グループA(輸出国カテゴリー) 単語


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韓国を「ホワイト国」から除外

グループA(旧・ホワイト国、優遇対象国)とは、日本の輸出管理法令で規定されている、輸出国に対するカテゴリーの一つである。管轄は経済産業省(経産省)。
令和元年(2019年)8月より「ホワイト国」から「グループA」に改称された。

概要

「輸出貿易管理令(輸出令)別表第三」に掲載されている国がグループAとなる。
…これだけだと何もわからないので、以下で説明する。

1980年代から西側先進国を中心に、軍事転用可能な物資が危険国に流出しないように輸出管理を行うことが国際的に合意された。これに従って、日本では軍事転用可能な物資・技術に「該当」すると判断したモノの輸出に関しては個別審査を行うことが原則となっているが、特に信頼できる相手国向けの輸出には特例的に手続きを簡便にすること(優遇措置)が認められている。この優遇措置の具体例として、日本の安全保障貿易管理に於ける「キャッチオール規制(補完的輸出規制)」の対象外となることが挙げられるが、詳細は後述する。だがしかし、そもそも論として、たとえ自由貿易といえども安全保障面の必要性から輸出管理を施すのはやむを得ないとしても、こちらに敵意を向けているわけでもない国々を格付けし、更には優遇措置という名の事実上の逆差別扱いをすることはアンフェアであり、自由貿易の原則に悖るのではないかという意見もある。

前述の「特に信頼できる相手国」と日本政府が認定した国が「グループA」、いわゆる「ホワイト国」である。どの国をホワイト国に指定するかは輸出国の判断で行っているので、万が一危険国への流出といった問題が起これば指定を行った国が責任を負うことになる。[1]

韓国をホワイト国から除外

日本政府は2019年8月2日に韓国をホワイト国から除外する政令改正を閣議決定、同月28日に施行された。これにより韓国は輸出規制レベル4段階(グループAからD)のうち、AからBとなった。[2]

背景[3]

日本は武器転用技術の流出を防ぐ安全保障協定である「ワッセナー・アレンジメント」に参加しているが、このワッセナー・アレンジメントに基づいて2017年に改正外為法を施行している。ホワイト国除外もこの改正外為法に沿って行われている。

改正外為法によって日本は大量破壊兵器だけでなく通常兵器のキャッチオールまで厳格化し、韓国にも同様の措置を取るように求めていたが無視され続けてきた。最近になって韓国には通常兵器キャッチオールに対応する法律がないことが判明し、韓国から戦略物資の違法輸出が大量に発生していたことも韓国産業通商資源省によって発表されていた。

ホワイト国から除外されたらどうなるのか?

通産省の通達によると、以下の通り。

包括許可取扱要領関係

◇大韓民国向けの貨物の輸出及び技術の提供について、一般包括許可を適用しない。

◇特別一般包括許可(自主管理の事前確認等、一般包括許可よりも輸出者の要件が厳格)については、従前のとおり適用可能。また、この範囲の個別許可については、従前のとおり、地方経済産業局・通商事務所で申請を受け付けます。

※関連通達の改正の考え方は上記のとおりであり、その詳細については、8月7日に公表予定の資料をご確認ください。

これだとよくわからないので、以下実際に輸出管理業務にあたっている方の解説から引用する。

詳しいことは省略しますが、輸出貨物は大まかに分けて「該当」「非該当」「対象外」の3つに分類されます。それを分類する作業を「該非判定」と言い、メーカーが出す証明書を「非該当証明書」と言います。

「非該当」「対象外」なら、対韓国の輸出でも何の影響もありません。「キャッチオール規制(CA規制)」という手続きをクリアすれば至って平常運転。私は7月の経産省の発表直後にさっさとやりました。

 

ただ、「該当」になると厄介なことになります。

「該当」とは、簡単に説明すると「核兵器や通常兵器、化学兵器や生物兵器やその部品などに使える部品に対する輸出制限」に「該当」する貨物のことで、たとえばミサイルに使う部品や、それを製造する機械など、事細かに分かれております。

輸出しようとするモノが「該当」になったとしましょう。『輸出管理令』第1条による経済産業大臣の許可を得なければなりません。経産省に、

「これ、◯◯国の△△という会社に輸出してもいいですか?」

とお伺いをたて、大臣のハンコ(実際は大臣のハンコを持った誰か)が必要となります。

 

これを「輸出許可申請」と言うのですが、それに対する許可が、大きく分けて3種類あります。

1.個別許可:

チョー面倒くさいやつです。でも基本的にまずはここからスタート。申請から許可までの期間は…わかりません。実例でいうと、今年の6月に申請したものが許可され…る気配すらありません(編注:この記事が書かれたのは8月2日)。ホンマどうなっとんねん(笑)

2.一般包括許可:

個別申請は一契約ごとに行わなければならず、時間もかかるし書類も山程必要。なら、同じ仕向地(行き先)で何度も続くビジネスならいちいち個別申請しなくてもいいよ!

という経産省のお慈悲です。こちらは一度番号を取ってしまえば、有効期間内は何度でも社内処理で済ませられ、輸出がスムーズに進みます。

3.特別一般包括許可:

こちらは2.の優遇バージョンです。ただし、「特別」と名前がついている通り基準はめちゃ厳しく、輸出者(会社)の社内輸出管理・審査のシステムをがっちり構築する必要があり、その上で経産省の現地立入検査が入ります。輸出管理専属スペシャリスト(担当取締役含む)を多数抱えられる企業体力(人財・お金)が必要なので、自ずと中~大企業に限られます。

しかし、法令に触れるようなチョンボをしたらその優遇措置は即ボッシュートです。話によると、イエローカードはなくレッドしかないという鬼っぷりなんだとか。

これを踏まえると、本日の通達は
「韓国向けに関しては、2.は適用せず1.のみ。ただし3.はいつもどおりね」
私の実務上で言うならば、一行目(一般包括不適用)を見て、

「マジデスカ…」

と顔が真っ青になり、二行目(特別一般包括は別ね♪)で、

「あーよかったー!」

と血色が戻ったという感じです。

さて、特別一般包括許可を取っている会社はいいけれど、取っていない会社はこれから時間がかかるでしょう。しかし、ちゃんと書類を揃えればな~~~んの問題もありません。ただ、モノによっては6月に申請したのがまだ下りない(それも全然韓国じゃないし)ほど時間がかかることはお覚悟あれ。

どんな運用をされているのか?違反するとどうなるのか?

通産省の通達には、「厳格な運用について」という記述がある。

3.輸出管理の厳格な運用について

◇7月4日以降、大韓民国向け輸出について個別許可を求めることとしていた、フッ化ポリイミド・レジスト・フッ化水素の3品目については、厳格な輸出審査を経た上で、正当な民間取引であると確認できたものは今後許可していきますが、3品目に限らず、迂回輸出や目的外転用などには厳正に対処します。

◇そもそも、輸出先や許可の種別に関わらず、輸出者による自主管理が重要です。輸出企業におかれては、最終需要者や最終用途などの確認に万全を期するよう改めてお願いします。

「法令を守りましょう」というのは本来当然のことなのに、なぜわざわざ1項目を割いてまでこのような注意書きがあるのか。
以下実際に輸出管理業務にあたっている方の解説から引用する。

経産省の激おこぶりがよくわかる条文はこれまで解説した箇所ではありません。
むしろ輸出者に向けたこの文。

「フッ化水素など3項目は輸出禁止じゃないからね!」

と言いつつ、

「厳格な輸出審査を経た上で、正当な民間取引であると確認できたもの」
(翻訳:今までみたいに甘ないで!)

「3品目に限らず、迂回輸出や目的外転用などには厳正に対処します」
(翻訳:小賢しいことやったら、どないなるかわかってるんやろな!)

「輸出者におかれては、最終需要者や最終用途などの確認に万全を期するよう改めてお願いします」
(翻訳:顧客管理甘くしとったら、社長しょっ引いて業務停止やで!)

ときっちり釘を刺しています。

 

うわーこれめちゃ怒ってるわ…と寒気がしました。
『厳格な輸出審査』と聞いただけで、まだ見ぬ妖怪を見るよう。実務者は戦々恐々でしょう。

これらの法令、かなり厳格に適用されます。
日本の役所は基本的に甘々。一度失敗しても
「もう、今回は許してあげるから、次からはダメよ♪」
とイエローカードで済みますが、経産省にはイエローなんてありません、いきなりレッドカードを突きつけられます(笑)

やらかしてしまったらどうなるのか?
まずは経産省に、
「こいつ、こんなことやりやがった!」
とさらし首にされた上、その不名誉はPDFファイルとして、経産省HPに永久に残ります。
そしてこのレッドカード、天下に名だたる企業がやらかしてたりしています。

上述した「社長しょっ引く」なんてオーバーな!なんて呑気に構えてるあなた、この実例で震え上がるがよい~。

 

1.㈱セイシン企業

行為:ジェットミルをイランへ無許可輸出(不正輸出)
結果:社長・支店長起訴→懲役1年6ヶ月~2年6ヶ月(執行猶予3~5年)
処分:罰金1500万円(法人)、輸出業務禁止禁止2年

 

2.日本航空電子工業㈱

行為:飛行安定装置を民間利用と虚偽申告、イランに輸出(公文書偽造行使・不正輸出)
結果:社長・取締役起訴→懲役2年(執行猶予3年)
処分:罰金500万円(法人)、輸出業務禁止1年6ヶ月

 

3.ヤマハ発動機

行為:中国に無人ヘリを輸出しようとし、輸出通関時に税関にゴルァされる(不正輸出未遂@税関→経産省に告発)
結果:事業部長他3人逮捕→起訴猶予

(※ニュースになって大騒ぎになった割には軽い…おそらく未遂だったので、罪一等を減じるという感じか!?)

処分:罰金100万円(法人)、輸出業務禁止9ヶ月

 

中でも悪質として輸出管理セミナーでよく晒し上げられるのがこれ。ニュースでも大々的に取り上げられていました。

 

4.㈱ミツトヨ

行為:核兵器開発に使用できる三次元測定機を、スペックをごまかしてシンガポール→マレーシアに輸出。その後それがリビアでの核開発施設で見つかり、国連安保理激怒→日本政府激おこ
結果:社長、副社長、取締役2人起訴→懲役2~3年(執行猶予5年)
処分:罰金4500万円、輸出禁止6ヶ月~3年

(私の記憶が確かなら、ミツトヨは「前科2犯」だったはず)

 

ヤマハとミツトヨは私が商社時代に起こったことですが、上司が

「メーカーやからまだええけど、商社やったら輸出入業務停止1年なんて死亡宣告みたいなもの。資本金1億円くらの(会社)なら半年でぶっ飛ぶ(倒産)な」

と震え上がっていました。

 

こういう輸出管理は、日本→北朝鮮という風に直接はもちろん、第三国経由の輸出も対象となります。

たとえば、香港には中国の軍需産業や北朝鮮の関連商社が山ほど存在するのですが、彼らに売る、つまり日本→香港→北朝鮮という第三国ルートでも当然即レッドカードです。上に書いたミツトヨも、日本→シンガポール→マレーシア→リビアに流れた結果。そんなん知らんがなは通用しません。そこまで管理するのも輸出者(会社)の責務です。

「ホワイト国」から「グループA」への改称について

上記の改正輸出令の閣議決定と同時に、経済産業省は「ホワイト国」などの名称について、下記のように呼称を変更した。[4]

新しい呼称 内訳 備考
グループA 輸出令別表3の国・地域
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、
ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、
フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、
イタリア、大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、
ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、
スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国
「ホワイト国」から改称
グループB 輸出管理レジームに参加し、一定要件を満たす国・地域
(グループAを除く)
韓国はグループBに該当
グループC グループA・B・Dのいずれにも属さない国・地域
グループD 輸出令別表3の2の国・地域
アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、
イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダン
輸出令別表4の国・地域
イラン、イラク、北朝鮮

関連動画

関連リンク

関連項目

  • 経済産業省
  • キャッチオール規制 / 補完的輸出規制

脚注

  1. *補足解説3:誤解だらけの「韓国に対する輸出規制発動」 2019.7.23
  2. *韓国を「ホワイト国」から除外 日本政府が政令施行 2019.8.28
  3. *韓国、米国大使を侮辱で“反米国家”に…在韓米軍撤退の動き、ウォン安が通貨危機に発展も 2019.9.20
  4. *輸出貿易管理令の一部を改正する政令が閣議決定されました 2019.8.2

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