小惑星探査機「はやぶさ2」 単語


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小惑星探査機「はやぶさ2」とは、工学実験探査機「はやぶさ」の後継機として開発された日本の小惑星探査機である。

概要

2014年12月3日(水)13時22分04秒(日本標準時)、種子島宇宙センターからH-IIAロケット26号機で打ち上げられた(天候不良により、11月30日(日)13時24分48秒(日本標準時)から2回延期した)。

2018年6月に「小惑星Ryugu(リュウグウ)(小惑星仮符号1999 JU3)」に到着,2019年2月と7月の2回に分けてサンプル採取をし、2020年12月に地球帰還し,サンプルリターンを成功させた。その後,拡張ミッションへと移り,現在,次の目標である小惑星(1998KY26)を目指し航行を続けている。現地到着は2031年7月を予定である。

所属と運用は、JAXA宇宙科学研究所(ISAS)、プロジェクトマネージャーは津田雄一(ISAS准教授)、主たる開発元は探査機「はやぶさ」・金星探査機「あかつき」でもおなじみNEC。

今回の旅の同行者として、「MINERVA-II(ミネルヴァ2)」が3機(JAXA製2機、MINERVA-IIコンソーシアム製(東北大・山形大・大阪大・東京電気大・東京理科大の合作)1機)とドイツ航空宇宙センター・フランス国立宇宙研究センターの合作である「MASCOT(マスコット)」が搭載され、初代ミネルヴァが果たせなかった小惑星への着陸探査に再挑戦した。

また、相乗り衛星として、超小型深宇宙探査機「PROCYON」(東京大学)、深宇宙彫刻「ARTSAT2-DESPATCH」(多摩美術大学)、深宇宙通信実験機「しんえん2」(九州工業大学)も飛び立った。 

目的

小惑星からのサンプルリターン。

イトカワと違って、有機物質や水が含まれている可能性が強いC型小惑星「1999 JU3」を目標としており、もし、有機物が確認されれば、地球の生命起源の研究に大きく貢献すると期待されている。

はやぶさとの主な違い(一例)

  • 位置づけ
    • はやぶさ:厳密には「工学実験探査機」。「イトカワ」からのサンプル採取は予行演習。
    • はやぶさ2:本当の意味での「小惑星探査機」。サンプル採取本番。
  • 名前
    • はやぶさ:正式名称は「第20号科学衛星」。開発名「MUSES-C」(Mu Space Engineering Satelite-C)。
    • はやぶさ2:「はやぶさ2」が正式名称。コードネームは無い。
  • 目標
    • はやぶさ:S型小惑星 「25143 Itokawa」(通称:イトカワ) 小惑星符号 1998 SF36 Si:ケイ素
    • はやぶさ2:C型小惑星 「162173 Ryugu」(通称:リュウグウ) 小惑星符号 1999 JU3 C:炭素
  • タッチダウンの方式
    • はやぶさ:分離して落下中のマーカーを追っかけていきタッチダウン(着陸精度がマーカーの投下精度に依存する→タッチダウン領域は100m四方)
    • はやぶさ2:既に着地済みのマーカーを認識して、自分の位置を割り出しながらタッチダウン(幅6mの領域へピンポイントにタッチダウン)
  • サンプルの採取方法
    • はやぶさ:小惑星の表面のサンプル採取。
    • はやぶさ2:小惑星の表面を爆破させ、内部のサンプル採取を試みる。なお、採取は3回行われる予定。
  • サンプル採取の確認
    • はやぶさ:データのみで確認。
    • はやぶさ2:データに加え、魚眼レンズカメラを搭載して目視確認を行い、同時に光学観測を行う。
  • 高利得アンテナ
    • はやぶさ:パラボラアンテナ1基(Xバンド)
    • はやぶさ2:アレイアンテナ2基(Xバンド Kaバンド)
  • 運用
    • はやぶさ:ドラマチックとか奇跡とか感動とか魂があるとか満身創痍とかとにかくてんこ盛り。
    • はやぶさ2:着実にミッションをこなす。[1]

その他、イオンエンジンやリアクションホイールの改良、化学燃料スラスタの配管変更やサンプルの採取方法の複数化など、初代はやぶさの仕様がいくつも変更されている。あの伝説の「ニコイチ運用」(異なるイオン源と中和器を組み合わせて一つのエンジンとするクロス運用)は、今回は標準装備とのこと。

はやぶさ2を応援しよう!(募集終了)

はやぶさ2の目的地「小惑星1999 JU3(仮称)」の名称が「Ryugu(リュウグウ)」決定!

平成27(2015)年7月22日(水)午後1時30分~平成27(2015)年8月31日(月)午前10時00分(日本標準時)、の期間にて、「小惑星1999 JU3」の名称の募集が行われた。

1999 JU3名称選考委員会により選考された。その結果を名称決定権のあるMITのLINEARチームに伝えられ国際天文学連合に提案された。その結果めでたく小惑星名「Ryugu」が国際天文学連合に承認された。
それを受けて2014年10月05日、JAXAより名称決定の報告がなされた。(リンク参照)

「はやぶさ2」が目指す小惑星の名称が「Ryugu」に決定しました。

浦島太郎のお伽話に出てくる「竜宮城」からとられている。選考理由は以下のとおり

  • 「浦島太郎」の物語で、浦島太郎が玉手箱を持ち帰るということが、「はやぶさ2」が小惑星のサンプルが入ったカプセルを持ち帰ることと重なること。
  • この小惑星は水を含む岩石があると期待されており、水を想起させる名称案であること。
  • 既存の小惑星の名称に類似するものが無く、神話由来の名称案の中で多くの提案があった名称であること。
  • 「Ryugu」は「神話由来の名称が望ましい」とする国際天文学連合の定めたルールに合致し、また、第三者商標権等の観点でも大きな懸念はないため。

なお「小惑星Ryugu」は日本語にて表記する場合、天文体の表記の慣例上カタカナで「小惑星リュウグウ」であること注意。「小惑星竜宮」ではない。
余談であるが「小惑星Itokawa」も「小惑星イトカワ」である。

その他

  • 探査機・衛星の打ち上げで恒例となった生放送は、今回もニコニコ動画やユーストリームなどインターネットを通じて行われ、地上波ではTBSが中継をした。また、宇宙科学研究所相模原キャンパスを筆頭とする各JAXA施設、日本全国の研究教育機関や公的施設等でもパブリックビューイングも行われた。なお、ライブは二部構成に別れ、第一部では打ち上げまで、第二部はH2Aロケットからの分離までが放映された。
  • 打ち上げライブ中継のナビゲーターは、旧宇宙輸送ミッション本部宇宙輸送系要素技術開発センターの嶋根愛理(しまねえり)研究員が担当した。ニコ動では「えりちゃーん」「おねーさん」「かわいい」「教育テレビのナレーターみたい」等のコメントが流れた。
  • あかつきチーム(金星探査機「あかつき」)やイカロス君からは、ツイッターを通じて、「はや2(ツー)くん」という愛称で呼ばれている。
  • 小惑星表面への着地に成功したMINERVA-II 1の2機はそれぞれ「イブー HIBOU(Rover-1A) 」と「アウル OWL(Rover-1B)」と命名された。なおイブーはフランス語でミミズクを、アウルは英語でフクロウを意味する単語である。
  • 2020年12月6日未明,サンプル入りのカプセルの地球着地が近く中,ISSの野口聡一宇宙飛行士から,はやぶさの勇姿を目視したというツイートが寄せられた。ニコニコ動画では,複数の生放送枠でプレスセンターからの中継が行われたが,特にNVSの生放送枠では,会見が終了後の拡張ミッション放送延長の中で,視聴者がFlightradar24カプセル捜索中のヘリコプターを追跡して実況するという突発オフが発生した。→アーカイブ
  • 2012年現在、はやぶさ2プロジェクトの後継計画が白紙状態であり、このままだと、はやぶさシリーズで蓄積された技術と経験が散逸してしまうリスクがある。これは、宇宙開発では「国防」と「産業振興」が優先され、宇宙探査や科学技術分野など「研究分野」の地位が低いためである。お願い、助けて!

関連ニュース

以下、特記なき限り日本標準時(JST)、地上時間。

打ち上げまでの流れ(探査機「はやぶさ」記事からの転載を含む)

  • 2010年8月
    • 文部科学省・宇宙開発委員会で研究開発フェーズへの移行が承認され、文部科学省も140億円の総開発費のうち30億円を概算要求することを決定。
      (この間、事業仕分けやJAXA内部の問題等で、ピンチを迎える><)
  • 2011年5月12日
    • JAXAは2014年に正式打ち上げをすることを発表した。
    • 初代はやぶさ2プロジェクトマネージャーである吉川真(ISAS准教授)は、「技術的には、はやぶさのようにドラマチックにならないよう、当たり前のように行って戻ってくることを目指したい」と述べている。
    • また、初代はやぶさに関わった研究者や技術者、外部のメーカーも開発・運用への参加に意欲を見せており、開発の着手を待っているという。
  • 2012年1月25日
    • 宇宙開発委員会において「はやぶさ2」の本格的な開発移行が承認される。
  • 2012年9月13日
    • 新プロジェクトマネージャーとして「こんなこともあろうかと」の真田さんこと國中均(ISAS教授)が就任。宇宙開発委員会において「はやぶさ2」の本格的な開発移行が承認される。

打ち上げからRyugu(リュウグウ)到着まで

  • 2014年9月30日
  • 2014年12月3日 13時22分04秒
    • 種子島宇宙センターから、H-IIAロケット26号機にて種上げ打上げ、分離に成功
  • 2014年12月5日
    • クリティカル運用期間終了
  • 2015年4月1日
    • JAXAの組織替えと併せて、津田雄一(ISAS准教授)がプロジェクトマネージャーに就任
  • 2015年10月5日  
    • 目的の小惑星「1999 JU3」の名称が「小惑星Ryugu(リュウグウ)」に決定したことを発表
  • 2015年12月3日(打ち上げからちょうど1年)
  • 2016年〜2017年
    • 長い航海の時(イオンエンジン+ソーラーセイルモード)
  • 2018年3月1日
  • 2018年6月27日
    • 小惑星Ryugu到着(上空20km)←往路ゴールキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

小惑星Ryuguでのミッション

  • 2018年8月7日
  • 2018年8月23日
    • JAXAから、Ryuguへの着地点候補地が発表される。詳細(PDF) 
  • 2018年9月11日〜12日
  • 2018年9月21日
  • 2018年10月3日
  • 2018年10月16日
    • タッチダウン1リハーサル2回目終了(最低高度22.3m 詳細(PDF))
  • 2018年10月25日
    • タッチダウン1リハーサル3回目終了(最低高度12m 詳細(PDF))
    • ターゲットマーカーB分離&着地!
  • 2018年11月23日~12月29日
    • 太陽の影に隠れて地球と通信不可となるための合運用(待機)を行なった
  • 2019年2月22日 7時48分(リュウグウ時間は‐19分)
  • 2019年4月5日 11時36分(地上時間)
    • 地表爆破のための衝突装置(SCI)が作動したことが確認される。なお、クレーターができたかどうかはこの時点では調査中。ソース
  • 2019年4月25日
    • 衝突装置(SCI)により小惑星リュウグウ地表にクレーターが生成されたことを確認 キタ━(゚∀゚)━!! →人工クレーターの画像
  • 2019年5月~7月
    • 第2回タッチダウンの可否や行う場所の検討・選定が、低高度観測・TM投下と平行して行われた
  • 2019年7月11日 10時06分 (リュウグウ時間は‐13.5分)
    • クレーター噴出物が多い「C01-Cb」地点に向けてのピンポイントタッチダウン。
      データ解析によりプロジェクタイルの射出も確認。第2回タッチダウン成功 キタ━━(゚∀゚∀゚)━━!!
  • 2019年10月3日
    • MINERVA-II2投下,22時間かけて地表に着地。

小惑星Ryugu出発〜地球への帰還まで

先代の遺した教訓のおかげか、地球接近~カプセル分離・大気圏再突入~探査機離脱の一連のシーケンスは極めて順調に進行し、関係者が「運用は完璧でした」と言い切るほどの大成功を収めた。

"おみやげ"の解析

  • 2020年12月6日
    • サンプルコンテナを含むカプセル本体を発見、回収。ヘリにて現地に仮設されたクイック・ルック・ファシリティーに搬送され、コンテナ内にあると期待されているリュウグウのガス採取を実施。
    • 前面・背面の両ヒートシールドも同日中に発見、回収された。
  • 2020年12月8日
    • カプセル、チャーター機(ダッソー・ファルコン7X)にて羽田空港へ凱旋帰国。
      次いで陸路にて神奈川県相模原市にある宇宙科学研究所・地球外試料キュレーションセンターに搬入された。おかえり!!
      ※ 空路の機材がファルコンだったのは偶然だったとのこと。
  • 2020年12月14日
    • 事前にカプセルから採取したガスの成分などを分析した結果、ガスがリュウグウ由来のものと判断される。
    • カプセル内のサンプルコンテナを開封。スコープカメラによる観察の結果、内部にリュウグウ由来と想われる黒い砂粒状の物質が入っていることが確認される。

拡張ミッション ~更なる知見を求めて~

はやぶさ2はもともとトラブルなどに備えてリュウグウ往復に必要な量よりずっと多くの推進剤を積んでいた(これは国内外を問わず他のほとんどの探査機も同様)。リュウグウへのミッションは順調で、完遂後も推進剤残量にかなりの余裕があるため、サンプルリターンのカプセル分離後にその余力で他の小惑星の探査を行う拡張ミッションが計画された。 ※追加のミッションの為に新たに探査機を仕立てるよりも安上がりだからでもある。
但し、推進剤はあっても目的地到達時には探査機の設計寿命を大きく超えての運用になるため、あくまで「成功すれば儲けもの」というミッションでもある。

拡張ミッションのターゲットは「直径200m以下」かつ「自転周期が2時間以下」の小惑星で、はやぶさ2の性能と推進剤残量で到達できる天体から選ばれた。このような天体の探索は前人未踏の領域であり、高速で自転する小天体に関する各種知見、併せて地球への小惑星衝突などに対するプラネタリー・ディフェンスに資する知見を獲得することが拡張ミッションの意義である。

先代のはやぶさも同様の思想で地球帰還時も推進剤は残っていたが、探査機自体が既に満身創痍であり、確実なサンプルリターンのためにカプセルを追って地球の大気圏に再突入することとなった。

この拡張ミッションについて,津田プロジェクトマネージャーは,「サンプルリターンは終わったけれども,いわば「はやぶさ2」は減価償却をした状態で宇宙を飛んでいる,つまり自由の身で宇宙を飛んでいる。リュウグウでもそうだったように,新しい星に行けば必ず新しい発見がある。そういう宇宙探査の醍醐味を皆さんに楽しんでいただきたい。「はやぶさ2」にも楽しんでほしい」と思いを語った。[2]

  •  2020年9月15日
    • 拡張ミッションの目的地が1998 KY26に決定。この小惑星は直径約30mしかなく、自転周期10.7分と極めて高速で自転している。
      リュウグウのカプセルを投下後、別の小惑星2001 CC21を1回、地球を2回スイングバイして2031年7月頃にランデブーする計画(EAEEA: Earth-Asteroid-Earth-Earth-Asteroid)。
      もう一つの候補であった2001 AV43は1998 KY26より約2年早く目的地に到達できるが、途中で地球より太陽に近い金星をスイングバイする必要があり、探査機が金星の内側の軌道で晒される高熱に耐えられず故障することを懸念されて最終的に候補から外されたとされている。
  • 2020年12月6日
    • リュウグウのサンプルが入ったカプセルの分離後に地球圏を離脱するための軌道修正(TCM-5)を実施、地球最接近&スイングバイ。
      これによりはやぶさ2は拡ミッションに向かうことができるようになった。
    • 搭載カメラ(ONC-T)にて地球の姿を撮影。
      先代と同様に、しかし、今回は完全な地球の姿を画像に収めてくれた。
  • 2020年12月
    • LIDAR光リンク実験を実施。地球~探査機間でレーザー送受信を試みる。   ここまでキタ!
      ※LIDARとはレーダーの電波をレーザー光に置き換えたようなもの。

(随時追加と更新をお願いします)

関連動画

はやぶさ2の説明・解説の動画

打ち上げ前の報道公開時の様子

H-IIAロケット26号機によるはやぶさ2の打ち上げの様子

はやぶさ2を題材とした楽曲・作ってみた動画など

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関連コミュニティ

ニコニコミュニティは2024年8月に終了しました。

関連項目

  • 宇宙/小惑星/科学
  • 技術立国日本
  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)/宇宙科学研究所(ISAS)
  • 小惑星リュウグウ
  • 探査機「はやぶさ」
  • 小惑星探査ロボット「ミネルバ」
  • 種子島宇宙センター
  • 臼田さん(アンテナ)
  • イオンエンジン
  • 打ち上げロケット・宇宙機の一覧

外部リンク

公式サイト

脚注

  1. *既に我々はその先を見据えて走り出しています。「はやぶさ」の数多くの失敗点を肝に銘じつつ、次こそは波乱万丈とは無縁の航海となるように、もうこの手で探査機本体を再突入させずに済むように、新たな地平に向けて全力を尽くします。引き続き、見守って頂ければ幸いです。→https://twitter.com/Hayabusa_JAXA/status/80316726457278464
  2. *2020年12月8日放送NHK「クローズアップ現代『はやぶさ2 切り開いた"宇宙新時代"』にて

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