爆発反応装甲 単語


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バクハツハンノウソウコウ

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爆発反応装甲(Explosive Reactive Armour、ERA)とは、爆発することで敵弾のダメージを軽減、あるいは無くす装甲である。要するに戦車とかに張り付いている弁当箱もどきのアレである。

概要

構造は金属の箱の中に爆薬が入っているという、字面だけなら非常に簡単な代物。

敵弾が着弾した際にその衝撃を感知し起爆、敵の弾、特にHEAT弾のメタルジェットを横合いから殴りつけることによりその侵徹を阻害することで防御を行う。そのため防御の効果が発揮されるのは最初の一回こっきりである。横からぶつからないと弾やメタルジェットを邪魔する効果が薄く、敵弾を水平として斜め30度ほどの角度が付いていることがベストとされる。そのため戦車の砲塔などに取り付ける際には金具を使って斜めに取り付けるなどの工夫がされることが多い。また、敵の機関銃など素の装甲で耐えられる程度の弱い攻撃で爆発していたら面倒極まりないので一定以上の圧力でしか爆発しない様になっている。

  • 利点
    • お手軽かつ格安で対HEAT防御を向上できる
       近年はゲリラや民兵がRPGなどの対戦車兵器を持つことは珍しくない。すでに配備しているAFVがこれを防御できない場合、装備の更新で対応しようとするとととんでもないコストと時間がかかる。しかしERAならばよほど軽装甲の車両でもない限り、貼り付けるだけで簡単にHEAT弾に対抗できるようになる。金網装甲とかと比べると場所もとらないので戦車砲の稼動も邪魔をしない。
  • 欠点
    • 随伴歩兵に危害が及ぶ
      当然爆発物であるから着弾時には周囲に盛大に金属片をぶちまけることになる。これにより随伴歩兵を傷着ける恐れがある。
      …とはよく言われるが実際には戦車の主砲発射時の衝撃波や、敵のHEAT弾の命中・起爆時の破片も随伴歩兵には十分危険であることなどを考慮すると、そこまで大きな欠点とは言い難い。
    • APFSDSやタンデムHEAT弾頭に脆弱
      着弾時に爆発、メタルジェットを形成するHEAT弾に対してERAは効果的だが、高速でカッ飛んでくるただの金属の矢であるAPFSDSには効果が薄い。また弾頭を二重化し、最初の弾頭がERAを起爆後に本命の弾頭が装甲を貫くタンデムHEAT弾頭には無力。ただしどちらもERAをタンデム化することによって対策可能。

上記のようにERAとは一長一短の要素が強い。しかし利点である格安で簡単に防御アップが狙えるという利点は非常に大きく、世代が古くなったり装甲の劣る戦車でもある程度実戦に耐えるようにできるため世界中で大人気である。

特によく目にするのが、世界中にばら撒かれた装甲貧弱なパットン系列やモンキーモデルのソ連製戦車にERAを山盛りにし、場合によっては電子機器などのアップデートをも行う近代化である。時に整然と、時に乱雑にERAが貼り付けられたそのゴテゴテした姿はなんともいえない独特な雰囲気を漂わせている。

登場当初は装甲の貧弱な旧式戦車の防御力の水増し程度に考えられていたが、近年では非対称戦の増加による死角部分からの対戦車ロケット・ミサイルによる攻撃・被弾が増え、主装甲では補いきれない側面の防御に効果的であることから今までERAを軽視しがちだった西側でも搭載事例が増えている。特に最近は西側対戦車ミサイルのロングセラーであるTOWが西側3世代戦車相手に猛威を振るい、ERA搭載のロシア戦車がそれらに対して高い生存性を誇ったことから見直しが急速に進められている。そのため、これからもあちこちで利用され続けることだろう。

T-90[1]

シリアに輸出されたT-90にはショトラ(敵戦車のレーザー測遠やレーザー誘導式の対戦車ミサイルの照準を自動的に感知して照準撹乱の赤外線、レーザー、発煙弾によって敵弾の命中を防ぐ)が付いていた。しかし反政府ゲリラのTOWがあっさりと命中する動画がネットにアップロードされた。ショトラは機能しなかったが、T-90自身は撃破されなかった。爆発反応装甲が設計通り機能したのだろう。

米軍の持つTOWの最新型は爆発反応装甲への対抗として命中の前に小さな先行爆発を起こしてERAを過早にはじけさせたり、ERAがない上面を攻撃するようにしているが、反政府ゲリラに提供されていたのはずっと古いモデルだった。

TOW vs. Shtora active protection system on T-90 tank. TOW wins. 2016.2.26

複合装甲の種類

イスラエル

  • ブレイザー 世界初のERA。複合装甲を持たない旧式のショット・カルやマガフの防御力向上のために装備された。

アメリカ

  • M19アラート1 M1エイブラムスのTUSK(市街戦対応パッケージ)で側面に搭載されるERA。
  • M32アラート2 M19より小型の瓦型のERA。M19の上に取り付けてタンデム運用される。

フランス

  • ブレンヌス AMX-30B2に搭載されたERA。詳細は不明。

イギリス

  • 名称不明 チャレンジャー2の非複合装甲部分(現在は複合装甲を追加)を防護する。タンデム弾頭対策を取っておらず、RPG-29による貫通を許してしまった。

ロシア

  • コンタークト1 よく見る中古のソ連製戦車に貼り付けてある弁当箱がこれ。
  • コンタークト5 T-80Uから搭載されたERAの決定版。従来のERAと比べ、タンデム弾頭やAPFSDSにも高い防御効果を発揮する。
  • レリークト コンタークト5の改良型。T-72BMから搭載。
  • カクトゥス T-80UM2(チョールヌイ・オリョール)で試作されていた複合装甲とERAのハイブリッド。
  • マラヒート T-14から搭載された最新型。車体に埋め込まれる形で搭載されるため従来のゴテゴテ感が無くなっている。

ウクライナ

  • ニージュ オプロート、T-64BMブラートに搭載。ロシアのレリークト、カクトゥスに匹敵すると言われている。

ポーランド

  • エラヴァ1/2/3 PT-91に搭載。コンタークト5に匹敵すると言われている。

チェコ

  • ドィナ72/S T-72M3CZ/M4CZに搭載。コンタークト5に匹敵すると言われている。

中国

  • FY-4/5 96式、99式に搭載。ロシアのコンタークト5に匹敵すると言われている。

関連項目

  • 軍事 / 軍事関連項目一覧 
  • 戦車
  • 対戦車ミサイル / 無反動砲
  • HEAT弾

脚注

  1. *「兵頭二十八の防衛白書 2016」兵頭二十八 草思社 2016 pp.58-59

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