第九次イゼルローン要塞攻防戦 単語

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ダイキュウジイゼルローンヨウサイコウボウセン

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第九次イゼルローン要塞攻防戦とは、「銀河英雄伝説」の戦闘のひとつである。

銀河英雄伝説戦闘
“神々の黄昏”作戦
第九次イゼルローン要塞攻防戦
基本情報
時期 : 宇宙798年/帝国489年
宇宙799年/帝国490年1月19日
地点 : イゼルローン回廊イゼルローン要塞周辺宙域
結果 : ゴールデンバウム朝銀河帝国軍の勝利
詳細情報
交戦勢
ゴールデンバウム朝銀河帝国 自由惑星同盟
指揮官
ゼルローン方面軍総司令官
オスカー・フォン・ロイエンタール上級大将
イゼルローン要塞
ヤン・ウェンリー大将
動員兵
ロイエンタール艦隊
ルッツ艦隊
レンネンカンプ艦隊
イゼルローン要塞
イゼルローン要塞駐留艦隊
“神々の黄昏”作戦
第九次イゼルローン要塞攻防戦 - フェザーン侵攻
ランテマリオ星域会戦 - 帝国軍輸送団の壊滅 - 
バーミリオン星域会戦
ライガール、トリプラ両星系間の戦い
タッシリ星域付近における戦闘 - バーミリオン星域会戦 -
バーラト攻略
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第八次イゼルローン要塞攻防戦 フェザーン侵攻

概要

宇宙798年帝国489年末、“神々の黄昏”作戦によりイゼルローン回廊に侵攻したゴールデンバウム朝銀河帝国軍とイゼルローン要塞を守る自由惑星同盟軍とのあいだで発生した戦闘イゼルローン要塞をめぐる9度の全面戦闘であり、同要塞を同盟軍が奪取してから2度の要塞攻防戦である。

帝国軍の作戦意図は、フェザーン回廊を経由した同盟進攻計画を欺瞞するための陽動にあったが、兵では同年第八次イゼルローン要塞攻防戦より多数の艦艇を動員し、要塞への全面攻撃を実施した。

対する同盟軍はよく抗堪したが、帝国軍がフェザーン侵攻によりイゼルローン回の意図を明にしたことでイゼルローン戦略的重要性が失われると、駐留艦隊に行動自由を与える意味もあって要塞を放棄し、要塞は帝国軍の手に帰した。

背景

詳しくは「“神々の黄昏”作戦」を参照。

帝国489年後半、銀河帝国上層部では、堅固なイゼルローン要塞に阻まれるイゼルローン回廊に代わって中立地帯であるフェザーン回廊を侵攻ルートとする同盟領への進攻計画、“神々の黄昏”作戦が計画された。この作戦の第一手は、フェザーン進攻の意図から同盟のをそらす陽動として、従来のルートであるイゼルローン要塞に対して大規模攻撃を行うことにあった。

攻正面ではないとはいえ、確実に陽動を達成し、かつ状況次第ではイゼルローン回廊を突破のうえフェザーン方面軍と合流して同盟領を分断するという戦略的意図もあって、オスカー・フォン・ロイエンタール上級大将総司令官とした重厚な“イゼルローン方面軍”が準備された。イゼルローン方面軍の人事や出撃日時は大々的に表され、同盟政府の注意をイゼルローン回廊に引き付ける役割を果たした。

両軍の編成

ゼルローン攻撃に投入された帝国軍イゼルローン方面軍は、前述の通り総司令官ロイエンタール上級大将を充て、さらに副官としてコルネリアス・ルッツ大将ヘルムート・レンネンカンプ大将がそれぞれ艦隊とともに加わった。

対する同盟軍は、イゼルローン要塞と同要塞の守備隊、そして要塞駐留艦隊(ヤン艦隊)から成り、要塞官・駐留艦隊官はヤン・ウェンリー大将、要塞防御指揮官ワルター・フォン・シェーンコップ少将であった。なお当時、回廊の監視衛星群は第八次イゼルローン要塞攻防戦の際にほとんど失われたまま予算不足で補充できておらず[1]、やむなく艦艇による部隊で代用されていた。

戦闘経過(前半)

11月20日中の同盟軍戦艦<ユリシーズ>が、イゼルローン回廊内を進撃する帝国軍の大艦隊を発見・避退する。報告を受けたイゼルローン要塞では、ハイネセンに帝国軍来襲を通報するとともに、ヤン大将よりフェザーン回廊への帝国軍侵攻の予測と警強化がめて提言された。

帝国軍は回廊内を速整然と進撃して同盟軍に兵の配置といった手段をとる暇を与えず、イゼルローン要塞前面、要塞雷神ハンマー”の射程外に重厚な布を敷いた。

緒戦

開戦時の帝国軍の斉射は、要塞表面の台・座類が相当数破壊された程度の効果に留まった。そこで帝国軍は作戦計画通りルッツ艦隊に要塞の半包囲態勢をとらせ、ヤン大将はいまだ帝国軍の出方を観察する立場ながらルッツ艦隊の放置は危険とみなし、駐留艦隊副エドウィン・フィッシャー少将、分艦隊ダスティ・アッテンボロー少将のもと駐留艦隊を出撃させた。だがロイエンタール上級大将は同盟軍の出撃に即応し、く間に両軍は要塞射程の界上で乱戦状態に陥る。

戦況不利の同盟軍がフィッシャー、アッテンボロー両指揮官の艦隊運動制御・戦闘でかろうじて戦線を維持するいっぽう、帝国軍は予期される同盟軍の増援に合わせて新規兵を繰り出し消耗戦に持ち込むことも視野に入れていた。この事態にヤン大将は、自身は要塞に残ったまま旗艦<ヒューベリオン>を含む新規兵を出撃させる。これは当時の帝国軍全体に敵将としてのヤン・ウェンリーの存在が強く意識されていたことを逆用し、旗艦を囮に用いる詭計であった。

同盟軍の動きをヤン大将の直接来援とみて艦隊に突進を命じたロイエンタール上級大将の旗艦<トリスタン>が艦列の先頭に誘い出されたところに、同盟軍の強襲揚陸艦が強行接舷して“薔薇騎士”連隊を艦内に突入させた。作戦標はロイエンタール上級大将の殺にあり、作戦指揮官シェーンコップ少将ロイエンタール上級大将との兵戦まで生じたが、帝国軍の抵抗しく結局は達成に至らず撤収する。

かろうじて危地を脱したロイエンタール上級大将は、囮に乗せられた自身の失態を省みて戦闘中止を決断。駐留艦隊と互戦闘を続けつつも部隊を後退させ、艦列を立て直す。ヤン大将は逆に追撃を企図したが、帝国軍に間隙がないことから断念し、駐留艦隊を要塞内に収容した。

12月9日の帝国軍全面攻勢

その後、帝国軍はしばらくのあいだ要塞の射程圏外で慎重な姿勢を保った。同盟軍は少数部隊で攻撃を仕掛け誘引を試みたが、帝国軍は誘いに一切乗らず、むしろ完璧な統率のもと要塞への接近と後退を繰り返し、下のイゼルローン要塞に圧をかける構えであった。しかし12月9日になって、帝国軍は突如として攻勢を再する。

帝国軍は500隻程度の集団を複数連続して投入し、要塞の強な反撃を前提とした速な一撃離脱戦を実施した。この苛な攻勢のため帝国軍は最初の30分で損失2000隻という多大な損を受けたが、ロイエンタール上級大将は精緻な揮によって要塞表面に200箇所以上の破損を生じさせ、拡大させていった。帝国軍の戦法を予測していたヤン大将は戦術レベルで的確に迎撃と損の補填を行いつづけたが、彼自身、当時個人的に精と活を欠いていたこともあり、戦況の導権は帝国軍の手中にあった。

とはいえこ帝国軍の全面攻勢は、同盟とフェザーンを誤断させるため敗退前提で行われたものであり、帝国軍は予定どおり攻勢を失敗させて要塞前面から後退する。ロイエンタール上級大将イゼルローン要塞の強固さをして本に増援軍をもとめ、オーディンではローエンラム元帥がこれに応えてウォルフガング・ミッターマイヤー上級大将以下の艦隊に出撃を命じることとなる。

インターミッション:帝国軍フェザーン侵攻と同盟軍の対応

ゼルローン方面軍への増援名で出撃したミッターマイヤー艦隊は、12月末のフェザーン侵攻によって電撃的にフェザーン握。ローエンラム元帥を含む帝国軍の大艦隊の到着につづき、翌宇宙799/帝国490年1月初旬よりフェザーン回廊から同盟領へと侵攻を開始した。

事態を受けた同盟軍宇宙艦隊部では、帝国軍のフェザーン回廊確保によりイゼルローン回廊を維持する意味が失われたこと、戦不足の同盟軍においてヤン大将と要塞駐留艦隊(ヤン艦隊)の存在がきわめて重であることから、イゼルローン要塞からヤン大将を呼び戻す可性を模索。結果、ヤン大将に対して宇宙艦隊長官アレクサンドル・ビュコック大将の名で「全責任宇宙艦隊部がとる。官の判断によって最善と信ずる行動をとられたし」と訓する。

この訓イゼルローン要塞の放棄事実上承認するとともに、ヤン大将戦略級の自由な用兵権を付与するものでもあった。訓を受けたヤン大将はこの裏面の意図を了解してイゼルローン要塞の放棄を決断し、要塞からの撤退と居住する軍民506万8224名の脱出に向けた準備を開始する。特に民間人の脱出にむけた実務は、要塞事務アレックス・キャゼルヌ少将にゆだねられた。

戦闘経過(後半)

要塞放棄決定後の交戦

当時の戦況は、帝国軍が攻撃と休息を繰り返して同盟軍に精的消耗を強いながらも、全体としては小康状態にあった。帝国部は近日中の要塞の放棄をすでに予期していたが、同盟軍に々の要塞放棄を許す必要もなく、妨をかねた再度の本格攻勢を実施する。同盟軍部は対応に忙殺されたが、戦維持を望むヤン大将の厳命で駐留艦隊は消極的活動に終始し、出撃はわずか一度、アッテンボロ少将が要塞群と連携して帝国軍に接近戦を挑み、要塞射程圏外へ押し返した程度であった。

とはいえ出戦を望む同盟軍中級指揮官の戦意はおさえがたく、アッテンボロ少将の立案で帝国軍の誘引撃破作戦が実施された。同盟軍は500隻の老朽輸送2000隻程度の戦闘艦艇を動かし、まず同盟領へ離脱する動きを見せる。帝国軍ではレンネンカンプ艦隊が対応し、艦隊を二分し熟練の戦術機動により同盟軍の前後挟撃を試みたが、同盟軍後背をした一隊は要塞対空砲群の前面に誘い出される格好になった。同部隊は痛撃を受けたが、ロイエンタール上級大将の援護射撃によってかろうじて統制を回復する。

同盟軍前面に向かったレンネンカンプ艦隊のもう一隊はそのまま攻撃に移り、同盟軍戦闘部隊は急速に潰乱の様子を見せて後退する。部隊は残された輸送団に薄するが、停戦命を発する直前に輸送団が一斉に爆破され、艦隊を大混乱に陥れた。さらにアッテンボロ少将が時機に即した反転攻勢に出たため、レンネンカンプ艦隊はルッツ艦隊が駆けつけて同盟軍を横撃するまで一方的に打撃を受けつづけることとなった。一連の交戦で、帝国軍は喪失艦艇2000隻余、戦死者20万名以上という損をこうむった。

”箱舟計画”と要塞放棄

こうした戦闘と並行して、同盟軍は急速にイゼルローン要塞からの撤退を準備した。戦術用コンピューター情報抹消といった通例の処理のほか、特にキャゼル少将により舟計画」と称された要塞居住者500万人の脱出計画の立案・事務処理はほぼ不眠不休で進められ[2]、輸送病院の収容不足のために相当数の民間人の戦闘用艦艇への分乗まで行われた。

また、リンクス技術大佐揮する工兵部隊が、要塞内の水素炉や中央室などに極低周波爆弾を配置した。爆弾の設置は佐官級以上に周知されたが、同時にヤン大将は極秘裏に副官フレデリカ・グリーンヒル大尉に命じ、全防御システム化するキーワードコンピューターに仕込ませている。このキーワードこそが将来の要塞再奪取を視野に入れた本命の陥穽であり、爆弾は実際には要塞に進駐する帝国軍によって発見されることを前提に、かつ怪しまれない程度に発見困難なように設置された。

1月18日、同盟軍はイゼルローン要塞を放棄し離脱する。当時、ロイエンタール上級大将は全艦隊を厳重に統制して命なき出戦を禁じていた[3]が、この動きにも逆撃を受ける面倒をさけて追撃せず、要塞の占拠を優先した。さらにルッツ大将から同盟軍による破壊工作の虞が提言されたため、全艦隊が一時後退したうえシュムーデ技術大佐以下の専門グループが送り込まれている。この調によりすんでのところで爆弾の解体に成功し、1月19日帝国軍は事に要塞を占拠した。

戦後

帝国軍は第七次イゼルローン要塞攻防戦より二年半ぶりにイゼルローン要塞を確保した。ロイエンタール上級大将の方針はヤン艦隊の追撃ではなく追尾であり、ルッツ大将を要塞の守備にあたらせ、残るロイエンタールレンネンカンプ両艦隊がヤン艦隊の後を追って同盟領内に進攻した。両艦隊はランテマリオ星域会戦後、ガンダルヴァ惑星ウルヴァシーに拠点をおいたフェザーン方面の帝国軍と合流している。

いっぽう、要塞を放棄したヤン艦隊は輸送団をキャゼル少将に任せて分離し、ランテマリオ域へと急行した。結果、同盟軍の事前想定よりランテマリオ星域会戦終盤に帝国軍後背に来着し、壊滅寸前の同盟軍本隊をかろうじて救援することに成功する。またヤン大将が要塞に仕掛けたキーワード帝国軍の占領後も発覚することなく潜みつづけ、翌年初頭の第十次イゼルローン要塞攻防戦において、エル・ファシル革命予備軍によるイゼルローン要塞の奪取に活用されることとなる。

登場

原作では本伝第四巻策謀篇第八章「鎮曲への招待」、第五巻風雲篇第二章「ヤン提督舟隊」において第九次イゼルローン要塞攻防戦を描く。

アニメにおいては、石黒監督OVAでは第42話「鎮曲への招待」終盤から始まり、第43話「ギャラルホルンは鳴った」、第46話「ヤン提督舟隊」で描かれている。Die Neue Theseでは第47話「鎮曲への招待」からスタート

関連動画

関連項目

脚注

  1. *防委員会での追加予算支出に監が必要なところ、国家機構の処理不足で経理部による監が行われないままになっていたことによる。
  2. *要塞脱出の決定にマスヒステリー寸前に陥っていた民間人代表団への対応のみ、率の問題でキャゼル少将からヤン大将にまわされた。
  3. *これに先立つ攻囲中、はやって命なく攻撃を開始した某少将が階級剥奪の処分を受けている。
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