ギリシア神話とは、紀元前の古代ギリシアから伝わる神々・英雄の物語、すなわち「神話」の一つである。
神々の名前や立場を変更しながらも内容を踏襲したローマ神話と共に「ギリシア・ローマ神話」とも称される。これは独自の神話を持たない古代ローマ人が、ギリシア神話を基盤に自分たちの神話を構築したためである。
そういうわけで二つの神話にはいろいろ共通点があるので、気になった方はグーグル先生にお伺いを立ててみてください。
中世ヨーロッパにおいても学問として身につけることが多く、貴族階級や文化人にとってはキリスト教とは別に教養・芸術の題材として伝わっていた。
当時における占いの重要性から、占星術に使われる「黄道十二星座」を始めとした星座・天文にも大きく関わっており、動植物や鉱物など様々な存在や事象の名前の元になっている。
日本では小学校の図書室に入っていることも多く、神話の中では比較的手に取りやすい。
ニコニコにおいてはそれ以外にもこのタグが使われることがあるが、ここでは説話としてのギリシア神話について記述する。また当記事で挙げる神話が全てではなく、沢山のエピソードがあるので気になった方はグーグル先生にお伺いをt(ry
ギリシア神話は大きく「天地創造」「神々の時代」「英雄譚」の3つの体系に分かれる。
全部詳細に書くと、読む気も書く気も失せるほどの膨大な量になるので、当記事では軽く解説するに留めておく。気になった方はグーグル先生n(ry
天地創造
むかしむかしあるところに、混沌(カオス)という、色々なものが混ざり合ってドロドロしたものがありました。
そのドロドロの中から大地(ガイア)・奈落(タルタロス)・愛(エロス)・幽冥(エレボス)・夜(ニュクス)が出てきました。
そして大地の女神・ガイアから天の神・ウラノス、海の神・ポントス、さらに山々が産まれました。ウラノスは母体であったガイアの夫となりました。ここから既に近親相姦の予感。
夫婦は地上に降り立ち、木や花・鳥獣に加え三人の百腕巨人(ヘカトンケイル)、三人の一眼巨人(キュクロプス)、数多くの巨神(ティタン)を産みました。
ウラノス「そんなに産んで大丈夫か?(俺の身の安全的に)」
ガイア「大丈夫だ、問題ない(母体の健康状態的に)」
しかし心配性のウラノスは産んだ子供(怪物)たちを、全員奈落(タルタロス)に監禁。自分の子供を監禁されたガイアは当然ご立腹。ここでは紀元前8世紀の書物「神統記」を基にしているのでこれが史上初の夫婦喧嘩じゃないかとも思うが、真実は闇の中。
そこでガイアは監禁されていなかった末息子にして農耕の神・クロノスに「アダマスの鎌」と言われる鎌(金剛の斧や「てつのかま」だったとも)を渡し、ウラノスを滅ぼすよう依頼しました。
ちなみに「アダマスの鎌」はガイアの体内で生成された金属「アダマス」を原料としていて、アダマスはダイアモンドの語源にもなっています。
そして息子は父親のtntnを切り取るという形で、立派に依頼を達成したのでした。
なお切り落とされたtntnは海にポイっちょされましたが、そこから泡が生じて愛と美の女神・アフロディーテが生まれました。何でや。
しかし大事なものを切り取られてマジギレしたウラノスは、クロノスに「お前も自分の息子に殺される」と呪いの予言を遺してしまいました(神々が「アムブロシアー」や「ネクタール」を飲み食いして「不死」を得るのは、また全然別の話……)。
その後、クロノスは姉のレアと結婚。ヘスティア・デメテル・ヘラ・ハデス・ポセイドンの五兄弟姉妹をもうけますが、件の予言にビビっていたため子供たちを次々と自分の腹の中へ飲み込んでしまいます。
悲しんだレアは最後の息子・ゼウスをクレタ島にかくまい、夫には産着を着せた岩をゼウスだと言って飲み込ませました。気づけよ。
その後、立派に成長したゼウスは、まず手始めに兄弟姉妹を救出しようとします。そこで知恵の女神・メティスから「はちみつに辛子と塩を混ぜた何か」(嘔吐剤)をもらい、それを使ってクロノスに四柱を吐き出させました。
ここでクロノスはレアから産まれた時と逆の順番で子供を戻したのですが、その理由で五柱の出生順まで逆になってしまう不思議現象が発生。つまり長男だったハデスは三男坊に、長子のヘスティアは一番最後に吐き出されたため一気に末っ子になってしまったのです。ええ……。
そして序盤に登場したガイアおばあちゃんの助けにより、奈落から怪物たちを出してやった神々兄弟はクロノス父さんと「ティタノマキア」と呼ばれる全面戦争に突入。かの有名な「ポセイドンの三叉槍」はこの戦争に勝つためにキュクロプスたちに作ってもらった物です。ゼウスは稲妻と槍、ハデスは隠れ帽子を貰いました。
十年もの時をかけて戦い、軍配はゼウスたちに上がりました。やったね。
ゼウスは親父とその一派をタルタロス(奈落)に幽閉。ヘカトンケイルをその番人にしましたが、クロノスの味方であった巨人・アトラスには「天をその腕で一生支えてろ」と別の永久就職口を紹介しましたとさ(正義の女神・テミスや太陽神・へリオスのように名前や栄光を残したティタン神族もいるにはいるけどオリュンポスでの処遇は曖昧、レア母さん含めてぶっちゃけフェードアウト……)。
ちなみにティタノマキアでは、クロノス率いるティタン神族から半分裏切り半分スパイのような形で賢神・プロメテウスがゼウス側に寝返っています。しかしティタン神族の敵討ちをしようとしたり、人間に火を与えたことが露見。「岩山に括りつけられ、生きたまま肝臓をオオワシに喰われる刑(翌日になると元通り)」に刑期三万年で処されてしまいましたとさ。
神々の時代
「オリンピック」の語源になった「オリンピア山」(実在)にはギリシアの神々が住んでいた。
ここでは天界に住むでもなく地下かオリンピアで人のように暮らしている神々「オリュンポス十二神」を紹介するに留めておくので、詳しくはグーグル先生へ。
()内はローマ神話における別名。
ゼウス(ユーピテル)
「ゼウスの雷霆(らいてい)」という雷と槍を持つ淫m最高神。神々の王。天文では木星に対応している。
名前は「天空」を意味し、天を司り気象を操る。妻は姉(→妹)のヘラ。父は農耕の神・クロノス(土星に対応)で祖父は天の神・ウラノス(天王星に対応)だが、どちらも過去の存在扱いで忘れ去られている。
ゼウス主体の新しい秩序を構築したその後、ティタノマキアでは味方だったガイアおばあちゃんがこれを快く思わずに(先のあれやこれやが思いやられた?)放った刺客を、オリュンポス総出で捻り潰すという快挙を達成。
正妻との関係は良いとは言えず、種族は関係なく出会った女性をいろんなものに変身までして追いかけまわした後に孕ませるという行為を何十回も繰り返している。そんな夫を持った妻自身は「婚姻の女神」だったりするのだが……。
ヘラ(ユーノー)
クロノスとレアの三女(→長女)で、末弟(→長男)のゼウスの姉(→妹)にして正妻。神々の女王。
名前は「貴婦人」を意味し、結婚・貞節・婚姻を司った。かつては出産も司っていたが、それは娘のエイレイテュイアに譲っている。
夫・ゼウスとの出会いは実にロマンチック。ある雨の日、カッコウに変身したゼウスがヘラの服の裾に潜り込み雨宿りをした。……あれ、見ず知らずの女性の服に潜り込むって非常に紳士な行動ですね。
結婚してからは貞節を守り、夫以外の男と関係を持つことはなかった。しかし夫が夫だったのが運のつき。ゼウスの浮気性にキレたヘラはその被害者に怒りの矛先を向け、不倫相手とその子供や孫(更には巻き込まれた関係者)を徹底的に迫害という逆ギレ……おや、誰か来たようだ。また大蛇ピュートーン・百眼巨人アルゴス・女面獅子スフィンクスを配下に置き、迫害を手伝わせたり自由に人食いさせたりもしている。あんたは一体どこの魔王様な……うわ何をするやめ(ry
そんな彼女だが、春になると聖なる泉で沐浴して苛立ちや悩みを洗い流し、更に美しさを増す。この時ばかりはゼウスも浮気するどころではなく、魅力的な彼女と熱烈に愛し合うそうな。あらあらうふふ。
ポセイドン(ネプチューン)
紺黒の髪とたっぷりの髭をたくわえた神様ナンバー2。海王星に対応している。
ゼウスと王座を争った際、もう少しで勝てたという。なお現在の支配領域である海はくじ引きで決まった。
三つ又の鉾・トライデントで海と大地を操り、キレると大嵐を炸裂させる。
妻は海神・ネレウスの娘、アンピトリテ。彼女との間に生まれた子供が人魚・トリトンと巨人・アルビオン。トリトンはホラ貝を吹き鳴らして海の荒れを沈め、アルビオンは現英国の所在地であるブリテン島を発見した。
姉妹である穀物の神・デメテルとの間に神馬・アリオンを産んでいる。
何故馬なのかって?そりゃぁ……馬に変身した者同士が交配したらそうなるでしょ?(馬に変身してポセイドンから逃げていた彼女を自身も馬になって追いかけたという逸話付き)
もともと馬はデメテルの気を引くため、ポセイドンがキリンやらラクダやらを作り出した試行錯誤の結果なので、彼は「馬の神」とも呼ばれている。
怪物がらみでは後述するゴルゴン三姉妹(およびその血統)やミノタウロスの誕生のきっかけを作り、自身も海の怪物・ケートスを暴れさせて人身御供を要求したりしている。全くどこの魔(ry
ハデス(プルートー)
冥府の王。「富める者」という意味の「プルートーン」とも呼ばれることが多い(畏怖ゆえに直接名前を呼ぶことを避けられている)。冥王星に対応。
実はけっこう「いいひと」ならぬ「いいかみ」な性格。ティタノマキアでもゼウス側の一番槍として姿を消せる帽子(兜)で敵大将・クロノスに近付き武器を奪い取るという武勲を達成した……にも関わらず、その後の役職くじ引きで「冥府」を引いてしまい、オリンピアから死者の国(場所自体もハデスと呼ばれる。ちなみにタルタロスとはまた別の領域)に追いやられ十二神にもカウントされないという逆VIP待遇を受けてしまった(長男のままだったら、まだねえ……)。しかし本人(本神?)は特に不平をもらすことなく、真面目に死者統括に勤しむ暮らし。
ゼウスとデメテル(後述)の娘(ハデスには姪に当たる)・ペルセポネーに一目ぼれして妻にしようと考えるが、死者に囲まれ女を口説く事も知らない純朴さ故にどうしていいか解らないという、ちょっと可愛い所もある。しかし「YOUやっちゃいなよ、OKOK」と兄弟兼お義父さんのゼウスにけしかけられ、彼女を無理矢理拉致して冥府に連れ去るというダイナミック事案が発生。無理矢理妻に迎えたものの、当のペルセポネーは地上を恋しがって泣くばかり。当のハデスはおろおろしていた。
しかしお義母さんのデメテルには寝耳に水の話。怒った彼女は「豊穣の女神」の役職をストライキし、みるみるうちに大地は枯れ果てた(この時点で地上に動植物がいたとしたら、ギリシア神話定番のとばっちり惨事である)。困ったゼウスはハデスに「彼女を地上に返してあげてよ」と手のひら返しで要請。ハデスもそれを承認......しなかった。
ペルセポネーに「地上に帰れるって」と告げて安心させ、冥界の食べ物・ザクロを食べさせたのだ。
日本神話におけるイザナミのように「冥界の食べ物を食べたら地上には帰れない」というのが世界の秩序のようで、ペルセポネーもかくして正式に冥府ファミリーの一員となってしまった。しかし「一生帰れない」イザナミと違い、彼女の場合「一年の3分の1」だけの冥府住まいで済んだ様子。これで地上に四季(ペルセポネーが不在の間はデメテルもお休み)が生まれることになった。
ゼウスたちもこうなってはペルセポネーをハデスの妻と認めざるを得なくなったが、当のペルセポネーには不本意極まりない出来事である。彼女は夫を恨んでいたが、その夫がメンテというニンフと不倫した際は怒ってメンテを踏みつけにし、ご存じハーブの「ミント」に姿を変えてしまうなど、複雑な心境にあるようだ。ツンデレかな?
竪琴弾きのオルフェウスが死んだ妻を取り戻そうと冥府にやって来た時には、彼が披露した美しい歌と音楽に感動。ペルセポネーの取り成しもあって一度だけ夫婦で帰還のチャンスをやるという、ここでも「いいかみ」ぶりを発揮している。
アテナ(ミネルヴァ)
ゼウスと知恵の神・メティスの子。戦の知略・知恵・工芸・学芸の女神。フクロウがペット。
「メティスが産む子は親より強くなる」との予言に加え、かつてtntnを切り取った父クロノスから「お前は息子に殺される」とヘビーローテーション的に予言されていたため、ゼウスはメティスが孕んだと知った途端、クロノスがそうやったように彼女をまるっと飲み込んだ。解決方法を考える脳に乏しい。あと息子たちは他にも大勢いるんですがメティスが母でない限りノーカン?
しかし母体を飲み込んでも、その胎児はすくすく成長。そんなある日頭痛に悩むゼウスに後述する鍛治の神・ヘパイストスが一言。
「頭カチ割ったら治るんじゃね?」
神なんだからここは頭痛薬でも何でもこさえればいいのに、あまりに乱暴というか明らかにアウトな助言に従い(!)ゼウスはヘパイストスに頭を割ってもらった。すると、鎧兜をデフォルト装備した女神が雄叫びを上げながら飛び出してきたのである(あの、メティスは……)。
さすが一番良い装備を着けて誕生した戦いの神というだけあって、後述の軍神・アレスと喧嘩した際には一発K.O.し、ギガントマキアの際には自称・最強神のエンケラドスに圧勝。しかも負け逃げするエンケラドスに現イタリアのシチリア島をぶん投げ押し潰すというおまけつき。その他、同僚の神々とも色々と諍いを起こしている。
彼女の装備は鎧兜はもちろん、盾も一級品だった。アテナはゼウスから貰った「アイギス」という盾(胸当て・肩当てとも)を装備し、英雄ペルセウスから「助けてもらったお礼です」と頂いたメドゥーサの首をその盾にくっつけて「石化能力」を完備させている。ちなみにアテナはメドゥーサを金髪美女から蛇女にした張本人である(作り出した怪物が被害を出すと退治に手を貸し戦利品も得る、何てマッチポンプな顛末……)。
ヘパイストスにストーキングされたりケフィアの様な何かをくっつけられたりするほどモテた。ただ、アテナはそこまで男好きじゃなかった様子。と言うより処女神であり、そもそも恋愛ごとを忌み嫌う性格だった。
厳格そうに見える処女神だが、ヘパイストスがぶちまけたケフィア的な物をティッシュならぬ羊皮紙で拭き取り、地面に捨てた際に大地(ガイアおばあちゃん?)が孕んでしまい赤ん坊(エリクトニオス)が産まれてしまう。
流石のアテナも気の毒に思ったのか、自分の子として育てることにした。立派に成長した子供は父・ヘパイストスの元に修行に行かされるが、親父が鍛冶の神だけあってセンスは抜群でチャリオット(戦車)を開発した。
ギリシャの首都・アテナイの守護神であるためか話の上でも色々と優遇されている。アテナイの支配権を争って負けたポセイドンは泣いていい。
が、処女神と言ってもそこはやはり女。争いの女神エリスによる黄金のリンゴ(「最も美しき女神へ」というメッセージ付き)に引っかかり、ヘラやアフロディーテと争った結果、トロイア戦争の原因となってしまった。
アポロン(アポロ)
ゼウスと女神レトの息子でアルテミスの双子の兄(もしくは弟)。芸術・光明・予言の神で、後に太陽神ヘリオスからその役割を受け継いでいる。
シスコンでイケメン。ゼウスにもらった竪琴と、男性を即死させる銀(黄金とも)の弓矢を持ち、太陽を表す黄金の馬車で空を駆け巡る。彼のいる矢はどこまでも届き、疫病を蔓延させる事が可能。結構迷惑な気もする。
ゼウスの妾の子だったため、胎児の段階で女王・ヘラに迫害されるが、レトの姉妹でゼウスに白鳥に姿を変えられたアステリアの上で産まれた。その後感謝のしるしとしてその出生の地・デロスをギリシャの中心に据えた。
多くの逸話に登場しており、様々な事物の由来にもなっている。
たとえばカラスが黒いのは、アポロンの恋人の死の原因を作ってしまったために怒りを買い「永久に喪に服してろ」と黒く塗られたから……とされる。
また彼が頭に月桂樹の冠を被っているのは、月桂樹にされてまで彼の求愛を拒んだニンフのダプネを偲んでのこと(ダプネ「しつこいなあ」)。他にも、ヒヤシンスはアポロンが愛した少年・ヒュアキントスが不慮の事故で死んだ時、悲しんで泣くアポロンの涙から生まれたという。
アルテミス(ディアナ)
アポロンの双子の妹(もしくは姉)。狩猟・弓術・清浄の女神。後に月の女神セレネーからその役割を受け継いでいる。
ヘパイストス特製の女性を即死させる黄金(銀とも)の弓矢を持ち、星が降り注ぐように矢を放つ。
前述した「レトの出産」があまりにも難産だったため、見かねた虹の女神・イリスがヘラの娘で出産の女神・エイレイテュイアをこっそり連れて来てその場を乗り切った……
という話もあるが、本当はアルテミスが兄より先に産まれ、誕生早々助産婦を務めたなんて話もある。このためアルテミスは出産の女神ともされている。
自身はゼウスに永遠の処女を誓い、それは付き人らにも恋愛禁止令を出すというアイドルグループ並みの徹底ぶり。ちなみに破ると追放されたり殺されたりする。
基本的に優しいが、有事には恐ろしく冷徹になる。一例として、母・レトに暴行しようとした巨人をアポロンと一緒にボコボコにしたり、水浴びの現場を偶然見た狩人・アクタイオーンを鹿に変え、彼の猟犬に八つ裂きにさせたりしている。怒らせると怖い。
とは言え慈悲を見せる場合も無くはない。たとえばトロイア戦争の折にアカイア軍の総大将・アガメムノンがアルテミスを怒らせたせいで、自分の娘・イーピゲネイアを生贄に差し出す羽目になった(アンドロメダの時と言い……)。少女は健気にも覚悟を決め、父の罪を背負って命を絶たれようとした直前、その覚悟に感服したアルテミスに救われ、雌鹿の死体とすり替える形で連れ去られた。その後、彼女は遠い地でアルテミスに仕える巫女として生きることを許されている。
前述のように気性が荒い部分もあるが、機知と礼節はしっかりしている。たとえば自分の治める森の鹿が狩人に傷つけられ、農家に流れ着いて介抱された際は、お礼に死神(ハデスとの関係は不明)が来るほど衰弱していた農家の父の命を救っている。どうやったかと言うと、流石のアルテミスでも真面目に仕事をする死神を追い払うのは不味いと思ったらしく、自分が治める森で懲りもせず狩りをしていた狩人を殺害。その魂をノルマ分として死神に回収させ、恩人の命を救っている。
アルテミス「ノルマが一人分なら、今私が殺したあいつで手を打て」
死神「ノルマは確かにそうですから、まあ良いでしょう」
そんな彼女もある時、狩人のオリオンといい雰囲気になるが(おい処女神)、シスコン兄貴=アポロンの策略で自ら彼を殺してしまう。お兄ちゃん、見苦しいよ。
兄「アルテミスー、君って弓術の女神だけど、あの遠くで光ってるアレに矢を当てるのは流石に無理だよね?www」(実はオリオンなんだけどね!)
妹「出来ないわけないでしょ! 見てて!」
アフロディーテ(ウェヌス)
愛と美の女神。金星に対応している。ウラノスの最期において彼の一部から直接生まれたという、オリンポス十二神内でも独特の出自を持つ。あと実は何気に最古参のおばさ(ry。
英語では「ヴィーナス」と呼称。みんな大好き「ヴィーナスの誕生」で、貝から出て来る張本人である。
天地創造の際に切り取られたウラノスのtntnを海に捨てたところ、そこに生じた泡から生まれた。その時に彼女の色香に魅せられた西風の神・ゼピュロスが彼女をギリシアに運んだという。また、ローマ時代には(「神統記」などではガイアとウラノスの仲を取り持った原初神の一柱だが)恋愛の神・エロスが息子とされるようになり、母子で様々な色恋沙汰に関わっていく(エロスの出自にまつわる辻褄については、まあ神話だからということで一つ……)。
とにかく色気命な女神様なので激しい武勇伝は無いが、夫のヘパイストスに軍神・アレス(エロスの父親ともされる)とのベッドシーンを目撃され、キレた夫にベッドごと二人一緒に吊るされて人目に晒されている。
属性としては浮気相手をたくさんもつようなビttうわ何をするやめ(ry
他に有名な話としては、美貌を知られた王女・プシュケに嫉妬し、エロスに命じて陥れようとしたら当のエロスがプシュケに惚れてしまい、以降ヘラのお株を奪わんばかりの嫁イビリが開始される……という物語も伝わっている(最後は苦難を乗り越えたプシュケが女神の列に加えられ、エロスともハッピーエンド)。
アフロディーテも黄金のリンゴ事件に参加し、トロイア戦争の原因を作っている。めっちゃトロイア贔屓。
アレス(マルス)
ゼウスとヘラの間の息子。戦争の暴悪を司る。火星に対応。
ガタイがよくイケメンだが、いまいち頭はよろしくない。世界初の裁判の被告人。ハデスとは仲が良いが、他の神々との仲はイマイチ。
アテナと戦った時には、ひたすらゴリ押し戦法を続けた結果負けた。神相手ならまだ良い方で、人間とのタイマンで敗れた経験すらある。これでも戦の神。
親父(ゼウス)からも「あいつは美男子だけどアポロンと違って頭が良くない」とか言われる始末。
こいつが最高神とその正室の子である。
アレスに限らず、ゼウスとヘラの間の実子はみんな主役級の華々しい活躍が無かったり、他の神の意向に添うだけの役割だったりする(ゼウスが浮気に走る一因……なのか?)。
そんなアレスだが、ローマ神話に移ると「軍神マルス」としてローマ軍人から大層崇められた。良かったね。
デメテル(ケレス)
優しい性格。ただしキレると気候を冬に変え、世界を飢饉にするので、食糧安定供給のためには絶対に怒らせてはならない。
ある日テッサリアという国の王様が、彼女の聖地である森の木を屋敷の材木にするため、根こそぎ伐採して持って行ってしまった。
最初はやんわり諭したデメテルに対しても耳を貸さない王様。この問題は「お前は話を聞かないからな」では済まなかった。
彼女は王様を「何をどれだけ食べても満腹にならない常時飢餓状態の体」にしてしまった。かくしてハラペコの王様はあらゆる食料を喰いつくし、財産すべてを食料に変えても満たされることはなく、最終的に自身を食べるというセルフカニバリズムで死んでしまった。
しかし怖い女神様は食べ物のために売り飛ばされて奴隷にされた王様の娘を助け、恩恵を施している。他にもお忍びで下界の様子を見に行った先で優しくしてもらった相手に、飢饉を凌ぐ術を教えたりと、やはり慈悲深いお方なのだった。
ちなみに、前述のとおりデメテルはゼウスとの間に愛娘のペルセポネーを設けているが、そのことでヘラから因縁を付けられたような話は特に伝わっていない……姉妹のよしみか?
ヘパイストス(ウルカヌス)
ヘラの息子。火山・鍛冶の神。
……ただしゼウスの血は引いてないらしい。夫の女遊びにキレたヘラが自力で孕み、出産までやってのけたという。ヘラに限ったことではないが、どんな体してるんだ。
生まれつき足が不自由で顔が醜く、その理由で最初は母親から海に捨てられるというハードモードの人生ならぬ神生がスタート。だが海の女神・テティスに拾われた彼は鍛冶の腕前に開眼してすくすくと成長。満を持して母親のヘラに「座った瞬間鎖が巻きついて動けなくなる椅子」を贈った。
まんまと罠にかかって身動きが取れなくなったヘラに対し、ヘパイストスは「自分の認知と引き換えにこの罠を解く」という交渉を行い、神々に迎えられた。
前述の、プロメテウスを岩に括りつけた鎖も彼のお手製。他にも地上に災いを振りまいて人々を罰するために美女パンドラを作るなど、作れるものは鍛冶関係に留まらない。
意外に戦闘能力も高く、トロイア戦争の時には河の神・スカマンドロスを屈服させるべく、彼そのものである巨大な河に「水では消えない火」を放って一瞬で沸騰させている。
ヘルメス(マーキュリー)
ゼウスがアトラスの娘・マイアに産ませた息子。伝令・商業・泥棒・旅人の神。水星に対応している。
ゼウスの妾腹では数少ない、ヘラに迫害されなかった子。
何故迫害を逃れたかと言うと、誕生してすぐに前述の神・アレスと入れ替わり、ヘラの母乳を飲んで育ったから。さすがのヘラも自ら母乳を飲ませた子供に対し、正体を知った後も手出しする気にはなれなかったようだ。
また彼は盗みのプロで、産まれたその日から異母兄アポロンの飼い牛を盗んで食った。しかもそれでキレたアポロンを、亀の甲羅で作った竪琴で鎮めている。
世渡りの才能を認められた彼は、つばの広い帽子・翼の生えたサンダル・先端で2匹の蛇が絡み合う杖を持った「神々の伝令役」として今日も空を飛び回る。使者を冥府まで導く案内役も兼務。
ヘスティア(ウェスタ)
クロノスとレアの長子にして長女(前述の順番逆転後は、末っ子としての若さも得ている)。家庭の守護神で、かまどを司る。神々の中で随一の良識を持つ女神でもあるため、中立の位置で他の神々の仲裁役も務める。ギリシア神話での良識ある・穏健な神の常で、アクの強いオリュンポスファミリーの陰に隠れてしまう不憫な子。
そんなわけで彼女には派手な逸話は無い。挙げるとしたらゼウスの子・後述するディオニュソスに「十二神」という高い地位を与えたいが既に満席で困っていたゼウスに、
「私が十二神の座を降りましょう」
と申し出て自主退職しているくらいか。
また、ある人間の一家に起こった惨劇に際し、関係者を鳥に変身させることでせめてもの救いとした話も伝わっている。
彼女は何よりも、炉のそばで火の番をすることが好きだったという。神話での影は薄いが人々から非常に厚い崇敬を受けており、家庭の守り神としてローマ時代に至るまで信仰されていた。
彼女は自身への求婚は全て拒否し、永遠の処女を貫いている。しかし子供たちの成長を見守るのは好きで「孤児の庇護者」としても知られている。
彼女を象徴する聖獣はロバだが、これは寝ていた時に庭園の神・プリアポス(でっかいtntnで有名)に襲われそうになり、ロバが激しく鳴き立てたおかげで目覚めたために貞操の危機を乗り切ったからである。
当然プリアポスはお縄になり、ヘスティアを救ったロバは聖獣として崇められるが、そのことを逆恨みしたプリアポスは生贄としてロバを好むようになったという。
ディオニュソス(バッカス)
ゼウスと人間の王女・セメレの息子。ドS。豊穣と葡萄酒と狂乱の神。
母親のセメレは、例によってヘラに迫害を受け殺されている。セメレの死後、ゼウスは彼女の腹から胎児のディオニュソスを取り出し、何故か自分の太ももに埋め込んで臨月まで育てた。
そうやって産まれた子供なので名前は「二度生まれしもの」を意味し、半分人間でありながら不死の存在である。
ヘラの迫害から逃れながら、ブドウの栽培法と葡萄酒の作り方を身に付けた彼は、民衆にそれを広めた。しかし彼の広め方は非常な熱狂と騒乱を伴ったため、ペンテウスという王がこれを禁止した。
するとその禁止令に怒り、暴徒化した民衆によって王は殺されてしまった。その暴徒の中には王の実母の姿もあったとか。ディオニュソスはその様子を面白がっていたという(やはりオリュンポスの不穏な血は争えないと言うことか)。
人間の振りをして船旅をしていた時には、美少年だったために奴隷として危うく売り飛ばされそうになった。それに気づくと、半神としての正体を現して船をブドウの蔦で覆い、不埒な船長と船員を全員イルカに変えてしまった。ただし、唯一彼を憐れんで守ろうとした船員だけは助けている。
ブドウとキヅタの2種類のツタで出来た、先端に松ぼっくりのついた杖「テュルソス」を持っている。この杖にキヅタが絡まる理由は、ディオニュソスの母・セメレが殺される際、ヘラがゼウスを騙して雷をセメレに直撃させようとしたところ、キヅタが胎児のディオニュソスに当たらないよう遮ったからだとか。
ちなみにディオニュソスの周りには「マイナス(マイナデス)」という基地外女性信者が取り巻いていて、彼女たちもテュルソスを所持。マイナスが絵画に描かれる時は、大体においてイナバウアーをさせられている。
英雄譚
やはり英雄の話も枚挙に暇がなさすぎるので、ここでは神々以外の有名どころをサクッと紹介させていただくに留める。
ペルセウス
英雄としての彼は、ギリシア神話の中でもかなり古参な方。ゴルゴン三姉妹の末娘・メドゥーサを退治した事で知られる。父はゼウスで母はアルゴスの王女・ダナエ。つまり彼も半神半人。
ダナエの父・アクリシオスは「お前は男孫に殺される」という予言を受け、ダナエを青銅の塔に幽閉していた。しかしスケベに定評のあるゼウスにとっては障害にもならず、黄金の雨に姿を変えて彼女との間にペルセウスを作った。
哀れ母子は棺に入れられ海に流されるが、奇跡的に生存。流れ着いた島で親切な漁師に世話されてすくすく育ったペルセウスだったが、母ダナエを見初めた領主に邪魔者扱いされ、成り行きからメドゥーサ退治に出かける羽目に。
(多分ヘラを除いて)神々のお気に入りとなったペルセウス。アテナ姐さんからは「黄金の盾」、ヘルメス兄さんからはよく切れる「黄金の鎌刀(ハルペー)」とワシより速く飛行可能なサンダル、ニンフからはとうめいマント姿を消せる帽子とゴルゴンの頭を入れる特製の袋・「キビシス」を与えられている。
ちなみにワシの飛行速度は100km/hを超えているので、普通の人間が生身でヘルメスのサンダルを履けば大惨事は間違いないだろう。さすがは半神半人。
こうした助力もあって見事メドゥーサを退治した帰り、岩に括りつけられて海の怪物(ケートス)への生贄にされようとしていたエチオピアの王女・アンドロメダを救助し、妻にしている。
その後メドゥーサの首を件の領主に突きつけて石像に変え、母親と恩人の漁師を救出するなど活躍。だが予言は成就し、アクリシオスは観戦していた競技大会でペルセウスが投げた円盤が頭に命中、死んでしまった。
その後、ペルセウスは世界を支える巨人・アトラスに頼まれ、メドゥーサの首を使ってアトラスを石に変えている。アトラスもさすがにしんどかったのだろう。こうして彼はアトラス山脈と呼ばれる地形になった。
メドゥーサ
前述のペルセウスに斬首刑に処されたあげく、あちらこちらに生首を連れ回された不憫な女。ペルセウスに殺される時点でポセイドンの子を身ごもっていた(後述)。
海神・ポセイドンからアテナの神殿にて(場所選べよ)求愛されたところ、アテナ姐さんの逆鱗に触れて一瞬のうちに三姉妹もろとも怪物に変えられてしまった。しかも二人の姉・ステンノとエウリュアレは不死なのに、自分だけは不死ではなかった。呪いによって赤銅色の肌と毒蛇の頭を持たされた元・美人である。身長2m。
メドゥーサの生首はその後、アテナに献上されて彼女の盾・アイギスにくっ付けられたとも、ペルセウスが魔力を恐れて海にポイ捨てした結果、今でも海中を彷徨いながら海の宝石と呼ばれるサンゴを大量生産しているとも言われる。後者ならば環境保護のため、世界の海洋学者が一丸となってこの生首を探索する必要があるだろう。
ペガサス
空翔ける天馬。白くて翼の生えた、ゼウスの雷を運ぶ体長2~3mの馬である。ペルセウスが身重のメドゥーサの首を取った際、切り口から滴った血が大地に染み込み、黄金の剣を持つクリューサーオールと双子で誕生した。その後、彼らと母の仇・ペルセウスとの間に因縁や悶着が続いたかどうかは定かではない。
それからは誰に仕えるでもなかったが、ある時に英雄ベレロポン(ベルレフォーン)と共に怪物・キマイラ退治を行った。しかし、その後調子に乗ったベレロポンを神々が懲らしめるため、鼻に神々の放ったアブの針を刺されるというとばっちりを受けた。アブからの攻撃にビビったペガサスは空へ飛び上がり、ベレロポンを振り落として命綱無しのバンジージャンプをさせるのを尻目に、そのまま星座になった。素晴らしい跳躍力である。
キマイラ
ファンタジー界で有名な合成獣の元ネタはギリシア神話だった。
魔神・テュポンと妖女・エキドナの間に生まれた、ライオン・ヤギ・蛇の頭を持つ(メスの)怪物。半端ない腕力と、炎を吐く能力を有している。体長約3~5m。
話によっては胴体がまるまるヤギだったり蛇の頭が竜だったりする場合もあるが、とりあえず色んな生き物がミックスされてればキメラになることが多い。オリジナルは英雄・ベレロポンに退治されレッドデータブックに載る前に絶滅済。生物学では「由来の違う複数の物質からできたもの」という意味で、その名が使われている。
ベレロポン
キメラと戦った英雄。退治に行く道中にペガサスを捕まえ、その背中に乗ってキメラを倒した。その際キメラの口の中に鉛玉(鉛の槍とも)を投げ込み、「キメラ自身の吐く炎で鉛を溶かして毒素を回す」という化学的な戦術をとっている。
退治に成功した後、「よっしゃこれで神々のお気に入りだぜ!」と(オリンピア山ではなく)天界を目指した彼。ゼウスの制裁を受けることになり、暴れるペガサスから思いっ切り落馬、地上に叩きつけてノシイカと化した。可哀想に。
ヘラクレス
言わずと知れたギリシア神話の大英雄。豪快な正直者。美術界では、全裸にライオンの毛皮を被り、こん棒や弓矢を携えている姿がよく目撃される。怪力でアレスに圧勝したりアトラスの代わりに世界を支えたこともあった。
アルゴスの王女・アルクメネとゼウスの子。これまた半神半人。名前は「ヘラの栄光」を意味しているが、彼もまたヘラに迫害されまくっている。ヘラは「乳吸わしたってー」とゼウスに言われ、母乳をヘラクレスに飲ませたがその吸引力は世界でただ一つというか尋常じゃなかった(ヘルメスの時と違い、ヘラに情が湧かなかったのもそのせいか?)。あまりにも痛くてヘラクレスを突き飛ばした際に飛び散った母乳が天の川なのだという。天の川は英語で書くとMilky wayである。
そもそも彼が半神半人として生を受けたのは、ガイアが遣わした刺客である「神には倒せぬ」巨人・ギガンテス駆除のためだった。わざわざ王女の夫に化けたゼウスが、王女を騙して身ごもらせたのは(浮気関係なく?)そういう理由のようだ。
そしてヘラクレスは何事もなくギガンテスを滅ぼし、その後テーベ王クレオンの娘・メガラをめとって幸せに暮らしました。めでたしめでたし。
とは行かず。
ヘラはヘラクレスが家庭を持って幸せの絶頂にいる時に精神を狂わせ、彼自身の手で妻子を惨殺させている(前述の誕生経緯もヘラにとっては何処吹く風)。当たり前だが、正気に返った彼は絶望してしまった。
そこで太陽神・アポロンが「12の功業を成し遂げたら許してやってもよくない?」と提案。ミュケナイ王に弟子入りならぬ奴隷入りし、12年(10年で10の功業とも)かけて功業という名の難題を1年に1つペースで消化し無事終了。晴れてヘラクレスは自らの罪から解放されたのであった。
その後二番目の妻・デーイアネイラをめとり、幸せに暮らしました。でめたしでめたし。
とは行かず。
ヘラクレスと戦って恨みを抱いた敵(ケンタウロスのネッソス)が死の間際にデーイアネイラを騙し、解毒方法のない「ヒュドラの毒」を媚薬と称して渡した。英雄であるが故にモテモテな夫の心変わりを懸念した彼女は愛を取り戻そうと、媚薬と思い込んだ毒を塗った服を彼に着せたのである。
ヘラクレスはたちまち激痛に襲われ、皮膚ごと服を破り捨てたが最早助からない事を自覚。薪を積み上げ、形見を分け、自らを火葬にして死んだ。全てを知ったデーイアネイラは絶望して自殺した。
その後神々の元に召された彼はようやくヘラと和解。ヘラの娘である青春の女神・ヘーベーを娶り、今度こそ幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし(死んだ妻たちや子供たちは浮かばれた?さあ……)。
ちなみに僅か300人の兵士を引き連れ、ペルシャの大軍を相手に戦ったスパルタ王・レオニダス2世は、ヘラクレスの血を引くという二王家の一つ、アギス家の主である。
これ以外にも大英雄の血を引いていると自称する王家は少なくなく、その強さにあやかろうとした人々によって大いに称えられて来た証になっている。
ケンタウロス
馬の首から上が、人間の上半身になっている怪物。森に住み、弓矢をよくする。基本的に酒好きの乱暴者で、気に入った女性をさらってはアーン♡する変態紳士。
しかし世の中には例外があり、ケンタウロスの賢者・ケイローンがそれに該当する。彼は薬草の知識に長け、人々を治療して暮らしながら、ヘラクレスをはじめとする多くの英雄を育てた師匠だった。
父クロノス・母ピリュラーから不死を授かっていたケイローンだったが、たまたまヘラクレスとケンタウロスの間に抗争が起こった際、ヘラクレスの放ったヒュドラの毒矢が命中してしまう。毒の苦しみに悶えながらも死ぬことが出来ないケイローンは、自分の不死をプロメテウスに譲った後に死亡。その死を惜しんだゼウスによって空に上げられ、いて座となった。
アキレウス
「アキレス」とも。英雄・ペレウスと海の女神・テティスの息子。前述のケンタウロスの賢者・ケイローンが養父となって育てた、半神半人にして不死身の英雄。
身に着けているのは、ヘパイストスお手製の鎧や神の結婚祝いの鎧。つまり一番良い装備ばかり。気性が荒く赤みがかった金髪で足が速いイケメン。いわゆる「キレる若者」である。ケイローンから父親経由で「アキレウスの槍」という、重すぎて彼にしか使えない巨大な槍を与えられている。
ちなみにこの槍の柄は北欧神話の主神・オーディンの槍「グングニル」と同じトネリコという木で出来ている。トネリコは現・アイルランドに住んでいたケルト人に「宇宙の秩序の象徴」と言われ、北欧神話では全ての中心=世界樹・ユグドラシルもまたトネリコであるとされる。
話はギリシアに戻って、アキレウスはこの槍を使ってたくさんの功績を上げている。アキレウスの槍で受けた傷は、錆または鉄粉をアキレウスの槍から削って塗らない限り治らなかった。功績を上げられるのも当然っちゃ当然である。
しかしそんな彼にも弱点があった。かつて母・テティスが、「我が子が不死身になるように」と冥府の川・ステュクスまで出向き、アキレウスのかかとを持って逆さ吊りの状態で水にさらした。なんという児童虐待魔法の水に浸かったおかげでアキレウスは不死身になったが、唯一テティスが持っていた部分にだけ水は付かなかったのである。
アキレウスがアカイア(ギリシア)の武将としてトロイア戦争に参加した際、母親の手によって女装して匿われたのが即バレしたり、総大将と喧嘩して引きこもったり、親友を失ったり、親友の復讐のために一念発起したり……で「最強の英雄」として目覚ましい戦果をあげた。が、百発百中の弓を誇るアポロンの祝福を受けたトロイア王子・パリスにかかとを射抜かれ、あっさり死んでしまった。
彼が射抜かれた部分は今日「アキレス腱」と呼ばれ、切れやすいので運動前には準備体操でよく伸ばさなくてはいけない部位の一つになっている。
オルフェウス
オルペウスとも呼ばれる。アポロンと文芸の女神・カリオペの子。両親共に神だが、彼自身は受け継いだ溢れる才能以外、特段の描写は無い。
アポロン父さんから貰った竪琴をいじくっていたら名手に育った。その音色は人間だけでなく動物まで酔わせるほど。海の怪物・セイレーンを音楽対決で打ち負かしたりもしている。
オルフェウスは後にエウリュディケという美しいニンフと結婚した。しかしエウリュディケは散歩中にアリスタイオスという見ず知らずの男に一目惚れされ、追いかけられて逃げる途中で毒蛇に噛まれるという不慮の死を迎えてしまった。
愛した人を失ったオルフェウスは冥府へ向かい、地獄の番犬・ケルベロスや立ちはだかる障害を竪琴で大人しくさせて冥王・ハデスに会う。オルフェウスが妻を失った悲しみと、彼女を取り戻したいと願う歌を奏でると、死者も魔物も巨人もペルセポネーもハデスも皆泣いた。
身内と引き裂かれる辛さを知っているペルセポネーの口添えもあり、ハデスは「奥さんは返してあげるよ。でも地上に出るまで後ろ向いちゃダメだからね!」とOKを出した。
が、地上に出る一歩手前で「妻は本当に付いて来ているか?」と心配になったオルフェウスは後ろを振り返ってしまい、結局エウリュディケは地上に帰って来れなかった。
似たような話、とある極東の島国にもあるが気にしない。
それ以来オルフェウスは女を避け、女たちに誘惑された際には持てるスルースキルを最大限発揮して過ごしていた。
そんなある日、ディオニュソスのワインパーティーで酔ったキチガイ女ことマイナスがオルフェウスを指して「アイツねー、あたしのことバカにすんのよー!」とブチギレ。
哀れ襲いかかられたオルフェウスは手足をもがれ、頭と竪琴は川に捨てられ、最終的にレスボス島に流れ着く。これを見つけた島の人間達が憐れみ、バラバラ死体を丁寧に集めてリベトラなる場所で埋葬された(他では色々やらかしてる父神のアポロン、このことでは何故か怒ったり報復したり……はしていない)。
以来レスボス島はオルフェウスの加護によって多くの文人・詩人を輩出し、後に女流詩人・サッポーなど多くの才能が世に知られることとなった。
彼の竪琴はゼウスによって回収、星の中に置かれてこと座になっている。
こうして死んだオルフェウスは神の子ながら冥府の入国審査に受かり、愛するエウリュディケと再び結ばれたのだった。良かったね。
クリュティエ
水のニンフ。アポロンに愛されたが、彼の愛人を破滅させたことから見捨てられてしまう。
クリュティエは泣きながら冷たい地面に座ったまま、ずっとアポロンの象徴である太陽とその軌跡を見つめ続けていた。しかし結局9日後に力尽き、死んでしまった。
今でもひまわりが太陽の方向を向くのは、クリュティエが死後その地に根を張り、ひまわりに生まれ変わったからだという。
セイレーン
鳥の姿をしている(オリジナルは人魚ではない)合法ロリ。恐ろし過ぎるので魔女とも呼ばれる。イタリアはシチリア島に住み、美しい歌声で船を難破させる程度の能力を持つ。
地中海には、船乗りがロウソクのロウで耳をふさ塞いでその場をしのいだ話や、船乗りがセイレーンより美しい歌で打ち勝ったという話も伝わっている。ロウソクのロウで耳を塞ぐなんて、よい子のみんなは真似しないでね!
男性を誘惑するのに失敗すると、恥ずかしさのあまり身投げしてしまうとか。
緊急車両の上部などに置かれ、甲高い音で警告を発する「サイレン」の語源である。
ラミア
その名は中央ギリシア地方の主都で、同地方フティオティダ県の県都……の語源になった、ポセイドンの孫娘。口笛の名手。体長150~300cm。
リビアの女王で美人だったラミアは、ゼウスにひっかかり見初められて子供を授かった。そして例の如くヘラに八つ当たりをされる。ここまでがテンプレ。
ラミアは下半身を蛇にされ、ゼウスとラミアの子供を食べつくす・その悲しみから眠れなくなる・言葉を話せなくなる……といった数々の呪いをかけられた。
流石にそれを哀れに思ったゼウスだったが、最高神なんだから治してやるくらいのことは出来なかったのだろうか(それを言い出したら他のケースもだが……)。それでもラミアが眠れるようにと、目玉を取り外せるようにしてやるのが精いっぱいだった。彼女の祖父であるポセイドンも、事件に際しては我関せずであった模様(まあゴルゴンやミノタウロスの悲劇も尻拭い丸投げだったし)。
しかし自分の子供だけでは飽き足らなくなったラミアは、後に人の子まで襲うようになってしまった(はい、これまたテンプレのとばっちり展開)。ギリシアのお母さんたちは言うことを聞かない子に「悪い子を食べにラミアが来るよ!」と脅していたらしい。
なお仏教には「鬼子母神」として、似た話が伝わっている。
グリフォン
百獣の王・ライオンの腹から頭までを鳥類の王・ワシに置き換え、背に翼を生やした感じの生き物。紋章学では「知識」の象徴になっている。ペガサスやヒュドラのように特別なエピソードに恵まれているわけではないが、今日でも知名度・人気のある獣。
雑食で、鎧を着た兵士を丸ごと美味しくいただいたりする。何故か財宝の近くに巣を作るので逆にグリフォンの近くに財宝もあるのは間違いないが、どんな装備だろうと見つかったら最後、もれなく(何も残さず)平らげられるのでご用心……。
ミノタウロス
「ミノスの牛」という意味の名を持つ、巨大な牛頭人身の怪物。
ミノタウロスというのは通称で、本当の名前は「アステリオス(雷光を意味する)」。
凶暴で好物は(牛なのに草ではなく)人肉。クレタ島を統べるミノス王の妻・パシパエの子。つまり王子なわけだが、王の血は引いていない。
というのも、王がポセイドンとの「ちょっと牛を貸してもらう約束」を破り、借りたのとは違う牛をポセイドンに返したのが原因である。怒ったポセイドンによって「牛に惚れる呪い」をかけられたパシパエと雄牛が獣姦した結晶がミノタウロスである。
たとえ怪物であっても王妃の子のためミノス王はミノタウロスを殺せず、名工ダイダロスに作らせた迷宮(ラビュリントス)に閉じ込めた。戦争によって屈服させたアテナイから9年ごとに7人の少年・7人の少女を送らせて餌にしていた(またとばっちり犠牲……あるいはポセイドンのアテナへの間接意趣返し?)ため、ご飯代は気にならなかった様子。その食料になる子供たちの中にアテナイ王の息子・テセウスが紛れ込み、ミノタウロスは退治された。
いろいろ「怖い怪物」のように見えるが、そもそも事の発端は約束を破った誰かさんである。その誰かさんは後々、冥府の要職に就いている(パシパエ&ミノタウロス「ふーん……」)。
ケルベロス
さくらちゃんの隣にいる黄色くて関西弁なあのコ……のように可愛らしい生物ではない。
犬の頭が3つ・尻尾は大蛇・首からも無数の蛇が顔を覗かせるという、あまり夜中に会いたくない感じの存在。3つの頭は順番に眠るため、警備会社と契約せずとも24時間警備可能。ぜひ一家に一匹。
冥府の番犬で、持ち場にて地上との行き来を完全シャットダウンしている……。
わけでもなかった。
美しい音楽を聴くと全ての頭がスリープモードになるので、かのオルフェウスの侵入を許してしまったことがある。また甘いものに目がなく、蜂蜜と芥子で作られたお菓子につられてモグモグしている間に何人かに侵入されている。かわいい。
また、12の功業遂行中のヘラクレスによって地上に引きずり出されたことがある。その際、あまりの乱暴な扱いに悶え苦しみ、溢れたよだれが地面に滴って毒草・トリカブトになったという。
アラクネ
アジアに住んでいたという彼女は、機織りの名人だった。周囲の人間がそれを見て「ねぇ、それって技術の女神、アテナ様に習ったの?」と聞くとクールにこう返した。
「別に?」
しかも「アテナ様と競っても勝てるしw」なんて発言をしたのがアテナの耳に入り、姿を見せた技術の女神と直々に勝負する事となる。
アテナが織った神々の栄光の物語に対し、アラクネは傲慢かまして神々の醜聞(大体ゼウスのせい)を織り、遂にアテナをブチ切れさせた。その場で不遜な作品を真っ二つにされたアラクネは「そのまま未来永劫機を織るがいい」と、哀れその姿をスパイダーマッ蜘蛛に変えられてしまった。
口は災いの元である。
別の説では、女神に激おこされてようやく自分がしでかした事に気づき、首吊り自殺したのを哀れまれ、蜘蛛に変えられたというのもある。どっちにしてもむごい。
ハーピー
「掠奪者」や「ひったくりする奴」という意味の名前を持つ、体長2~5mの女性鳥人である。人の頭に鳥の身体だったり上半身は人間で下半身と腕が鳥だったりするが、人間部分はだいたい美人で固定されている。名前の形態変化が不規則で、複数形だと「ハルピュアイ」になる。
ゼウスに仕えたり英雄の乗る名馬の母親になったり、ギリシア神話にはよく登場する。しかし活躍出来るのはほんの一握りで、大半のハーピーは一言で表すと「風呂に入らないヤンキー」である。
「翼の生えた美しい女性なんだからそばに置きたい」と思うゼウスのような方もいるかも知れないが、こいつらは常時奇声を発するし、とにかく臭い。排泄物をまき散らす個体もいるのでとにかく臭い。排泄物関係なくても、もれなく体臭がキツい。
ハーピーはデフォルトで空腹らしく、食べ物を見つけると何処だろうと我先にと争奪戦を繰り広げる。しかも素行不良。
繰り返しになるが、そんな彼女たちも外見だけならとても美人である。残念!
アマゾネス
南米・アマゾンの密林に住む女系部族で、非常に獰猛な性格である……。
というのが世間一般の「アマゾネス」に対するイメージであろうが、その元ネタはギリシア神話にある。
モデルは女性に権力があった部族・スキタイ族の女戦士と言われている。
アマゾネスの名前の由来は"A mazones" つまり「欠けている乳房」。弓を引くために邪魔なおっぱいを自ら切り取っていたからだと言うが、そんな事実は現在見つかっていない。
現在のトルコ北部やロシア南部に住むとされる。狩猟の女神・アルテミスを信奉し、男嫌い。男はみな奴隷扱いで、新しく産まれたのが男児だった場合も逃がすか殺すか奴隷にするかであった。人口問題は年に一度、近くの部族の男性と交流して子をなすことで解決。tntn狩りじゃぁい!
様々な種類の武装をし好戦的な性格を持つ彼女たちは、ギリシア神話でよく英雄に殺されている。これは男尊女卑の古代ギリシアで、スキタイ族のように女性に権力を持たせることは、男性にとって許しがたいことであったからだという。
英雄に殺される一例としては、ヘラクレスが12の功業のひとつとして軍神・アレスの腰帯を貰いに来た際、歓迎したのに誤解から殺されたアマゾネスの女王・ヒッポリュテや、そのヒッポリュテの妹で、トロイア戦争の際トロイア側について戦った女王・ペンテシレイアがいる。ペンテシレイアはアキレウスとの一騎打ちで落命したが、彼女の死に際してその美貌に気づいたアキレウスは、彼女を殺した事を悔やんだという。
アタランテ
ギリシア神話において男性ばりの活躍をする、極めて稀有な女性の「英雄」。
男児を欲していた父親の手で生まれてすぐに山に捨てられたが、アルテミスから遣わされた雌熊の乳で育つ。成長したアタランテはアルテミスを信奉し、彼女に倣って一生処女を守る狩人として暮らすようになった。
アタランテは美しく、また足が速かった。
彼女に惚れてやってきた多くの求婚者に「私と徒競走で勝ったら結婚してやんよ!」と言った。しかし誰も勝てない。結局アフロディーテの祝福を受けた男が現れるまで負けなかったようだ。しかもその負け方は「男がアフロディーテからもらったリンゴを落とし、それを拾ってやったら負けた」というものだった。
男を差し置いてイノシシに槍を突き刺したり、自分を犯そうとした男を二人も射殺したり、アキレウスの父親とレスリングをして勝ったりしている。またギリシアの英雄のドリームチームとも言われる「アルゴナウタイ」にも、女性として唯一参加している。
アメリカ合衆国ジョージア州の州都・アトランタの名の由来でもある。
黄道十二星座について
星占いなどによく登場する星座はまとめて「黄道十二星座」と呼ばれ、現在88ある星座の中でも惑星の通り道「黄道」に位置する12の星座である。それらにもギリシア神話に逸話が残っている。
また、近年では従来のものにへびつかい座を加えた「十三星座説」も唱えられ、話題になった。
牡羊座
テッサリア国王・アタマスはバツイチで、前妻・ネフェレとの間にはプリクソスとヘレーの兄妹、次の妻・イーノとの間にはレアルコスとメリケルテスの二人を設けていた。
イーノは自分の子可愛さに前妻の子が憎らしくなり、どうやったら自分の手を汚さずに二人を始末できるかと一計を案じた。
それは農民に炒った麦の種(もう芽は出ない)を植えさせ、国を大凶作に陥れて王に「これを解決するにはプリクソスとヘレーをゼウス様への人柱にするしかありません」と大嘘を告げるというものだった。
実際、その嘘を告げるまでは巧くいったものの、王は子供たちを人柱にすることはしなかったのでイーノはこれを農民に告げ、暴動を起こさせた。
ちょうど同じころ、ゼウスはネフェレが「子供たちをお助け下さい」と毎日祈っているのを発見。哀れに思ったゼウスはヘルメスに「黄金の毛の羊をプリクソスたちにやって、コルキスってとこまで乗せてってやりなさい」と言った。
かくして黄金の羊は兄妹を乗せ、妹・ヘレーを海に落として溺死させる程度の猛スピードでコルキスに飛んで行った。それ故この海峡はヘレスポントスと呼ばれるようになった。
一方で兄のプリクソスは無事にコルキスに到着。そこでコルキス王から王女を嫁にもらったりして世話になったので、お礼に黄金の羊から毛を刈り取り、肉をゼウスへ、毛をコルキス王へ捧げた。喜んだコルキス王は軍神・アレスを祀る森の奥の樫の木に羊毛をひっかけ、不眠不休の火竜・セコヴィアにこれを守らせた。
結局その毛は英雄イアソンによって回収、更にゼウスによって牡羊座にされている。「貸したものは返せ」ということか。……そう言えば一連の元凶でゼウスの名まで騙ったイーノ母子の処遇は?
牡牛座
ある日ゼウスはフェニキア王の娘・エウロペの美貌に目を付けた。
いつまでたってもお盛んな最高神がどのようにエウロペを口説いたかというと、「愛らしい純白の牛になって、あの子を油断させた瞬間背中に乗せてお持ち帰りする」という事案必至の作戦だった。この作戦のキー、「純白の牛」が牡牛座になっている。ゼウス自身の姿絵になるが、まあ記念碑みたいなものか。
最高神はその作戦をつつがなく遂行、エウロペを海の沖まで猛スピードでかっさらっていった。流石に疑問を感じたエウロペが「牛さん、どこへ行くの?」と聞くとゼウスは「私は牛じゃなくて神様だよ!連れて帰って嫁にしちゃうけどいいよね!」と宣言、クレタ島に連れて行って挙式。三人の子供を儲けましたとさ。
なおゼウスはクレタ島に行く際ヨーロッパ本土に上陸しているらしく、「ヨーロッパ」の名はエウロペから付けられたという。
また木星の衛星「エウロパ」も名前の由来は同じである。この衛星は視力が良ければ肉眼でも見える。
双子座
あるところにディオスクロイという双子のユニットがいた。
兄さんはカストル。弟はポリュデケウス。
ディオスクロイとは「ゼウスの息子」という意味であり、案の定二人は白鳥に化けたゼウスとスパルタ国女王・レダの間に生まれた半神半人。白鳥の姿で仕込まれたため、二人は卵から生まれることになった。もちろん、その卵は母さんこと人間のレダが産んでいるわけだが。
さて、すくすく成長したカストルは馬の調教師兼戦士、ポリュデケウスはボクサーになった。二人は非常に仲が良かったが、一つ問題があった。ディオスクロイのうち兄・カストルにはゼウスの血が流れていなかったのである。これについては、実は二人は異父兄弟だったから、あるいはゼウスの血は一人にしか受け継がれないからだと言われている。
そしてディオスクロイが敵と戦った際、不死身の能力を受け継がなかったカストルはあっけなく射殺されてしまった。戦いが終わり、嘆き悲しむポリュデケウスの「兄と一緒がいい」という懇願がゼウスに通じ、彼らは二人まとめて双子座として天へ上げられた。この時ポリュデケウスは兄と一緒になるためだけに、神になる権利を捨てている。
ちなみにディオスクロイは船と戦いの神とされ、「セントエルモの火」も彼らに関係していると言われた。
蟹座
ヘラクレスの12の功業の一つ、レルネーの毒蛇・ヒュドラ退治の時のお話。
このヒュドラの数少ない友達かつ父親の違う兄弟として、大きな化けガニ・カルキノスがいた。
ヒュドラは切っても切っても生えてくる首を武器にヘラクレスと戦っていたが、ヘラクレスがあまりにも強いので負けそうになっていた。それを物陰からこっそり覗くのは気の弱いカルキノス。
しかし友人のピンチなんだ、ヘラクレスとかいう奴の足を僕がちぎってやるんだもんね!待っててヒュドラ!
プチッ
勇気を持って飛び出したカルキノスは、ヘラクレスに何のダメージも与えないまま殺された。
死因:カニに気付かなかったヘラクレスの踏みつぶしによる圧死。
しかし、その勇気を称えたのがヘラクレス嫌いのヘラ。カルキノス(とヒュドラも?)を蟹座(と海蛇座)にしてやりましたとさ。ユウジョウ!
カルキノスは、ピンチのヒュドラに加勢するためヘラが差し向けたヘラクレスへの刺客とも言われている。いずれにしろ、怪物野放しの被害よりヘラクレス迫害を重視する辺りがヘラのヘラたる……。
獅子座
ヘラクレスの12の功業中、一番最初の任務は「ネメアの谷という場所でライオンの形をした何かの退治」というものだった。
結論から言うとこれが獅子座になったわけだが、「ライオン」と言いつつも実体は双頭の犬・オルトロスを父に、妖女・エキドナを母に持つ怪物である。一体何処にネコ科の要素があるのか?そもそも何がどうしてこうなった。
両親の賜物か、ネメアのライオンは分厚い皮の下に刃物をシャットアウト可能な甲羅を持っていた。
刺殺が不可能と判断したヘラクレスはこん棒でライオンを殴って脳震とうを起こさせた後、三日三晩首を絞め上げてライオンを殺害。更にその皮を剥いで鎧にするという、普通の野獣だったら密猟取締機関や動物愛護団体からお叱りを受けそうなことをやってのけた。
ちなみに依頼主のアルゴス王は褒美をやるどころか、ヘラクレスのあまりの豪勇ぶりにビビって「ヘラクレス市中立ち入り禁止令」を出している。
乙女座
乙女座のモデルはハデスの妻でデメテルの娘、ペルセポネーと言われている。
ペルセポネー自身は植物の女神で、前述の理由で彼女が冥府に引きこもっている4ヶ月間は、地上に植物が芽吹かない「冬」になるとされている。
また乙女座のモデルとされている人物はもう一人いるが、それは天秤座の項目で解説する。
天秤座
この世界にはかつて「金の時代」「銀の時代」「銅の時代」といわれる時代があった。
金の時代は一年中春であった。現代であれば花粉症が大変そうだが、年中そこら辺に果実や農作物が実り、川には酒や乳が流れ、貧富の差も争いも全く無いという統治者不要の理想郷だったため、プラマイゼロ、むしろプラスでいかがだろうか。
そんな世界だったので、金の時代では神々と人間が同じ世界で生活をしていた。その中でもゼウスの娘のアストレアは、人間の良き友人として人々に正義を説くことに熱心だった。
やがて銀の時代に移り変わると、世界に四季が出来た。つまり年がら年中春というわけにはいかなくなったのである。
すると人間は食いつなぐために農耕を始める。すると作物の出来具合なんかで貧富の差が徐々に広がり、ついに裕福な人が貧乏な人を貶すようになっていった。
神々はこの時点で「あ、もうダメだこいつら」と人間を見捨てて自分の巣に帰って行く(神々が引き起こしたり黒幕をやった闘争や騒動や災厄の数々を考えると「お前らが言うなよw」って感じはする)わけだが、唯一アストレアだけは諦めずに正義を説くのをやめなかった。
しかし努力実らず世界は「銅の時代」に突入、人々は持てる技術を駆使して船や兵器を作り戦争をおっぱじめた。人間が嘘をついたり殺人をし出したのもここである。それらが高じてついに血縁同士の財産争いなど、昼ドラ的泥沼が後を絶たなくなった。
堕落した人間に絶望したアストレアは耐えられなくなり、自分の持つ白い翼で空に帰って乙女座になった。このとき彼女が持っていた天秤が天秤座になったという。
蠍座
狩人オリオンの死因。兄にハメられたアルテミスが自ら撃ったというのは前述のとおりだが、別の説ではサソリに刺されて死んだとも言われる。
自分があまりに強いので調子をこいていたオリオン。それがイラついているヘラに見つかったのである。例の如くキレたヘラはサソリを呼び出し、「アイツを刺して毒殺しなさい」と地上に送った。
慢心していたオリオンは目の前に現れたサソリに ふみつける こうげき!!
しかしオリオンのこうげきははずれた!
オリオンの右足を華麗に交わしたサソリは、ヘラとの打ち合わせどおり左足を刺した。オリオンもサソリの猛毒には弱いようで、この一撃であっさり死んでしまった。
その後ヘラがサソリを、アルテミスが愛するオリオンをそれぞれ星座にした。しかしオリオンは今でもサソリがトラウマらしく、決して同じ空に上がろうとしないのである。
射手座
前述のケイローン師匠が射手座になっている。
ケイローンは、ゼウスたちの父・クロノスがニンフとの間に設けた息子である。アポロンとアルテミスから様々な技を学び、人々をよく助け、勇者養成学校の先生……もとい、王族の息子を預かって養育していた。後に医術の神となるアスクレピオスの師もケイローンである。
山羊座
パーンという、ヤギの角や髭を生やしたダンシング☆カミサマがいた。
ある日オリュンポスの神々はパーティーを開き、その余興としてパーンを呼んだ。
パーティー当日、終わりに差しかかろうというところで招かれざる客こと巨人・テュポンが乱入。パーティーがめちゃくちゃになるどころか神々自身にも危険が迫っていた。
「仕方ない、各々得意な動物に変身して逃げろ!」という号令とともに神々は逃げ出し、パーンもヤギになって逃げた。
逃げる道中に川があったので、次は魚になろうとしたパーン。しかし酒の飲みすぎで変身が上手くいかず、上半身がヤギ・下半身が魚という人魚の亜種のような姿になってしまった。
これがゼウスのツボに入り、必死の抵抗も空しくパーンの姿は記念と言わんばかりに山羊座にされてしまった。このエピソードは狂乱を意味する「パニック」の語源でもある(パーンに元来、人や獣に恐慌をもたらす能力が備わっているからとする説も)。
水瓶座
トロイ・イーダス山の羊飼い、ガニメデスは大変な美少年。みんなからは「身体が金色に光っているぞ!」と言われるくらいの容姿を持っていた。これはほめ言葉である。
そのガニメデスは例によって(美しければ性別問わない)ゼウスの目に止まる。少年が羊の番をしている時、いきなり黒雲と雷が空に広がったかと思うと、突如現れた大きなワシに拉致されてしまった。
当然ながら、その様子を目撃した父母は深く嘆き悲しんだ。
ある日涙にくれる夫婦の元へ、蛇の絡まった杖を持った訪問者がやって来た。
彼によると、
「ガニメデスはゼウス様に気に入られたから、あっちに連れてかれちゃったんですよー。んで、神々の酒のお酌担当だったヘーベーって娘が最近、ヘラクレスって奴の嫁に行ってしまってですね。ガニメデス君を後任にしたいんですよ。大丈夫、あっちにいれば歳は取りませんし」
……とのこと。
訪問者はゼウスからのプレゼントとして立派な神馬を置くと、ガニメデスが連れ去られた方向へ帰ってしまった。杖で訪問者が伝令の神・ヘルメスだと悟った父はホッとして喜びの涙を流した。ガニメデスが持つ神酒の瓶が水瓶座に描かれ、父親が流した涙が瓶の中身だとも言われている。
魚座
アフロディーテとエロス。二人は母子。
ある日彼女たちがのんびり散歩していると、何時か何処かでパーティーをめちゃめちゃにしてくれたテュポンがいきなり二人を襲ってきた。
武道派連中と違い、荒事は不得意なアフロディーテたち。慌ててユーフラテス川に飛び込み、咄嗟に魚に変身して逃げ延びた。するとアテナがこれを記念して、二人の尾をはぐれないようにリボンで結んだ姿で星座にしたという。
その他明日使えない豆知識
- オリュンポス十二神が12人じゃないのは、ギリシア神話が元々ギリシア諸都市の神話の寄せ集め物語であるため。\五人そろって!四天王!/
- 英語のヒーロー(hero)の語源はギリシャ語のヘロス(heros)。ヘロスの意味は「半神半人」である。
- ミノタウロスが閉じ込められていた「ラビュリントス」の語源は両刃の斧、ラブリュス。クレタ島の信仰対象になっていた。
- この記事でゼウスと関係を持っている者の中で「ニンフ」と記述されているのは、山野で生活をする下級の女神。「妖精」と表記されることもある。
所属する場所によって名称が異なり、また大層気まぐれでえっちな存在。女性の色情狂を意味する「ニンフォマニア」の語源でもある。
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関連項目
- 神話
- ギリシャ
- ギリシャ(古代)
- カオス
- ガイア
- サイクロプス
- タルタロス
- ヘカトンケイル
- ティタン
- アトラス
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