台車(鉄道) 単語


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ダイシャ

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台車とは、鉄道車両の走行装置である。

概要

車体と車軸とを取り持つ装置。我々が乗っている電車の車体はこの台車の上に載せられている。

鉄道の車体は巨大であるが故に、直接車軸を取り付けると線路のカーブ・アップダウン・ねじれに対応できず脱線する恐れがある。そこで考案されたのが、軸同士が近い台車を2つ用意し橋を架けるように車体を載せる方式(ボギー車)である。

台車を使わないの図 → 台車を使ったの図

台車は車体に対してある程度の自由な回転が許されておリ、車輪に無理な力が掛かったり浮いたりすることは無い。
また上下方向のサスペンションを仕込むことで乗り心地の向上も同時に行える。現在も更なる乗り心地の追求のため改良が続けられている。

主要な構造

※ここから鉄分濃度が急上昇します

台車はサスペンションの仕組みで分類されることが多い。

揺れの吸収には2段階のサスペンションを経ている。車体と台車のメインフレーム(台車枠)とを介する「枕ばね」、そして台車枠と車軸とを介する「軸ばね」である。これらには基本的にコイルバネ、板バネ、空気バネ、積層ゴムが用いられ、効果的に組み合わされている。

これらのバネ単体では折れたり撓んだりする不要な動きもしてしまい形状を維持できない。前後方向の大きな変位はブレーキや加速の安定性を揺るがしかねない問題である。よって可動部間には垂直方向の変位は許し水平方向にはズレさせない機構を備えている。

枕ばね

線路のブレに素直に従う台車と車体を緩衝するバネで、大きな揺れやひねりにも対応する。台車が回転する機構との兼ね合いで複雑になりやすいが、近年空気バネの変位を利用することで革命的な軽量化と簡素化を果たした。

以下では種類ごとに車体から見た各部品の回転と揺れ吸収の動作の違いをイラストと共に簡単に説明する。

※以下のイラストでは軸ばね部の違いをスルーでお願いします

スイングハンガー式

スイングハンガー式台車
回転吸収:車体~上揺れ枕(センターピン+摺動板) 振動吸収:上揺れ枕~下揺れ枕(ばね)

回転と上下動を枕木方向に渡した2つの揺れ枕によって別々に行っている原始的な仕組み。車体~上揺れ枕間には回転中心となるセンターピンが渡っており、外側の摺動板と共に重量が掛かる。2つの揺れ枕の間に枕ばねが設けられ、下揺れ枕はリンクで台車枠に吊られている。

下揺れ枕は一見省略できそうにも見えるが、空気バネの実用化以前は枕ばねが大きかったためこのような二重構造で高さを稼ぐ以外方法がなかった。またリンクで吊ることは台車の左右の振動を吸収する効果も持っている。

部品点数が多く質量も大きい。また摺動部の一部は擦り減ると乗り心地に大きく影響してしまう。先述の通り古い方式で、国鉄時代に製造された車両に残されているのみである。

ダイレクトマウント式

ダイレクトマウント式台車
回転吸収:枕ばり~台車枠(センターピン) 振動吸収:車体~枕ばり(枕ばね+ボルスタアンカー)

上記スイングハンガー式の2つの揺れ枕を統合した「枕ばり(ボルスタ)」が枕ばねと台車枠の間に置かれ、振動と回転の動きを取り持っている。車体と枕ばりとは「ボルスタアンカー」と呼ばれるリンクで結ばれ、自由な上下動と前後・回転方向の固定がされている。枕ばりと台車枠の間では回転のみ行われる。

枕ばりの分ボルスタレス式(後述)には質量面で劣るが、台車の動きが枕ばねである空気バネの撓みに依らないことから急曲線のある事業者・路線で愛用され続けている。

インダイレクトマウント式

インダイレクトマウント式台車
回転吸収:車体~上揺れ枕(センターピン) 振動吸収:上揺れ枕~台車枠(枕ばね+ボルスタアンカー)

その名の通りダイレクトマウント式がひっくり返っている。こちらは枕ばりの下に枕ばねがあり回転中心は上面である。枕ばりは台車と一緒に回転し、ボルスタアンカーは台車側とを結んでいる。

ボルスタレス式

ボルスタレス式枕ばね ボルスタレス台車内部構造
回転吸収:車体~台車枠(枕ばね+センターピン) 振動吸収:車体~台車枠(枕ばね+リンク)

台車枠と車体とを枕ばねで直接繋げており揺れ枕や枕ばりが廃されている。一見回転が不可能にも思えるが、空気バネの水平方向の撓みによって実用的には全く問題ない。回転中心と水平方向の固定は内側に隠れているセンターピンとリンク機構(右イラスト)によっている。

20世紀後半に開発された最も新しい方式。軽量で部品点数が少なく保守も容易なことから、現在新造されている車両のほとんどは特殊な事情が無い限りこの方式を採用している。

軸ばね

乗り物では一般に車輪から最初のサスペンションまでの質量(バネ下重量)が小さいほど乗り心地が良くなるとされている。鉄道車両においても枕ばねよりもさらに下、台車枠と軸箱(車軸端やベアリングが収まる部分)の間に軸ばねを設けバネ下重量を小さくしている。

用いられるバネはコイルバネがほとんどで、軸箱との間に微振動を防ぐゴムを噛ませてあることが多い。

枕ばねでは現在ボルスタレス式かダイレクトマウント式かの二択状態になっているが、軸ばねでは2位以下でいくつかの方式の勢力が拮抗しており注意して観察してみると面白い。

※以下のイラストでは枕ばね部の違いをスルーでお願いします

ペデスタル式

台車枠に上下動できるレール(軸箱守)を設け、そこにぴったりはまる軸箱をバネと共にしまう。以下にバネの置き方で2種紹介する。
いずれも国鉄時代の車両で多く採用されたものの、現在の新車ではほとんど見ることができない。

単支持ペデスタル

単支持ペデスタル式台車

軸箱の周りに軸箱守がその名の通りしっかりガードするようにある。このタイプは軸箱が軸箱守にはまっている様子を特にわかりやすく観察することができる。バネは軸箱あたり1つで真上に収められている。

ウイングバネペデスタル

ウイングバネペデスタル式台車

軸箱の両側にバネの座を設け、軸箱守の両側から2つのバネで荷重を受ける(ウイングバネ式)。バネ2つという点が後述の円筒案内式と似ているが、こちらは補強が多くごちゃごちゃしている。よって軸箱守の存在も一体どの部分なのか分かりづらい。

円筒案内式

円筒案内式台車

2つのコイルバネそれぞれの中に二重の筒を設け、それをガイドに上下動する(シリンダーのような仕組み)。一見2つのバネだけのようにも見えるが、隙間からは内部構造の円筒が少し覗いている。
枕ばねのダイレクトマウント式同様特定の事業者に愛用されている。

リンク式

リンクで軸箱の動きを上下のみに制限する方法。比較的単純な構造ながら、理想的な軸箱の動きを実現できる。
主に動作の違う2種が採用されている。

アルストムリンク式

アルストムリンク式台車

1つの軸箱を2本のリンクで両側から保持する。
それぞれのリンクは高さを違えた「Zリンク」としているため、車軸は垂直な(円弧にならない)上下動をすることができる。

モノリンク式

モノリンク式台車

台車の中心側から1本の独立したリンクで軸箱を固定する。可動部が2カ所で軸箱が不安定にならぬよう、バネ内部には円筒案内式のような構造を備える。
車軸の軌跡は円弧であるが、常に軸箱を水平に保てるという利点がある。

軸梁式

軸梁式台車

軸箱の一方をまっすぐ横に伸ばし、台車枠との接続点を軸に上下動する。モノリンク式の軸箱とリンクを一体化したと考えればよい。バネは大抵一つで台車枠の中に半分以上隠れているものが多い。
現在ダントツで新車採用例が多い。イラストのようにボルスタレス式枕バネと組み合わせれば究極のシンプルが達成される。

ミンデン式

軸箱と台車枠を複数の板バネで保持する方式の総称がミンデン式である。
板バネ自身はサスペンションになり得るかたさを持たず、他の方式同様軸箱にコイルバネを1~2コ取り付けて用いる

ミンデンドイツ式

ミンデンドイツ式台車

ウィングバネの軸箱の両側から板バネで押さえる。この場合、あまりに固定がガッチリしすぎるとたわみを許容せず軸箱が上下動できないため、ミンデンドイツ式では外側の板バネを折り曲げ、前後のたわみもカバーしている

IS式

IS式台車

ミンデンドイツ式同様に板バネは軸箱の両側であるが、こちらは前後で台車枠がガッチリと保持している。たわみへの対応はゴムを介して板バネを取り付けることで解決している。

Sミンデン式

Sミンデン式台車

2枚の板バネを片側へ並行に取り付けた方式。台車枠は小さく軸梁式と似ているが、こちらは変位によらず軸箱の水平を保てる。

積層ゴム式

これまで紹介したものと違い、ゴム製の素材を用いて揺れを抑える方式である。特性を出すためゴムや鉄板などを何層も重ねている。形や大きさがコイルバネを用いたものと大きく異なるため台車も独特の形状となる場合が多い。

円錐積層ゴム

円錐積層ゴム式台車

円柱形で2つのゴムをウイングバネ式のように取り付けたもの。一見すると円筒案内式のように見えるかもしれない。撓みに強い性質を持つゴムを使用し完全に自立した軸箱を保持できる。ゴムの本気と言っても良い。

シェブロン式

シェブロン式台車

軸箱と台車枠の間へ「ハ」の字型に積層ゴムを挟む方式。これで軸箱の上下動と衝撃吸収に効果があるという。JR化以降の高速貨車や路面電車で見ることができる。コイルバネを用いたものでは見られない形状の台車枠を持つ。

シェブロン式の類似として軸箱両側垂直に積層ゴムを取り付けたものや、軸箱と台車枠をゴムで固めてしまうものなどもある。

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