アーレイ・バークとは (アーレイバークとは) [単語記事]

アーレイ・バークとはアメリカ海軍軍人。最終階級は大将、海軍作戦部長を3期6年にわたって務めた。

概要

太平洋戦争中盤、南太平洋海域で駆逐艦隊を率いて日本海軍と戦った。当時の駆逐艦隊の規定速度が30ノットにもかかわらず「31ノットで航行中」と打電したことで、"31ノット"バークとも呼ばれる。
この時期、4ヶ月間22回の戦闘に参加したという記録が残っている。

戦争後半は空母機動部隊参謀長としてミッチャー中将を補佐した。また沖縄戦では乗艦(バンカー・ヒル、エンタープライズ)に特攻機突入による損害を受けている。

太平洋戦争後、日本に極東艦隊参謀長として赴任。太平洋戦争での苦い経験からか、日本人に対して悪印象を持っていたというが、日本で赴任したあと様々な経験を重ね一転、親日家となり日本の再軍備に伴う海上自衛隊創設やそれ以後についても親身になり相談、便宜をはかっていたという。

1955年、海軍作戦本部長に昇進。6年の長きにわたって勤め退役した。

1991年、彼の名をつけられたイージス・システム搭載「アーレイ・バーク」級駆逐艦が就役。生前に名前をつけられたのは「アーレイ・バーク」級駆逐艦が最初である。

1996年に死去。大統領命令に基づき、イージス艦「アーレイ・バーク」他、「アーレイ・バーク」級駆逐艦全隻が彼に哀悼の念をあらわすため、1分間31ノットで航行したという逸話が残っている。

日本に纏わるエピソード

以下のエピソードは雑多で数が多いので、箇条書きとしている。

・当初は日本に赴任後、朝鮮半島へ出張などを繰り替えてホテル暮らしだったという。日本人に対してどちらかといえば無関心というか悪印象だったらしいが、ホテルでうけた親身な対応の数々に感銘を受けて、考え方を変える一因になったという。

・太平洋戦争時、南太平洋海域での日本側指揮官、元海軍中将草鹿任一が戦後、工事現場で人夫となって働くまで身をやつしたと聞き、最初は無視していたが、後に困窮を見かねて食料を送る。ところが、この施しにも似た行為に草鹿が激怒。オフィスに乗り込んで食料を突っ返すという事件が起きる。のちにバークはこの行為を反省。草鹿ら元日本海軍将官を食事に招く。当初はお互い堅い表情だったというが、次第に打ち解けて乾杯。以後彼らと友情を深めたという。

・日本に派遣後、極東地域における歴史や日本人の価値観などを理解するため旧日本海軍大将、野村吉三郎に師事をうける。バークは彼から多くの示唆を受けたといわれ、その後も終生変わらぬ友情があったという。バークが離任するさい、野村提督は見送りに歩いて飛行場にかけつけたほか、野村提督の薫陶を受けた元海軍士官らの日本海軍再軍備化計画(後の海上自衛隊創設)を後押しした。

・朝鮮戦争時代、韓国陸軍の白善燁と歓談。日本海軍再軍備の理由を問われ、「オーシャン・ネイビー（外洋艦隊）を建設するには１世紀という長い時間がかかるものなのですよ。日本海軍が滅びるのはもったいない(大意)」と発言し、日本海軍の存続と再生について協力を惜しまなかったという。また当時、請われれば海上自衛隊士官への訓示なども行っていたといい、物心両面にわたって協力していた記録も残っている。

・海軍退役後は静かな余生を暮らしていたが、ワシントンの日本大使館に派遣される海上自衛隊士官らは必ずといっていいほど提督の下を訪れていたという。本人曰く「アメリカ海軍より海上自衛隊のほうが親身になってくれる」と言ったとか。

・海上自衛隊創設に尽力した経緯から勲一等旭日大綬章(外国人で初)を送られているが、アメリカで盗難にあう。落胆したバーク提督を見かねて、日本の旧海軍・海自関係者の尽力もあり、勲章の再授与があったという。

・彼が亡くなった際、棺に納められたとき胸につけていたのは数多の勲章の中から一つだけ、日本の旭日大綬章だけだったという。