「一つだけ教えてあげよう」
「サンジェルマンという個人が死のうとも、サンジェルマンという思想が潰える事はない……絶対にな」
サンジェルマンとは、『新約とある魔術の禁書目録』に登場するキャラクターである。
不老不死伝説の怪人「サンジェルマン伯爵」を名乗る人物。当初現れたのは燕尾服を着た老人だったが…?
複合商業ビル「ダイヤノイド」に潜り込み、『藍花悦』や上条当麻と接触する。
本人は、魔術の神「魔神」どころか「魔術師」とも異なる第三の存在「サンジェルマン」を自称している。
僧正:あれは、どんなに位相を差し込んで黄金色の世界を作り出しても、いずれどこかに湧いて出てくるウィルスに近い存在じゃった。お得意の自家生産憎悪で話も聞かぬし。わしらが直接介入してやっても良かったが、何分、力が強過ぎる。世界を吹き飛ばしては意味がないしのう。
元は18世紀のヨーロッパに実在した謎多き人物。
突如現れて頻繁に宮廷へ出入り、フランス国王・友愛王ルイ15世に取り入り、ボンパドゥール夫人の絶大な信頼を得て、魔術師としての地位を確固たるものとした。
伯爵がいつどこで生まれたかは判明していない。 諸説あり、ハンガリア出身、スペインの皇妃マリー・アンヌ・ド・ヌブールとユダヤ系の貴族メルガル伯爵の私生児等とも言われている。しかしいずれも噂の域を出ておらず、彼に関する多くの情報に正確な記述は存在せず、今なおベールに包まれている。
伯爵は化学に長けており、ピアノや絵画などの芸術方面にも通じ、あらゆる言語をマスターしていた。確認出来るだけでもギリシャ語、ラテン語、サンスクリット語、アラビア語、中国語、ドイツ語、イタリア語、英語、ポルトガル語、スペイン語などが挙がる。
しかも絵画の腕たるやプロも舌を巻くほどの腕前であった。ヨーロッパの歴史にも詳しい博識ぶり。どこか人を惹きつけるカリスマも備わっていたという。まさに完璧超人と言う他ないだろう。
しかし、サンジェルマン伯爵に纏わる伝承はというと、名状し難いものばかりであった。
伯爵の逸話の中でも代表的なものが錬金術・不老不死である。 彼はその身一つで悠久の時を生き、死を超越した存在と自称している。 しかしこれはただの法螺話としか思われていなかった。実際、陰ではイカサマ師などと陰口をたたかれていたようだ。
だが、この突飛な不老不死説は、彼の死後に微かな真実味を帯びた話にも変わる。なにせ歴史に名を残す複数の著名人の証言もあり、更に「フランス革命」の影にも少なかれ関係してくるのだ。
伯爵を知る者達の“不老”の証言を一部抜粋すると、 作曲家ジャン=フィリップ・ラモーが「数十年経っても容姿が初めて会った1710年と変わらなかった」という。 同じ年に会ったフランスのジェルジ伯爵夫人も、約40年後に容姿の変わっていないサンジェルマンと会ったらしい。
不死の伝説は、彼が没した記録が残っている時期からが本領と言えるかもしれない。
神話の時代、今の時代じゃ語りえない話をまるで見たように語るものだから、現代に残るサンジェルマン伝説にはタイムトラベラー説まで付随している様子。
不老不死を裏付ける伯爵の従者の証言も突飛したものであった。
集会の席に出るたび決まって「自分は四千年生きている」と、あまりにもぶっ飛んだ事を言うものだから、「おまえの主人は嘘つきだ」と、ある男が執事に言い放った。
しかし、その執事の証言も中々にぶっ飛んでおり、
「その点につきましてはわたしの方が存じております。伯爵は誰にでも自分は四千年生きていると仰います。」
「わたしが伯爵に仕えるようになって未だ100年しか経っていません。わたしがこの家に参りました時、伯爵は自分は3000年生きている、と仰ったはずです。」
「伯爵は勘違いして900年余計に数えていらっしゃるのか、それとも嘘をついていらっしゃるのか、その辺のところ私には分かりかねます」
と、突っ込みどころ満載の発言で返したらしい。
また、このようなエピソードも残っている。
伯爵がローマのシーザーの話をまるでその目で見たように話すものだから、ニコラ・シャンフォール氏は気になって 「お前の主人は本当に2000歳なのか」 と伯爵家の召使いに尋ねる。すると召使いはこう答えた。
「お許しくださいませ、みなさま。私は伯爵に仕えるようになって未だ300年にしかならないのです。」
…外側の者からしてみれば、伯爵家はさぞ奇人変人の集まりに映った事だろう。
錬金術師であったと云われる。不老不死であり、ダイヤの瑕を治す術も会得していた。
中でもルイ15世のダイヤの瑕を取り除いた話は有名である。
伯爵はクリスチャン・ローゼンクロイツを開祖とする有名な秘密結社「薔薇十字団(ローゼンクロイツ)」の一員と見られている。薔薇十字団は中世ヨーロッパより存在する、死や病からの救済を教義とし、その術として「錬金術」に精通していた。中世ヨーロッパの思想を統一し、世界連邦を目指した革新的な団体である。
余談ではあるがカリオストロ伯爵は、アルトタスなる人物に錬金術を師事していた。このアルトタスと、有名な錬金術師であるサンジェルマン伯爵とが結び付けられる事もあるようだ。
伯爵はルイ15世にシャンボール城に住む事を許可され、研究室を与えられただけでなく、私室に自由に出入りする事まで許されていたと云う。
これは破格の待遇であり、様々な憶測を呼んだが、中でも伯爵がヨーロッパより遣わされた薔薇十字団の密使だからというのが有力説である。
外人でありながら、外交(和平交渉)で国外へ赴く事の方が多かった。 これを快く思わない者もおり、外務大臣のエティエンヌ=フランソワ・ド・シュワズール公爵などは彼を失脚させようと企てた程だった。
しかし陰謀は一度失敗に終わる。王の密使という説があり、少なくともルイ15世とシュワズール公爵の思惑にすれ違いがあったのは確かである。
1760後年には遂にスパイ嫌疑(保守派の陰謀である)をかけられフランスを追放された。その後ロシアに渡って「ヴェルダン伯爵」と名乗り、エカチェリーナ2世を擁するクーデーターに手を貸したとも。
1777年にドイツのヘッセン・カッセル邸で死去。 しかしドイツのエッケルフェアデ教会の記録には、「1784年2月27日死去、3月2日埋葬」という記録が残されている。
だがその死後も、伯爵の存在を確認した者が絶えなかった。フランス革命期より少し前、マリー・アントワネットにあてた手紙があった事は特に有名。
サンジェルマンは「思想」である。いわく「同期」し、「感染」し、「増殖」する。いずれも燕尾服になる。
サンジェルマンに中心など存在せず、全てが末端である。さながらミサカネットワークや薬味久子のAIMヒーロー実験のようだが、あちらはホスト役(打ち止めやフレメア)がいるので少し違うだろうか。
作中で存在感のある者は、老人の個体とフレンダを少し成長させたような個体だった。少なくともフレンダに似た個体は『藍花悦』に接触する為、容姿が似た者が選ばれたのかもしれない。
ここから下は嘘も多分に含まれる。
サンジェルマンは自らの嘘…要するに設定に都合の良いように自分の記憶を書き換えていたため、もはや何が嘘で何が本当かなど分からない。それを念頭において読んで貰いたい。
サンジェルマンの不老不死伝説は偽りであり、全てに単純なギミックが存在していた、とも言われる。
サンジェルマン関係の伝記に触れた者なら一度は思い浮かんでもおかしくない事だが、サンジェルマンの手紙などは全て別の誰かが書いたもので、付随する不老伝説も、自らが伝説の生き証人となりたいがためのデマ、もしくは誰かの悪質な悪戯だったと。
始まりはサンジェルマンを隠れ蓑にしたフリーパスであったとも。いわく社交界に参加していたのも、財産を確保していたのも、富や名声を欲したいが為ではなく、世界各地のサロンや夜会に通う為だった。
それすらどこかで嘘が混じった可能性が高い。
とにかく「設定」がコロコロ変わる厄介な存在。作中では「魔神」公認の厄介な引っかき回し役になった。
『ネフテュス』の口はある名前と、付随する一つの伝説を告げた。その他大勢として束ねるのではなく、明確に切り分けるように。
「クイーンアン」
さて、そこにどんな意味が付与されるのか。とにかく、神はこう呟いたのだ。
「……キングアーサーには双子の妹と、剣の対となる盾があった、か」
第一に、サンジェルマンの起源は西暦500年ともいわれる。
魔神と別のベクトル・視点から魔術を極めたと言える第三の存在「サンジェルマン」はそこに在った。
聖剣「エクスカリバー」を引き抜いたアーサー王の伝説として処理される事も多い話だが、日本でも有名な円卓の騎士に代表されるように、何も王が絶対最強の主役という伝承ではない。
その中に人の身にして魔術を極めながらも自身が王となる事を望まず、その人生を全てアーサー王の補助、国政に費やした「マーリン・アンブロジウス」という、偉大な彼の忠臣が出てくる。同様に魔術を極めたサンジェルマンは人の上に立たずして自らがその王に寄り添う存在となる、つまり王に仕える事を選んだのだ。※
サンジェルマンは何も王に下ることに見返りを求めなかったわけではない。それが、自身の真なる力を引き出してくれると思っていた。それこそ魔神に参列しろと言われても一掃出来る程に。※ しかしサンジェルマンの根源ともなった年には既に自らに見合うその王は死去、それに付随する伝説つまり共に在った聖剣「エクスカリバー」も王の伝説と共に失われてしまった。
一方でかのアーサー王には、双子の妹がいたとも云われている。しかしそれは決して伝説として語られる事はない。剣の伝説には対となる盾もあったのだと、厳密にはそうした創作話として整えられたアーサー王伝説からも弾かれた、一つの異説・創作話・学説に過ぎなかったのである。
対となる盾の伝説をサンジェルマンは「アンの盾」と称し、剣と王に付随する伝説を探し求めた。だが世界を巡っても、アンの盾はなかった。サンジェルマンは発想を転換させ、そもそも魔術サイドにないのではないか、と現代の科学サイドの総本山「学園都市」に寄航する。※
何も根拠が無いわけではない。なにせ科学サイドの学園都市は魔術サイドのイギリス清教と同盟を締結しており、そのうえ「禁書目録」を預けられ、原石や幻想殺しなど特異な能力者のコレクターでもあるのだから。
アンの黄金の盾は、聖剣エクスカリバーの対となる存在。最大200万の騎兵を同時に射抜く、かざした相手を極小の光で迎撃する究極の防御用霊装である。いわくエクスカリバーが領地の拡大など積極的・能動的な象徴であるのに対し、盾は消極的・受動的な記号性が含まれているようだ。※その力は幻想殺しの処理能力を超えているとも。※
サンジェルマンの話によると、『藍花悦』はその盾を扱える者として生まれたという。※
『軽く見積もって十世紀以上。長い旅路の果てに、ついにサンジェルマンは見つけたぞ』
学園都市の少年『藍花悦』。アンの盾に選ばれた王にして、もう何度目かになるか、学園都市の超能力者・第六位を偽った者。サンジェルマンは長い時をかけて、遂に自らが仕える王に巡りあった…という嘘の設定である。
先述したとおり何処から何処までが嘘なのかは分からない。
が、少なくとも『藍花悦』がアンの盾を扱える王ではない、そしてこれが「アンの盾」ではない事だけは確定している。
インデックス曰くサンジェルマンは「論理の可逆」を利用し、存在感のある盾に歴史を持たせたらしい。
しかし霊装であるため魔術的価値はあり、使用者が魔術を使用する事くらいは出来る。
上条当麻はいわゆる「ヒーロー」である。言葉にすれば陳腐な表現だが、作中では明確にカテゴリー分けされており、敵であっても味方であっても片っ端から救い上げる性質を持つ存在をヒーローという。
新約4巻、新約7巻ではカテゴリーとしてのヒーローを題材にしたエピソードが執筆されている。御坂妹、右方のフィアンマ、そして直近の巻では魔神オティヌス。過去彼が救ってきた者達も、多くは彼の性質によるものが大きかったと。
しかし、当然ながら上条ですら救えない者もいた。間に合わなかった、もしくは不在だったのだ。例えば旧15巻では科学サイドの暗部にて多くの者達が悲惨な末路を遂げたが、あれはまさに「上条の不在は地獄のような惨状を生む」と、まざまざ見せつけられた事例でもある。
オティヌス、オッレルス、ベルシなどはその性質に気付き、まるで上条の手の届く範囲は全てが安全地帯であるかのように評している。
だが、それを知ってしまえば残された者達はどう思うのだろうか。もっと早く彼が駆け付けていれば、何故間に合わなかったのか、そうした逆恨みに近いことを考えるのではないか。
サンジェルマンはそこを突いた。“フレンダの死は上条がいないせいでもあった”と吹き込んだ。因みにフレンダを殺害したのは麦野なのだが、そうした体制を生み出す者への復讐や、上条を確かめるという理由付けがされている。
だがサンジェルマンの目的はその先にあった。要は魔神の目的を妨害する為に、上条に誰かを殺させることで性質の変化を促したかったのだ。
故に、『藍花悦』を利用した。本当は利用できるなら誰でも良かったし、『藍花悦』自体にさして執着していたわけでもない。まして自らの王などと、思ってもいない。
先述通り、黄金の盾の真実は、サンジェルマンの生み出した虚像、偽の霊装だった。
ではサンジェルマンがなぜこんな事をしたのかというと、要は能力者が魔術を扱えない、拒絶反応を覚える体であることを利用したのだった。
能力者は魔術を使用するたびに体の器官、細胞が一つずつ壊れていくが、運が悪ければ即死する。実際、土御門元春も悠々と生きてはいるが、魔術を使用する毎に、常に命の危機に晒されていたわけである。
ここで新約10巻のラストを思い起こして欲しい。そもそも何故オティヌスは隠世の魔神に生かされたのだろうか。全ては上条の性質の変化を懸念した為である。
上条は魔神の計画には必要な存在であるらしく、魔神に敵意を抱く(?)サンジェルマンは、その妨害となり得る手段の中で、考えられる最善手をうったという事になる。
しかし、ことはサンジェルマンの思い通りに運ばなかった。
シャンボールとは、あのフランスのシャンボール城の事である。先述通り、ルイ15世は彼を大層気に入り、サンジェルマン伯爵に研究室を与えたという。
炭素を操る術式であり、彼がダイヤの瑕を治したという伝承に由来する。
資材がカーボンのダイヤノイドとは相性が良く、部屋の一部を殺傷力の高い槍に変え、ダイヤノイドのドアを固着させて客を閉じ込めたりと、非常に幅広い応用が利く。
また炭素で有機物を操作し、「植物細胞で構成された生物兵器」を生む事も可能。
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最終更新:2025/12/08(月) 22:00
最終更新:2025/12/08(月) 21:00
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