“神々の黄昏”作戦 単語

ラグナロックサクセン

1.1万文字の記事

“神々の黄昏”作戦ラグナロックさくせん)とは、「銀河英雄伝説」の戦闘のひとつである。

銀河英雄伝説戦闘
神々の黄昏(ラグナロック)作戦
基本情報
時期 : 帝国489年/宇宙798年 11月~490年/799年 5月5日
地点 : イゼルローン回廊フェザーン回廊および自由惑星同盟
結果 : ゴールデンバウム朝銀河帝国軍の勝利
詳細情報
交戦勢力
ゴールデンバウム朝銀河帝国 自由惑星同盟
銀河帝国正統政府
指揮官[1]
帝国軍最高
ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥
宇宙艦隊長官
アレクサンドル・ビュコック大将
イゼルローン要塞
同駐留艦隊
ヤン・ウェンリー大将
動員兵力
フェザーン回廊方面 自由惑星同盟宇宙艦隊
ローエンラム艦隊
ミッターマイヤー艦隊
ミュラー艦隊
シュタインメッツ艦隊
ワーレン艦隊
陸戦要員400万名
(以上、兵員総数1200万名、
 動員艦艇87500隻)
黒色騎兵艦隊
ファーレンハイト艦隊
第1艦隊(パエッタ中将
第14艦隊(モートン中将)
第15艦隊(カールセン中将)
(以上、動員艦艇35000隻)
ゼルローン回廊方面 イゼルローン要塞[2]
ロイエンタール艦隊
ルッツ艦隊
レンネンカンプ艦隊
イゼルローン要塞
イゼルローン要塞駐留艦隊
(ヤン大将)
“神々の黄昏”作戦
第九次イゼルローン要塞攻防戦 - フェザーン侵攻
ンテマリオ星域会戦 - 帝国軍輸送船団の滅 - 
ーミリオン星域会戦 (ライガール、トリプラ両星系間の戦い - 
タッシリ星域付近における戦闘 - バーミリオン星域会戦 -
バーラト攻略
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第八次イゼルローン要塞攻防戦 キュンメル事件

概要

帝国489年/宇宙798年から翌年半ばにかけ、人類宇宙の統一をするゴールデンバウム朝銀河帝国軍が行った、イゼルローンフェザーンの両回廊を利用した自由惑星同盟本土への全面侵攻作戦

この作戦によってフェザーン回廊中立は侵犯され、事実上の独立国家であったフェザーン自治領はその地位を喪失して帝国の統治下におかれた。自由惑星同盟民主国家の形態と形式的な独立を維持しはしたものの、バーラトの和約によって銀河帝国への屈を余儀なくされ、150年余にわたる両国間の戦争状態は自由惑星同盟の敗戦というかたちで終結するに至った。

終結直後、作戦指揮官であった帝国宰相・帝国軍最高公爵ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥皇帝カザリン・ケートヘン1世を退位させて自らの戴冠を宣言し、ゴールデンバウの滅亡とローエングラム朝銀河帝国の成立に至ることとなる。

背景

帝国489年(宇宙798年)当時のゴールデンバウム朝銀河帝国では、前年のリップシュタット戦役終結以来、幼エルウィン・ヨーゼフ2世を傀儡化し帝国宰相と帝国軍最高官をかねて政軍両権を握する公爵ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥による専制独裁体制が成立、ローエンラム独裁体制のもとで旧門閥貴族勢力の排除と民階級への権利拡を中心とする社会体制の刷新が進められ、民階級から強い支持を得ていた。

同年7月ローエンラム体制との取引をめるフェザーン自治領府と幼穏裏に排除しつつ同盟進攻の名分を得たいローエンラム元帥の意図が一致し、フェザーンに使嗾された旧門閥貴族勢力によるエルウィン・ヨーゼフ2世誘拐事件が発生する。「救出」され帝国を脱出した幼自由惑星同盟ヨブ・トリューニヒト政権に受け入れられ、8月20日には元フェザーン駐在帝国高等弁務官ヨッフェン・フォン・レムシャイド伯爵首相とする旧門閥貴族勢力からなる銀河帝国正統政府として、帝国をほしいままにするローエンラム元帥を敵とし同盟と協同して対抗することを宣言した。

対するローエンラム元帥は、エルウィン・ヨーゼフ2世に代えて生後1年に満たないカザリン・ケートヘン1世を即位させるとともに、同盟及び“正統政府”に対する交渉の明確な拒否と武力懲罰の実施を宣言。この事実上の宣戦布告を機として、ローエンラム体制の恩恵を享受する民階級は復古反動への危機感と同盟への敵愾心を急速に結合拡大させ、「一億人・一〇〇万隻体制」が呼号され兵役志願者・再志願者が増大するなど、帝国社会全体で同盟への大規模出兵の気運が高まることとなる。

帝国宇宙艦隊も24時間以内に大小15万隻を動員する第一級出動準備態勢をとり、出師の準備を着実に整えるなか、9月19日帝国軍の最高作戦会議の場において対同盟進攻作戦の要が決定する。

銀河帝国軍の作戦

立案者であるローエンラム元帥により神々の黄昏(ラグナロック)の名を与えられた侵攻作戦の要点は、従来同盟領への進攻に利用してきたイゼルローン回廊に拘泥せず、本来中立フェザーン回廊を通行して同盟領に侵入することにあった。すなわち、同盟軍でもっとも有力な将帥であるヤン・ウェンリー大将が拠る堅固なイゼルローン要塞回し、防備なフェザーン回廊側から一気呵成に同盟領への侵攻を果たそうというのである。同時にそのイゼルローンに対しても、陽動となる攻撃作戦が計画された。

計画にあたって必要となるフェザーン回廊提供は、フェザーン帝国駐在弁務官ニコラス・ボルテック個人によってもたらされた。エルウィン・ヨーゼフ2世誘拐をめぐるローエンラム元帥との交渉の過程でフェザーン回廊軍事通行権を要されたボルテック弁務官は、これを是認し帝国軍にあらゆる便宜をはかる対価として自身が自治領アドリアン・ルビンスキーにとってかわる密約をかわしたのである。彼は本フェザーンへの進攻計画を秘匿しつつイゼルローンへの軍事行動を報告するなど、フェザーンと同盟に対する非軍事工作を担うこととなる。

未曾有の規模となる“神々の黄昏”作戦の発動へ向け、帝国軍では、11月4日過去類をみない3万隻規模の大演習閲総監オスカー・フォン・ロイエンタール上級大将)を実施するなど入念な準備を進めた。そして11月8日に至り、作戦の最終的な人事が定められる。

同盟軍の事前対応

諜報により帝国軍イゼルローン侵攻の報をつかんだ同盟上層部は事態に震撼し、防調整会議が開催された。しかし政軍の高官の多くにはヤン大将ある限り安泰という認識が先行し、イゼルローンに対する警強化命の発出と軍需物資輸送の即行準備が整えられるにとどまった。

フェザーン侵攻の虞に関してはヤン大将が意図を全に察知しており、宇宙艦隊長官アレクサンドル・ビュコック大将を通じて同盟政府部にも警鐘を鳴らしていた。しかし防調整会議におけるビュコック大将の警告は、フェザーンが自己の利益を保護するために中立を維持すると疑わない他の出席者によって論としりぞけられ、フェザーン侵攻に対する同盟の対応は後手に回ることとなった。

両軍の兵力編成

帝国軍“神々の黄昏”作戦の人事・兵力編成

フェザーン方面軍

以上、動員兵力1200万名、動員艦艇8万7500隻。

第一ミッターマイヤー上級大将を充てる人事は“疾風ウォルフ”と讃えられる用兵の速さを買われたものであり、その後ろを支える第二ミュラー大将は難局への対処力を期待されていた。

イゼルローン方面軍

同方面の作戦は陽動ではあるが、フェザーンへの進攻を悟らせない的で第八次イゼルローン要塞攻防戦の際を上回る兵力が投入された。場合によってはイゼルローン回廊から同盟領に進攻する高い戦略的重要性を有する部隊であり、統率力、巨視的な用兵力、状況判断力のいずれにおいても独立部隊総司令官としてふさわしいロイエンタール上級大将揮の任を委ねられた。

なお、このイゼルローン方面軍の編成に関しては情報戦の一環として大々的に表され、人事情報から出撃日時までが同盟の諜報網に察知されるように広められている。

予備・後方待機

ローエンラム元帥麾下の高級将帥のうちでも、ともに猛将として知られるファーレンハイトビッテンフェルト大将は、両方面の兵力に含まれず、決戦時の予備兵力として残置された。また、都を護るケスラー大将とともにオーディンに残るメックリンガー大将は、ローエンラム元帥出征中の帝国軍組織の中枢にあって事務決裁にあたるとともに、巨大な遠征軍への補給など後方支援を担うこととなった。

同盟軍による迎撃作戦の人事・兵力編成

同盟軍宇宙艦隊司令部

以上、艦艇総数3万5000隻。

これらの戦力は、帝国軍のフェザーン侵攻をうけて急遽整えられたものである。もともと首都ハイネセンに残る最後の正規艦隊であった第1艦隊に加え、間巡視隊や系警備隊の重装部隊独立の小艦隊、かろうじて運用可な新造艦・老朽艦など2万隻を二個艦隊に集成して第14、第15艦隊を新編した。

イゼルローン要塞

戦闘経過

イゼルローン方面の陽動とフェザーン侵攻

フェザーン侵攻」も参照

作戦の第一撃として陽動の役割を果たすイゼルローン方面軍は、ロイエンタール上級大将揮のもとイゼルローン要塞への攻撃を開始する(第九次イゼルローン要塞攻防戦)。緒戦につづく小規模な交戦ののち12月9日の全面攻勢をも退けられたロイエンタール上級大将から援軍要請を受けたローエンラム元帥は事態を遺憾とし、都周辺域で待機するミッターマイヤー上級大将以下の艦隊に対し「この際いっきょにイゼルローン攻略せん」との名で出撃命を下した。

出撃したミッターマイヤー艦隊は、事前計画通りゼルローン回廊ではなくフェザーン回廊方面へと進撃し、12月末にフェザーン回廊に侵入。12月24日にはフェザーン衛星上に至り、中央宇宙港・自治領府・航路局をはじめとする枢要施設を制圧してフェザーン帝国軍の軍政下においた。

このとき、帝国軍は自治領ルビンスキーの身柄確保には失敗したが、航路局で同盟領内の膨大な航路情報を獲得し、以後の進攻を有利にしている。さらに12月28日、第二ミュラー艦隊が到着・進駐。そして12月30日夕には総司令官たるローエンラム元帥自身もフェザーン地表に上陸し、来るべき同盟領進攻にそなえ臨時の元帥府を設置する。

同盟領への進出

年が明けた帝国490年/宇宙799年正月朔日未明、ミッターマイヤー艦隊が引き続き第一としてフェザーンを出立し、直後には第二ミュラー艦隊も続いた。カール・エドワルド・バイエルライン中将部隊を先頭に立てたミッターマイヤー艦隊は、3日をかけてフェザーン回廊の同盟側出口を偵察し、同盟軍の迎撃がないことを確認。1月8日、ついに同盟領への侵入をはたした。

1月下旬、予備兵力ビッテンフェルトファーレンハイト大将の艦隊がフェザーンに到着し、同日中にはいれかわりでローエンラム元帥フェザーンを発した。これにあわせ、両大将に帯同したボルテック弁務官がフェザーン代理総督の任を受け、フェザーンの統治を民政に復帰させている。

以後、陸戦隊の大半をフェザーン統治に残して帝国軍の同盟領侵入はつづき、先を切るミッターマイヤー艦隊は戦闘を経ないままフェザーンより2800光年をへだてたポレヴィ域に至る。1月30日には予備兵力まで含めて同盟領に進出した帝国遠征軍全軍が同地に集結をはたし、その数は戦闘艦艇11万2700隻、支援艦艇4万1900隻、将兵1660万人の多数に達した。

同盟の対応

突然帝国フェザーン侵攻を受けた同盟では、政府情報統制もむなしく社会全体がマスヒステリーとパニック恐慌状態におちいった。政府導すべきヨブ・トリューニヒト最高評議会議長は広報官を介して責任を痛感すると述べ立てるばかりで姿を現さなくなり、従前トリューニヒト礼賛をつづけてきたマスコミは逆に「全市民責任と自覚」を語って市民の側を糾弾する姿勢をとった。

トリューニヒト議長の隠れにより同様に狽の渦中にあった最高評議会では、ウォルター・アイランズ委員長導して必要な政治上の措置をとり、帝国に抗戦し、的は徹底抗戦ではなく講和に向けた有利な条件の確保に置く、という戦争導方針が定められた。これを受けて軍部は、宇宙艦隊部が中心となり、第14・第15艦隊の新設をはじめ急速に迎撃体制を整えた。

戦略面では、フェザーン回廊出口近辺での迎撃はそもそも戦力的な余裕がなく不可能であり、帝国軍の補給線・行動線がのびきる同盟領内で側背攻撃をかけて混乱に陥れ、撤退させる戦略が選択された。交戦中のイゼルローン要塞に対しては、帝国軍がフェザーン回廊を確保した以上その固守は意味であるとし、宇宙艦隊部が全責任をとるとして「最善と信じる行動をなすよう訓が発された。これを受け、ヤン大将1月18日イゼルローン要塞を放棄、艦隊・民間人とともに撤退を果たしている。

その他、フェザーン方面に配されていた60箇所以上の軍事基地は一部の機集約化拠点をのぞき大半が放棄された。防委員会も艦隊の出師準備に加え、ハイネセン都市部住民の疎開、各系への防備宣言発出の許可、イゼルローン住民の避難先確保といった各種の事務をすすめた。

ランテマリオ星域会戦

フェザーン方面で維持された基地のひとつであるシュパー系JL77基地からの最後の敵情報告は2月1日ハイネセンの軍上層部に届き、ポレヴィトへの帝国軍集結が確認される[3]帝国軍は再編成ののち、同盟首都ハイネセンへと進撃を再開するものと考えられた。ポレヴィトからランテマリオ域にかけての宙域は人地帯であり、同盟の辺地区から一歩入るランテマリオ域を最後に、よりハイネセン方面の域はいずれも有人惑星を持っていた。このため帝国軍は、同盟軍がこの宙域で迎撃をはかると予測する。

同盟軍では前述の通り、可な限り帝国軍を引き込み最大限の戦力をもって決戦をしいる構想をもっていた。しかし帝国軍の脅威にさらされる辺諸星系の離反のおそれという政治的問題、そして極端な戦略的不利と兵力の致命的な不足といった事情のゆえに、戦略立案にあたるべき統合作戦本部は恐慌虚無との往復に終始し、整合のとれた戦略をついに立案しえなかった(もとより政治的任命だった統合作本部長ドーソン大将はまったく自性を欠落させ、なんら導力を発揮せず日常業務の処理に頭していた)。

結局、問題は宇宙艦隊部の管する戦術レベルにまで引き下げられ、戦場での勝利をもって解決するほかない状況に陥った。辺諸星系がいだく中央政府への不信が閾値を越える前に、ランテマリオ域を阻止限界点とし、正面決戦帝国軍に戦術上の勝利を得ることで人心をつなぎとめるを選ばざるをえなかったのである。宇宙艦隊部ではせめてヤン艦隊との合流を期待して交戦の先延ばしが模索されたものの、それまで開戦を延期する余裕はないと結論づけられた。

2月4日ハイネセンを出撃したビュコック元帥[4]揮下の同盟軍宇宙艦隊3万2900隻は2月8日ランテマリオ星域会戦ローエンラム元帥率いる帝国力と全面衝突する。戦闘は戦力において絶対的にまさる帝国軍の圧倒的優勢に進んだが、同盟軍は民間人の避難団を分離し強行軍をかさねたヤン艦隊が両軍の予想より帝国軍後背に来援するまでかろうじてもちこたえ、大きな損を受けつつもハイネセンへの撤退を果たした。

両軍の再編

戦闘終結後、帝国力はガンダルヴァ恒星系に移動した。イゼルローン方面軍も1月19日に進駐したイゼルローン要塞の守備にルッツ艦隊を残して合流し、集結した兵員は2000万人に達した。帝国軍は将来の同盟領統治の要所として、同系の第二惑星ウルヴァシーに半永久的な軍事拠点の建設を開始する。

この当時、すでにイゼルローン要塞力化を達成していた帝国軍は中期的な戦略構想の策定を必要としていた。一挙に同盟首都ハイネセンを攻撃するか、同盟領全体を攻略してハイネセンを孤立させるかの二択だったが結論に至らず、ヤン艦隊が2月末に行動を再開するまで、帝国軍は大きな動きを見せなかった。

いっぽう同盟では、ランテマリオにおける宇宙艦隊の大敗がもたらした絶望と、“奇蹟のヤン”が艦隊とともになお健在という希望が両立する複雑な社会状況にあった。事ここに至って、ヤン元帥[5]揮下にほぼ全ての残存する機動戦力を結集させた同盟軍の標は、戦術的勝利によって戦略的劣勢を補いうる一の方法、すなわちローエンラム元帥戦場で撃破し死亡させることで帝国軍の最高揮の瓦解せしめ、防体制再建の活路を見出す、という一点に集約されることとなる。

バーミリオン星域会戦

バーミリオン星域会戦」も参照

ローエンラム元帥撃破という標を達成するため、ヤン元帥帝国軍の補給部隊や諸艦隊を各個撃破してゆくことで、ローエンラム元帥が自ら出する状況をつくろうとした。帝国軍の最高首もヤン艦隊の排除なくして同盟の併不可能と認識し、その捕捉撃滅に精力をかたむけることとなる。この各個撃破戦からはじまる一連の戦闘を、最終決戦の名をとってバーミリオン星域会戦と総称する。

首都に戻らず、同盟領内に広がる補給基地を活かして半ばゲリラ的に跳梁したヤン艦隊は、ウルヴァシーへの輸送団を壊滅させて帝国軍の補給を脅かすと、ヤン艦隊捜索に出たシュタインメッツ艦隊、レンネンカンプ艦隊をライガール、トリプラ両星系間の戦いで時間差撃破。さらに補給基地攻撃に出たワーレン艦隊を誘引して敗退させる(タッシリ星域付近における戦闘)八面六臂の活動で帝国軍を脅かしつづけた。

対するローエンラム元帥はヤン元帥のねらいを正確に洞察し、あえて一時的に諸艦隊を各方面に分して直卒の本隊のみでヤン艦隊を相手取ることを決断した。しかし、分した帝国軍のうちミッターマイヤーロイエンタール両艦隊は独断でハイネセンの位置するバーラト系へと進出し、同盟政府に対して全面講和を要する(バーラト攻略)。

4月末に開始されたバーミリオン星域会戦本戦は猛攻するヤン艦隊の優勢で推移し、5月5日、ついにヤン艦隊はローエンラム元帥の座乗する帝国総旗艦ブリュンヒルト呼の間にとらえるに至った。しかし講和受け入れを決断したハイネセンのトリューニヒト議長よりヤン艦隊に無条件停戦命が届けられると、ヤン元帥はこれに従って戦闘停止と後退を下戦闘は終結した。

戦後

和平の成立

この同盟の事実上の降により、帝国331年/宇宙640年のダゴン域会戦以来150年以上にわたりつづけられてきた帝国と同盟の間の交戦状態は終結をむかえた。

帝国軍上層部は同盟の処遇を検討したが、行政の専門からは、反帝国的な120億同盟市民を直接統治する危険、占領長期化による兵士の統制の問題、さらに破綻寸前の同盟経済・財政状況といった懸念が摘された。このため同盟の全併は時期尚として回避され、事実上の帝国属領として当面の存続を許された。自由惑星同盟全な滅亡が宣言されるのはこの翌年2月帝国軍の再侵攻(大征)の結果として布された“バラ園の勅”(新帝国二年二月二〇日の勅)でのことである。

ローエンラム元帥5月12日ハイネセンに上陸し、5月25日帝国同盟両国の講和条約となるバーラトの和約”が成立する。これに国家元首として署名・調印したトリューニヒト議長が直後に引責辞任を宣言すると、残された閣僚の合議[6]によって非トリューニヒトの代表格であるジョアン・レベロ元財政委員長が請われ、元首代行として戦後処理にあたった。

なお、同盟に身を寄せていた銀河帝国正統政府は消滅し、首相レムシャイド伯爵は自殺した。しかし幼エルウィン・ヨーゼフ2世は軍務省次官アルフレット・フォン・ランズベルク伯爵につれられて行方知れずとなり、帝国軍ではその行方をつかむことができなかった。

バーラトの和約体制

帝国490年/宇宙799年5月25日 調印

バーラトの和約 (第一条より第七条

 一、自由惑星同盟の名称と権の存続については、銀河帝国の同意によってこれを保障する。
 二、同盟はガンダルヴァ系および両回廊出口周辺に位置するふたつの系を帝国に割譲する。

 三、同盟は帝の軍艦および民船が同盟領内を自由に航行することを認める。
 四、同盟は帝国に対し年間一兆五〇〇〇億帝国マルクの安全保障税を支払うものとする。
 五、同盟主権象徴としての軍備を保有するが、戦艦および宇宙母艦については、保有の権利を放棄する。また、同盟が軍事施設を建設・改修するにあたっては、事に帝国政府と協議するものとする。
 六、同盟国内法を制定し、帝国との友好および協調を害すること目的とした活動を禁止するものとする。
 七、帝国は同盟首都ハイネセンに高等弁務官府を設置し、これを警備する軍隊を駐留せしめる権利を有する。高等弁務官は帝主権者(皇帝)の代理として同盟政府と折衝・協議し、さらに同盟政府の諸会議を傍聴する資格を与えられる……。

バーラトの和約の条項は、敗戦した同盟にとってきわめて重いものであった。しかし同時に、帝国はいつでも同盟を併できる状況でもあり、それを重々承知するレベロ新議長としては、なんとしても帝国軍再侵攻の口実をつくらせず同盟を存続させなければならなかった。

和約第四条に定める安全保障税の支払は、同盟財政に従来の軍事費にかわる負担をかけることが的であり、すでに破綻寸前だった同盟財政の再建を大きく阻した。第五条で保有を禁じられた戦艦宇宙母艦棄せねばならなかったが、書類上では棄されたものの実際には底されないまま同年末の大征を迎えることとなる。また第六条のために、レベロ新政権は言論・結社の自由を規定する同盟章第七条を期限つきで停止させ、内の原理尊重を押し切って反和活動防止法を制定せざるをえなかった。

また第七条の規定によりハイネセンにおかれた高等弁務官は、皇帝を代理し同盟政府を監視する事実上の総督であった。同盟は形式的にはなお独立国家であって権限には限界があったが、和約の履行を監するというかたちで内政干渉権がみとめられており、同盟政府は折衝に苦心することとなる。

帝国の新王朝

帝国では、ローエンラム元帥が征者として凱旋し、登極をひかえて務尚書の新任、民政尚書の新設、帝国軍三長官の新任など、政軍両面における新たな人事・組織・制度を整えた。

6月20日、第38代皇帝カザリン・ケートヘン1世ユルゲン・オファー・フォン・ペクニッツ公爵が幼権者として退位宣言書と譲位宣言書に署名[7]。そして6月22日オーディンの新憂宮において、皇帝ラインハルトの即位および戴冠式が挙行された。

これをもって、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの即位以来490年にして銀河帝国ゴールデンバウム王は滅亡し、新銀河帝国ローエンラムが開闢する。

関連動画

関連項目

脚注

  1. *階級は作戦発動時。
  2. *作戦発動時。
  3. *敵地に残されるJL77基地には少数ながら援軍派遣が予定されていたが、むしろ危険を呼び込むと考えた基地官代行ブレツェリ大佐が固辞したため、戦闘用艦艇を一切有しなかった。結果、帝国軍から脅威視されず、電波を受けたもののついに攻撃されず生き延びている。
  4. *出撃直前に元帥昇進。
  5. *ハイネセン帰投直後に元帥昇進。
  6. *導力を発揮したアイランズ委員長は当時すでに精力をつかいはたして病していた。
  7. *同時に、カザリン・ケートヘンの生涯にわたる身分と生活が保障された。
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