ジム・クラークとは (ジムクラークとは) [単語記事]

ジム・クラークとは…

ジム・クラーク (レーサー) - スコットランドのレーシング・ドライバー。F1世界選手権や、インディ500での優勝経験がある。
ジム・クラーク (実業家) - アメリカ合衆国の事業家、シリコングラフィックス及びネットスケープコミュニケーションズの創業者。
ジム・クラーク (編集技師) - イギリスの編集技師。

このページでは1.について解説していく。

ジム・クラーク（James・"Jim"・Clark、1936年3月4日 - 1968年4月7日）とは、スコットランド出身のレーシングドライバーのことである。

「フライング・スコット（天駆けるスコットランド人）」の異名を持つ。

概要

1936年、スコットランドの農家に4人の姉を持つ末っ子として生まれる。

家業の手伝いをしながら9歳頃に父の影響で車の運転し、マシンやレースに対して関心を深めていく。

地元の草レースやラリーに参加していたところ、その走りがロータスのボスであるコーリン・チャップマンの目に留まり、1960年にロータスからF1デビューが決まった。

F1デビュー後

デビュー戦は1960年の第4戦オランダGP。予選は11位で決勝は48周目でトランスミッション系のトラブルでリタイアと苦いデビュー。続く第5戦ベルギーグランプリでは予選9番手からスタートし決勝は5着で初入賞(2P)。このレースは完走わずか6台に加えクリス・ブリストウ、アラン・ステイシーの2名がレース中の事故で亡くなる非常にタフなレースであった。

その後第8戦目ポルトガルGPで3位に入り初の表彰台を獲得。

この年は6戦に参戦し10ポイントを獲得しランキングは10位であった。

翌1961年は2度の3位表彰台などで11ポイント、ランキングは7位。

1962年ロータスはバスタブ型のモノコック構造を導入(ロータス25)。これによりマシンの戦闘力が大幅に向上。

第3戦ベルギーグランプリで11番手スタートから果敢な走りで順位を徐々に上げ、見事初優勝、ファステストラップも記録した。以降もイギリスGP・アメリカGPでも勝利を重ね、ファステストラップも5度記録し躍進するも、ドライバーズタイトルはBRMのグラハム・ヒルに競り負け2位となった(30P)。

1963年はマシンの成熟度がさらに向上。第2戦ベルギーGPでの優勝を皮切りに第5戦イギリスGPまで4連勝と絶好調。その後も他を圧倒する走りを見せ、全10戦で7勝を挙げ^[1]、ライバルのグラハム・ヒルに大差をつけるドライバーズランキングランキング1位(73P)、チームもコンストラクターズタイトルを獲得。インディ500にも参戦し惜しくも2位に敗れたものの、充実した1年となった。

1964年は前半戦は5戦で3勝と良い滑り出しで中盤戦までは独走状態だったものの、中盤戦に導入したニューマシン(ロータス33)が信頼性を欠き、残り5戦中は4戦リタイア。最終戦メキシコGPもレース途中まで独走状態だったものの残り2周でエンジントラブルが発生し5位に終わり、タイトルを逃した。

結局ランキングは3位に終わり、ドライバーズタイトルはフェラーリのジョン・サーティースが手にした。

1965年は前年の鬱憤を晴らすかのように激走。欠場した第2戦モナコGPを除き第1戦～第7戦まで6連勝を記録しランキングを独走。2度目のドライバーズタイトルを獲得(54P)。

また、欠場した要因はインディ500に参戦するためだったのだが、こちらでもポールポジションスタートから独走状態で優勝。史上初のF1とインディ500同時制覇の偉業も達成した。ちなみに、このレースはミッドシップレイアウトマシンによる初の優勝(ロータス38)でもあった。また、1914年のフランス人、ルネ・トーマ以来のアメリカ人以外による優勝でもあったなど、記録づくめの勝利である。

1966年はロータスがエンジン排気量が3000ccに拡大された新レギュレーションに対応しきれず、戦闘力を欠くマシン(ロータス33にあり物の1500ccV8エンジンを2000ccに拡大して搭載)での戦いとなった。

レースの方は第8戦アメリカGPでBRM製H型16気筒エンジンを搭載したマシン(ロータス43)での1勝に留まりランキングは6位と苦戦した(16P)。

1967年、チームがフォードからの援助を受けこっそり開発していたエンジン、コスワースDFVが上手くフィット(ロータス49)。また、チームにはライバルであったグラハム・ヒルが加入した。

そのロータス49のデビュー戦である第3戦目オランダGPでの勝利を皮切りに4勝を挙げたものの、5度のリタイアと安定感を欠き、ドライバーズタイトルは3位(41P)。タイトルは勝ち星こそ2勝だったものの着実にポイントを稼いでいったブラバムチームのデニス・ハルムが獲得した。

1968年、DFVエンジンの信頼性の向上も有り、チームはコンストラクターズ争いの最有力候補。ドライバーズタイトルはヒルかクラークかと見られていた。

第1戦南アフリカGPではクラーク1位、ヒル2位と1-2フィニッシュと期待に答え、クラークは通算25勝目を挙げ当時の歴代通算最多勝利を記録、チーム、クラーク双方にとっても最高の滑り出しかと思われた。

しかし、第2戦スペインGP開幕前に並行して参戦していたF2のホッケンハイムリンクでのレース中、高速コーナーを曲がりきれずマシンが森の中へコースアウトし木に激突、当時のマシンにはシートベルトが装着されておらずそのまま投げ出され頭部と首を骨折。即死だったと言われている。事故の原因は不明、後輪のバーストと言われているが特定はされていない。享年32歳。

事故後、沈むロータスの関係者を鼓舞するがごとくグラハム・ヒルが快走。追悼レースとなった第2戦スペインGPで勝利すると、新星ジャッキー・スチュワートとの激しいチャンピオン争いに勝利しドライバーズタイトルを獲得、チームもコンストラクターズタイトルを獲得した^[2]。

人物・エピソード

予選でポールポジションを獲得し、決勝で逃げ切るスタイルを得意としていた。
- ポールポジション通算33回は、1989年にアイルトン・セナに破られるまで歴代1位(現在は歴代5位)、ポールポジション獲得率45.8%(72戦中33回)はファン・マヌエル・ファンジオの56.9%に次ぐ歴代2位。
天才肌、ナチュラルドライバーとして知られ、どんなマシンでもあっさりと乗りこなしてしまうため「彼が乗るとマシンのセッティングが進まない」と言わしめるドライビングセンスの持ち主。
片田舎の農場の育ちであり、レーサーとしては決して恵まれた環境ではなかった。
豪快な性格の人物が多かった当時のレース界隈では珍しく朴訥でシャイな性格であったとも言われている。
事故現場付近のコーナーに設置された第1シケインは「ジム・クラーク・シケイン」と命名されていた。
- しかし、2002年にホッケンハイムリンクが大きくコース改修されたため、「ジム・クラーク・シケイン」も撤去されてしまい、事故を偲ぶものはメモリアルモニュメントだけとなっている。
彼の故郷には「ジム・クラーク・モータースポーツ・ミュージアム」が設立されている。
- ライバルの一人であったジャッキー・スチュワートが資金を集め設立した施設。