軍隊狸単語

1件
グンタイタヌキ
2.2千文字の記事
  • 1
  • 0pt
掲示板へ

軍隊狸とは、日本民間伝承、一種の妖怪譚である。

概要

日本軍側として戦争に参加していた、といった伝承。

1927年に出版された「笠井新也」による書籍『波のの話』には、徳島県板野にあった「觀音院」(観音院)という寺に住み着いていて住職にかわいがられていた日清戦争日露戦争に出征したという話や、

明治二十七八年の日の時には、このも住職の許を得て出征したが、媾和になる前に負傷してつてた。又三十七八年の日露の時にも、「御のためぢや、行かねばなるまい。」といつて、また出かけて行つて、至る所で大さうな働をしてつたさうである。その時は、住職のために、每晩連して、自分が加した談をして聞かせたといふことである。際この觀音院の住職は、地へてゐた者でなければ知らないやうな事をよく知つてゐるので、話も虛言ではなからうとの事である。

兵衛」という火術(打ち上げ花火の術)が得意な日清戦争日露戦争に出征した話などが掲載されている。

明治二十七八年の日役が起つた時に、は「八禿さへ行くのに」といつて出征し、至る所の加して大に功を立てたさうであるが、その後明治三十七八年の日露の役が起つた時にも、また軍して、大に敵をましたさうである。殊にその順攻擊の際などには、が軍の夜襲がある時には必ず加して、得意の火術を以ては敵を脅かし、は敵を牽制して、味方の攻擊に非常便宜をへたといふ。この事は彼が凱旋して後、人に憑いて物語つたので、くこの地方の人々に知られるやうになつたのである。

(※「禿」とは、「屋(八)の禿」として知られる有名な化けの「太三郎」のことか)

よって、少なくともこの書籍が著された昭和初期にこういった話が存在していたことは疑いがい。なお、日清日露戦争のことがられているが、これらの戦争が行われていた当時にまで遡れるという確かな情報はないようだ。

 

1964年に出版された「富田通」(本名:富田寿久)による、に関する伝承をまとめている書籍『たぬきざんまい』には以下のような記載がある。

又、近く明治二十七、八年の日清戦争と同三十七、八年の日露戦争には全各地の有名族がを渡って大陸に馳せ参じ仮装部隊となったり、いは弾薬、糧秣の運搬を手伝って日本軍を援けた話が残っていて、その中に伊予族も壬生町の喜の宮社の喜左衛門をはじめ族が讃岐波の族と連合して々しい戦果を挙げたことになっている。その雄々しい物語を伝えて今になお高松地方では郷土民芸玩具として二等兵の軍装をしたおみやげ品として縁起を讃えて売り出されている。(喜左衛門の戦功については伊予の銘列伝、喜左衛門の項にあり)

 

2021年に出版された『〈怪異〉とナショナリズム』という書籍においては、英治郎が「第2章 出征する〈異類〉と〈異端〉のナショナリズム――「軍隊狸」を中心に」という章を執筆している。

そこでは「日露戦争には、撃たれても倒れない日本兵が参戦しており、を着ていた」という話が大正時代には存在していたらしいことを示し、また「軍隊狸は軍服を着た日本兵に化けていた」という話があることと関連付けて、この「撃たれても倒れない、軍服を着た不死身日本兵」の話が「軍隊狸」の話に変化したのではないか……という説を記載している。ただし、「――と一応は想定しうるが、もとより仮説にすぎない。」という書き方であり、さほどの確はないようだ。

その「不死身日本兵」の話の例は、著名な民俗学者である「柳田男」による説話集『遠野物語』の、1935年に出版された増補版にも以下のように収録されている。

一五三 日露時は、滿場では不思議なこと許りがあつた。露西の俘虜の言葉に、日本兵のうちを著て居る者は者は射てば倒れたが、白服の兵隊はいくら射つても倒れなかつたといふことを言つて居たさうであるが、白服を著た日本兵などは居らぬであると、土淵の似田といふ人はつて居た。

(※最初の「一五三」は説話の通し番号のようなもの)

「軍隊狸」という呼称の歴史

ちなみに、上記のような昭和初期の「日清戦争日露戦争に出征した」という伝承をる書籍に「軍隊狸」という呼称自体が出てくるわけではないようで、「軍隊狸」というこの三文字の呼称がいつ頃付けられたものなのかについては、実ははっきりしない。

「軍隊狸」という呼称の最も古い使用例として本記事初版時点で遡れたものは、ハンドルネームヒモロギ」という人物が運営していた個人サイト「死せるの会」内の、妖怪などを扱う企画怪力事典」内にあった「軍隊狸」のページである。

既にサイト消失済のため、上記リンク先はインターネットアーカイブ。最も古いのが2000年10月27日アーカイブされたバージョンのようで、この日付以前に遡る「軍隊狸」という言葉の使用例は見つけ出せなかった。そのため「サイトであるヒモロギ氏が創作した言葉」という可性すら否定できないようにも思える。

「いや、それよりも古い使用例がある」など、何らかの情報をお持ちの方は本記事のこの部分を更新していただきたい。

関連動画

関連項目

関連記事

親記事

子記事

  • なし

兄弟記事

【スポンサーリンク】

  • 1
  • 0pt
記事編集 編集履歴を閲覧

ニコニ広告で宣伝された記事

ニコニコ大百科 (単) 記事と一緒に動画もおすすめ!
提供: 廉架
もっと見る

この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ

お絵カキコがありません

この記事の掲示板に最近投稿されたピコカキコ

ピコカキコがありません

軍隊狸

1 ななしのよっしん
2024/02/02(金) 18:45:49 ID: 7Ei/KdTW7m
の変な敵兵」の都市伝説日露戦争以降もロシアにはあってアフガニスタンチェチェンウクライナでも撃されたという
👍
高評価
0
👎
低評価
0