銀河英雄伝説の事件 | |
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“神々の黄昏”作戦 フェザーン侵攻 |
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基本情報 | |
時期 : 帝国暦489年 12月24日 | |
地点 : フェザーン回廊 惑星フェザーン | |
結果 : 銀河帝国軍によるフェザーン自治領の制圧 | |
詳細情報 | |
目的 | 帝国領から同盟領への侵攻ルート確保 |
指揮官 | ウォルフガング・ミッターマイヤー上級大将 |
投入戦力 | 帝国軍ミッターマイヤー艦隊 同陸戦隊 |
結果 | フェザーン自治領の滅亡 帝国によるフェザーン回廊の確保 |
“神々の黄昏”作戦 | |
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第九次イゼルローン要塞攻防戦 - フェザーン侵攻 - ランテマリオ星域会戦 - 帝国軍輸送船団の壊滅 - バーミリオン星域会戦 (ライガール、トリプラ両星系間の戦い - タッシリ星域付近における戦闘 - バーミリオン星域会戦 - バーラト星系攻略) |
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第九次イゼルローン要塞攻防戦 | ランテマリオ星域会戦 |
フェザーン侵攻とは、「銀河英雄伝説」の事件のひとつである。
帝国暦489年12月、ゴールデンバウム朝銀河帝国軍がフェザーン自治領の首星フェザーンを制圧した事件。
元来、フェザーン回廊はフェザーン自治領の統治する中立地帯として認められていたが、帝国軍は同盟領侵攻作戦“神々の黄昏”作戦の根幹である“フェザーン回廊の通過”を実現させるため、自治領の中立を侵してフェザーン回廊に艦隊を進入させ実力をもってフェザーンを制圧。惑星に軍政を敷き、同盟侵攻のための策源地とした。
この事件の結果、形式的には帝国領として、実際にはほぼ独立した国家として100年以上にわたり帝国・同盟両勢力のあいだに立って存在感を示したフェザーン自治領は解体され、実質的にも帝国の統治下に入ることとなった。
同盟国内における銀河帝国正統政府の樹立を機として、帝国暦489年8月に帝国宰相・帝国軍最高司令官公爵ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥が行った同盟への“宣戦布告”以来、帝国国内では同盟侵攻の機運が大いに高まり、帝国軍中枢では9月なかば、空前の兵力によって同盟領に侵攻する“神々の黄昏”作戦の発動が決定された。
この“神々の黄昏”作戦は、“魔術師”ヤン・ウェンリー大将を擁し同盟を守る強固な防壁となっているイゼルローン要塞を迂回する必要から、フェザーン回廊の中立の侵犯と同盟領への進入ルートとしての軍事利用が根幹となっていた。むろん作戦は同盟のみならずフェザーン自治領主府にも厳重な秘匿のうえで準備され、帝都オーディンでフェザーン自治領を代表する駐在弁務官ニコラス・ボルテックが自治領主府に背信して協力し、偽情報の報告をはじめとする非軍事的工作を行った。
いっぽう、軍事的には陽動としてイゼルローン回廊方面への大規模な侵攻作戦が準備され、同年11月下旬より第九次イゼルローン要塞攻防戦が開始された。12月上旬、同侵攻作戦を指揮するオスカー・フォン・ロイエンタール上級大将は「苦戦」を報告して増援を要請。これを受けたローエングラム元帥は、あらかじめ待機していたウォルフガング・ミッターマイヤー上級大将以下の将帥に出撃を下令、表向きイゼルローン回廊方面への増援というかたちでフェザーン回廊への侵攻軍が進発することとなる。
帝都オーディンを進発したミッターマイヤー艦隊は、かねて定められたとおりイゼルローン回廊ではなくフェザーン回廊へと向かい、12月13日に至って艦隊の全将兵に対し作戦目的がフェザーン侵攻と自由惑星同盟の完全制圧にあることを通告した。やがてフェザーン回廊に接近すると、フェザーン本星への警告阻止のために近隣を航行するフェザーン商船を捕獲し、あるいは停戦命令に従わないものを破壊した。その数は、惑星フェザーン衛星軌道に達するまでに捕獲約60隻、破壊約30隻に達した。
12月24日、惑星フェザーン衛星軌道上への到着すると、カール・エドワルド・バイエルライン中将の部隊を先頭に惑星表面へと降下。軍事力をもたないフェザーン当局による抵抗はごく微弱であり、狂乱状態に陥った管制当局により、管制に従うように再三の警告が行われた程度だった。
帝国軍はまず中央宇宙港を制圧して臨時司令部をおくと、帝国弁務官事務所の要請に応じて護衛部隊を送ったのを手始めに、フェザーンの中枢である戦略的要地、すなわち自治領主府、同盟弁務官事務所、航路局、公共放送センター、中央通信局、宇宙港(6ヵ所)、物資流通制御センター、治安警察本部、地上交通制御センター、水素動力センターの各所を第一次制圧目標として行動を開始した。中でも最初の三地点は、同盟領の航路・国勢など以後の行動に不可欠な情報を有する最重要目標であった。
航路局、つづいて自治領主府は問題なくすみやかに占拠されたが、自治領主アドリアン・ルビンスキーは私邸にも姿がなく、発見できなかった。同盟弁務官事務所にはグレーザー大佐の指揮する陸戦隊600名(機動装甲車120台に分乗)が向かい、自動発射装置による軽微な攻撃があったのみでこちらも制圧された。しかし内部はすでに完全に無人で、コンピューターのデータも消去されており、弁務官事務所の持つ同盟国内情報の取得には失敗した(フェザーン航路局の持つ同盟内の航路情報はすでに無傷で確保されており、大きな問題とはならなかった)。
制圧後のフェザーン本星では一時的にミッターマイヤー上級大将を司政官とする軍政が敷かれた。
惑星外に対しては、すべての宇宙港が帝国軍の管制下に入り、旅客便も運航が停止され、完全な惑星封鎖が実施された。惑星上における日常レベルでの経済運営に大きな統制がかけられることはなかったが、正当な理由のない値上げや売り渋りは布告によって厳重に禁止された。当時、実際に多くの商店で早くも値上げが行われており、機を得た処置であった。
また制圧の開始時点で、民間人殺害、女性への暴行、略奪行為という三点の非行行為が厳しく禁じられ、違反者に対しては即決裁判で銃殺することも宣言されていた。実際に一部兵士による暴行略奪事件が生じており、犯人の兵士には12月28日にサンテレーゼ広場において、ミッターマイヤー上級大将自身の監督によって公開処刑が行われている。これは軍規の徹底と明確な処罰実施を全フェザーンに対して宣明し、フェザーン市民の抵抗感情を和らげる意図のものであった。
こうした施策の結果、帝国軍による軍政占領統治はほぼ円滑に遂行された。12月30日のローエングラム元帥到着後には、フェザーン人の各種の市民的権利の保障および「帝国本土と自治領の緊密な一体化」の希望が宣言されている。
ミッターマイヤー艦隊につづき、12月28日には第二陣をひきいるナイトハルト・ミュラー大将が艦隊とともに到着し、占領に加わった。さらに12月30日16時50分、ローエングラム元帥が幕僚とともにフェザーン地表に到着し、接収した高級ホテルに臨時に元帥府をおいた。
ローエングラム元帥は地表到着時、出迎えた数多くの兵士たちから「皇帝ばんざい」「帝国ばんざい」の歓呼を受けている。この歓呼は、すでに帝国の最高権力者となり、また常勝の令名によって兵士たちに信奉されていたローエングラム元帥が公然と「皇帝」の称を受けた最初の事例となった。
年が変わって帝国暦490年(宇宙暦799年)1月1日、ミッターマイヤー、ミュラー両艦隊が同盟領方面へと出撃し、1月8日にはフェザーン回廊同盟側出口の安全を確認して同回廊を完全に帝国軍の管制下においた。1月下旬には総予備兵力であるアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト両大将が艦隊とともに到着するとともに、入れ替わりでローエングラム元帥および司令部が出立。ファーレンハイト、ビッテンフェルト両艦隊も5日のあいだを空けて同盟領へと進発している。
上記の通り帝国暦490年1月下旬に到着したファーレンハイト、ビッテンフェルト両艦隊に同行していたニコラス・ボルテックは、そのまま「フェザーン代理総督」として着任した。彼が「代理総督府」をおいて行政をひきついだことで、フェザーン本星は約一ヶ月間の軍政統治から民政に復帰した。
これにあわせ、フェザーンでは帝国方面に限って民間航路が再開された。敵地となった同盟方面はひきつづき封鎖され、代理総督府の対帝国協力の一環としてボルテックの部下が航路哨戒担当の各帝国艦に同乗し、民間船の臨検を支援させた。この協力は姿をくらましていた自治領主ルビンスキーなどの捜索を兼ねたもので、航路再開から1月24日までのわずかな期間に、30隻の船から同盟軍駐在首席武官ヴィオラ大佐をはじめとする200人以上の密航者を発見する成果を挙げている。
フェザーン駐在同盟弁務官事務所では、ヘンスロー弁務官をはじめとして帝国軍のフェザーン侵攻にもほとんど対応できなかった。特に、ヴィオラ大佐をはじめとする幹部職員はヘンスロー弁務官を置いて各個に職場を放棄するありさまであった。
帝国軍に対して実効的な対応をとりえたのは駐在武官のひとりユリアン・ミンツ少尉と駐在武官補ルイ・マシュンゴ准尉のみで、ミンツ少尉が自身の責任でコンピューターの記録を消去したうえ、時間稼ぎの自動発射装置を設置し、帝国軍の到着直前にヘンスロー弁務官を事務所から脱出させることとなった。
マシュンゴ准尉、ヘンスロー弁務官を引き連れたミンツ少尉は、その後も帝国軍の目を逃れてフェザーン市街に潜伏した。さらにフェザーン独立商船<ベリョースカ号>と契約し、1月24日にフェザーンを出立して回廊を同盟領方面へと密航した。途中で帝国艦<ハメルン4号>の臨検を受ける危地に陥ったが、ミンツ少尉の機略で逆に帝国艦を奪取し、2月のランテマリオ星域会戦終結直後の同盟軍に無事合流している。
帝国軍フェザーン制圧の報を受けた同盟では、予想外の事態にまったくの恐慌状態に陥った。当初敷かれた報道管制も無力であり、全土がマス・ヒステリーとパニックの状況となった。
同盟政府では、ヨブ・トリューニヒト最高評議会議長が表舞台にまったく姿を表さなくなったことから、ウォルター・アイランズ国防委員長の主導で可及的速やかな迎撃方針の確立がはかられた。同盟軍では、本来もっとも有効な策であったフェザーン回廊同盟側出口での迎撃が戦力不足から不可能であり、中小の戦力を集成した第14、第15艦隊を新編、さらにイゼルローン要塞に拠るヤン大将に対し要塞放棄を含めた行動の自由を命じることでかろうじて迎撃体制を構築し、2月のランテマリオ星域会戦を迎えることとなった。
藤崎版コミックでは、フェザーン回廊の帝国側に円盤状の無人防衛システム「ラープ門」が回廊内の曲がりくねった隘路をふさぐように設置されている設定となり、大規模な戦闘が伴う事件経過となっている。
戦闘では、帝国軍ミッターマイヤー艦隊とミュラー艦隊が攻略に従事した。防御に長けたミュラー艦隊が円筒陣で「ラープ門」砲台の攻撃を受け止めるいっぽう、中央からミッターマイヤー艦隊が全速で強行突進し、接近するミッターマイヤー艦隊への「ラープ門」の火力指向の変化に応じて攻撃体勢へと転換したミュラー艦隊の支援下で「ラープ門」を突破。直後に反転し、はさみ撃ちにする方策が取られた。
いっぽう、フェザーン地表への侵攻については原作通り特段の抵抗もなく行われた。またフェザーン回廊自体も両国に対し秘匿された存在として設定されたことから、同盟弁務官事務所関係などの展開も省略されている(当然、ユリアン・ミンツ中尉らもフェザーンには赴任していない)。
フェザーン侵攻じたいは『策謀篇』第九章「フェザーン占領」、事後処理等は『風雲篇』で描写。
アニメでは、石黒監督版OVAでは第44話「フェザーン占領」、Die Neue Theseでは第48話「フェザーン占領」でフェザーン侵攻を描いている。
掲示板
2 ななしのよっしん
2021/08/07(土) 15:41:45 ID: AaplMn+L+s
このフェザーン占領と軍政統治経験は、短期間であっても、後にミッターマイヤーが政治家へ転身する際の貴重な経験になってそう。
3 ななしのよっしん
2022/09/12(月) 22:12:31 ID: n3PS1PcYDB
片方の要所(ヘルソン&クリミア)に注意を引きつけておく。
その隙に、別の要所(東部)を一気に制圧。
『現実は小説より奇なり』とは言われるモノの。
まさか、現在のウクライナでコレがあるとは。
いや、南部も進軍が進んでいるから『双頭の蛇』と言うべきか?
4 ななしのよっしん
2024/04/20(土) 18:29:50 ID: uY3aoiSjcZ
映像作品だと省かれがちだけど、逃げようとしたフェザーンの商船を沈めるってかなり乱暴な方法だよね。
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最終更新:2024/04/25(木) 04:00
最終更新:2024/04/25(木) 04:00
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