用語
SUVはSport Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の略称で、直訳すると「多目的スポーツ車」となる。SUVのSportは「娯楽やレジャー用」といった意味であって、いわゆるスポーツカーとは直接関係がない概念である。意味合いとしては、1990年代の日本で流行したRV(レクリエーショナル・ビークル)と近接する。
日本語の情報では、SUVはSpace Utility Vehicle(スペース・ユーティリティ・ビークル)の略であるという主張も見受けられるが、SUVという語の発祥した英語圏ではそういった用例はなく、どこかの日本人が独自に考え出したバクロニム(既存の単語の頭文字やアルファベットを利用して後付けで意味を持たせた語句)であると思われる。
概ねボンネットがあり、ルーフがリアまで続いていて、車高が高くてホイールが大きく、オフロード車風の雰囲気(実際の悪路走破性は問わない)を持つ乗用車がSUVと呼ばれる。車検証の車体形状の表記では概ね「ステーションワゴン」とされるが、「箱型」「幌型」と表記されることもありえる。
SUVという概念はアメリカ合衆国発祥だが、本来はトヨタのハイラックスサーフに代表される「ピックアップトラックにリムーバブルシェルをつけた車両」を指した。ハイラックスサーフはキャビンにチルト式のサンルーフも装備し、シェルを外すと、オープン・エアを楽しめるオープンカーにもなった。
1980年代、ラダーフレームを持つオフロード志向のワゴンであったジープ・SJチェロキー(1974〜1983)の後継として登場したXJチェロキー(1984〜2001)はユニボディ(モノコック)でありながらオフロード車に準じる悪路走破性とSUVテイストを導入し「クロスオーバーSUV」と呼ばれるようになった。そして1990年代に入ると従来「RV」などと呼ばれたレジャー用途乗用車や、ランドローバーやランドクルーザーのような「クロスカントリー車(CUV)」の概念が合体していき、さらに1997年登場のトヨタ・ハリアーを火付け役に流行し始めた高級志向のクロスオーバーSUVが合流した結果、SUVと呼ばれる車種は極度に多様化し、今では共通した特徴を挙げることは困難となった。
分類
SUVと呼ばれる車は車体構造も駆動方式も多岐にわたるが、乗用車のようなモノコックボディか、トラックのようなラダーフレームを持つかということで大雑把に分類されることが多い。
- (古典的な)SUV
ラダーフレームを持つピックアップトラックにFRP製シェルを被せ、ステーションワゴンのような形状としたもの。駆動方式は4WDとは限らず、後輪駆動(FR)のものも多い。ラダーフレームは重量がかさむ反面、耐荷重性に優れる。荒れた路面を走行する際に激しい衝撃を繰り返し受けても歪みにくいことから、オフロード走行にもうってつけである。また、重量物を牽引するのにも適している。
本来、SUVとはこの手の車両を指した。後に車体とシェルを一体化し取り外せなくしたものも多く登場し、クロスオーバー車やクロスカントリー車との境目が曖昧となった。 - クロスオーバーSUV
モノコックボディのSUV。現在のSUVと呼ばれる車種の多くがこれ。CUV、XUVなどと略されることも。
駆動方式は多くがFFまたはFFベースの4WDである。当然ながら悪路走破性には劣るが、オンロードでの乗り心地がよく街乗りには適しているし、燃費などにも勝る。
元々のSUVの出自がトラックなのに対し、こちらは完全なる乗用車である。もう別物じゃないかって? 気にするな!なお、この手の車種の元祖(のひとつ)であるXJチェロキーはモノコックボディとはいえフルタイムまたはパートタイムの4WD機構を搭載し、割と真面目に悪路走破性を追求していた。 - クロスカントリーSUV
ラダーフレームを持ちオフロードの走行を主眼とした車両で、オフロード車、クロカン車などとも。
本来はSUVとは別のところから発生したジャンルだが、後付けでSUVと一括りにされるようになった。
かつて四駆・4WDと言えばこの手の車種を指した。第二次世界大戦中に軍用車として作られたジープが発祥で、ジープがこのジャンルの代名詞であった時代もある。
センターデフロック付き4WDなどの悪路走行を前提とした四輪駆動機構を持つ。オンロードではその悪路走破性は無用の長物であり、乗り心地に難があり、燃費やタイヤ代などの維持費がかさみがちであるが、あえて街乗りするのが強そう粋であるとする向きもあり、バブル期の日本では大いに流行した。
3代目以降の三菱・パジェロのようにモノコックボディにラダーフレームを溶接したモデルがあったり、ランドローバー・ディフェンダーのように完全なモノコックボディのクロスオーバー車に転向してしまうモデルもあったりする。
関連動画
関連項目
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