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モロイ
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『モロイ』を読む前と読んだあとでは、事情はすっかり変わってしまう。文学をとおして描かれる人生というものが、あっさりぶち壊される。それと同時に、とんでもない何かが立ち上がってくる。――野崎歓(投込より)

ベケットの言語に固有の性、腐食の作用といったものに私は気付きはじめた。その作用は決して急性の暴力的なものではない。しかし言語の意味や感触、そしてその有機的な構造や流れに、その浸食作用はじわじわ深く及ぶ――宇野邦一(訳者あとがき)

モロイとは、

  1. サミュエル・ベケットの小説
  2. モロイ・ドレッツァ
  3. ルーマニアの伝承の吸血鬼あるいは死霊。
  4. マット・モロイ。
  5. ライアン・モロイ。

である。ここでは1について紹介する。

概要

後に『マロウンは死ぬ』、『名づけえぬもの』と連なっていく、ヌーヴォーロマンの先駆となった小説三部作の第一部でベケットの代表作の一つ。

三部作のうち他の二作品同様ピリオドのない長文が特徴。

色々わかっていない「私」による自問自答や直前の記述に対する否定、「便秘ポメラニアン健康状態がいい」など書いている最中に思いついたかのような適当に見える理論が繰り返され、まともに読んだら正直支離滅裂という感想を抱くだろう。なかでも

この機会を利用して、おしゃぶり用の石を貯えた。それは利だったが、私はそれを石と呼ぶことにしている。このたびは相当な貯えがあった。四つのポケットの間に均等にそれを分けて、順番にしゃぶることにしていた。それは厄介な問題で、最初は次のような解決策をとった。石が十六あるとしよう。四つのポケットに四つずつで、ポケットはズボンに二つ、オーバーに二つあった。オーバーの右側のポケットの石を一つとって口に入れ、その代わりにズボンの右側のポケットにあった石の一つをオーバーの右側のポケットに入れる。ズボンの右ポケットにはその代わりにズボンの左ポケットにあった石を入れ、その代わりオーバーの左ポケットにあった石を入れ、その代わりには私がしゃぶり終わった石をそこに入れる。こうすれば、四つのポケットにそれぞれいつも四つの石が入っていて、しかもいつも同じ石ではない。そしてしゃぶりたくなったら、前と同じ石ではないことを確信して、新たにオーバーの石をポケットから取り出すのだ。そしてしゃぶりながら、今説明したように別の石を移し替え、これを繰り返す。しかしこの方法には半分しか満足していない。なぜなら全くの偶然の結果、循環している四つの石が同じままであるかもしれないということが、私の頭から離れないのだ。その場合には、十六の石を順番にしゃぶるどころではなく……

と「私」が「16個の石を等にしゃぶる方法」をこれ以降もページを使って真剣に考え続けるシーン狂気と言って差支えないだろう。

Amazonレビュワーく「モロイを読むことは読むことをえているか覆っている」らしい。

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モロイ

1 ななしのよっしん
2023/07/30(日) 17:06:25 ID: vVFiB90zF7
細かいのだけど、記事の「マウロンは死ぬ」は「マロウンは死ぬ」ではないだろうか
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