無知に訴える論証(argument from ignorance)、あるいは無知論証とは、
「Aだという根拠がない。だからAではない」または「Aでないという根拠がない。だからAだ」
というパターンの、「根拠が無いこと」だけを根拠にして何らかの結論を導いてしまう、間違った論理のこと。
なお後述するが、「新しい根拠が無ければ新しい説は言えない」と考えても良い。このほうが、実践的には分かりやすく間違いが少ないだろう。
「Aだ」という根拠や「Aでない」という根拠がないのなら「AかAでないかわからない」が正しい。根拠が無いのに結論が得られるというのは必ずどこかおかしいのである。
実際の議論の過程では、
お互いに「Aだ」という「これまでの結論、常識」がまずあって、
↓
「実はAじゃないんだ。その根拠はこうだよ」と議論が始まり、
↓
結局「やっぱりAじゃないという根拠は間違いだったね」という結論になる場合が多い。
この場合「これまでの結論、常識」である「Aだ」は、過去に根拠に基づいて議論して得られた結論だと考えられるので、「じゃあやっぱりAのままだ」となるのが正しい。
つまり、より使いやすい形に言い換えると、「新しい根拠が無ければ新しい説は言えない」というものになる。わざわざ無知論証などといった言葉を使わなくても、これは常識的に考えて分かることではないだろうか。これが「Aだと証明できないならAではない」といった言い方になると、おかしいことに気づきにくくなったりするのである。
ちなみに、本題から外れてしまうが、お互いの常識なりこれまでの結論が異なる場合はどうだろうか。
一つの考え方としては、自分の説を相手に受け入れさせようとする側が、相手の常識なり過去の結論をもとにして、あるいは相手の常識の一部を相手が認める常識をもとにして覆すことによって、自分の説を相手の常識の中で導くというものがある。こうなると、自分の思うことを根拠に導かれた結論になるので、相手も比較的受け入れやすい。
そうした一方通行的な議論ではなく、共同作業としてお互いが受け入れられる常識なり結論をまとめ上げる必要がある場合の方法としては、まずお互いにどこまで納得していることが共通かを確認する作業をする。そのうえで、お互いが共通して納得している事実をもとにして、そこから共通の結論を導くために議論をしていくことになる。
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最終更新:2025/12/11(木) 01:00
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