伝統的建造物群保存地区とは、日本の文化財保護制度の1つである。通称名として「伝建」、または「伝建地区」と呼ばれる。
国宝や重要文化財、史跡、名勝などと並んで日本国内における文化財保護制度の1つで、1975年(昭和50年)に当時の日南市市長が、飫肥城とその城下町の街並み保存を国に要望し、制度化されたのが始まりである。制定に至る背景としては、戦後の高度経済成長によってビルやプレハブ住宅など近代的な街並みが爆発的に増加し、反対に古来からある日本的な景観のある街並みが急速に減少していった。この日本的な景観のある街並みを保護していこうとして制度創設に至ったわけである。
この制度は文化財保護法第143条第1項または第2項を根拠としており、文化庁発行の「伝統的建造物群保存地区制度の実務の手引き」という資料によると、周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いものを「伝統的建造物群」と呼び、その伝統的建造物群及びこれと一体をなしてその価値を形成している環境を保存するため、市町村が都市計画又は条例で定める地を「伝統的建造物群保存地区」とし、各市町村が条例で定めて選定している。
そして、その中から特に歴史的・文化的価値が高い地区を管轄する市町村からの申し出によって国が選定し、重要伝統的建造物群保存地区に指定している。
「伝統的建造物群保存地区」の中で、特に歴史的価値や文化的景観が高いところにはさらに上位の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定される。
「重要伝統的建造物群保存地区」は、重要文化財や特別史跡、特別名勝と同等の価値があり、選定地区も2021年時点で43道府県101市町村123地区と伝統的建造物群保存地区の中でごく一握りとなっている。
ここに該当する地区で著名な場所を各地方いくつか挙げると、秋田県仙北市の角館の古い街並み、埼玉県川越市の商家の街並み、石川県金沢市の主計町・東山ひがし茶屋街、長野県長野市の戸隠神社の門前町、岐阜県高山市の古い街並み、白川村の白川郷の街並み、京都府京都市の祇園街、兵庫県豊岡市の出石城の城下町、島根県津和野町の古い街並み、岡山県倉敷市の美観地区、徳島県美馬市の脇町・南町の商家街、福岡県朝倉市の秋月城の城下町、長崎県長崎市の東山手・南山手の港街などがある。
よくある質問として、「国宝や重要文化財、名勝、史跡と何が違うの?」というものがある。
これは、指定しているものによって変化しており、国宝や重要文化財は歴史的または文化的価値のある建物や工芸品、古文書などが指定される。また、名称は庭園や峡谷など自然的価値のある景観や地区が指定される。そして史跡は、歴史的または文化的価値のある遺跡や遺構がある地区が指定される。
一方で、伝統的建造物群保存地区は歴史的・文化的価値のある街自体が包括して指定される。
この違いの説明については、文化庁発行資料の「伝統的建造物群保存地区制度の実務の手引き」の17ページ目にも記されている。
1979年(昭和54年)に、伝統的建造物群保存地区を持つ市町村が中心となって立ち上げた協議会。2019年時点で98市町村が加盟し、歴史的町並の保存に関わる講演会の開催や写真パネル展、協議会のインターネットホームページの開設などを通して伝統的建造物群保存地区の情報を発信している。
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最終更新:2025/12/08(月) 13:00
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