エレクトリック・ベース 単語


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エレクトリックベース

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 エレクトリック・ベース(Electric Bass)とは、低音域を主に演奏する電気楽器のことである。

 エレキベース電気ベース、または単にベース等と呼称されることもある。

概要

 言語的観点から言えば、エレクトリック・ベースは、低音域を演奏する電気楽器全てに当て嵌まる用語であり、「アコースティック・ベース」の対義語であると言えるが、一般的にはエレクトリック・ベースは、「エレクトリック・ベースギター」のことを指す。演奏者は「ベーシスト」と呼称される。

 構造としては、弦の振動をピックアップで拾い、電気信号に変換し、ケーブルを通してアンプに伝送し、スピーカーから発音させるという仕組みになっている。

ベースギター

 一般的にエレクトリック・ベースと呼ばれるものはアメリカのFender社が1951年に発売した世界初の量産エレクトリック・ベースギター、「Fender Presicion Bass」を祖とする形式のものである。それ以前にもアップライトベースにピックアップを取り付けた物などが少数ながら製作されていたが、ギターから着想を得た「フレット」の採用によって正確(Presicion)な音程を得られるプレシジョンベースは従来習得の難しかったベースの演奏の簡易化を成功させた。
 フェンダープレシジョンベースの成功によってこの種の楽器は爆発的に普及する事となった。それゆえに当初はこの種の楽器の総称がフェンダーベースと呼ばれた程であった。

 一般的なエレキベースの外観はエレクトリックギターに類似し、比較的太めの金属弦が4本張られている。
 音程やアンサンブル上の役割は従来より存在するコントラバスに近いものの、弦の太さと本数、弦長の違いはあれど構造や運用方法的にはギター類に近い。
 実際、ベースギターという呼び方のとおり奏法などはエレクトリックギターと共通するものがあり、ギターの奏法を習得した者であればさほどの苦もなくベースの演奏も可能である。

 エレキベースのボディの多くは無垢の木材で構成され、磁力式のマグネティックピックアップによって弦振動を電気信号に変換し出力する。また、ブリッジに埋め込まれる形のピエゾ(圧電式)ピックアップも存在し、音色は全く異なる。
 アンプの使用が前提となっているため共鳴器は排除されており、あっても音色に変化をつける程度に簡素化されている。そのため単体では楽器として機能せず、アンプとセットで初めて運用が可能。

 一般的に演奏はギターに準じてピックを用いて撥音するほか、指で弾くプレイヤーも多い。また、弦を叩くように演奏するスラップ奏法(チョッパー奏法)もポピュラーである。

 使用される弦は当初はコントラバスなどに使われるものに似た、表面のなめらかなフラットワウンドが一般的であった。音質は朴訥としており、今でも愛用者が多い。
 70年代ごろから丸い断面の巻き線を使用したラウンドワウンド弦が登場し、ブライトで明瞭な音から一気に主流となって現在に至る。材質はニッケルが多いが、より明瞭な音質のステンレス製の弦も存在する。

 エレクトリックベース用のアンプは登場当初、低音を充分に得るために必要な出力のあるアンプが存在しなかった。ただその後間もなく技術の進歩によって十分な出力で大口径スピーカーを駆動できる大型のベースアンプが登場。ただし低音を重視するあまり不明瞭な音質のものが多かった。
 音響特性は時代とともに徐々に進化し、スラップ奏法やアクティブベースの出現などと相まって徐々にブライトな音質がもてはやされるようになる。一方で真空管アンプなどの温かい音色を好むプレイヤーも多数おり、アンプやスピーカーのバリエーションは多岐にわたる。

 また、歴史の浅い楽器であるが故か、奏者の要望や時代の流れに乗って様々な派生種が生み出された。

パッシブベースとアクティブベース

 楽器にピックアップ以外の増幅装置を持たず、そのままの信号を出力するものをパッシブベース、電池などを使用した何かしらの増幅装置が搭載されているものをアクティブベースと呼ぶ。

 ピックアップで出力される電気信号は非常に微弱なため外来ノイズや音質の劣化に弱い。それを克服するためアクティブベースはプリアンプと呼ばれる信号増幅装置を備え、出力された電気信号を増幅してノイズや音痩せの対策としている。また、プリアンプに音質を変化させるイコライザーが付いている事も多く、これの有無で外観上大まかにアクティブベースを見分ける事が出来る。プリアンプはイコライザの有無にかかわらずピックアップ自体に内臓されている事もある。 
 良い事づくめのようではあるが電池で駆動するという構造上、電池がなくなれば当然音が出なくなる。また、電気関係のトラブルも比較的多い。 

 パッシブベースは複雑な構造を持たないため故障しにくく、また味付けの無い楽器そのものの音を好むプレイヤーに好まれる。外付けのプリアンプによって音色のバリエーションを拡げたり、プリアンプを交換するなども容易に行える。

フレットレスベース

 エレクトリックベースは上述のようにフレットがあるものが一般的であるが、コントラバスの音色を再現するためや、より繊細な表現を求めるためにエレクトリックベースからフレットを除去したものを一般的に「フレットレス・ベース」と呼ぶ。対義語としてフレットのあるベースを「フレッテッド・ベース」と呼ぶこともある。

 フレットの無いエレキベースは音程を固定されないためビブラートなどの表現に非常に有用である反面、本来フレットを持たないため演奏方法の習得が困難であったコントラバス同様、正確なピッチで演奏するためにはある程度修練が必要。

 金属弦を木製の指板に当て付ける事によって少なからず指板が摩耗する。対策としてエポキシ樹脂などで指板をコーティングする方法もあるが、音質は当然変化する。 

多弦ベース、少弦ベース

 エレキベースに張られる弦の本数はコントラバスと同様に4本が一般的である。
 5本以上の弦を持つものは「多弦ベース」に分類される。また多弦ベースは単弦の他、副弦複弦の2種類が存在している。

多弦ベースの主な種類と一般的なチューニングとしては以下の通り。

  • 5弦ベース(GDAEB)一般的には4弦ベースの低音側にB弦を追加したもの。
  • 6弦ベース(CGDAEB)4弦ベースの低音高音それぞれにB弦、C弦を追加したもの。
  • 7弦ベース(FCGDAEB)6弦ベースのさらに高音側にF弦を追加したもの。
  • 8弦ベース(A#FCGDAEB)7弦ベースのさらに高音側にA#弦を追加したもの。
  • 8弦ベース(複弦)(GDAE)4弦ベースを基本として1オクターブ高い音程の副弦を持つもの。
  • 10弦ベース(複弦)(GDAEB)5弦ベースを基本として1オクターブ高い音程の副弦を持つもの。

 他にもさらに高音や低音を追加したものや副弦を追加したものなど、数多くのバリエーションが存在している。

 また多弦ベースと違いほとんど見る事は無いが、3本以下の弦を張ったものは「少弦ベース」に分類される。
 音楽ジャンルによっては必要性の薄い高音弦を排除して低音弦での演奏により特化したものもあれば、極端な変則チューニングで使用したり、見た目の奇抜さからパフォーマンス的に使用される事もある。

アコースティック・ベース

 エレクトリック・ベースに対し電気的増幅装置を持たないコントラバスなどベース属の総称として生まれた呼称である。

 ただ近年は、アコースティックギターを基本として、似た共鳴構造を持つベースを指してアコースティック・ベース、またはアコースティック・ベース・ギターと呼ぶ事が多い。
 その多くはアコースティックギターよりも多少大きいボディ(共鳴器)を持つ。一般的なソリッドボディのエレキベースと比較すれば圧倒的に大きな音が出せるが、楽器単体では必要十分な音量と低音を得る事は出来ない。そのため、アンプを使用して音量を確保するためにそれらのほとんどがピックアップを装備した「エレクトリック・アコースティック・ベース・ギター」という奇妙な名前で呼ばれる。 

エレクトリック・アップライト・ベース(EUB)

 アコースティック楽器であるコントラバスにピックアップを付け、アンプの使用を可能にしたもの。
 使用されるピックアップはアコースティックな音色を捉えやすいピエゾ・ピックアップが多く、マグネティックピックアップを補助的に備えるものもある。

 アンプへの出力が可能になる事で大音量の低音を出すための巨大な共鳴器が必要なくなる。そのため、運搬や演奏に非常に邪魔であったボディは小型化し、多くはネックとスタンド、奏者の体が触れる部分を残して省略されるなどして小型化されている。また、自立式スタンドに固定して演奏するなど独自の進化をした物も存在する。

 一方で、アコースティックな音質や共鳴感を必要とするプレイヤーは部分的にボディが存在するものを使用したり、エフェクターやデジタルモデリング等によって対処する事が多い。 

 アップライト(Upright)とは英語で「直立している」という意味で、横に構えて使用するエレクトリックベースが一般化した事によって生まれた対義語である。

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関連項目

  • ベース(弦楽器)
  • エレクトリック・ギター
  • コントラバス(ダブルベース、ウッドベース)
  • アコースティック・ベース
  • アップライト・ベース
  • アコースティック・ベース・ギター
  • 5弦ベース
  • 6弦ベース
  • 7弦ベース
  • フレットレス・ベース
  • ベーシスト

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