ニコニコ大百科 : 医学記事 ※ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。 |
抗不安薬(こうふあんやく)とは、心身症や神経症などに用いられる「不安を抑える薬」である。
概要
その作用機序から大きく2つに分けられる。神経症やうつ病は重なりあうことも多く、これらの他にも抗うつ薬の一部が抗不安薬として使われたり、あるいはその逆のケースもある。
現在抗不安薬は、癒し物質である「セロトニン」の再取り込みを選択的に阻害する「SSRI」と呼ばれる抗うつ薬を用いるのが主流となっている。代表的なものはパロキセチン、フルボキサミン、セルトラリンなど。
ベンゾジアゼピン系
作用の一つに催眠作用があるため睡眠薬などにも使われる。「睡眠薬」の記事も参照のこと。脳のGABAA受容体に結合することによりGABAとの親和性を高め、Cl-チャネル開口による中枢抑制をもたらす。重症筋無力症や急性閉塞隅角緑内障患者には禁忌。
種類 | 薬物名(主な商品名) | 備考 |
---|---|---|
短時間型 | エチゾラム (デパス) |
日本において一番有名、かつ一番売れている抗不安薬。抗不安、抗うつ、催眠、筋弛緩などの効果が強力で適応症が非常に多く、さらに代謝が速やかと良いことづくめの優等生。 抗うつ薬としても売られていた薬だったため、麻薬・向精神薬取締法の処方可能日数規制を受けなかったことがその普及率に繋がっている。 ……というよりも一番の理由は「アメリカで発売しなかった」ことである。麻薬・向精神薬取締法はアメリカの「規制物質法」という法律を丸々コピペしてきただけのものだったため、アメリカで発売されていなかった規制を免れたのだった。そのため日本では大人気だが、国外においてその知名度は殆ど無い。 2016年10月14日から麻薬・向精神薬取締法の改正省令が施行され、第3種向精神薬の指定を受けることになった。また同11月1日より最大30日分の処方制限が開始された。これにより他の向精神薬同様に個人輸入および譲渡の禁止、自己の疾病治療目的での海外への携帯の際の制約を受けることになった。 |
クロチアゼパム (リーゼ) |
「チエノジアゼピン系」という分類に含まれる。ベンゾジアゼピンの構造を少し変化させたものだが、これがデパス誕生に繋がるのである。デパスは抗不安作用を示す「トリアゾール環」をチエノジアゼピンにくっつけたもの、つまり「トリアゾロチエノジアゼピン」である。「トリアゾール環」の効果を知らしめたアルプラゾラムをヒントにしたものだが、こちらは「トリアゾロベンゾジアゼピン」。これにより訴訟を免れ、めでたくデパスは一躍スターダムにのし上がったのだった。リーゼ自体の抗不安作用は弱めだが、副作用が少ないメリットがある。 | |
中時間型 | ロラゼパム (ワイパックス) |
高い抗不安作用と肝臓への負担の少なさ、舌下錠特有の吸収の速さなどから人気がある。アルコール性肝炎の患者にも投与できるなどのメリットにより、抗不安薬の中でもソラナックスに次ぐ処方量を誇る優等生である。効き目短くキレが良いその様は正に抗不安薬のアサヒィスゥパァドゥルァァァァイ |
ブロマゼパム (レキソタン) |
日本において、デパスと人気を二分する抗不安薬。その人気の理由は抗不安効果の強さもさることながら、その眠気がデパスより弱いことにある。 このため社会人の患者に人気が高い。デパス同様適応範囲が非常に広く、パニック障害にも有効である。 | |
アルプラゾラム (ソラナックス) |
世界で最も売れている抗不安薬。が、前述のとおり日本ではデパスがダントツの人気である。元々はパニック障害の「唯一の」薬として半ばゴリ押し気味に宣伝されたり、効果を示した試験が開発会社の資金で行われていたり、と知名度故かキナ臭い噂も絶えない薬。少量でもよく効き、眠気が少なく尾を引かないなど効果は折り紙つき。 | |
長時間型 | クロルジアゼポキシド (コントール、バランス) |
すべてはここから始まった。1957年アメリカで発売されると従来の抗不安薬と比べて、薬効の強さと驚くまでの安全性から市場を一気に塗り替えてしまった、まさに抗不安薬界の革命児。「診断は何であれ、リブリウム(商品名)」というコピーが出たほど。その後、本品を改良した薬が次々と登場すると、一線を退いた。日本では1961年発売。ベンゾジアゼピン系の祖先のような存在で、ポケモンで例えるならミュウみたいなもの。 |
ジアゼパム (セルシン、ホリゾン) |
コントールを改良して薬効を強化した薬。63年にアメリカで発売されると一気に普及。20年以上に渡って売れ続けた逸品である。抗不安、抗けいれん、筋弛緩など基本的な作用をバランスよく持ち、吸収が速やかで効率がよく、効果発現が早い、苦味がなく飲みやすい、などなど、そのメリットは枚挙にいとまがない。日本では64年発売。臨床医学においてベンゾジアゼピンはこれが業界標準となった。メタルギアソリッドにも手の震えを抑えるアイテムとして登場する。 | |
クロキサゾラム (セパゾン) |
登場当時(74年)としては最強の抗不安作用を持ち、入院患者用の抗不安薬として広く用いられた。が、不安障害の治療が入院から通院へと変化すると、長すぎる作用時間と副作用から嫌われものに。10年後のデパス登場で人気は一気にそちらへ流れ、一線を退いた。 | |
オキサゾラム (セレナール) |
商標のセレナールは、Serene(穏やかな、のどかな)に由来する。名前の通り、穏やかに作用し、副作用も弱い。 | |
超長時間型 | ロフラゼプ酸エチル (メイラックス) |
現在のところ、ベンゾジアゼピン系薬物の最終進化形。そのままでは効果を持たず、体内で代謝されて効果を発現するいわゆる「プロドラッグ」である。そのため余計な部位で効果を発揮する副作用が少なく、即効性と効果の長さを兼ね備えた優等生。 |
フルトプラゼパム (レスタス) |
抗不安効果は強く、血中半減期も非常に長い(約190時間)。 |
5-HT1A受容体刺激薬
セロトニン受容体の一つ5-HT1A受容体を刺激してK+チャネルを開口させ、過分極により神経活動を抑制させる。副作用として肝機能障害のほか、動揺、発熱、幻覚、躁、振戦、不整脈などの「セロトニン症候群」がある。
主な薬物は「タンドスピロン(商品名:セディール)」。薬価が高いうえに一日三回服用(保険なしなら一日583円)、効果が出るのにも2~4週間かかるという、金を払う患者自身にとっては結構ツラい薬。そのためあまり人気がない。1996年にこのセディールが登場して以降、現在まで新たな抗不安薬は発売されていない。
関連動画
関連商品
外部リンク
関連項目
- ニコニコ大百科:医学記事一覧
- 抗精神病薬
- 抗うつ薬
- 抗不安薬
- 気分安定薬
- 向精神薬
- メンタルヘルス
- 神経症
- 心身症
- Tranquilizers
- 4
- 0pt