マルクス主義フェミニズム 単語


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マルクスシュギフェミニズム

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マルクス主義的フェミニズムとは、従来のマルクス主義が研究の対象にしなかった男女の性差をマルクス主義的に解釈することによって、女性の解放を目指したフェミニズムの一派である。「的」の入らない「マルクス主義フェミニズム」とも言う。

概要

マルクス主義フェミニズムは1970年代のアメリカを中心にして発展したフェミニズム理論の一派である。日本では上野千鶴子が有名で、主要著作の『家父長制と資本制』は日本のマルクス主義フェミニズムの必読書と言える。

マルクスをはじめとした多くの社会主義者は資本家と労働者の対立、つまり社会階級の搾取構造に関しては多くの研究を残したが、男女の性差階級に関しては歯牙にもかけなかった。社会主義者や経済学者は家庭や家族を一つの意思を持った存在とみなしたが、実際は資本主義的家父長制の下で男性が女性を抑圧し、搾取する構造を取っているとマルクス主義フェミニストは主張する。

一般的なマルクス学者たちは生産労働に関しての搾取を批判したが、女性が家庭の中で行う家事、介護、看護などの再生産労働が家父長(男性)に搾取されていることには無視をきめこんだ。そういった矛盾から生まれたのがマルクス主義フェミニズムである。すなわちマルクス主義フェミニズムとはマルクス主義への批判から生まれた思想ということが出来る。

マルクス主義フェミニストは従来の1.資本家階級(ブルジョワ)、2.生産労働者階級(プロレタリア)に加えて3.家庭の中で労働する女性達(再生産労働者階級)の3重構造の階級構造を指摘した。

社会主義者も自由主義者も歴史上多く革命を起こし、自由を幾分か手に入れてきたが、それはあくまで男性が手に入れた自由であり、革命は常に女性にとって裏切られてきた革命であった。マルクス主義的フェミニストが目指すのは男性支配のイデオロギーを打ち破り、女性の経済的解放を達成することにある。

マルクス主義フェミニズムの発展史

女性の抑圧を解放するフェミニズムの解放理論は①社会主義夫人解放論→②ラディカル・フェミニズム→③マルクス主義フェミニズムという変遷を辿った[1]。①社会主義夫人解放運動は革命勢力と共闘し、階級闘争の果ての女性の自由の獲得を見据えていた。しかし実際に自由を手に入れたのは男のみであり、ブルジョワ市民革命もプロレタリア社会主義革命も女にとっては裏切られた革命となった。そこで生まれたのがウィメンズ・リブこと②ラディカル・フェミニズムである。

①の社会主義婦人解放運動が理論的支柱にしたのはカール・マルクスであるが、ラディカル・フェミニストが頼ったのは心理学者のジークムント・フロイトであった。マルクスは資本主義社会の「市場」については優れた分析を残したが、市場が及ばない「家庭」を社会とは見做さなかった。フロイト理論はこの「家族」という小さな「社会」の制度を分析する理論であった。フロイト理論は「家族」が市場から分割されており、それこそが近代産業社会固有の女性差別の根源であることを突き止めた。①社会主義婦人解放運動が階級支配(資本制)の打破のために社会主義革命を志向したようにラディカル・フェミニズムは性支配(家父長制)を打破するための性革命を目標とした。

マルクス主義フェミニズムは①の階級支配も②の性支配の立場も取らない。両者を止揚し、市場と家族の分離自体を問題視する。マルクス主義フェミニズムが近代社会固有の抑圧の形態と考えたのは「家父長制資本制」である。市場と家族を別次元のものとは考えず、市場は家族に影響され(少子化で労働人口が減少するなど)、家族もまた市場の間接的支配下に置かれる(労働市場で金を稼いでくる夫に従属する妻など)。市場と家族は矛盾しながらも対立する(弁証法的)関係なのである。

マルクス主義フェミニズムの用語

家事労働

マルクス主義フェミニズムの最大の理論的貢献は「家事労働」という概念を発見したことにある。この家事労働こそが市場と家族を繋ぐミッシングリンクであった。近代社会の中で家事労働は不生産労働(市場価値を生み出さない仕事)とされ、不当に搾取される「不払い労働」となった。この不払い労働から利益を得ているのは市場と、そこで働く労働者(すなわち男)であった。フェミニストはこの搾取構造を分析し、「家事労働もまた労働である」ということを明らかにした。かつて女性達は家庭の中で「愛」や「母性」というイデオロギー装置によって無償の奉仕を強いられてきたが、「家事労働は不払い労働である」という認識を得たことによって不満と怒りを持ち始める。男性達が「今まで黙っていうことを聞いていた女達が、フェミニストが騒いだ途端にワガママになった」とフェミニストを煙たがるのも無理はない。フェミニストが女性達の階級意識を高めた所以のことである。

家父長制

家父長制とは言っても戦前の日本にあったイエ制度指す家父長制とは別の概念である。フェミニズムにおける家父長制は「男性に女性支配を可能にさせる社会的な権力関係の総体」と定義される。この家父長制は男性が女性が経済的に必要な生産資源に近づくのを排除する(例えば労働市場から女性を排斥する。あるいは女性の労働を貶価する)ことによって、女性の労働力を支配するという物質的基盤(マルクス用語でいうところの下部構造)から再生産される。経済的基盤を男に奪われた女性達は己のセクシュアリティ(妊娠、出産、中絶)の権利もまた男達に奪われることとなった。フェミニストが発見した家父長制概念は、家族を「互いに苦楽を分かち合う聖域」と考える者達に強い反発を引き起こした。

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参考文献

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関連項目

  • フェミニズム
  • カール・マルクス

脚注

  1. *教科書的なフェミニズムの分類においてはここに男女平等を目指すリベラル・フェミニズムが追加される。しかし上野によれば、確かにリベラル・フェミニズムは歴史上女性の権利向上に多大な貢献をしてきた。しかしそれは立派な思想であり運動であったが理論ではなかった。なぜ女性が搾取されているかを構造的に分析できないリベラル・フェミニズムは人権思想を根拠に「男女同権」や「先進的な社会」を叫ぶ啓蒙活動に帰着するしかない。女性の解放には解放の理論が必要なのである。

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