日本調教馬史上2頭目となる、「騸馬(せん馬)」のGI勝利馬である。
1994年:ジャパンカップ(GI)、金鯱賞(GIII)、京都大賞典(GII)
輸入牝馬として日本にやってきたモリタであったが、彼女は当時すでに受胎していた。そして日本にやってきた後に出産。そのときに生まれたのがマーベラスクラウンである。(いわゆる持込馬。)
父はミスタープロスペクター系としては長距離に適応し、凱旋門賞馬Urban SeaやBCクラシック勝ち馬ブラックタイアフェアーらを輩出、母父としても優れた実績を持つMiswaki、母はニュージーランドオークス勝ちのある輸入牝馬モリタという血統。
1992年9月にデビュー。新馬戦を快勝後、もみじステークスでビワハヤヒデ、エリカ賞でワコーチカコと互角の勝負をするなど素質は素晴らしかったのだが、気性難によるロスが響き、敗戦が続いた。調教でも主戦ジョッキーの南井克巳をたびたび振り落とすなどの荒々しさがあったため、馬主が去勢を決断した。こうして彼はせん馬となり、彼の牡馬としての未来は絶たれたのであった。
手術後、復帰までに1年間を要したが、1993年10月に復帰。復帰後は条件戦をポンポンと3連勝しオープンクラスに昇格するなどその才能を開花させた…かに見えたが、重賞戦線では鳴尾記念2着、スポニチ金杯2着、日経新春杯4着、マイラーズカップ2着、大阪杯6着、新潟大賞典2着と立て続けに惜敗し、善戦止まりとなってしまう。
それでもめげずに挑戦し続けた彼だったが、ついに金鯱賞(GIII)にて悲願の重賞勝利を果たす。
この善戦止まりだった期間について、相手もノースフライトやネーハイシーザーといった強豪相手の負けもあったが、ルーブルアクトやムッシュシェクルなど重賞止まりの馬にも負けていたので、ここまではまだ相手なりに走る馬でしかなかった。その証拠に大阪杯後金鯱賞こそ勝ち重賞初勝利を挙げるが、その次走高松宮杯ではナイスネイチャに負けたりしている。 ネイチャが弱いってわけじゃないが、当時のネイチャは重賞で連敗続きであり、この勝利は1991年12月の鳴尾記念以来実に2年半以上ぶりの勝利、そして生涯最後の勝利でもあった。なんだかなあ。
そんな彼だが、1994年秋は充実の時となる。まず京都大賞典(GII)を快勝。そして、せん馬にとって秋の最大目標でもあるジャパンカップ(GI)へ向かう。
海外馬は前年来日したコタシャーンや、スターオブコジーンと激戦を繰り広げた名中距離馬パラダイスクリーク、ブラジルから移籍してアメリカの新エースになった逃げ馬Sandpit、1993年のフランスダービー馬Hernando、1992年のBCターフ勝ち馬フレイズなど、参戦した10頭すべてがGI覇者という豪華な顔ぶれであった。
つまり、日本馬にはGI勝ち馬が1頭もおらず、正直なところ層が非常に薄い。ファンの間からは、「う~ん、これが日本代表?」「世界からこんなにすごい馬が来てくれたのに、日本側のレベルが低すぎる」という厳しい声も聞こえてきた。しかしながら当時は、前年度クラシック勝利馬のビワハヤヒデとウイニングチケットは引退、ナリタタイシンは休養中。また当時の有力馬でもある三冠馬ナリタブライアンは有馬記念直行のため回避、天皇賞秋制覇のネーハイシーザーは距離的な判断で回避という状況であった。当然各陣営の事情によるので、日本の層の薄さを責めるのは酷かもしれない。ファンとしても、海外馬の実力をどこまで信頼していいのかわからず、レース前は混沌とした雰囲気に包まれていた。そんな中、マーベラスクラウンは6番人気に推された。一番人気すら4.5倍という大混戦であり、10.6倍でここはまあ妥当なところである。
レースはフジヤマケンザンがハナを切る形でスタート。普段から逃げる 1番人気のSandpit が前に出られず焦れ、途中で先頭を奪う展開となった。そして直線、焦れた影響かSandpitの勢いが止まり、先行したマーベラスクラウンが抜け出しを図る。しかし、パラダイスクリークとなぜかロイスアンドロイスがすごい勢いで猛追。内マーベラス・真ん中パラダイス・外ロイスの叩き合いになった。外からロイスが一瞬先頭に立ったと思ったが、そこから失速し脱落。代わってパラダイスが抜け出しかけるがマーベラスが食い下がり、最後の二完歩で差し返し、ハナ差1着でゴールに飛び込んだ。
勝ち時計は2分23秒6。当時のジャパンカップ史上3番目の好タイムとなる好走であった。
この勝利でトウカイテイオーからの日本馬ジャパンカップ3連勝、そしてレガシーワールド(前年度優勝馬)に続いてせん馬による同一GI連覇という快挙を成し遂げたのであった。
せん馬絡みの記録はもう日本ではなかなかお目にかかれないであろう。これ以降にGIを勝ったのはマイルチャンピオンシップのトウカイポイント、東京大賞典・チャンピオンズカップ・JBCクラシックのサウンドトゥルー、フェブラリーステークスのノンコノユメくらいだし、J・GIに広げても日本馬ではJ・GI春秋連覇のブランディスや、中山大障害を制したものの共に現役中に亡くなったメルシータカオーとシングンマイケルくらいである。近年、せん馬の数はやや増えてきたものの、日本では 一時期ほとんど去勢されることがなかった。そんな環境の中で、レガシーワールドとマーベラスクラウンがGIで連覇する活躍を見せたのは黄金期故の、ある種の奇跡なのかもしれない。ん?カラジ?外国馬です。
しかし、この 栄光の勝利の後、脚を故障。約1年にわたる長期休養を余儀なくされた。
復帰後も思うような成績を残すことができず、再び脚部不安を発症。その後、南関東・船橋競馬場へ移籍した。しかし移籍後2戦目のレースで、競走中止となる不運に見舞われる。幸い命に別状はなかったものの、これを最後に現役を引退することとなった。
引退後は、北海道で功労馬として余生を過ごした。その後2007年6月、繋養されていた新ひだか町の中橋清氏の牧場で死亡したことが発表された。享年17歳であった。
1994年のジャパンカップにはGrand Flotillaという7歳馬が出走していた(ナイスネイチャと8着同着)のだが、その馬の母はモリタ。欧州時代に産んだ、マーベラスの兄だったのである。兄弟対決がGIでというだけなら、近年でもダイワメジャー・スカーレット兄妹やメロディーレーン・タイトルホルダー姉弟が揃い踏みするなどそこまで特筆するほど珍しくもない感じもあるのだが…。なんともう一組兄弟対決があった。4着Hernando(弟)と12着Johhan Quatz(兄)が兄弟だったのだ。兄弟二組はめったにないことであり、その点からしてもこのジャパンカップは非常に稀な事象が起こったと言えよう。
「え、ここで突然B'z?」と思った人も多いかもしれない。大丈夫、みんな思ってる。
2000年にリリースされたB'zの11枚目のアルバム『ELEVEN』。そのジャケットアートワークは、「B'z ELEVEN」という名の栗毛の競走馬がレースで独走している瞬間を描いたイラストが使用されている。実はこのイラストは、マーベラスクラウンが勝利した1994年ジャパンカップの写真を加工して使っているのである。
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https://twitter.com/nikkankeiba/status/1397398169055645707
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https://twitter.com/nikkankeiba/status/1397398571671040000
ちなみにこのイラストでは、マーベラス…もとい「B'z ELEVEN」は完全に独走状態となっており、本来なら一緒に写っているはずのパラダイスクリークやロイスアンドロイスの姿はなく、CG加工で消されている。また、歌詞カードや裏ジャケットにも B'zの2人とともに馬が登場 しており、デザイン全体に競走馬のイメージが取り入れられている。担当したデザイナー曰く、「独走するB'zを表現したい」 という意図から、この競走馬を取り入れたデザインが採用されたという。
Miswaki 1978 栗毛 |
Mr. Prospector 1970 鹿毛 |
Raise a Native | Native Dancer |
Raise You | |||
Gold Digger | Nashua | ||
Sequence | |||
Hopespringseternal 1971 栗毛 |
Buckpasser | Tom Fool | |
Busanda | |||
Rose Bower | Princequillo | ||
Lea Lane | |||
*モリタ Maurita 1978 栗毛 FNo.13-a |
Harbor Prince 1969 栗毛 |
Prince John | Princequillo |
fraid | |||
Hornpipe | Hornbeam | ||
Sugar Bun | |||
Cathmoi 1972 栗毛 |
Alvaro | Rockefella | |
Aldegonde | |||
Untried | The Summit | ||
Cordial | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Princequillo 4×4(12.50%)、Count Fleet 5×5(6.25%)、Hyperion 5×5(6.25%)、Nasrullah 5×5(6.25%)
掲示板
7 ななしのよっしん
2022/04/23(土) 09:46:27 ID: MSQWYIGFrW
せん馬G1タイトル仲間としてサウンドトゥルーも足しといてあげてくれ
8 ななしのよっしん
2022/12/17(土) 15:25:43 ID: TRsim3hFPR
>>6
新年会の王様ゲームで「牝馬ならオマケ、牡馬ならタマ見せる」にマーベラスクラウンとレガシーワールドが当たるやつはめっちゃ笑った
「どーれ見せてみろ」
「「ねーよ!!」」
9 ななしのよっしん
2023/08/04(金) 06:40:30 ID: Ewfj77u4J7
船橋に在籍してた時、地方競馬の情報番組で取り上げた時にその回のゲストだったよしだみほが直筆のマーベラスクラウンのイラストを描いて視聴者プレゼントした事があった。
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提供: さばこ
提供: とっても大好き❗バッタもん
提供: クロ
提供: 夕陽
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最終更新:2025/03/22(土) 10:00
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