私人逮捕系YouTuber(私人逮捕YouTuber、自警団系YouTuber)とは、何の証拠も持ち合わせず、自身の推理のみで犯罪者であると勝手に決めつけた一般人を私人逮捕することを動画にしたり、わざと詐欺や新興宗教に引っかかったふりをして潜入し、動画に上げることを専門とするYouTuberである。一時期はニコニコ生放送でもこれに類似した配信者が人気を得た時期もあったが、2023年現在ニコニコにおいては沈静化している。
概要
私人逮捕については、個別の記事を参考にしてほしいが、要約すると、現行犯逮捕については警察官でない私人であってもできるという規定である。
そこで、犯罪者やマナー違反者などを注意し、時には私人逮捕することを動画に上げたり、投資詐欺や新興宗教のセミナーなどに潜入して、詐欺師を論破したり詐欺や新興宗教に対する注意喚起を動画にしているYouTuberのことを私人逮捕(系)YouTuberや自警団系YouTuberと呼ぶようになった。
このようなジャンルの登場以前にも、詐欺に引っかかったふりをして詐欺師の電話番号に電話して相手をおちょくったり、わざとドイツ語で詐欺師に電話して相手が困惑する様などを動画にしている人などがいたが、そこからさらに悪ノリした結果、犯人が逆ギレする、時には凶器を持ち出しバトルに発展するなど過激な内容を含むものも見られる。
肯定意見・需要
犯罪の抑止や注意喚起になる
「このような手口で詐欺や新興宗教は近づいてくるので注意しましょう」という動画を見れば、それらに対する注意喚起になるし、私人逮捕YouTuberの存在がある種の犯罪抑止になる。
転売ヤーや犯罪者がシバかれてるのを見るとスカッとする
ムカつく犯罪者や転売ヤーやマナー違反者がシバかれているのを見ると楽しいということ。
実際に犯人の逮捕に至り、警察に感謝された例もある。
河川敷を不法に占拠して住み着いている中国人を注意した事例では、最終的に相手が逆ギレし包丁を持ち出したことで実際に犯罪者の逮捕に至り、またその結果河川敷の不法占拠も解消された。
社会問題提起や「〇〇するのは犯罪である」ということの啓発
前述の例であれば、河川敷に住み着いたり畑を作るのは違法だと知らない人が居たりしたし、また外国人犯罪という社会問題の提起にもなったりしている。
批判
「彼らは正義のために動いてんじゃないの。自分の動画のネタのために動いてるわけじゃん」
ーシバター氏ー
私的制裁・過剰防衛になる可能性もある
私人逮捕の際に、相手を暴行したり、また自分から暴行する気はなくても抵抗された結果暴行すれば過剰防衛になり、YouTuber側が逮捕されたり相手に訴えられる可能性がある。
このほか、私人逮捕の記事にもあるように、犯罪を行うように唆しても罪になる。北斗の拳において、シンにケンシロウを襲わせたジャギをイメージするとニコニコ的には分かりやすいだろう。シンは実行犯でもちろん殺人未遂だが、ジャギには犯罪教唆罪という罪状が適用されるのである。現実世界であれば、転売ヤー等の私人逮捕動画において、自分があたかも買うかのように囮捜査を行っている事例が確認されているが、これは犯行を決意させたという点で教唆罪の適用が可能と考えられる。
教唆罪とは教唆行為=唆すこと、その教唆行為によって相手方に犯罪を実行する意思が生まれること、その意思に基づき犯行が実際に行われた上で結果が生じてしまったことの3つの条件が揃うと成立してしまうため、インターネット上で違法薬物を持って来いと煽って待ち伏せしただけでも罪となってしまうのである。事実、この教唆行為を主として、覚醒剤取締法違反(教唆行為)で2名の逮捕者が出ている。
また、いくら相手が犯罪者だとしても私的制裁までは許されない。その場のノリでヒートアップし「こいつは悪だから何をしても許されるよ」状態になってしまったら悪くなるのはYouTuber側である。「女怪盗を捕まえたら美人だったので制裁レイプ!」みたいなのはエロ同人エロ漫画の中だけにしてください。
民間の警備員の仕事をした経験のある者であれば当然知っているとは思うが、実際問題、民間警備会社のガードマンですら現行犯現認以外での逮捕、捜査行為は出来ず、職務質問に関しては厳禁。可能なのは警告や敷地内での追跡ぐらいが関の山である。攻撃は基本的に認められていない他、武装についても規定の規格内での警棒装備が認められているくらいであり、服装についても警察官と極度に似すぎてはいけないなど厳しい規則がある。この辺りは警備業法という法律に詳しい。
また、警察官の職務を侵害しない為に、民間警備会社では就業前に刑事訴訟法などの基本的な法律の勉強を必須としていることもある。
無関係な人に付きまとったり、無実の人に攻撃する可能性
多少挙動不審であったりするだけで「怪しい」とされた人が付きまとわれ動画に晒しあげられたり、実際には犯罪者ではない人を有罪と決めつけて攻撃し動画に晒し上げるリスクもある。
実際にこうした「身勝手な推理」だけで容疑者と決めつけた人間を警察に引き渡したところで、殆どの場合は嫌疑不十分、事件として立件困難(そもそも事件や犯罪行為自体が発生しておらず、私人逮捕の要件すら満たさない)といった理由で即時解放される。
2023年11月13日には、この種の冤罪事件を起こしたとして、名誉毀損罪により、実際にYouTuber側が家宅捜索を受け、その結果逮捕されるに至っている。
そもそも危険である
前述の中国人の例のように、相手が逆ギレして襲ってきたり、場合によっては刃物を持ち出したりする可能性もないわけではない。そのような場合にも対処できるように、警察官は柔道剣道逮捕術など日本の武道を学び日々鍛錬しているわけである。その辺の喧嘩自慢とは違うのである。そのような鍛錬もなく、ただの喧嘩自慢みたいな人が危険な犯罪者と戦うとなれば、当然危険であり大けがや死を招くことにもなりかねない。
また、詐欺や新興宗教のようなものであれば、単純な犯罪ではなく、バックに大きな犯罪組織や、日本のヤクザなんかよりはるかに恐ろしいチャイナマフィア、その他中国や韓国の大規模な海外犯罪組織がいる可能性がある。そんな奴らに下手に関わったら次の日には六甲山地の山中に埋められたり、大阪湾に沈められて消される可能性だってある。それに、下手に末端だけ逮捕すれば、トカゲの尻尾切り的に組織は逃げて、警察が一網打尽にする機会が失われることだってある。また、非公開の司法取引等を行っていたとすれば、それも不成立となり重要な証言、証拠を失う。
それだけであればまだ良い方であり、あらぬ疑いをかけられた無関係な参加者が一方的に報復措置を受ける可能性も十分に有り得る。組織側の多くが、個人情報を握っている確率が高い事実を忘れている。
何故警察官はすぐに突入しない?、組織に表立って戦いを挑む自分こそが抑止力として機能しているのだ、と言う言い分があるが、そういった二次被害や連鎖的な犯罪の発生も考慮して慎重に捜査している事を忘れてはいけない。
そして、捜査令状もない勝手な違法捜査によって得られた映像や音声の証拠に関しては、盗撮や盗聴によって得たものとして裁判所が証拠として認めない可能性も大いにあり、結果的に被害者の足を引っ張ることになるほか、世界中への動画公開によって“社会的な制裁を既に受けている”と裁判所が判断すれば、厳罰どころか刑を軽くしてしまうことでさえ有り得るのである。
取り締まり行為をしているつもりが、むしろ犯罪組織を助ける側に回ってしまうことだって考えられるのである。
そもそも正義のための動いてるわけではないのでは?
「自分勝手な『正義』に酔っているだけ」「正義マン」などとも批判される。上述の引用のとおり有名YouTuberで格闘家のシバター氏も「動画のネタのために動いてるだけ」「気持ち悪い」と批判している。
実際、情報提供を呼びかけるアカウントも存在しているが、情報を得た所で素人が勝手に捜査活動をすること自体が法的にかなりグレーである。そもそも、単なる素人に情報提供するくらいであれば、消費者事件なら消費生活センター(直通電話188など)、刑事事件なら警察の相談専用窓口(直通電話#9110など)に相談、法的に問題のある民事事件ならば弁護士などの専門家にする方が安全かつ確実である。
なんの資格も持たない素人に不確定な情報提供をして何か別の事件が起こった場合、提供した本人にも責任が及ぶ可能性がある為である。警察機関への提供であればそのような責任が発生する事は絶対に無い。
事件として立件されていない以上は、警察や弁護士などの専門家もすぐに動いてはくれないかもしれない。だが、身勝手な正義感のみで動く素人を野放しにしては、性の喜びおじさん事件で知られるような思わぬ事故が発生してしまう可能性も高いのである。私刑人を肯定していては、法治国家としての根幹を揺るがすことにもなりかねないのだ。
もう一度言う。私人逮捕系YouTuberの根本的な正体とは法律を何ら理解しない売名目当ての単なる一般素人である。
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関連項目
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