フィアット500( Fiat500 )とは、イタリアの自動車製造会社 フィアットが製造・販売する小型自動車である。
概要
500はイタリア語読みでチンクエチェント(Cinquecento)と呼び、日本国内では「ごひゃく」または「チンクエチェント」のどちらかで呼ばれている。時期によって仕様や外観が大きく異なる。
初代500 “トポリーノ”
初代の500は1935年に登場。小型であるが当時としては先進的な機構を数多く採用し、 ハツカネズミの意である「トポリーノ」の愛称で親しまれた。
トポリーノは当時の時点で世界最小の車の一つで元航空機技術者のアントニオ・フェッシアの手により開発され1955年まで生産されたサイクルカーである。
後継車種はリアに600ccのエンジンを搭載した600(セイチェント)である。
2代目500 “チンクエチェント”
NUOVA 500(新しい500)と呼ばれ、アントニオ・フェッシアの元でトポリーノの開発にも携わっていたダンテ・ジアコーサを主任技術者として開発され1957年に発売、以後1977年まで20年間の長期に渡り生産された。
トポリーノとは名称こそ同じものの、後継モデルではなく、設計コンセプトから異なる別系統車である。
小さく丸い親しみやすいデザイン、味わい深い空冷二気筒エンジン、超小型ながら5人乗り、安価といった多くの要素が相乗し、大ヒットとなった。だが特徴的な丸っこいデザインは鉄板を湾曲させる事で最低限の厚みで強度を確保する働きがあり、標準装備されたサンルーフはリアエンジンから車内に回る騒音を上へ逃がす機能を兼ねるなど、機能性と生産性に優れていた。
今でも世界中に愛好家がおり、特にイタリア本国では事実上「500保護法」とも取れる法律すら検討されており、文化遺産に指定する動きもある。
ルパン三世がカリオストロの城で乗っていた車もこれになる。作中ではスーパーチャージャーをはじめ過激とも言える改造が施され、垂直に近いガケを昇り森を突き抜けるなど大活躍をしている。この映画を見てこの車の購入を決意したオーナーは相当な数に上るという。だが実車のエンジンはかなり非力であり、上記のような事は間違っても出来ないばかりか、ただの坂道にも苦労するレベルである。
多くのイタリア人にとって特別な思い入れがある車である。販売当時の他車種と比べても非常に安価であり、中古車も溢れていたためかつては多くのイタリア人が最初に購入する車がこれであった。
パンツェッタ・ジローラモ氏もTV番組のインタビューで最初の一台と語っており、「自分の部屋は無かったし、イタリアにはラブホテルが無いので女の子とイチャイチャできる自分だけの部屋が出来た。でも座席が倒せなかったのですごく狭かった。」と述べていた。
フィアット126
2代目500の実質的な後継車種はフィアット126であるが、設計コンセプトやサイズは同じで居住性や走行性能等が改善されているもののスタイリングは500と比べ角張っているなど、外見上にも差異がある。
500程の人気は出ずにイタリアで1987年、ポーランドで2000年7月に生産終了する。
チンクエチェント
そのフィアット126の生産中止に伴う後継モデルとして開発されたのがこのチンクエチェントである。
1991年から1998年にかけて生産されたこのモデルは、ポーランドでの需要を見込んだフィアットがNuova500によってもたらされたイタリアのモータリゼーション、その再来をポーランドにも、という戦略のもと開発された。
名称は「500」ではなく、その呼び名の「チンクエチェント(Cinquecento)」をそのまま名称としているが、デザインは直線と張りのある面での構成となり、かつての初代500や新500とは異なるデザインとなっている。
この車はパンダの下を担うエントリーカーとして人気を博し、これをベース車として「チンクエチェント・トロフェオ」という名のラリー用競技車両も製作された。
1998年、プラットフォーム、コンポーネントをそのままでマイナーチェンジしたが、ボディサイズが若干拡大されセイチェントと名乗る事になった。
3代目500 (2007~)
三代目の500は2007年に新規開発され、現在生産されているモデルとなる。
同じく愛好家の多いVWのビートルやBMWのMINIといった車種同様、特徴的なフォルムを残しつつ現代の技術によってNUOVA 500がスタイリングし直され、生まれ変わったものである。ただしコスト削減などの理由からフィアット・パンダ(2代目)をベースにコンパチ車として開発され、フロントエンジンをはじめ多くの内部機構や部品を共有化させるなどした姉妹車となっている。
その丸っこいフォルムやイメージなどからMINIとは特に比較される事が多いが、スポーティーでハイパワーな「遊ぶ車」といった趣のMINI に対し、500はデイリーユースを想定した「大衆車」というコンセプトである。ただし元となったパンダに比べ4ドアが2ドアとなり、ラケッジルームの容量もだいぶ小さくなっている。
イタリアに多い石畳の上を走っても制御しやすくする為、日本製の乗用車と比べサスペンションや座席は固めでステアリングの遊びも少ない。
また、使用されているオートマチックトランスミッションは「デュアロジック」という方式で、マニュアルトランスミッションのギアチェンジを自動化した構造に近いため、クリープが無い事や変速時などに独特の挙動がある。
日本での発売は2008年で、日本発表会ではモンキー・パンチがサプライズゲストとして招待された。さらに新作アニメ「ルパン三世 GREEN vs RED」のPVが公開され、その中で赤いジャケットを着たルパン三世がバニライエローの新型500に乗っている姿が映し出された。(なお、バニライエローの500は通常ラインナップには存在しないが、2009年に1.2 8V POPグレードの特別色が日本限定版として150台が生産された)
2010年には専門のグループ会社が開発した新型の直列二気筒エンジン「Twin Air」搭載モデルが発表された。
排気量は875ccと普通車としては小型ながらインタークーラー付きターボによって高出力と同時に低燃費性を獲得しており、何より直列二気筒機構から発せられる旧型500に近い独特のエギゾーストが注目を浴びている。
モデル一覧
これら基本モデルにそれぞれPOP(オプション無しの通常仕様)、LOUNGE(アルミホイールなど各部にオプションを装備した上級仕様)が存在する。
※これらの他に限定色限定仕様のモデル、記念モデル、GUCCIやバービーなど他企業とのコラボレーションモデルなどが頻繁に発表されている。
関連動画
関連コミュニティ
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外部リンク
関連項目
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