせている。恐山の霊場信仰は、この普通に転がっているヒ素を始めとした猛毒物質による健康被害を科学の進んでいない時代に人間が霊場として解釈した結果なのかもしれない。
生物とヒ素
日常ではあまり摂取しなくても問題はないが必須元素である。しかし猛毒であり、急性毒性としては下痢や腹痛を起こす。また慢性症状としては皮膚ガンになったりすることが確認されている。
ヒトの食物になる一部の生物はヒ素を含んでおり、ひじきや牡蠣などはその割合が多いという。このため、イギリスでは無機ヒ素が多いという理由から、ひじきの食用をすべきではないという勧告を出している。ただし現時点でこれらによるヒ素中毒は確認されておらず、また日本の公的機関では人体に悪影響が出るほどではないとの見解を出している。
ヒトだけでなく生命全般に毒性を持つとされるが、2010年にNASAの発表により細胞内のリンをヒ素に置換したとされる微生物が発見された。しかし、現在ではその微生物は増殖・生育にはヒ素は必須ではなく、ヒ素耐性菌であることが示されている。
関連動画
2010年にヒ素で生育・増殖する微生物が発見されたが、2012年現在では誤りでありヒ素耐性菌であることが示されている。
関連項目
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