ビクニンとは、魚類の一種である。引っこ抜かれて戦って食べられたりはしない。多くが深海に生息するが、ごく浅い場所で生活する種もいる。
概要
サケビクニン | |
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目 | スズキ目 |
科 | クサウオ科 |
学名 | Careproctus rastrinus |
英名 | Salmon snailfish |
ザラビクニン | |
目 | スズキ目 |
科 | クサウオ科 |
学名 | Careproctus trachysoma |
英名 | Rough snailfish |
スズキ目カジカ亜目[1]クサウオ科に属する多くの魚の総称であり、単にビクニン(学名:Liparis tessellatus)という種類の魚もいるが、コンニャクウオ属のサケビクニン(学名:Careproctus rastrinus)やザラビクニン(学名:Careproctus trachysoma)といった種類が有名。この2種は近縁種で、色以外にほとんど違いはないため、ここではその2種の共通点を記述する。
太ったオタマジャクシのような異様な体型をしており、まるで手のような胸鰭を地面につけて、逆立ちしたような態勢で海底を歩く。何ともよくわからない魚である。この胸鰭は感覚器官になっており、これで獲物を探し出して吸い込むようにして食べると言う。また腹鰭は吸盤に変化している。
ちなみに名前の由来は「比丘尼(びくに)」(頭部が坊主頭に見えることから)。英名はSnailfish(カタツムリ魚)で、恐らく動きが比較的緩慢な所と体型から来ていると思われる。
食用とされる種もあるにはあるが、多くは肉がぶよぶよしていてあまり美味しくないとのこと。
サケビクニンはオホーツク海に、ザラビクニンは日本海に分布している。サケビクニンは体長39cmに達する。
主なビクニンの仲間
クサウオ科に属していても名前にビクニンと入っていない種も多いので、それも取り扱う(クサウオの仲間・コンニャクウオの仲間と言うことの方が多い)。クサウオ科は日本に56種以上が分布している。標準和名ビクニンもそうだが、同じ底生性でもサケビクニンやザラビクニンとは印象が違うものも多い。多くが水深200m以深に生息する深海魚で、腹鰭が吸盤に変化している。
アクアマリンふくしまはメジャーな種から珍しい種・新種まで展示実績があり、研究も盛んなのでビクニン好きならぜひ行ってみたいところ。
ここでは目にする機会が多い種や、近年新種として記載され、報道された種を挙げる。
- Liparis tessellatus ビクニン
本家ビクニン。クサウオ属。体長30cmほどになる。サケビクニンやザラビクニンと比較してより比丘尼に似ているのはどちらなのだろうか? - L. tanakae クサウオ
通常体長35cm程。クサウオの名前の由来は「くさいうお」で、これは石川県加賀地方で「つまらない魚」の意味とのこと。学名のtanakaeは恐らくタナカゲンゲ(Lycodes tanakae)と同じく魚類学者の田中茂穂に由来するのではないか、と思われるがソース不明。ちなみに英名もTanaka's snailfishだったりする。日本では日本海側、太平洋側の両方や瀬戸内海でも見られる。成長した個体は水深100m程に生息。食用になる。 - L. ochotensis イサゴビクニン
体長40~80cm程になる大きな種。日本海、オホーツク海、ベーリング海西部などの主に水深50~200mに生息。クサウオやエゾクサウオ(L. agassizii)より皮膚が破れやすい。「イサゴ」は砂子と書き、体表に砂のような粒があることが名前の由来。特に韓国では食用になる。 - L. bikunin アマクサウオ
学名がbikuninなのに何故か和名はビクニンではない。かなり珍しい種で、1954年に新種として記載された後、2010年に採集された標本が2017年にこの種だと同定されるまで発見例がなかった[2]。 - L. punctatus スナビクニン
浅瀬に生息する小型種で、ダイビングで観察できる。かわいい。 - Careproctus rastrinus サケビクニン
- C. trachysoma ザラビクニン
上記参照。ビクニンと言えばこの2種だろう。ザラビクニンはサケビクニンより深い所にいる傾向がある。サケビクニン、ザラビクニンと後述のアオビクニン、トゲビクニンは氷期に海水面が下がり、それぞれの海域が孤立したことにより種分化したらしい[3]。 - C. pellucidus アオビクニン
サケビクニンやザラビクニンとよく似ている。最大体長21cm。北海道~東北地方の太平洋沿岸に分布。ザラビクニンより浅い場所に生息している。 - C. acanthodes トゲビクニン
こちらもサケビクニン、ザラビクニン、アオビクニンと似ているが最大体長10cmの小型種。ザラビクニンと同じく日本海から確認されているが、生息場所が異なると考えられている。 - C. rausuensis タマコンニャクウオ
2007年に発見された種。まだ知床沖でしか見つかっていない。全長20cmほどでかわいい。こちらもアクアマリンふくしまで展示されている。 - C. surugaensis スルガビクニン
東海大学海洋学部水産学科の研究グループによって、駿河湾で採集され、2017年11月に新種として記載された種[4]。学名に「駿河」が入っている。 - C. zachirus ハゴロモコンニャクウオ
アクアマリンふくしまで展示・研究されており、2017年に標準和名が付けられた[5]。長い胸鰭が特徴。 - C. shigemii オトヒメコンニャクウオ
2020年2月に京都大学の甲斐嘉晃博士、中央水産研究所の柳本卓博士、アクアマリンふくしまの共同研究によってハゴロモコンニャクウオから分離された新種[6]。 - C. longidigidus ユウレイコンニャクウオ
2019年10月に甲斐嘉晃博士、アクアマリンふくしまの共同研究によって新種として記載された種[7]。胸鰭が細長く糸状なのが特徴。 - Elassodiscus nyctereutes モユククサウオ
2020年7月に甲斐嘉晃博士、アクアマリンふくしま、米国海洋大気局(NOAA)の共同研究によって新種として記載された種[8]。「モユク」はアイヌ語でタヌキのことで、種小名のnyctereutesもタヌキ属を意味している。本種が属するフウライクサウオ属は腹鰭の吸盤が退化して痕跡が見られるだけになっている。 - Paraliparis ruficometes オナガインキウオ
インキウオ属。東海大学海洋学部水産学科の研究グループによって、駿河湾で採集され、2018年8月に新種として記載された種[9]。「オナガ」の名の通り尾びれが長い。 - Paraliparis variabilidens ミツバインキウオ
インキウオ属。東海大学の研究グループによって、2016年11月に駿河湾で採集され、2019年5月に新種として記載された種[10]。和名は歯の形状に由来する。 - Paraliparis hokuto スルガノオニビ
インキウオ属。東海大学の研究グループによって、駿河湾で採集され、2019年11月に新種として記載された種[11]。和名は駿河湾と鬼火から。 - Pseudoliparis amblystomopsis シンカイクサウオ
超深海に生息する種として有名。項目参照。 - Crystallichthys matsushimae アバチャン
スイショウウオ属。オジサン程ではないが、よく変な名前の魚として挙げられる。赤色斑円型と黄色虫食い状斑型という2つの異なる型がある[12]。長期飼育は難しい。
ネット上ではカイコウビクニンという名前が散見されるが、それが正式な和名に採用されている種は存在しない模様。
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関連項目
脚注
- *以前はカサゴ目カジカ亜目に分類されていたがカサゴ目自体が多系統だとされ、スズキ目に吸収された
- *甲斐 嘉晃, 野田 勉, 2017. 岩手県沿岸から得られた稀種アマクサウオLiparis bikuninの記録(J-STAGE)
- *小学館の図鑑Z 日本魚類館(中坊徹次、松沢陽士) p360
- *駿河湾で深海魚の新種を発見~クサウオ科の新種を「Careproctus surugaensis(標準和名:スルガビクニン)」と命名~|ニュース|学校法人東海大学
- *ハゴロモコンニャクウオ|生き物紹介|アクアマリンふくしま
- *深海を舞う新種の魚「オトヒメコンニャクウオ」公表のお知らせ|アクアマリンふくしま
- *新種の深海魚「ユウレイコンニャクウオ」公表のお知らせ|アクアマリンふくしま
- *新種「モユククサウオ」公表のお知らせ|アクアマリンふくしま
- *駿河湾で新種の深海魚「オナガインキウオ」を発見しました|東海大学
- *駿河湾で新種の深海魚「ミツバインキウオ」を発見しました|東海大学
- *駿河湾で新種の深海魚「スルガノオニビ」を発見しました|東海大学
- *小学館の図鑑Z 日本魚類館 p359
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