電動キックボードとは、モーター駆動で自走できるキックボードである。
2022年4月19日可決、2023年7月1日施行の改正道路交通法(以下、改正道交法)により、道路運送車両法上の保安基準に基づく性能確認を経た電動キックボードは新たな車両区分「特定小型原動機付自転車」として分類される。
また、満16歳以上であれば無免許でも公道を走行できる。
日本国内ではモーターで走行する電動キックボードは全て「原動機付車両」として扱われるため、無登録・無保険の電動キックボードで公道を走行する行為は違法である。
概要
原動機付き自転車のキックボード版、といったところ。一般的にキックボードはその名の通り地面を「蹴る」ことで動力を得るが、電動キックボードの場合、搭載したバッテリーからの給電により内蔵モーターを駆動させることで走力を得る(もちろん地面を蹴ってもいいが、あまり現実的ではない)
一般的にタイヤサイズは9インチ以下と小さく、ちょっとした段差などでつっかえてしまうのが難点。大きな段差になると乗り越えられず、搭乗者を前方に投げ出すような恰好で転倒してしまい、思いがけない事故を引き起こしてしまう。
実際に、2022年9月25日に東京都内で電動キックボードを運転していた52歳の男性が車止めに衝突・転倒し、投げ出された事故では、運転者が死亡することとなった。電動キックボードでの死亡事故としては国内初事例。
キックボードと言いながら三輪のものや簡易なシートを備えたものもあり、過去に販売されたHONDAの原動機付自転車「ZOOK」がフレームだけになったかのようなシルエットのものもある。
電動アシスト自転車は自走できない(あくまでもペダルのサポートに限定される)のに対して、電動キックボードはアクセルをひねることで自走できる点が違う。
特定小型原動機付自転車として区分されるもの
改正道交法により、以下の性能要件を満たした電動キックボードは新たな車両区分「特定小型原動機付自転車」に分けられる。その内、運転者の操作により最高速度6kmに制限する機構を備えた電動キックボードは「特例特定小型原動機付自転車」と呼ばれ、歩道の走行(自転車通行可の標識がある歩道に限る)も可能となる。
特定小型原動機付自転車・特例特定小型原動機付自転車は停車時に切り替える事も可能である。
- モーターの定格出力は0.6kw以下のもの
- 変速機が無い、またはオートマチック機構であるもの
- 最高速度が20km/h以下(特定原付)・6km/h以下(特例特小)のもの
- 長さ190cm×幅60cm以内
- 最高速度表示灯(特定原付・緑点灯 特例特小・緑点滅)の装着
- 専用ナンバープレート(10cm×10cm)の装着
特定小型原動機付自転車は、道路運送車両法では「原動機付自転車」として扱われるが道路交通法では電動アシスト自転車と同様の「自転車」として扱われるため、交通ルールはやや変則的となる。
また、従来標識の自転車表示は「自転車および特定小型原付」を指示するように改正されている。
出典:警察庁・特定小型原動機付自転車(いわゆる電動キックボード等)に関する交通ルール等について
- 二段階右折は自転車と同様に全ての交差点で常時必須となる。
- 自転車専用通行帯がある道路では自転車専用通行帯内を走行しなければならない。
- 高速道路・自動車専用道路、そして自転車進入禁止の道路は走行できない。
- 「軽車両を除く」の補助標識がある一方通行標識は逆走できない。
- 「自転車を除く」の補助標識がある一方通行標識は逆走できる。
- 自転車歩行者専用道路(サイクリングロード)は20km/hで走行できる。
- 二輪車通行禁止の標識がある規制区間は走行できる。
また、ヘルメットの装着は努力義務となるが、安全上着用を強く推奨されている。
満16歳以上であれば無免許でも公道を走行できる、ただし交通反則告知書は車両のナンバープレートに対して発行されるため自転車と違い青切符も容赦無く切られるため違反にならないよう努めたい。
特定小型原動機付自転車においては専用ナンバープレートの登録、軽自動車税の納付、自賠責保険の加入は必須となっており、改正後であっても無登録無保険車両の走行はいかなるものも違法となる。
道路交通法改正イコール電動キックボード解禁の意味ではないため、購入の際は注意したい。
特定小型原動機付自転車以外の車両として区分されるもの
特定小型原動機付自転車の要件を満たさない電動キックボードは道路交通法上では「車両」に相当する。
自転車等の軽車両とは違い、公道で運転するには、車両の定格出力・車輪数・車幅等の性能に合わせた車両区分へのナンバー登録、自賠責保険への加入、さらに車両区分に見合った運転免許が必要となっている。
自走が可能な電動キックボードはおおむね下記の車両区分に該当する。
- 第一種一般原動機付自転車 … 定格出力0.6kw以下の二輪車両
- 第二種一般原動機付自転車 … 定格出力0.6kwを超え1.0kw以下の二輪車両
- 軽二輪 … 定格出力1.0kwを超える二輪車両
- ミニカー … 定格出力0.6kw以下の三輪以上の車両
- 側車付軽二輪(トライク) … 定格出力0.6kwを超える三輪車両
- 小型特殊自動車
例外として、最高速度6km以下でシート付きかつ三輪以上の車両は「電動車いす」として歩行者として取り扱われる。
原付免許で運転できる電動キックボードは出力が0.6kw未満の二輪車両、それ以上だと普通二輪小型限定免許以上が必要となる。また、小型特殊自動車の場合は小型特殊自動車免許、ミニカーやトライクの場合は普通自動車免許が必要になるなど免許区分も変わってくる。
また、原付・軽二輪に該当する車両で走行する際はヘルメットの着用義務がある。
ミニカー、小型特殊自動車、側車付軽二輪の車両では着用義務は無いが強く推奨される。
さらに、公道を走るためには一般車両と同様に以下の保安部品が必要となる。
- 後写鏡(バックミラー)
- 前照灯(ヘッドランプ)
- 尾灯・制動灯(テールランプ・ブレーキランプ)
- 制動装置(前後輪ブレーキ)
- 方向指示器(ウインカー)
- 後部反射鏡(リフレクター)
- 番号灯(ナンバープレート照明)
- 警音機(クラクション)
- 速度計(スピードメーター)
加えて、バイクや自動車と同様にナンバープレートの取得、車両区分に見合った自賠責保険の加入が必須となっている。
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