フィギュアスケートにおけるジャンプとは、演技を構成する要素の1つである。
その美しさや迫力ゆえに、「フィギュアスケートと言えばジャンプ」という人も多いと思われる。
この記事では、各ジャンプの概要と、その見分け方について記述する。
国際スケート連盟(ISU)が公認しているジャンプは全部で6種類。さらにエッジの使い方、踏み切り方、ポジション、回転数により細かく分類され、それを基に採点が行われる。
回転数は、1回転をシングル、2回転をダブル、3回転をトリプル、4回転をクワドと呼ぶ。日本では回転数をそのまま言うことも多い(例:「トリプルアクセル」、「4回転トウループ」)。
採点時は、各ジャンプごとに定められた基礎点に加え、出来栄え点(GOE)を足して算出される。
右利きの場合、回転方向は反時計回りで、着氷(スケーティングレッグ)は右足となる。フリーレッグとは、氷に着いていない(体重が乗っていない)足を指す。
難易度が低い順に記述する。
後ろ向きに滑りながら、着氷時のスケーティングレッグのバックアウトエッジ側に、フリーレッグのトウピックを突いて後ろ向きに踏み切る。6種類のジャンプのうち難易度が最も低く、基礎点も最も低い。
コンビネーションジャンプの第2、第3ジャンプにもよく用いられる。
1920年にアメリカのプロスケーターだったブルース・メープスが初めて跳んだ。
ISU公式競技会で4回転トウループを初めて成功させた選手はカナダのカート・ブラウニング(1998年世界選手権)。女子での成功者はまだいない。
トーループ、トゥループの表記も見られる。
後ろ向きに滑りながら、着氷時のスケーティングレッグとは逆足のバックインエッジで踏み切り、フリーレッグを振り上げたときの遠心力で回転する。上体やエッジが、離氷前におよそ1/2回転する。
1909年、スウェーデンのウルリッヒ・サルコウが初めて跳んだ。
ISU公式競技会で4回転サルコウを初めて成功させた選手は、男子ではアメリカのティモシー・ゲーブル(1997年ジュニアグランプリ)、女子では日本の安藤美姫(2002年ジュニアグランプリ)ただ1人。
後ろ向きに滑りながら、着氷時のスケーティングレッグのアウトサイドエッジで踏み切る。エッジが離氷前におよそ1/2回転する。原理はサルコウとほぼ同じだが、重心を保つためにフリーレッグを軸足の前でクロスさせるため、サルコウより難しくなる。
コンビネーションジャンプの第2、第3ジャンプにもよく用いられる。
1910年、ドイツのヴェルナー・リットベルガーが初めて跳んだ。
ISU公式競技会で4回転ループの成功者はまだいない。
後ろ向きに滑り、着氷時のスケーティングレッグとは逆足のバックインエッジに乗り、フリーレッグのトウピックを突いて踏み切る。アウトサイドエッジで踏み切るとGOEで減点される(通称:リップ Lip)。
6種類のジャンプのうち、唯一発案者の記録が残っていない。
ISU公式競技会で4回転フリップの成功者はまだいない。
後ろ向きに滑り、着氷時のスケーティングレッグとは逆足のバックアウトエッジに乗り、フリーレッグのトウピックを突いて踏み切る。インサイドエッジで踏み切るとGOEで減点される(通称:フルッツ Fluz)。
6種類のジャンプのうち、「助走のときに体にかかっている回転の力の方向」と「空中での回転方向」が逆になる唯一のジャンプであるため、難易度が高い。
1913年、オーストリアのアロイス・ルッツが初めて跳んだ。
ISU公式競技会で4回転ルッツを成功させた選手はアメリカのブランドン・ムロズ(2011年NHK杯)ただ1人。
前向きに滑り、着氷時のスケーティングレッグとは逆足のフォアアウトエッジに乗り、フリーレッグを振り上げて前向きに踏み切る。
唯一の前向き踏み切りであるため、難易度が最も高い。また、着氷は後ろ向きなので他のジャンプよりも半回転多く回る必要がある。よく「~回転半」と呼ばれるのはそのためである。
1882年、ノルウェーのアクセル・パウルゼンが初めて跳んだ。
ISU公式競技会で4回転アクセルの成功者はまだいない。
ちなみに、単に半回転するジャンプは「スリージャンプ」または「ワルツジャンプ」と呼ばれ、初心者にジャンプの入門として教えられることが多い。新採点方式の競技会では無回転アクセルとみなされ、得点はつかない。
ジャンプを着氷した後、ステップやターンをせずに連続してジャンプを跳ぶことをジャンプコンビネーションという。
最大で3連続まで跳ぶことができ、それぞれファーストジャンプ、セカンドジャンプ、サードジャンプと呼ぶ。
跳ぶことができるのはISU公認の6種類のジャンプのみである。このため、セカンドジャンプとサードジャンプは必然的に、前のジャンプで着氷したときのスケーティングレッグと同じ足で踏み切るトウループかループに限定される。
得点は、各ジャンプの基礎点をそのまま加算したものとなる。
複数のジャンプの間を、その他のジャンプやホップでリズミカルにつないで跳ぶ連続ジャンプをジャンプシークエンスという。
ジャンプコンビネーションと比較すると難易度が低く、セカンドジャンプ以降のジャンプの制限がない反面、得点は各ジャンプの基礎点を加算して0.8を掛けるため低くなる。
ジャンプシークエンス中は、ターン/ステップ、ストローキングなどの動作を含んではならない。
ペアにおいて、女性のジャンプを男性が補助し投げ上げるものをスロージャンプという。略記にはThが付く。
ジャンプはシングルと同じ6種類で、女性の踏み切り時のエッジやポジションによって区別される。
ここまでの記述では、素人ではなかなか判別が難しい。そこで、簡単な見分け方を解説する。
足の左右は右利きを基準とする。
・・・ね、簡単でしょう?
ジャンプの種類・回転数別に基礎点が付けられていて、そこに出来栄え点(GOE)が加えられる。
無効と判定された要素は0点。転倒は「エッジ以外の部分で体重の大部分を支える」という違反行為にあたり、1回につき1点が総合得点から減点される。
現在の得点は、2011~12年シーズン以降のもの(2回転サルコウを除く)。今後改変される可能性あり。
| 種類 | 基礎点 | GOEによる加減点 | |||||||
| 名称 | 記号 | 満点 | 回転不足 | -3 | -2 | -1 | +1 | +2 | +3 |
| 1回転トウループ | 1T | 0.4 | 0.3 | -0.3 |
-0.2 |
-0.1 |
+0.2 |
+0.4 |
+0.6 |
| 1回転サルコウ | 1S | 0.4 | 0.3 | ||||||
| 1回転ループ | 1Lo | 0.5 | 0.4 | ||||||
| 1回転フリップ | 1F | 0.5 | 0.4 | ||||||
| 1回転ルッツ | 1Lz | 0.6 | 0.4 | ||||||
| 1回転アクセル | 1A | 1.1 | 0.8 | -0.6 |
-0.4 |
-0.2 |
+0.2 |
+0.4 |
+0.6 |
| 2回転トウループ | 2T | 1.4 | 1.0 | ||||||
| 2回転サルコウ | 2S | 1.4 | 1.0 | ||||||
| 2回転ループ | 2Lo | 1.8 | 1.3 | -0.9 |
-0.6 |
-0.3 |
+0.3 |
+0.6 |
+0.9 |
| 2回転フリップ | 2F | 1.8 | 1.3 | ||||||
| 2回転ルッツ | 2Lz | 2.1 | 1.5 | ||||||
| 2回転アクセル | 2A | 3.3 | 2.3 | -1.5 | -1.0 | -0.5 | +0.5 | +1.0 | +1.5 |
| 3回転トウループ | 3T | 4.1 | 2.9 | -2.1 |
-1.4 |
-0.7 |
+0.7 |
+1.4 |
+2.1 |
| 3回転サルコウ | 3S | 4.2 | 2.9 | ||||||
| 3回転ループ | 3Lo | 5.1 | 3.6 | ||||||
| 3回転フリップ | 3F | 5.3 | 3.7 | ||||||
| 3回転ルッツ | 3Lz | 6.0 | 4.2 | ||||||
| 3回転アクセル | 3A | 8.5 | 6.0 | -3.0 |
-2.0 |
-1.0 |
+1.0 |
+2.0 |
+3.0 |
| 4回転トウループ | 4T | 10.3 | 7.2 | ||||||
| 4回転サルコウ | 4S | 10.5 | 7.4 | ||||||
| 4回転ループ | 4Lo | 12.0 | 8.4 | ||||||
| 4回転フリップ | 4F | 12.3 | 8.6 | ||||||
| 4回転ルッツ | 4Lz | 13.6 | 9.5 | ||||||
| 4回転アクセル | 4A | 15.0 | 10.5 | -3.6 | -2.4 | -1.2 | +1.2 | +2.4 | +3.6 |
| 種類 | 基礎点 | GOEによる加減点 | |||||||
| 名称 | 記号 | 満点 | 回転不足 | -3 | -2 | -1 | +1 | +2 | +3 |
| 1回転トウループ | 1TTh | 1.1 | 0.8 | -0.9 |
-0.6 |
-0.3 |
+0.3 |
+0.6 |
+0.9 |
| 1回転サルコウ | 1STh | 1.1 | 0.8 | ||||||
| 1回転ループ | 1LoTh | 1.4 | 1.0 | ||||||
| 1回転フリップ | 1FTh | 1.4 | 1.0 | ||||||
| 1回転ルッツ | 1LzTh | 1.4 | 1.0 | ||||||
| 1回転アクセル | 1ATh | 2.2 | 1.5 | -1.5 |
-1.0 |
-0.5 |
+0.5 |
+1.0 |
+1.5 |
| 2回転トウループ | 2TTh | 2.5 | 1.0 | ||||||
| 2回転サルコウ | 2STh | 2.5 | 1.0 | ||||||
| 2回転ループ | 2LoTh | 2.8 | 1.3 | ||||||
| 2回転フリップ | 2FTh | 3.0 | 1.3 | ||||||
| 2回転ルッツ | 2LzTh | 3.0 | 1.5 | ||||||
| 2回転アクセル | 2ATh | 4.0 | 2.8 | -2.1 |
-1.4 |
-0.7 |
+0.7 |
+1.4 |
+2.1 |
| 3回転トウループ | 3TTh | 4.5 | 3.2 | ||||||
| 3回転サルコウ | 3STh | 4.5 | 3.2 | ||||||
| 3回転ループ | 3LoTh | 5.0 | 3.5 | ||||||
| 3回転フリップ | 3FTh | 5.5 | 3.9 | ||||||
| 3回転ルッツ | 3LzTh | 5.5 | 3.9 | ||||||
| 3回転アクセル | 3ATh | 7.5 | 5.3 | -3.0 |
-2.0 |
-1.0 |
+1.0 |
+2.0 |
+3.0 |
| 4回転トウループ | 4TTh | 8.0 | 5.6 | ||||||
| 4回転サルコウ | 4STh | 8.0 | 5.6 | ||||||
| 4回転ループ | 4LoTh | 8.5 | 6.0 | ||||||
| 4回転フリップ | 4FTh | 9.0 | 6.3 | ||||||
| 4回転ルッツ | 4LzTh | 9.0 | 6.3 | ||||||
ジャンプの回転数は、「踏み切り動作から着氷までの間に何回転したか」によって決まる。回転が足りない場合は「回転不足」となり、得点は以下のようになる。
例えば、4回転トウループに成功すると基礎点10.3が与えられる。しかしアンダーローテーションと判定された場合は、トウループの基礎点の70%にあたる7.2が、ダウングレードの判定ならば3回転トウループの基礎点4.2がそれぞれ与えられる。
無効要素と判定されると、その要素は0点となる。以下に一例を示す。
またザヤックルールの記事に詳細な解説があるので参照いただきたい。
ジャンプの動画はフィギュアスケートジャンプ集で検索すると良い。
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/10(水) 23:00
最終更新:2025/12/10(水) 22:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。