プロメーテウスとは、
- ギリシア神話に登場するティターン、プロメーテウス。神から火を盗み人類に与えた。
- 土星の衛星、プロメテウス (衛星) (Saturn XVI Prometheus) 。
- 小惑星、プロメテウス (小惑星) (1809 Prometheus) 。
1.の概要
ギリシア語で「pro(先に)」+「metheus(考える者)」、すなわち「先見の明を持つ者」という意味を持つ。
また「prome(昇進)」+「theus(神)」とも解釈され、人類に火を与えて「神へと昇進させた者」という説も。
ティターン神族。ヘシオドスの『神統記』によればイーアペトスとクリュメネーの子。兄にアトラースとメノイティオス、弟にエピメーテウス。その他にも異説があり定かではない。
ギリシア神話においては、人と神を区別しようとする大神ゼウスに抵抗し、人に恩恵を与えようとする話が伝わっている。
人と神の取り分を決める役割を与えられたプロメーテウスは、大きな牛を殺して二つに分ける。そして食べられない皮で包んだ肉と内臓と、脂身を巻き付けた骨とをこしらえ、ゼウスに対して「どちらかを神の取り分とし、残るものを人の取り分とお決めください」と求めた。
プロメーテウスとしては人間に美味で栄養のある肉を与えようと考えていたが、ゼウスはその目論見を見抜いていた。そこであえて腐る事のない骨を選び、このため人間は死ねばすぐに腐ってなくなる短命の運命を与えられた。
これは人間が短命である理由を語る「バナナ型神話」の類型に数えられている。
プロメーテウスは寒さや自然の脅威から身を守る術のない人を哀れみ、彼らに火を与えるよう願った。しかしゼウスは「神の火を人に与えれば災いとなる」と、これを拒否する。
そこでプロメーテウスは太陽神ヘリオスの馬車の燃える車輪(鍛冶神ヘパイストスの炉とも)から火を盗んで人に与えた。これにより人は暖を取り、煮炊きをし、夜に火を灯して脅威から身を守れるようになった。火は文明や技術の発展に繋がった。しかしゼウスの言葉どおり、人は火によって武器を作る事を覚え、戦争するようになってしまった。
ゼウスは怒り、権力の神クラトス、暴力の神ビアーに命じてプロメーテウスを捕らえさせた。更にカウカーソス山の山頂に磔とし、生きながらに毎日肝臓を鷲についばませるという罰を与えた。
しかしプロメーテウスは不死の身であり、夜になると全ての傷は癒えて肝臓は再生する。かくして彼は終わりのない責め苦を与えられたが、3万年後にヘラクレスによって解放された。
この物語の続きとして知られるのが「パンドラの箱」だが、それは割愛。
またプロメーテウスは一つの予言をゼウスに与えた。
「ゼウスが海の女神・テティスと結婚すれば、父よりも優れた子が生まれる。かつてウラノスがクロノスに、クロノスがゼウスに追放されたように、ゼウスもまた追放される」
この予言を受け、好色に定評のあったゼウスはテティスを諦め、人の子に嫁がせる事を決めた。英雄ペーレウスに嫁がされたテティスが産むのが、後の大英雄・アキレウスである。
「原子爆弾」を表現する際に「プロメーテウスの火」という言い回しが使われる。これは「神が人に与えた叡智の象徴」と同時に「完全に制御できない神の火」という恐れが込められている。
メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』は、科学者の狂気、人造人間の恐怖と悲哀を描いた作品として名高い。この小説の正式なタイトルは『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』であり、「叡智を過信した結果の災い」として使用されている。
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