16式機動戦闘車(英:Maneuver Combat Vehicle;MCV)とは、陸上自衛隊が装備している戦闘車両である。
「空輸性及び路上機動性能に優れ、中距離域で軽戦車等を撃破する装輪型の国産装甲戦闘車」と位置づけられている。諸元、性能は 乗員4名 全長8.45m 全幅2.98m 全高2.87m 最高速度約100km/h 105mm砲 12.7mm重機関銃 [1]
2007年より開発が開始され、2013年に試作車が報道公開、2016年に量産型の配備が開始された。装輪戦車のコンセプトは昔からあり、フランスがいち早くAMX-10RCを1978年より配備を開始、他にイタリアのチェンタウロ(1991年)、南アフリカのロイカット(2000年)、チャイナの11式(2011年)などがある。機動戦闘車が最も影響を受けたのはアメリカが採用したM1128ストライカーMGS(Mobile Gun System)である。[2]
中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)では、機動戦闘車は戦車とは別枠で調達されており、予算上では戦車に含めていない。[3]
ただし、平成31年度以降に係る防衛計画の大綱では、戦車の将来の規模は約300両とすると記載されており、戦車定数そのものは減少する。[4]残された数少ない戦車は北部方面隊(北海道)、西部方面隊(九州)へ集中配備。戦車教導隊など教育部隊を除けば、本州の74式戦車の代替は実質、延べ300両が調達される機動戦闘車が担うこととなる。
戦車不要論で危惧されていた、装輪装甲車による戦車の補完ではない代替が現実のものとなってしまったのだ…
上のイラストは2014年度防衛白書のもので、今後本州の74式戦車が消え、機動戦闘車が配備されることを示している。なお機動戦闘車が戦車定数に入ることを直接示しているわけではないので注意が必要。
74式戦車が搭載していたL7砲から派生した105ミリ52口径ライフル砲を装備。サーマルスリーブ、ペパーポット式マズルブレーキ、噴気装置を備える。砲弾については93式装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)や91式多目的対戦車榴弾など各種砲弾を発射できる。[5]
自動装填装置は採用されていない。開発当初は導入も視野に入れていたが、コスト低減のために見送ったと説明されている。[6]
また105mm砲弾程度なら小柄な日本人の力でも扱えること、主任務が正面切っての機甲戦闘ではなく威力偵察や軽歩兵制圧・水陸両用戦車撃破などであり、手動装填のスピードでも火力としては十分であろうことを考えると妥当といえる。
砲塔は、主契約者が10式戦車を開発した三菱重工と日本製鋼所であることもあり、10式戦車を彷彿とさせる楔型の装甲を備えたスマートな風格である。また、部品もある程度10式と共通化されているらしく、気象センサーなど一部部品が共通化している。
陸上自衛隊公式チャンネルで公開された試作車のPV映像の最後では、なんと「行進間射撃」を実施している。
さて、ここで他国の類似車両の発砲シーンと見比べててみよう。発砲時の車体の揺れっぷりに注目。
お分かり頂けただろうか?
普通、この手のAFVはタイヤを備える装輪式であり戦車と比べると車重が軽い為、ただでさえ砲の精度が低く、 70mm~90mmクラスの砲や、通常の砲に比べて反動が少ない代わりに威力が低い「低圧砲」ならまだしも、ガチの105mm戦車砲なんて積んだ日には実用レベルの行進間射撃なんて不可能である。
……と言う認識が一般的だったのだが、何をトチ狂ったのか機動戦闘車は「行進間射撃」をしてしまった。
しかも、反動制御が難しい車体からほぼ真横の向きで。さすがは三菱とTRDIの変態技術者たちである。
尚、動画の発砲シーンを10式戦車のような「スラローム射撃」とする声もあるが、よく見ると発砲時には旋回中とはいえ、ほぼ直進状態にあるため急旋回中に発砲する技術である「スラローム射撃」と決め付けるのは早計である。もっとも、類似車両と比べると相当なGが掛かってるはずなのは確かだが…。
また、一部では「これは空砲じゃない?」との声が上がっているが、砲身がエバキュレーター付近まで後座していること、衝撃波が空砲のソレとは比べ物にならない事などから実弾であるのは間違いない。
なお試作車の展示状態などを見ると主砲は相当大きな仰角を取ることが可能な模様である。一節では10式譲りの優れたFCS・データリンクと連携して簡素な曲射砲としても使えるのではという説もある。
FCS面においては、砲身先端部に取り付けられた砲身の歪みを測定するための砲口照合用ミラーなどを見るに、10式・90式戦車の開発で得られた技術を応用・発展させたものを搭載していると考えられ、PVや公開式典の映像でも10式・90式戦車のように砲身が全くぶれず、一点に向けられている様子が窺える。
光学系サイトは、砲手用サイトに赤外線と可視光センサーが備えられているのが確認されている。車長用サイトは、10式戦車の車長用サイトを一回り小さくしたようなサイトが旋回式で設置されている。10式戦車の車長用サイトは、赤外線と可視光を切り替えが可能でありそのどちらでも高倍率なズームが可能だと言う。機動戦闘車に搭載されているものに関しては不明だが、単に10式のサイトを小型化したものなのでは、あるいは、逆に広角寄りなのではないか、などなど様々な推測がなされている。しかし、開発の経緯から10式と同じか、またはそこから発展したサイトが搭載されているのはまず間違いない為、現有陸自車両の中ではトップクラスの索敵の能力を有していると考えていいだろう。
具体的な装甲構成は機密だが、側面では12.7ミリ重機関銃に対する防御、前面では最高20ミリ弾に対する防御が可能だと考えられている。脅威レベルの高い環境では必要に応じて付加装甲板や爆発反応装甲を設置できる。[7]
また、車体及び砲塔にはある種の「増加装甲」が搭載されているのではないかと考えられてる。では、右の画像をご覧いただきたい。
上の画像が公開された試作車、下の画像が動画の射撃シーンからキャプチャしたものである。両者を比較してみると、公開された試作車の車体の前面と側面にボルト留めされていたものが見受けられず、砲塔側面の楔型増加装甲も取り外されている。
この増加装甲についての詳細は不明であるが、耐弾試験において「84mm無反動砲 対戦車榴弾(HEAT弾)」の使用が確認されている。この際に使用された対戦車榴弾がRHA換算400mm程度を貫通する551型HEAT弾なのか。あるいはタンデム弾頭の751型か不明であるが、RPG-7程度には十分な耐久性を持つと思われる。
あくまで推測だが、この増加装甲は中身が空洞、またはウレタン等が充填されており、HEAT弾に対して効果を発揮する「空間装甲」として機能するのではないかと考えられる。加えて、砲塔の増加装甲に関しては、10式戦車と同様に敵脅威のレベルによって装甲を取り換えられる「モジュラー装甲」である可能性もある。
ただし、要求性能には「歩兵の携行火器からの防護」のみあったのであり、どの部分が耐えられるのかまでは公開されていなことに注意。車体前面からの攻撃に耐えるだけでも、一応要求性能は満たすことになる。
というか、素の側面装甲でRPGの攻撃に耐えれたら、もう装輪装甲車なんてモノじゃないんじゃ…。
昨今の不正規戦で問題となっている「即席爆弾(IED)」等への対策としてなのか、車体底部が従来よりも高めに取られており、爆圧を逃がす事によって被害を最小限に抑えるものだとも考えられる。しかし、車体底部のバーが剥き出しになっていること、高く取ってはいるものの底部自体は平らなままなことなどから積極的なIED対策ではない可能性もあり、逆に不整地での機動性を考慮したものではないかとも考えられる。
(装輪車は車高が低いと、ちょっとした盛り上がりに底部がつかえて動けなくなる事がある。)ただし、車体下にドレンキャップがあるため、どーも車体自体はNATOの定めた規格であるSTANAG基準の地雷防御性能が備わっているようである。
間接防御としては、砲塔前面左右に10式戦車の物と同型の「レーザー検知装置」が取り付けられている。10式・90式戦車は、レーザー検知装置と発煙弾発射機を連動させてレーザーを検知すると自動で発射させる事が出来るため、機動戦闘車にも同様の機能が備わっていると推測される。ただし、10式戦車が前後に計4基のレーザー検知装置があるのに対し、機動戦闘車は砲塔前部に2基だけである。
車体は8輪のタイヤを備え、フロント部にエンジンを配置するという類似車両と同様のスタイルを取っている。しかし、前項で述べたとおりIED対策の為か車体底部を高く取り、かつ車高を抑えなければならない為、同規模の車両であるチェンタウロやルーイカットに比べると非常に車体薄っぺらく、全長が1m以上長くなっている。恐らく、車高を抑制して減った車内容積を前後に伸ばして確保したのだろう。
車体後部にはハッチが取り付けられているが、ハッチの大きさ(推定40cm?)や車高から判断するに、膝を抱えでもしなければ普通科の隊員を搭載することは難しいと考えられる。むしろそこまでして乗りたくない。
おそらく、これはメンテナンスを主眼としたハッチであり、ここから砲弾の搭載などの補給・整備、あるいはその砲弾ラックを利用して傷病者の搬送等も行えるのではないかと推測される。
また、動画の最後で披露された行進間射撃の様子から、非常に高度なサスペンションを有していると考えられており、一部では「10式戦車譲りのアクティブサスペンションを搭載しているのでは?」とも推測されている。
4気筒液冷ターボチャージャー付パワーパックを搭載。最高時速は100キロに達し、ドライブトレインは地形に応じて8輪全駆動か、4輪駆動を選択できる。セントラル・インフレーション・システムも搭載。ステアリングは前輪4輪による。[8]
時速100km以上での路上走行能力は、装軌式の主力戦車と比較すると、74式戦車の速度が50km、10式戦車が70kmと、その差は一目瞭然である。ちなみに、普通科の足である「96式装輪装甲車」や、偵察隊の「87式偵察警戒車」とは同速であり、この辺りから機動戦闘車がどのように運用されるのかが見えてくるような…。
足回りに関しては、「油気圧(ハイドロニューマチック)」かつ「完全独立懸架ダブルウィッシュボーン式」という装輪装甲車としてはあまりに豪華なサスペンションを備えている。
重量が26t、車幅2.98m、車高2.87mと、類似車両と比べるとトップクラスのサイズ・重量であるが、航空自衛隊に配備予定のC-2輸送機に搭載可能な範囲に収められており、戦略機動性が高くなっている。
ただし、車幅に関しては道路交通法の定める制限:2.5mを超えてしまった為、平時における公道走行に際しては警察からの特別な許可が必要となる。これは射撃時の安定性を優先した為であり、同様に105mm砲搭載のチェンタウロとルーイカットもほぼ同じ全幅である。にしても普通あそこまで安定しないだろ。
試作車についているタイヤは国内企業のものではなくミシュランのものである。これは試作車開発時に要求を満たしたタイヤがこれしかなかったからだそうで、今後は国産化も検討されるという。
先述にある将来装輪戦闘車両研究においては、ベースとなる車体の機動力の改良と上部火砲の多様化により部品の共通化によるライフサイクルコストの低減が研究された。
機動戦闘車の要素技術を全て用いるかは不明だが、同スケールの車体を用いて新型の40mm機関砲を備えた偵察車両、兵員輸送車両、指揮通信車両などの開発を目指すものとされている。
機動戦闘車はこれらの研究の反映と、装備化によるさらなる効率化の研究資料として用いられると予測される。そして2014年近日、武器輸出三原則の改定を見越して三菱重工業もユーロサトリへの製品展示を申請。その中には小松製作所ではなく三菱製の8輪装甲車の精密な模型が存在し、車体形状は機動戦闘車に酷似している。
形状は原型から砲塔を撤去、車体をやや縦長にストレッチした形の装輪装甲車であり、武装には自動無人銃架が搭載されている。実際に輸出されるのか、陸上自衛隊にどの程度配備されるか不明だが、機動戦闘車に続く三菱重工業製装輪装甲車であり注目を浴びている。
機動戦闘車の戦闘力に関しては「配備されたらもう戦車など要らない」という積極的なものから「敵MBTに対抗できないから不要」という消極的なものまで様々な意見があり、結局どういうことなのと考えてしまうだろう。 誰もが抱くこの質問には複数の意味があり、分解しながら考える必要がある。
まず、陸上自衛隊の要求仕様は『戦闘部隊に装備し、多様な事態への対処において、空輸性、路上機動性等に優れた機動力をもって迅速に展開するとともに、中距離域での直接照準射撃により軽戦車等を含む敵装甲戦闘車両及び人員を撃破するために使用する機動戦闘車を開発する』(平成24年行政事業レビューシート(防衛省) - 事業の目的)となっている。
ここで言う軽戦車というのは、重量数トンでヘリ空輸される空挺戦車クラスから105mm砲を搭載した装輪装甲車クラスまでを想定していると考えられる。MBT、つまり第三世代主力戦車への対抗ははじめから想定されていない。その点で言えば「戦車(MBT)の代わりにならない」と言えるだろう。
ところで配備する側の陸上自衛隊の立場になって考えてみたい。従来の戦車の主力である74式戦車は制式化から40年を迎え、機動戦闘車の趨勢とは無関係に今後どう頑張っても退役で数が減っていく。かと言って現在の10式戦車の配備ペースでは追いつかないし、90式戦車含め300両では数が決定的に不足する。ならば74式戦車が抜けた穴を機動戦闘車で置き換えるというのは、現状では最善策といえるのではないだろうか。
そこで機動戦闘車と74式戦車との戦闘力を比較して考えてみたい。よくある意見が機動戦闘車は装甲車で74式戦車は戦車だから一方的に負けてしまうというものだが、スペックを比較していくと必ずしもそうはいえない。
74式戦車は第二世代主力戦車で装甲は均質圧延の防弾鋼であり、RPG-7を始めとする成形炸薬弾は貫通してしまう。またAPFSDS技術の発展により、93式105mm装弾筒付翼安定徹甲弾は74式戦車の正面装甲を貫通してしまう威力である。つまり、もはや戦車として十分な防護力があるとは言えない。移動手段である履帯は高い不整地走破能力を持つが、一方で概ね200kmを超える長距離の移動ではトランスポーターによる輸送が必要になる。
機動戦闘車は空間装甲も含めた複合的なものと見られ、成形炸薬弾に対する防護能力が謳われている。105mm砲自体のスペックはほぼ同等と考えられるが、10式戦車に準じたセンサー類やアンテナ装備を考慮に入れると、少なくとも90式戦車レベルの行進間射撃能力や初弾命中力が発揮されると推定できる。車輪による移動は道路を前提とする限りスムーズなもので、行動範囲は他国の同等機種と比較すれば500km程度はあるとみられている。74式戦車と比べ局地的な事案発生地への投入可能数を維持しながら、全体的な配備数を数分の一にできるものと期待される。
以上を総合すると機動戦闘車は74式戦車と比べ幾らかの能力向上を図りつつ、全体の配備数を削減することができるため、置き換え先としてはかなり優秀と考えてよい。つまり「74式戦車の代わりになる」のである。
90式以降の戦後第3世代戦車の代替として考えれば論外だが、いよいよ老朽化著しい74式の代替。北部方面隊や西部方面隊、富士学校戦車教導隊などからの増援到着までの機動防御には十分有用と思われる。それでも本州にいくばくかでも10式戦車装備部隊を残して欲しかったが、これは今後の動向次第である…
陸上自衛隊広報チャンネルより 10月9日の報道陣初公開より
↓やっぱりお前の撃ち方はおかしい。
配備後
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最終更新:2025/04/11(金) 02:00
最終更新:2025/04/11(金) 02:00
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