〈小市民〉シリーズとは (ショウシミンシリーズとは) [単語記事]

〈小市民〉シリーズとは、創元推理文庫（東京創元社）より刊行されている、米澤穂信による推理小説シリーズである。

概要

〈小市民〉を目指す高校生、小鳩常悟朗と小佐内ゆきの2人を中心に、身の回りで起こる事件を描いた青春ミステリシリーズ。
既刊は5冊。タイトル（事件名）は、作中に登場する菓子の名前になっている。

『春期限定いちごタルト事件』（2004年12月刊）
『夏期限定トロピカルパフェ事件』（2006年4月刊）
『秋期限定栗きんとん事件〈上〉』（2009年2月刊）
『秋期限定栗きんとん事件〈下〉』（2009年3月刊）
『巴里マカロンの謎』（2020年1月刊）

『秋期限定』が出て以降、次回作は『冬期限定○○事件』となると予想されており、米澤氏も次に執筆するいくつかの作品の一つに挙げていた。曰く「ジョセフィン・テイ『時の娘』(のオマージュ)をやることだけは決まっています（笑）」とのこと。プロットはできているとは何だったのか。

しかし『冬期限定』は一向に出ないまま時は流れる。その後、2016年から東京創元社の雑誌「ミステリーズ！」に短編が断続的に掲載され、2020年、それらをまとめた『巴里マカロンの謎』が実に11年ぶりの新刊として刊行された。

また、『春期限定』『夏期限定』の2作はコミカライズ化され、Ｇファンタジーコミックスから刊行されている。

小鳩くんら3人は『春期限定』では船戸高校1年生、『夏期限定』では2年生、『秋期限定』は2年生から始まり途中で3年生に進級している。

あらすじ

高校生の小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、恋人の関係でも依存の関係でもなく『互恵関係』で行動を共にする2人組。
とある理由から2人は清く慎ましい『小市民』を目指すのだが、様々な事件に巻き込まれてしまう。
目立ちたくないのに謎を解く羽目になる小鳩くんと、季節限定菓子を食すべく小鳩くんを連れ回す小佐内さんの物語。

登場人物

小鳩常悟朗（こばとじょうごろう）
- 「ぼくが思うに、これは遺留品の分析で片がつく」
- 船戸高校に通う高校生で、本シリーズの語り部。鋭い推理力と洞察力を持つが、小市民になるために普段は推理することを押さえようとしている。中学生の頃は自ら望んで探偵となっていたが、それが原因でトラウマを抱える羽目になった。小佐内さんとは『互恵関係』を結んでいる。
  　
小佐内ゆき（おさないゆき）
- 「わたし、心が傷ついたの……」
- 船戸高校に通う高校生。背が低く、髪型は尼削ぎ（前髪は前分けとし、肩のあたりで切りそろえた髪型）。容姿も非常に幼いがコケティッシュな魅力もあるという少女。小鳩くんとともに小市民を目指している…はずである。
  普段はおとなしいが、実は『復讐』をすることが大好きで、機会を見つけると相手が自分に対して行った行為の何倍にも及ぶ報復を行う。（そのためか、なぜかヤンデレ大全に名前が載っている）
  学校の外で小鳩くんに会うときは、たいてい変装とも呼べるレベルの私服を着ている。
  『小山内』さんではないので、くれぐれも間違えないように。あはっ。
  　
堂島健吾（どうじまけんご）
- 「ちょっと待ってろ。うまいココアがある」
- 船戸高校に通う、強い正義感と屈強な肉体を持つ高校生。新聞部に所属している。小鳩くんと同じ小学校の出身で、彼の昔の性格を知る人物の一人。1年のときは顔だけが四角かったが2年になる頃には体全体が四角いフォルムになった。コミカライズ版ではおっさん顔（春期）だったり、イケメン（夏期）だったりとキャラクターデザインが安定しない。　
  　
瓜野高彦（うりのたかひこ）
- 「おれは彼女にいいところを見せたいんだ」
- 船戸高校に通う高校生。『秋期限定』にて入学し新聞部員となる。自己顕示欲が強く、周りの意見を聞かずに暴走してしまう少年。『秋期限定』では語り部を務めるが……。爪野高彦ではない。