ランテマリオ星域会戦とは、「銀河英雄伝説」の戦闘のひとつである。
銀河英雄伝説の戦闘 | |
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“神々の黄昏”作戦 ランテマリオ星域会戦 |
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基本情報 | |
時期 : 宇宙暦799年/帝国暦490年 2月8日13時45分 - 2月9日頃 |
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地点 : 自由惑星同盟 ランテマリオ星域 | |
結果 : ゴールデンバウム朝銀河帝国軍の勝利 | |
詳細情報 | |
交戦勢力 | |
ゴールデンバウム朝銀河帝国軍 | 自由惑星同盟軍 |
総指揮官 | |
帝国軍最高司令官 ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥 |
宇宙艦隊司令長官 アレクサンドル・ビュコック元帥 |
動員兵力 | |
ローエングラム直属艦隊 ミッターマイヤー艦隊 ミュラー艦隊 ワーレン艦隊 ファーレンハイト艦隊 黒色槍騎兵艦隊 (艦艇総数約15万隻) |
第1艦隊(パエッタ中将) 第14艦隊(モートン中将) 第15艦隊(カールセン中将) (艦艇3万2900隻、兵力520万6000名) イゼルローン要塞駐留艦隊(ヤン大将) |
“神々の黄昏”作戦 |
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第九次イゼルローン要塞攻防戦 - フェザーン侵攻 - ランテマリオ星域会戦 - 帝国軍輸送船団の壊滅 - バーミリオン星域会戦 (ライガール、トリプラ両星系間の戦い - タッシリ星域付近における戦闘 - バーミリオン星域会戦 - バーラト星系攻略) |
前の戦闘 | 次の戦闘 |
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フェザーン侵攻 | バーミリオン星域会戦 |
宇宙暦799年/帝国暦490年2月8日から翌9日にかけ、ゴールデンバウム朝銀河帝国による自由惑星同盟侵攻作戦“神々の黄昏”作戦中に発生した、ランテマリオ星域における銀河帝国軍と自由惑星同盟軍とのあいだの戦闘。
フェザーン回廊経由で同盟領に侵入、首都星ハイネセンへと進撃する銀河帝国軍に対し自由惑星同盟軍がその阻止を試みた一大決戦であるが、同盟軍は大敗し、増援の来着によりかろうじて壊滅をまぬがれた。
戦闘後には帝国軍も再編のため進撃を中止し、戦略レベルでの戦況は同年4月に開始されるバーミリオン星域会戦まで膠着することとなる。
詳しくは「“神々の黄昏”作戦」を参照。
宇宙暦798年末、帝国軍は“神々の黄昏”作戦の発動によりフェザーンを奇襲占領(フェザーン侵攻)し、年が変わると時を同じくしてフェザーン回廊から同盟領への大挙侵攻を開始した。その兵力は戦闘艦艇11万隻余、将兵1660万名に及んだ。
帝国軍のフェザーン侵攻を予期していなかった自由惑星同盟では、国境を護るイゼルローン要塞が迂回される事態に恐慌状態に陥りつつも、かろうじて迎撃戦力を整えた。同盟軍の機動戦力は首都の第1艦隊に加え急遽新編された第14、第15艦隊が存在したが、3個艦隊の総数は3万5000隻程度に過ぎず、帝国軍に対し著しく不利であった。同盟軍には他にイゼルローン要塞駐留艦隊(ヤン艦隊)が存在していたが、イゼルローンも798年末よりオスカー・フォン・ロイエンタール上級大将が指揮する帝国軍の全面攻撃を受けており(第九次イゼルローン要塞攻防戦)、容易にフェザーン方面に移転できる兵力ではなかった。
1月30日、帝国軍侵攻部隊はポレヴィト星系に集結する。報を受けた同盟軍は、ポレヴィトから首都星ハイネセンまでの経路上で最後の無人星域であるランテマリオ星域を最終阻止線とした迎撃を決定する。これは迎撃を遅延させた場合、帝国軍の脅威を直接受けている辺境諸星系が離反する政治的懸念が反映されたもので、当時の同盟軍統合作戦本部がすでに周章狼狽して戦略の確立に至らなかった結果、宇宙艦隊司令部が戦術レベルで“戦って勝たざるをえぬ”状況に追い込まれたがゆえの決定でもあった。
対する帝国遠征軍司令部においても、同盟軍がポレヴィトからランテマリオにかけての無人の星域を決戦場に選択するであろうことを確信的に予測し、全面戦闘に向けた作戦計画と兵力配置が整えられる。そして2月4日、同盟軍宇宙艦隊はバーラト星系を進発し、一路ランテマリオ星域へと向かった。
帝国軍の戦力は、ポレヴィト星域集結時点で戦闘用艦艇11万2700隻、支援艦艇4万1900隻。帝国軍最高司令官ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥直卒のもと、直属艦隊以外の艦隊はウォルフガング・ミッターマイヤー上級大将、アウグスト・ザムエル・ワーレン大将、ナイトハルト・ミュラー大将、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト大将、アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト大将らが指揮した。
同盟軍との決戦を予期して部隊を再配置するにあたり、帝国軍司令部は“双頭の蛇”の陣形による迎撃計画を策定した。前後に長く伸びる帝国軍の艦列を両端に頭を持つ蛇に見立て、いかなる部分に攻撃を受けても両頭が敵部隊を横撃する構造であり、同盟軍に対し戦力で圧倒するからこそ可能なものであった。帝国軍艦列の前後分断を狙うであろう同盟軍の攻撃を引き受ける蛇の胴体部(事実上の先陣)の指揮はミッターマイヤー上級大将に委ねられ、本来の先陣である前側の頭はローエングラム元帥が直卒する。
この“双頭の蛇”は柔軟かつ機敏に指揮運用されなければ効能を発揮しないため、総司令官ローエングラム元帥からの指令を迅速確実に全艦隊に伝達できるよう、戦術級の通信インフラは十全に整備された。これにより、通信網にはアンチ妨害システムが三重に設置され、さらに短距離跳躍可能な連絡用シャトルを2000隻準備して通信妨害に備えた。
帝国軍を迎撃するためハイネセンを出撃した同盟軍戦力は第1、第14、第15の3個艦隊からなり、艦艇総数3万2900隻、将兵520万6000名。宇宙艦隊司令長官アレクサンドル・ビュコック元帥が直接指揮し、総参謀長をチュン・ウー・チェン大将が務めた。第1艦隊司令官はパエッタ中将、第14艦隊司令官はライオネル・モートン中将、第15艦隊司令官はラルフ・カールセン中将。
迎撃計画の策定に先立ち、同盟軍総司令部はヤン・ウェンリー大将の指揮する要塞駐留艦隊(ヤン艦隊)との合流を目し、帝国軍の攻撃下にあるイゼルローン要塞に放棄を認めていた。要塞の放棄は1月18日に実施され、計算上、民間人避難による遅れを加味しても2月15日にはヤン艦隊がランテマリオに到達可能と考えられた。しかしそれでも、帝国軍の進撃速度と勘案すると合流まで開戦を延期することは不可能とみざるをえず、同盟軍は3個艦隊のみで戦闘を迎えることとなった。
そのヤン艦隊は要塞放棄後、中途で民間人の輸送船団を要塞事務監アレックス・キャゼルヌ少将の指揮に委ねて分離し、首都星ハイネセンに向かうこともなく、両軍の予測を上回るスピードでランテマリオ星域に急行していた。フェザーン方面の帝国軍はこの動きを察知しないまま、両軍は戦闘に突入する。
2月8日13時、両軍の戦列は帝国軍の細長い艦列の中央側面に同盟軍の先鋒が向かうかたちで距離5.9光秒まで接近し、13時45分に距離5.1光秒で砲戦が開始された。同盟軍は帝国軍の予測どおり中央突破戦術を初期方針としていたが、両軍の接近につれ帝国軍中央部の重厚さを確認したビュコック元帥は、短時間での中央突破に失敗して包囲される危険の大きさをさとり突破を断念、まず帝国軍の行動をうけながしてから帝国軍の両翼どちらかにまわって各個撃破する方針に切り替えた。
戦闘開始後30分間、大きな動きなく砲戦が交わされたのち、ミッターマイヤー上級大将は全艦隊に示威と小手調べをかねた同時前進を下令する。しかし対する同盟軍先頭部隊では、大艦隊接近の圧力に耐えきれなかった一部の最前線指揮官の恐慌が伝染し、総司令部の待機命令を振り切った暴発的な乱射でこれに応じた。先頭部隊による狂躁的で無秩序な猛攻が与えた局所的な高負荷は、両軍の予想をこえて帝国軍の大集団に亀裂を生じさせる結果を招き、衝突や自滅も辞さない狂躁に陥って突進する先頭部隊がさらに帝国軍を動揺させることとなる。
この事態に、ミッターマイヤー上級大将は同盟軍の狂躁にあきれつつも、退きながら受け流す戦法で対応。いっぽうビュコック元帥はあらゆる手段をもちいて指揮系統を再接続し、狂奔する先頭部隊に対し後退と再編を厳命する。だが、落ち着きを取り戻した先頭部隊が後退に移ろうとすると同時にミッターマイヤー艦隊が一斉に反転攻勢に移り、さらに同盟軍左右から“双頭の蛇”の両頭の総攻撃が開始され、帝国軍は一挙に同盟軍を半包囲下へと追い込んでいった。
つづく8日16時から19時まで、3時間にわたり苛烈な戦闘が演じられた。同盟軍左側面では、艦列の分断を試みた帝国軍ワーレン艦隊をモートン中将の応射により挫折させたものの、同艦隊に密着されて損耗をしいられた。同盟軍後背に対してもファーレンハイト艦隊がワーレン艦隊の外側を繞回して進出を企図し、計器類に影響が出るほど経路が恒星に近づいたために断念された。しかし全体としては、同盟軍はビュコック元帥の指揮によっていちおう危地を脱し、強固に戦線を維持することができた。
翌9日に入ると、兵力で圧倒する帝国軍が全戦線で前進し、同盟軍は戦列の欠損を補填する戦力を失ってゆく。それでも同盟軍はビュコック元帥の老練な指揮のもと、指揮統制と行動の秩序を維持し、受動と防御を旨に徹底した守勢をとって、帝国軍の勝利の確立と自軍の決定的な敗北の時を引き伸ばしつづけた。この戦況を見たローエングラム元帥は、それまで後置しつづけてきた予備兵力の投入を決断し、9日11時、ビッテンフェルト大将指揮下の黒色槍騎兵艦隊が行動を開始する。
当時、戦場では太陽風や惑星の運動が作り上げたエネルギー流が同盟軍とのあいだを阻んでいた。猛将と知られるビッテンフェルト大将は迂回をよしとせず直接の“渡河”を選んだが、予想以上のエネルギーの勢いに艦隊はやや押し流される。11時20分、“着岸”した黒色槍騎兵艦隊に対し、その地点を計算のうえ集中砲撃の体勢を整えていた同盟軍は一斉射撃を開始したが、強剛をもって鳴る黒色槍騎兵艦隊の反撃には持ちこたえられず、さらに帝国軍全軍が一挙に攻撃に移るに至って同盟軍の戦列はほぼ崩壊した。
戦域に急行していたヤン艦隊が帝国軍後背に到着したのはこの時機である。帝国軍では、損傷して安全宙域に下がっていたミュラー艦隊所属巡航艦<オーバーハウゼン>が戦場と逆方向に多数の艦船を探知し、誰何の通信に攻撃を返されたことで初めて同盟軍別部隊の接近が発見された。この時、ヤン大将のねらいは、自艦隊を大規模な陽動として同盟軍本隊の潰滅を防ぐことにあった。
ヤン大将の思惑通り、フェザーンへの補給路を扼する位置の敵艦隊出現に後方遮断の危険をさとった帝国軍は急遽追撃中止を命じたものの、おりしも無秩序な最後の全面攻勢に入ろうというときの制止と転針によって艦列を乱し、同盟軍本隊の反撃と戦場離脱を許すこととなった。とはいえ、最高司令部の適切な対応により混乱は大事に至ることなく収拾され、ローエングラム元帥はヤン大将の陽動の意図を洞察していたものの一応の用心として兵を引き、帝国軍の秩序回復に専念した。
同盟軍の側も、すでに本隊の潰滅をかろうじてふせいだ以上、次はイゼルローン要塞を奪還して同盟領に入った帝国軍イゼルローン方面軍(ロイエンタール軍)によるハイネセンへの進攻の危険を防ぐことを優先すべきであり、ヤン艦隊をただちに首都星ハイネセンへと急行させなければならなかった。こうしてランテマリオ星域会戦は、帝国軍が圧倒しながらも完勝を逃すかたちで終結した。
敗北した同盟軍本隊は、ヤン艦隊との集結後に首都星ハイネセンへと撤退した。再後衛はヤン艦隊のエドウィン・フィッシャー少将が指揮し、帝国軍の追撃を警戒して迎撃の備えをとった。途上、フェザーン駐在武官ユリアン・ミンツ同盟軍少尉が指揮する帝国軍駆逐艦<ハメルン4号>の接近を発見し、護送している。これはフェザーン侵攻の際、ミンツ少尉が同盟弁務官ヘンスローを護衛して民間商船でフェザーンを脱出したうえ、同船の臨検を試みた<ハメルン4号>を逆に奪取したものであった。
いっぽう帝国軍はハイネセンへの進撃を中断し、戦場を離脱して距離2.4光年の位置にあるガンダルヴァ恒星系へと移動、第二惑星ウルヴァシーへ降下して同地を将来の同盟領制圧後を目した半永久的な軍事拠点とすべく基地建設を開始した。やがてロイエンタール軍も合流して帝国軍の大艦隊が同地に集結したが、再度の作戦に出る前に、バーミリオン星域会戦に向けたヤン艦隊の蠢動が始まるのである。
原作では本伝第五巻風雲篇第四章「双頭の蛇」においてランテマリオ星域会戦を描く。
石黒監督版OVAでは第48話「双頭の蛇 ~ランテマリオの決戦~」。
掲示板
3 ななしのよっしん
2023/05/13(土) 07:41:53 ID: B7zc7bwhUa
フェザーン方面の兵站線防衛とか担当してたのかも。大親征時はミュラーが担当すること多いが、この頃はまだ“鉄壁”じゃないし。
ランテマリオ後、ガンダルヴァに補給基地作れたからある程度余裕ができて前線に呼び出された、みたいな。
4 ななしのよっしん
2023/08/22(火) 23:26:38 ID: hwKmrOERk2
こっちのランテマリオ会戦の記事もあったのか。
個人的には、この会戦こそラインハルトの最上の艦隊指揮だと思ってる。
会戦に至るまではほぼ完璧にシナリオ通りに推移させたし、会戦時も10万隻の大連合艦隊を、これまた完璧に指揮管制してみせたし、その作戦も無駄な難しさはなくシンプルなものだった。
ヤン艦隊が後ろでチョロチョロするまでは、ラインハルトの横綱相撲だったな。
5 ななしのよっしん
2025/01/03(金) 23:34:00 ID: ceRpGR4t4U
帝国軍のフェザーン側からの急侵攻に慌てて対応した形となった同盟軍はマル・アデッタ星域会戦ほどには地の利を占めることもできず、大軍の運用に支障が生じなかった点からしてラインハルトの戦略的先制が開戦前から効いてる感じだったな
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最終更新:2025/04/02(水) 08:00
最終更新:2025/04/02(水) 08:00
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