トレーラー(被けん引車) 単語


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トレーラー(被けん引車)とは車両の一種で、それ自体は動力を持たず、トラクター(牽引自動車)に牽引してもらうことで貨客を輸送したり、何らかの作業を行う車両のことである。

概要

トラクターの項目も参照

鉄道車両で言うと動力のない客車や貨車のようなもの。貨客を搭載する能力はあるが自走は出来ず、鉄道で言えば機関車に当たるトラクターに牽引してもらって始めて仕事が出来る。

現代においては運輸、土木建築、農業などの産業で様々な形態のトレーラーが使われている。一方で後述するように、旅客輸送においては限定的に使われているに過ぎない。

様々なトレーラー

今日では様々なトレーラーが使われているが、それを形式や目的別に記述していく。

形式

  • セミトレーラー
    • 最も一般的な形式なもの。車輪は後部のみについており、自分の車輪だけで自重を支えることが出来ない。セミトラクターに重量を支えて貰うことによって始めて走行することができる。トラクターとの連結を解除した時は、スタンドを立てて重量を支える。後退時は通常の逆向きにハンドルを切る(右なら左、左なら右)。
  • フルトレーラー
    • 自分の車輪だけで自重を支えられるもの。ここがセミトレーラーとの決定的な違いである。セミトレーラーは先述のとおり、連結を切り離すと支えの片方がなるのでスタンドを立てる必要があるが、フルトレーラーは自重を車輪だけで支えられるのでスタンドの類は必要ない。またトラクターはそれ自体に積載能力があるフルトラクターを使うことが多い。
    • 車軸付け方は大きく分けて二つある。一つはトレーラー中央部に二軸~三軸の車輪を付けた、センターアクスル式。邦訳すると中心車軸方式とでもなるのだろうか。シーソーで例えると、板の中心にある支えの部分に車輪が配置されていることになる。後退時など運転の仕方はセミトレーラーと同じなど使い勝手は良いが、トレーラーが左右に大きく乱れるトレーラースィング現象が比較的おきやすい、とwikipediaには書いてあった。
    • もう一つはドーリー(ドリー)式。ドーリーとは台車を意味し、トレーラーの前後部に台車が付いたタイプである。ボギー付き鉄道貨車の、ボギーの部分がタイヤになったものを想像すると分かりやすい(札幌市営地下鉄?)。一般的には、前後にそれぞれ1~2軸程度の台車があり、前部はボギーのようにトラクターに追従してステアし、後部は固定車軸というのが多い。ドーリーはトレーラー自体にとっての操舵輪の役目を果たす。このタイプはトラクターとドーリー、ドーリーとトレーラー本体にそれぞれ関節部がある、つまり二重関節構造になっているのが特徴。よって後退が難しくなり、また二重関節に起因する安定性に不利な条件がある。
    • なんでそこまでしてフルトレーラーにするのかと言うと、最大の理由はフルトラクターに連結させて輸送することが可能という点。つまり一人の運転手が最低でも1.5台分、多いと2台分の貨物を運ぶことができるので、限られた人件費で売り上げを増やすことが可能なのだ。
    • なおドーリー式の後退に関しては、ドーリーの操舵機能や旋回抑制によって、操縦を容易にする仕組みもある。
  • ドーリー+セミトレーラー
    • 着脱式のドーリー(台車)をセミトレーラーに装着したもの。着脱式ドーリーを使うことで、例えばフルトラクターでセミトレーラーを引っ張ったり、或いは農業用トラクターのように通常のセミトレーラーを牽引できない車両であっても牽引することが可能になる。大型フルトラクター+ドーリー+セミトレーラーといった編成も可能であり、欧州ではこういった長編成はEuroCombiと呼ばれている。
      着脱式ドーリーは第五輪荷重(後述)によって単体で自動車として規定されることがあり、その場合はナンバープレートも単体で交付を受けなければならない。

目的別

貨物輸送用

運ぶ荷に応じて荷台の形が変わるのは単車と同じである。

  • ウィングトレーラ
    • バラ積み貨物を積載するもののうち、左右側面がガルウィングになっているもの。荷台部分はステンレス製のものが一般的。後ろ妻面には一般的なドアを有する。利点は、開口部が大きく荷積み・荷降しがしやすいこと。また金属製の荷台なので密閉性が高く、貨物が天候の影響を受け難いこともあげられる。欠点は、金属製ゆえに幌型と比べて自重が嵩むこと。
    • 上記のメリットから、また単車でもウィングのものが多いことから、日本で最も見かけるトレーラーとなっている。
  • カーテンサイダー
    • 幌型の一種。左右側面と天井が樹脂製の大きなカーテンになっており、これを荷積み・降ろしの際はこれを開いて作業する。また後ろ妻面にはドアを有する。
    • 古典的な幌型と比べて開閉作業が圧倒的に早く、また天井を開いて真上からも作業できるのが特徴。欠点はウィングと比べた場合、密閉性にやや劣ること。日本ではまだ見かける機会は少ないが、ヨーロッパではバラ積み輸送など汎用トレーラーの主流となっている。
  • ボックストレーラー (ドライバン)
    • 荷台が密閉された箱になっているもの。ドアは後ろ妻面にのみにあるのが世界的な傾向だが、側面に有するものもある。アメリカではバラ積みの主流であり、ヨーロッパでも耐候性を必要とする積荷の輸送ではこれを使う。日本で主流のウィングはボックストレーラーの一種となる。
  • バルクトレーラー
    • 粉状の物をそのまま運ぶのに使うもの。セメントの粉、小麦粉などが代表格だが、粉状のものは多種多様であり、特に「これ」と言って運ぶものが決まっているわけでもない。ハッピーターンの粉を運んでいるかは不明。
  • タンクトレーラー
    • 石油や牛乳など液体を運ぶもの。
  • 低床式トレーラ
    • ショベルカーやブルドーザーなどの重機、鉄道車両、変圧器、戦車や歩兵戦闘車といった軍用車両を運ぶのに使われる。一般的には「大きくて重いもの」を運ぶと考えて差し支えない。
    • 軍用のものであっても基本的な機能は民生用と同じで、また自衛隊や各国軍は戦闘車両の輸送に民間の低床式トレーラーを使う場合がある。
  • カーキャリア
    • 自動車運搬に特化したトレーラー。朝方に自動車ディーラーの前に止めてあって、後続車がつっかえているあれ。
  • レイバーキャリア
    • レイバーを輸送するのに特化したトレーラー。建設会社や陸上自衛隊、東京消防庁、警視庁などで使われている。警視庁のものは東京や静岡県熱海市、千葉ロッテマリーンスタジアムなどで目にした人が多いと思われる。
  • ミサイルキャリア
    • 核ミサイルや地対空ミサイルを運ぶ為のもの。大抵はキャリア自体にランチャー機能がついている。
  • コンテナ輸送用
    • 規格化されたコンテナを運ぶ為のもの。鉄道コンテナ用と海コン用がある。
  • カーゴドーリー (コンテナドーリー、パレットドーリー)
    • 空港で働いている「もうこねぇよ!」みたいなやつ。飛行機と空港の間で航空貨物を運搬するのに使用する。名称にドーリーと付いていることから分かる通り、車軸はドーリーになっている。これが転舵することで、ドーリーはトラクターの動きに正確に追従する。
    • コンテナドーリーは航空コンテナを運ぶもの、パレットドーリーはパレット(台板)に固定した貨物を運ぶものである。これら二つの総称がカーゴドーリーになる。
  • ポールトレーラ
    • 長いパイプや鉄骨などを運ぶ為のもの。伸縮するドローバーでトラクターと連結しているものが多いが、輸送時にトレーラーのボディ部分の役割を果たすのは積荷自体である。長さがあって、上記のどれでも運べないものはこれを使え。

旅客輸送用

  • 連節バス
    • …と言いたいところだが、連節バスは前後の車両で一体となっているのでトレーラーにはならない。特に最近の奴は後ろの車両にエンジンと駆動軸があり、無理に分離してもエンジン無しと運転席無しに分かれてしまうし。
  • トレーラーバス
    • 旅客輸送用のトレーラーをトラクターで牽引するバス。日本では終戦直後に運行された実績があるほか、西東京バスが「青春号」という、つるつる温泉行きバスを運行している
    • 世界的にはセミトレーラーのみならずフルトレーラー式もあり、その様子はまるで札幌市営地下鉄である。
  • 旅客機
    • 「はぁ?どこがトレーラーだよ、知ったかこいてんじゃねぇぞ」と思ったそこのあなた、まずはこのJET A-1を飲んで落ち着いて欲しい。旅客機がタキシーウェイに向けてプッシュバックする時、旅客機はトーイングタグに牽引されている状態なのである。よってあの短い距離に限るものの、旅客機も旅客を乗せた状態のトレーラーと言える。
      トーイングタグの運転資格について「けん引二種が要る」「けん引一種で大丈夫」など諸説あるようだが、どっちにしてもけん引免許は要るようだ。

農業用

農業の作業機は自走式の収穫機や給餌機などを除いて、多くのものがトラクターに牽引されないと仕事が出来ない。よって自走式だったり、或いはトラクターの3点ヒッチに装着して持ち上げるものを別にすれば、多くの作業機はトレーラーとしての性質を持っているということになる。それを踏まえて代表的なものをあげると。

  • ティッパー
    • 作物を運ぶもの。作物をおろすためにダンプが出来たり、あるいは床にベルトコンベアがついている。セミトレーラー・フルトレーラータイプの両方あり。農業用として製造されている多くのものは、農業用トラクターで牽引するのを前提としている。その為に最高速度は高いものでも60km/h程度と、一般的なセミ/フルトレーラーと比べてかなり低い。
    • またセミトレーラーは農業用トラクター専用の他、一般的なセミトレーラーにドーリーをつけてフルトレーラーにする場合もある。一見すると不便なようだが、農業用トラクターと普通のトラクターの両方で牽引できるのがメリット。例えば収穫時にセミトレーラーに作物を積み込んで農業用トラクターで牽引し、しかるべき場所でセミトレーラーに引き継いで運ぶ、といった使い方ができるのである。
  • フォレージワゴン
    • 牧草など飼料を積載して輸送する為のもの。前端部に地面の牧草を拾い集める装置がついているのが普通。

他にも用途に合わせてスラリータンカーやマニュアスプレッダ、ウッドチッパーやけん引式ハーベスターなど色々あるが、きりが無いのでやめておく。

自家用

  • キャンピングカー
    • キャンプするのに使う車。
  • ジェットスキーとか運ぶトレーラー
    • 事故防止のため、遊泳区域に立ち入らないよう、ご協力をお願いします。

その他

  • アドトレーラー
    • 広告宣伝用のトレーラー。一般的にはセミトレーラー形式で、側面や前・後面に広告を貼りつけられる構造の車体が架装されている。全体的な形状は、ウィングカーゴやカーテンサイダーのようなバン型や幌型に似ており、大きさも一般的なセミトレーラーと同程度だが、もちろん貨物を積載する為のものではない。その他の特徴を挙げると、車種によっては広告を貼りつける部分がモニターになっていたり、また音楽を流せるよう音響機器を搭載したものもある。

連結装置

トレーラーは今まで述べたような車両なので、けん引車に牽かれないと仕事ができない。よってトレーラーとトラクターには、何かしらの連結装置が備わっている。

第五輪とキングピン

第五輪とはセミトラクターや着脱式ドーリーの連結部のこと。英語ではFifth Wheel (coupling)という。これとセミトレーラーのキングピンとが対を成して役割を果たす。第五輪は日本では「カプラ」とも呼ばれるが、これはカップリングを縮めた和製英語であり、また腐った意味はない。

第五輪の中央にセミトレーラーのキングピンを差し込む穴があり、その周囲にはトレーラー前側を支える台の部分がついている。穴にはロック機構があり、解除レバーを引くまでキングピンが抜けないようになっている。分かりやすい例えがあるのだが、下ネタなので自重しておく(→どうしてもと言う人はだいしゅきホールドを参照)。こういった構造から第五輪にはトレーラーの荷重がかかるようになっており、また荷重の上限が定められている(第五輪荷重)。これは普通のトラックで言えば最大積載量に相当し、第五輪荷重を超えるセミトレーラーを連結・牽引することはできない。

自動車は曲がる運動をするので、第五輪もそこを関節として曲がるようになっている。第五輪における旋回中心はキングピンとそれが差し込まれる穴である。また、セミトラクターとトレーラーはバラバラにピッチング(前後傾斜)とローリング(左右傾斜)をするので、第五輪も上面部がトレーラーに合わせて可動するようになっている。どんなものでも最低でもピッチングには対応しており、悪路走行が想定される場合にはローリンングに対応した第五輪を使用する。

第五輪とキングピンの役割をまとめると。

  1. セミトレーラーの重量を受け止めて支える
  2. セミトラクターとセミトレーラーの連結状態を維持し、安定して走行できるようにする
  3. 牽引力をセミトレーラーに伝える

第五輪の起源

セミトラクターに備わる第五輪の源流となるのは、四輪馬車の前軸に備えつけられていた第五輪である。その役割は、鉄道のボギー台車についている心皿が近い。

大まかな構造を言うと。まず、馬車は前後軸の上に車体が乗っかる構造をしており、車軸の上に車体重量がかかる。四輪馬車の場合は、前後の車軸が分散して車体重量を受け止めるわけだ。第五輪が付いているのは車体と前軸の間。これがあることで、前軸は車体を支えながら左右に転舵する事が可能となっている。そして前軸からは轅(ながえ、長柄とも)という二本の棒が前に付き出ており、これで馬を挟みこんで軛(くびき)という馬具で馬と連結される。こうすることで馬の牽引力は「軛→轅→前軸→第五輪→車体」という順番で伝わり、馬車は前後進することができる。また第五輪があることで、前軸は馬に追従して転舵し、馬車が滑らかに旋回する事もできるわけだ。自動車の第五輪はこれを応用したもので、「馬+前軸」の役目をセミトラクターに、「車体+後軸」の役目をセミトレーラーに、それぞれ置きかえるとだいたいあってる。

第五輪そのものは、馬車の部品として20世紀初期まで発展していった。これを自動車へ本格的に応用したのが、アメリカのトレーラー専業メーカーであるフルハーフ社。同社は元々は馬車屋兼鍛冶屋だったのだが、その時に顧客からの依頼でセミトラクター/トレーラーのデザインを生み出した。その経験に基づき、トレーラー専業メーカーとなったのである(詳細はフルハーフの記事で)。

トレーラーの登録

多くの国の制度においては、トレーラーはそれ自体が一台の自動車として運輸管理当局に登録され、ナンバープレートが交付される。よってナンバーの交付を受けずにトレーラーを牽引し、公道を走行することは、無登録車両の運行となってしまう。これは大抵の国で違法である。

先述のとおり、着脱式ドーリー(関連動画の 【FENDT】Dolly20L 【936】 参照)は各国の法と第五輪荷重次第ではあるが、それ単体でナンバーの交付を受けなければならないことがある。参照動画のものはそうであり、登録に基づけば三台の車が連なって走っていることになる。

主なトレーラーメーカー

メーカー
日本 日本トレクス
日本フルハーフ
(フルハーフの記事も参照)
アメリカ Wabash National
Manac
Utility Trailer Manufacturing
ドイツ Krone Trailer
Fliegl
Schmitz Cargobull
Kögel
フランス Froilan

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関連項目

  • トラクター (トレーラーを引っ張る車に関する記事)
  • トラック (貨物自動車全般の記事)
  • 自動車
  • Euro Truck Simulator 2 / トラックシミュレーターシリーズ / トラックゲーム
    (上記は何れもトレーラーのゲームに関して既述)

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