ハイタワー三世とは (ハイタワーサンセイとは) [単語記事]

人物
ハイタワー三世
基本情報
生年	1835年
生誕地	アメリカ合衆国ニューヨーク
没年月日	1899年12月31日
死没地	アメリカ合衆国ニューヨーク
国籍	アメリカ
本名	ハリソン・ハイタワー三世 (Harrison Hightower III)
職業	実業家冒険家
備考・その他
「ホテルハイタワー」オーナー
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ハリソン・ハイタワー三世(Harrison Hightower III)は、アメリカの実業家で冒険家。「ホテルハイタワー」オーナーとして著名。

概要

　西部開拓や南北戦争が行われた激動の19世紀アメリカに於いて莫大な財を成し、64歳で失踪するまでニューヨークの頂点に君臨していた。

　その影響力は絶大で、後述するホテルハイタワーは自らの名を冠しているにも関わらず、建設費や運営費の一部をニューヨーク市庫から拠出させていたと言われている。

　頭脳明晰だが横暴で傲慢、傍若無人の上利己的であり、徹底した秘密主義者であったと評される。目的のためなら卑劣な手段も厭わない性格は、後述する冒険旅行でも遺憾なく発揮されることとなる。

実業家として

　実業家としての彼の顔を知ることのできる一次資料は極端に少なく、彼がどのような事業を行っていたか、多くを知ることは困難とされている。もっとも彼を有名たらしめているのは冒険家としての顔や謎の失踪にまつわる噂であり、そんなことはおそらく誰も興味がない。

　彼は様々な企業をM&Aし、積極的な経営で会社を大きくしていったようである。また様々な事業においてコーネリアス・エンディコット三世（ニューヨークに本社を持つ「U.S.スチームシップカンパニー」の社長）と競合していた。二人は祖父の代からライバルで、幼少期にハイタワーが彼をいじめたことから当人間においても長年確執があった。ハイタワーの死後多くの事業が彼によって買収され、ホテルも買収取り壊しを画策されるも最終的には頓挫している。

　ハイタワーが経営していた会社に、国際会報配信エクスプレス・サービス（新聞社）や、ダブルエイチ・ピリオディカル（出版社）などがある。

冒険家として

　自身の会社を運転する傍ら、非常に短いスパンで世界中を繰り返し旅行し、行く先々で財宝や美術品を譲受ないし強奪して回った。彼らの行動範囲には目を見張るものがあり、ホテルハイタワーにもそれを象徴するステンドグラスや絵（旅の様子を「かなり脚色して」描かれたもの。玄関ロビーにある）、蒐集した財宝が飾られている。また冒険記を著して系列の会社で出版しており、一定数の熱心な読者を得た。

　冒険家としての成功には帯同していた執事のアーチボルト・スメルディングの力によるところも大きい。彼は英語のほかフランス語、イタリア語、スペイン語、スワヒリ語、ヒンドゥー語など、20以上の言語を流暢に操り問題なく理解したといわれており、戦略家としても才がありハイタワーの参謀として活躍した。また彼は膨れ上がったコレクションの管理を一手に任されていた。

1875年アジア探検旅行当時明治4年の日本で鎧や刀を入手　清、朝鮮、モンゴル、カンボジアなどを歴訪
1879年東欧探検旅行　ルーマニアなどで略奪
1880年東アフリカ探検旅行
1881年イースター島及びオセアニア探検旅行　モアイ像を持ち出す
1882年ギリシャ・地中海探検旅行およびローマ・地中海探検旅行
1883年メソアメリカ（中央アメリカ）探検旅行
1884年インド探検旅行
1887年エジプト探検旅行　王家の谷を訪れ小型のスフィンクス像などを略奪している
1888年再びアジア探検旅行
1892年北海遠征アイルランド、スウェーデン、ノルウェー、スカンディナヴィアを訪れる
1899年アフリカ探検旅行・コンゴ川遠征　ムトゥンドゥ族からシリキ・ウトゥンドゥと呼ばれる偶像を略奪

　上記の旅行の多くで、住民から物を譲り受けたり、また武力で強奪したりしている。しかし市民にそれが伝えられる際はかなりフィルターのかかったものになる為、当時は好意的な受け入れられ方をしたようだ。

　もっとも彼のコレクションはかなり偏っていて、有名なものや文化財として認められるようなものはほとんどない。

ファラオ探検家クラブ

　ハイタワーが会長を務めた会員制の秘密クラブ。ニューヨーク市内の政治家や富豪、有力者の多くが会員として名を連ねていたと言われる。ホテルハイタワーの旧大邸宅（ホテルのロビーとして改修転用されている場所）の二階に本部が置かれていた。

ホテルハイタワー

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　冒険旅行の傍ら自身の邸宅跡に、かの有名なホテルハイタワーを建設した。

　場所はニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン島パークプレイス1番地。地上14階地下3階建て（12階以上はハイタワー三世の居室として使用）、当時としては巨大な規模を誇ったこのホテルはハイタワー三世の偉大さを誇示する為に建設され、彼を象徴（自称）する「美・力・気品・卓越性」をコンセプトにしていた。

　1886年にロシアの著名な建築家であるオスカー・キルノフスキーに設計を依頼したものの、意見が折り合わずに解雇され、それ以降はハイタワー三世自らが陣頭指揮を執っていたと思われる。

　1892年1月23日開業。建築費や維持運営費は上述の通り一部にニューヨーク市民の税金が充てがわれた。

　建築様式はゴシック様式をベースとしながらも場所によって様々であり、例えばホテルに隣接するスパの建物は、内装がインド風、全体がヒンドゥー風のデザインで、建物の外装はイスラム風となっている。客室の他にボールルームや庭園、サウナ、理髪店、マッサージ室、レストランなどがあった。なお現在では一部は土産物屋として改装されており、ツアーで一般人が立ち入れる場所も一部のみである。

　ホテル内の至る所に氏のコレクションが展示されており、地下の秘密倉庫にも相当数の未展示品が保管されている。地下三階にはニューヨーク港に通じる地下道があり、盗品の運搬に使われていたが現在は浸水により通行不可となっている。

　ハイタワーの失踪後に営業を停止。エンディコット三世によって解体が試みられるも頓挫し、現在はニューヨーク市保存協会によって見学ツアーが組まれており誰でも見学が可能。

牡蠣

　正面玄関上部にラテン語で"MUNDUS MEA OSTREA EST"（世界は私の牡蠣）と書かれたハイタワーの紋章がある。

　ホテルハイタワーのエントランスには、ハイタワー三世自身の姿とシェイクスピアの戯曲「ウィンザーの陽気な女房たち」第二幕第二場の台詞"The World is mine oyster which I with sword will open."（世界は私の牡蠣、私の剣が開く）と描かれたステンドグラスがある。

　英語には"the world is one's oyster"(世界を意のままにする)という慣用句がある。きっと彼は「今や世界は全て私の意のままに動かすことができる」と言いたかったのだろう。

レストラン

　とても褒められた思想ではない彼のポリシーは、どうも食事にまで至っていたらしい。

　ホテルのレストラン「OLYMPIC RESTAURANT」のメニューの記載を見ると、在りし日の彼がゲテモノ好きだったことを窺い知ることができる。

　「サゴヤシ虫のアルデンテ」「タランチュラのクリーム」「茹でたラクダの足」等々、あまり想像したくない料理が並んでいるが、筆者的にこの並びにウナギが入っていることは大変遺憾である。

ホテルツアー

　エンディコット三世の娘であるベアトリス・ローズ・エンディコット（1884-）が1912年6月にニューヨーク市保存協会を設立。ホテルハイタワーを「建築物の歴史的価値が高い」とし、代表の父エンディコット三世による買収を妨害。のちにホテルに改修工事を施し、同年9月よりホテルツアーを主催している。

　ツアーはまず中庭（旧馬車寄せからの場合もある）から徒歩でロビー、ウェイティングルーム、書斎、秘密倉庫と見学し、そこから業務用エレベーターでハイタワーの私室があった最上階まで移動するというもの。途中で記念写真を撮るスポットがある。この写真は任意で購入することができる。

　2016年現在ツアーは続いており、誰でも参加することができる。近くを通ったら是非参加してみては。

驕り昂りには気をつけよう！

コンゴ遠征～失踪事件

　1899年のコンゴ遠征にてコンゴ川流域に住むムトゥンドゥ族と接触。族長のキジャンジと木製の人形シリキ・ウドゥンドゥの買収交渉を行うも決裂（これはこの偶像を他人に譲ってはならないという掟によるものであったので、最初から譲るわけにはいかなかった）。結局ハイタワーはこれを略奪し、ニューヨークまで持ち帰る。（のちに部族は他の部族に滅ぼされ、首長の息子キブワナ・キジャンジは逃げ延びて現在ニューヨークで港湾労働者となっている）

　同年12月31日、コンゴ遠征帰還記念パーティー兼ニューイヤーパーティーがホテルハイタワーで開かれ、記者会見にてこれが呪いの人形ではとの疑惑を「馬鹿馬鹿しい」と一蹴。（偶像を敬わなくてはいけないという掟がある）他にもあろうことか根性焼きを試みたり（火を近づけてはいけないという掟がある）部屋に飾ろうとしたり（常に屋外に置かなければいけないという掟がある）していた模様。あっ･･･（察し）

　ハイタワーはその後深夜0時近くに最上階の自室に飾るべくエレベーターに乗り込む。直後の0時丁度に停電が起き、同時に最上階付近で謎の大爆発が発生。エレベーターのケーブルが切れて落下したものの、中からはシリキ・ウドゥンドゥだけが発見され、ハイタワー三世はどこからも見つからなかった。

　現地消防は事故原因が判明するまでの間ホテルを閉鎖することを決め、その後ホテルが営業を再開することはなかった。

　この事故（事件）と失踪にはコーネリアス・エンディコット三世が関わっているのではないかという言説がある。