暗視装置 単語


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アンシソウチ

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暗視装置とは、夜間や暗所などで、人間が視界を得るための装置の総称である。
(特に暗所における隠密性・優位性を重視した映像化装置を指す)

暗視ゴーグル、暗視スコープとも。
英語そのまま「ナイトビジョン」(NV : Night vision)と呼ぶ場合も。

概要[1]

暗視装置の第1世代は、第二次世界大戦中に実用化された。アクティブ式赤外線暗視装置と呼ばれるもので、こちらから相手に赤外線を照射し、反射してきた赤外線をセンサーが捉える。当然ながら相手が赤外線感知装置を持っていれば、こちらの存在を暴露してしまう。このタイプは1960年代から徐々に姿を消し始めた。

第2世代は、ベトナム戦争中にアメリカが開発した。月や星のような極弱い光源の光が物体に反射してくるのを電子的に数千倍に増幅することで映像を得る。光が殆ど無い夜間でもフクロウのように見えることから「アウル・アイ」、あるいは「スターライト・スコープ」とも呼ばれた。

1970年代末から、第3世代の暗視装置が実用化され始めた。パッシブ式赤外線暗視装置、あるいは熱線映像装置(サーマル・イメージャー)と呼ばれるもので、物体が放出する赤外線を高感度の赤外線センサーで捉え、映像化する。パッシブ式なので使用していることを敵に気づかれない。また昼間でも使用でき、カムフラージュ用に切り取られた枝葉と「生きている」木を区別できたり、多少の霧や煙も透かして見ることができる。例えば湾岸戦争ではイラク側が油井に放火することで黒煙を発生させて相手の視界を妨げようとしたのだが、第3世代の暗視装置を使っていた多国籍軍側の視界を妨げることはできなかった。

最新型[2]

アメリカ陸軍は2017年に、歩兵用の新型暗視装置を10万個発注している。このゴーグルは視野角40度の映像を得られるが、「スターライト・スコープ」と「サーマル・イメージャー」の両方のモードを搭載しており、必要に応じて切り替えられる。

また、小火器に取り付けた暗視照準装置の映像を無線データリンクを経由してゴーグルの中央にインポーズすることができるので、自分のゴーグルは小隊長のハンドサインが見える方位に向いたまま、小銃を水平に振ることで周囲の警戒を同時に行なえる。射撃の際もゴーグルに表示される照準視野を頼りに、物陰からライフルだけを持ち上げて射撃することが可能になっている。

その他

見た目・構造

 暗視装置の形状は様々であるが、基本的には個人使用するものは双眼・単眼(両目式/片目式)タイプで、近年は兵士個人に配布されるモノは簡単にヘルメットに取り付け(吊り下げ)使用可能になっており、未使用時は上に跳ね上げるか簡単に外せるようになっている。※現代の兵士のヘルメットをよく見ると、取り付る土台が額についているのが確認できる

手元の作業や地図の判別用に小型の赤外線ランプ(ON/OFF可能)機能がついている場合もあり、近場の作業が飛躍的にしやすくなる。ただし暗視装置相手では遠距離からでも目立ってしまいバレバレの為、基本的にはOFFにされる。

 最初期の暗視装置(第1世代)は高い電圧が必要で14kg以上(銃を除く)と重く、機動性は最悪であった。個人携帯レベルでは性能にも限界があるため、大型の赤外線照射装置を装備した車両が随伴する事も。
※ちなみに陸自の採用しているカールグスタフM2無反動砲が14.2kg。

 パッシブ式赤外線暗視装置(微光を増幅する方式)は、以前は内部部品を極度に冷却しなければならない関係上、装置としては大きくならざるを得なかったが、最近は冷却不要な部品が開発されて小型化を実現し(第2世代以降)、従来の仕組みを採用した個人用の暗視装置に機能の一つとして追加される程になってきている。戦闘機に搭載されるIRSTもこの仕組みを利用している。消費電力に関しては現在は数本の単三電池等でも作動するレベルのものが出来ている。(バッテリー残量警告も出る)

 ちなみに、よく暗視装置で出力される映像は緑色をしているが、単に人間にとって緑色が最も知覚しやすい色であるというだけで、その気になれば青色とか赤色とか光の強さによって色分けとかも原理的には可能である。
 また、フィクションではよく強い光で暗視装置が破壊される、あるいは強い光をさらに増幅した超強力な光が出力されて使用していた者の視力を奪うという描写があるが、現代の暗視装置には一定値以上は光を増幅しないという安全回路が組み込まれており、裸眼では見えないような、強い光の周りに何があるかを見ることすら出来ると言われている。(安物や粗悪品においてはこの限りではない)

操縦席や照準装置における利用

 第2世代は光を増幅しようとするためコクピットの計器類は激しく輝いて見え、風防やガラスにも乱反射してしまい操縦どころではないため、暗視装置使用時に光量を落とす機能(on/off)が付与されているか、減光するための大きなフィルターで計器を覆ってしまう。(最近の機種や派生型では光量を落とす機能が標準で備わっている場合が多い)

 ドットサイト等の照準装置も光点も激しく光りすぎるため暗視装置用に光量を落とした(肉眼では見えない)モードも備わっている。(ホロサイト等で中央にあるNVのボタンがまさにそれ)
 実際は暗視装置を装着した状態でゲームのように小さな照門(リアサイト)や照準装置を覗くのは困難なため、夜間のみ取り付けるもの、または必要に応じて照準装置の前または後に取り付けて効果を補うものがある。(前述の機能)
(相手からも見えてしまうが)赤外線レーザーサイトの使用や、夜光塗料のついた夜間照準具を使用する場合もある。(あえて暗視装置を使用しないという選択)

価格やデメリット

 価格は(時期や地域、契約内容によって異なるが)普及している第2世代でも50~60万円以上はザラで、広角や多機能を備えた最新型だと200万円以上と個人装備としては非常に高価な部類であり、確実な運用には定期的なメンテナンスが必要で、故障や電池切れといったリスクも存在する。

近年は技術の発達・小型化・省電力化・高性能化が進んでいるとはいえ、どうしても昼間の肉眼に比べ得られる情報は劣り視野も狭まる(視野角40度程度)ため、車両・航空機の操縦の疲労度や、迷彩服等で偽装された敵味方を瞬時に識別するのは難しく、高いストレスや危険を強いられるデメリットは変わっていない。

※近年は四眼式の広い視野の暗視装置(GPNVG-18、視野角97度)も登場してきているが、通常の暗視装置以上に高額で全員に配布するのは困難なため、航空機の操縦や特殊部隊といった一部部隊の採用に留まっている。

軍事用用途以外の用途・商品

 用途としては軍用の他に、現在では天文(微弱な光を発する星を観測するため)や、自動車(夜間の視界確保、またドライブレコーダーの機能の一つとして)でも使用されている。また、玩具としての暗視装置も存在する。 →ナイトビジョン2.0

 ホームセンター等でも簡易な暗視スコープとして3~5万円程度で売っている場合もあるが、第1.5世代程度(ほとんど初期の暗視装置と同じく赤外線を照射するタイプ)、正規軍相手に使用すればバレバレの良い的になってしまう。
 製品にもよるが赤外線を用いずとも暗闇では肉眼よりは見え、満月や街灯を見れば少し眩しく見えるため少しは光を増幅してくれる模様…使用者談。(そもそもホームセンターの製品は軍事目的ではなく、動物や自然観察等が本来の目的である点を留意されたい)

 軍用品は他国への機密漏洩、テロや犯罪への悪用を避けるため輸出入規制(国際武器取引規則/ITARなど)が掛けられているものの、一部規制されていない製品は民間人でも購入できる。(非常に高価なのは間違いないが)

赤外線暗視スコープ(?)/サーマルビジョン

「赤外線スコープ」「赤外線暗視スコープ」といわれる事もあるが…

現代+文字的には、サーモグラフィのような「サーマル・イメージャー」「サーマルビジョン」
(熱源暗視装置 / 熱線映像装置)(熱=赤外線)の方がニュアンスが近いだろうか。
ただ温度分布を表示してしまうため、輪郭は分かれど顔や表情はよく分からなってしまうが…
こんな感じ こんな感じ 運転画像にするとこんな感じ 色分けがあるタイプ
ただし頭に装着するタイプで、この熱分布映像を見ながら歩くにはつらそうである…

第三世代は人間や物体の発する微弱な赤外線を映像化するが、赤外線スコープとは聞かない。

第一世代は赤外線を照射するとはいえ、近代戦ではバレバレのため現在は使われていない。(赤外線を照射しないと開けた屋外でもあまり見えないため)一応「赤外線スコープ」の分類には入れて問題ないと思うが、作品内の国や時代背景にもよるため一概には言えない。1945〜1960年代であれば現役。
※赤外線自体は、初代から最新型まですべて感知してくれる。

「赤外線暗視スコープ」という呼び方も技術の結晶のようでカッコイイのだが
広く言われているのは熱源暗視装置 / 熱線映像装置だろうか。
FLIR(赤外線前方監視装置)というのもある。製造している会社名も含む。

  • サーマル映像は索敵は得意だが見づらいため、車両・船舶や航空機においては
    可視光カメラ(カラー)と通常の暗視装置も同時に装備しており、必要に応じて切り替えられるものが多い。
  • サーマルイメージャは製品によって(特に民間用)は意外と安価に購入できるが、
    探知できる距離や分解性能が短くなる。主に機材や配電盤の過熱等の異常検知・非接触検査に利用される。
  • 対象物の温度を検出してしまうため、ガラスは透視できない。(ガラス自体の温度を表示してしまう)
     
結局何て呼べばええの/作品に出してみたいんだけど

漫画やイラスト、フィクションで出すなら「暗視ゴーグル / 暗視スコープ」
または単純に「暗視装置」という呼び方をしても問題ないかと。
(旧式から最新式まで、暗視装置の全部の世代を指す事ができる)
さすがに暗視「ゴーグル」は「頭部装着用」だが。

近未来的な映像が演出できるサーモグラフィみたいなのは
熱分布で顔は見えないしガラスが透過できないが、サーマルビジョン、サーマルサイト、
熱源映像装置、熱源暗視スコープ/サイト/装置、赤外線暗視装置/スコープのあたりの呼称で良いだろう。

「赤外線スコープ」と言うと第一世代か、サーマルビジョンかと器用貧乏な言葉になりがち。
ただ、あの熱源映像だけで歩き回るのは相当なストレスなため、銃や兵器に搭載したほうが無難。
(登場させる作品の時代背景にもよるが)

外国人、英語圏の人物なら「ナイトビジョン」と言わせてもあまり違和感がない。

銃に搭載する場合、見た目が大きくゴツゴツしている物が多い。
(1PN34、Shakhin、AN/PVS-4、AN/PVS-10昼夜兼用暗視装置、75式照準用微光暗視装置など)

早見表
肉眼 第一世代
NV
第二世代
NV
第三世代
NV
サーマルイメージャ
(熱源映像)
備考
昼間使用のメリット × × × 仮に昼間に使用しても安全装置で
即破損という事は無い
赤外線の照射
(積極的な照射)
× × × × 近代戦ではバレバレ
on/offは可能
赤外線の感知 × 肉眼では見えない
微弱赤外線の感知
(人体・物体)
× × × 第三世代は人体が
わずかに強調して見える
索敵・捜索 × サーマルが特に得意
隠密性 × 第一世代は赤外線照射が必要
無光量環境下
(識別)
× × 第二世代は増幅させる光が無い
第一世代は自ら照射した場合
暗闇における
顔や文字の判別
× × 熱源映像に文字は関係ない
顔面は大まかな色分けのみ
昼夜を問わず
ガラスの向こう
× ガラスの温度を表示してしまい
透視できない
逆光・強光 × × × × 温度分布には無関係
煙幕の透過 × × × × 熱源を伴う煙幕を除く
(戦車の煙弾発射機など)
価格 × × どれも基本的に高価
参考動画 動画 動画 動画 動画 単色表示のものが多い。

 近代ではサーマルイメージャとNVのハイブリッド型も登場していたり(当然高価だが)、暗視装置でもカラーに見えるよう研究開発されているものもある。暗視ではないが「高感度カメラ」は暗所でもカラーで映し出すものの万能ではない。(実像とのタイムラグなど)

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関連リンク

ナイトビジョンの歴史 (nvd.jp) - 日本暗視機器

関連項目

  • 夜 / 深夜
  • 夜戦
  • 灯火管制
  • 赤外線
  • センサー
  • 軍事
  • 軍事関連項目一覧
  • ナイトビジョン2.0(玩具としての暗視装置)
  • フラッシュライト / 懐中電灯

脚注

  1. *「兵器と戦略」江畑謙介 朝日新聞社 1994
  2. *「AI戦争論 進化する戦場で自衛隊は全滅する」兵頭二十八 2018 飛鳥新社 pp.257-258

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