映像フォーマットが複数あるアニメ作品 単語

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映像フォーマットが複数あるアニメ作品とは、初公開時から技術的、演出的な理由でフォーマットが変わってしまった作品の解説記事。

概要

映像作品は一度制作すれば中身が変わることは無いはずなのだが、様々な理由で初版の映像と 後世で手に入る公式映像に違いが生じる事がある。

アスペクト比の変更

劇場版の貧乏ビスタ

1999年頃までのアニメ映画は、コストの問題で4:3のアスペクト比で制作を行い、劇場では上下をマスクして16:9で上映する作品が多くあった。

映像の上下を切る事になるが、それを最初から考慮して制作しているので映像に不自然さは原則無い。

この作品の場合、最良のマスターが4:3なのか16:9なのか?という議論が発生する。多くの場合、監督は劇場上映を前提に制作してあるので16:9が本来あるべき姿とする意見が多い。ところが、映像としては4:3で制作してあるので、マニアからするとカットされた「本来の」映像を見たいという意見も存在する。

DVDやBDでの発売が一般化するまでの90年代では、テレビ放送やVHS・レーザーディスクでのセル販売時にはカットされる前の4:3の映像が収録されていた事が問題の複雑さに拍車を掛けている。4:3の映像が上映時にカットされる制作時にしか存在しない映像であればともかく、90年代では劇場公開以降は4:3の映像が標準の時代があった。

前述の通り、劇場公開作品は劇場公開が初出なので、監督は16:9をベースに演出を行う事が基本で、4:3は二次利用時のフォーマットに過ぎない。一部作品には4:3だとセルの端が画面に入ってしまう(所謂セルバレ)が発生している事も珍しくない(劇場版・機動警察パトレイバー the Movie)。ブラウン管の時代、画面の四隅は表示されない無効領域だったので問題になる事はほぼ無かった。

DVDやBD テレビ放送の標準のアスペクト比が16:9になると、それらのメディアでも上下をカットした16:9の映像が収録されるようになり、4:3の映像が公式でリリースされる事が無くなった。4:3映像を所有したいマニアは、4:3ソースが収録されたレーザーディスクやVHSを探す事になる。

  • 映画 ポケットモンスターシリーズ
    • 第1作 ミュウツーの逆襲のみ該当
  • ドラえもん劇場作品
    • 第1作から 1997年公開の「のび太のねじ巻き都市冒険記」まで該当。第1作「のび太の恐竜」のVHD版はパッケージにビスタサイズという誤植があり、「のび太の恐竜 は実は貧乏ビスタではない」というデマが存在した。長らくVHS時代に作ったマスターを使いまわしていたためDVDでも4:3の映像が見れたが、2018年のwowowの放送を皮切りに16:9のHDリマスター映像に切り替わっている
  • うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
    • マニアに大きくウケた作品のため4:3でのBD発売を希望するファンが特に多いが、監督の押井守が16:9に拘っている発言をしている為今後のリリースは絶望的
  • 銀河鉄道999 劇場版

他、wikipedia参照。90年代までのアニメ映画はほぼ当てはまるので、画像検索をして4:3の画像をDVDと見比べると上下に伸びている事がわかる

HDリマスターでの上下カット

TVシリーズのアニメに当てはまる。2022年現在では映像作品と言えば16:9のHD画質が標準。多くの一般ユーザーからすれば4:3の映像は左右がカットされているネガティブな印象がある事も否めない。

よって、マニア向けではないライトユーザー向けの作品をBDなどで再販・再放送する場合、今の基準に合わせて上下をカットして16:9にする作品がいくつかある。

前述の貧乏ビスタと違い、制作時はあくまで4:3前提なので、キャラクターの頭が画面からはみ出る事も少なくないが、それより画面の左右を気にするライトユーザーの方が多い事も事実である。

これに該当する作品では演出意図は4:3なので、(テレビ放送よりは)ファン向けの商品であるBDでは4:3で収録される事が多いので、貧乏ビスタよりは被害は少ない。

  • 日本アニメーション制作の作品
    • 2012年にリリースされたBD版の未来少年コナンを皮切りに、旧作をリマスターする時 BDでは4:3収録をするが無料のテレビ放送では16:9 という姿勢を取っている。
  • 遊戯王デュエルモンスターズ 20thリマスター
    • 2017年頃、テレビ東京で再放送された同名のタイトル。16:9に上下をカットした事で、画面に表示されるダメージ計算の数値のテロップが見切れてしまっていた。テロップは簡単な矩形だったので、2回目以降の放送では編集でズラしていた

音声素材の変更

80年代までのアニメ(ドラゴンボール・ドラゴンボールGTが代表的)を見ると音声がこもって聞こえる事がある。これは古いからではなく、残している音声素材の問題。

アニメを制作した時、最初の音声はシネテープという磁気テープに記録されており、この段階では音声は比較的クリアである。ところが、このシネテープはフィルムと同じ程度のサイズで保存が面倒という欠点がある。そこで、フィルムの横に音声を波として記録する光学音声を使う場合もあった。

光学音声にすると1本のフィルムで映像と音声を同時に記録する事が出来るので保存する手間は省けるのだが、シネテープと比べると音声が劣化するという最大の欠点があった。

手間とコストをかけてシネテープを残すか、光学音声を残すかは大きくアニメスタジオに依存し、ドラゴンボールを始めとする有名アニメを多く作っている東映アニメーションは質の悪い光学音声を使うスタジオであった。

(ドラゴンボールの場合は)初回放送では高音質なシネテープが使われるが、その後の再放送では光学音声しか素材が残っていないので、公式のBDより 当時本放送を録音したビデオテープの方が高音質という逆転現象がおきている。また、東映はTVアニメをBDにする時 基本的にリマスターをせずアップコンバートで済ませる悪癖があるので画質 音質的には厳しいスタジオと言える。

また、ビデオや以前の放送ではシネテープだったが、何故か光学音声に劣化してしまう という事もある。

NTT中継回線

多くのTVアニメは東京のキー局で放送されるが、同時ネットしている地方局はどのように映像を放送していたか?

NTTが放送局用に提供している中継回線というサービスがあった。これは日本全国に無線局の形で張り巡らせてあり、地方が東京の番組を同時ネットで放送する時はこの回線を使って東京の映像を受信していた。

このNTT中継回線には音質・画質が劣化する問題があった。技術的な理由ではあるが、ともかく 東京のテレビ局を直接受信した場合と、このNTT中継回線を経由した地方局では音質・画質に差が生じていた。

上記の問題により、初回放送の東京キー局でしか本来のクリアな音を聞くことが出来なかった。という作品も存在する。

ポケモンチェックの影響

1997年に生じた所謂ポケモンショックの影響で、それ以降のTVアニメは透過光の点滅に規制が入る事になった。

それでも演出として光を使いたいという制作側の要望もあるので、(不特定多数の人が見る可能性のある)テレビ放送では規制を受け入れるが、BD等のセルメディアでは規制を解除する事が一般的。

また、上記の透過光の点滅規制はあくまでテレビ放送団体 民放連の自主規制なので、ネットのストリーミングでは、それが不特定多数の人が見る可能性のあるYoutubeの無料配信でも解除される事がある。

  • それでも町は廻っている
    • 2010年放送のTVアニメ。OPの最初の1カットから透過光の点滅が入るので、BD版とTV版の違いがわかりやすい
  • 爆走兄弟レッツ&ゴー!!
    • 1996年放送作品なので透過光の点滅演出が存在する作品だが、2007年に発売したDVD-BOXでセルメディアでも今基準のポケモンチェックを入れた事で話題になった。

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最終更新:2025/12/09(火) 04:00

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