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迫撃砲とは、火砲の一種である。
概要
20世紀の塹壕戦において迅速に展開できるよう
出来る限り簡素な構造=軽量で運搬しやすい大砲の需要に応えるために開発された。
- 個人で運搬・射撃できるもの(60mm等)
- 複数人で分解運搬・射撃できるもの(81mm等)
- 車載した状態で停車し、射撃するもの
- 車両の牽引によって、現場で射撃体勢に入る大型なもの(120mm等)
…と迫撃砲と言っても様々である。
※より大口径なものに榴弾砲があるが、そちらは大型すぎて分解運搬はできず、後方装填式。
すごく簡単な解説
初見さんには説明しづらい形をしている。
簡潔にまとめると「斜め上に発射し、敵に小型の爆弾の雨を降らせる比較的小型の大砲」である。
また砲口から弾薬を装填・発射するのも特徴である。
(発射した砲弾はきつい放物線を描いて飛ぶ)
戦争映画やゲームなどで、突撃する主人公たちの周囲の地面が
ミサイルやロケット弾が着弾したわけでもなく、誰かが地雷を踏んだわけでもないのに
頻繁に爆発しまくっているのはだいたいこれの着弾である。
逆に、斜め上に向いた筒に何かを入れてポンッ!と発射しているシーンがあれば迫撃砲である。
射撃時は冒頭の画像のように斜め上に向けて運用される。
ちなみに、射撃時はしゃがむなど砲口から離れないと発射炎に巻き込まれる。
<射撃手順> 詳細は後述。
現場で観測する人と、迫撃砲を撃つ人のコンビネーションが必要である。
「ここの座標に敵がいるから砲撃して!」「OK、ぶっ放すぜ!」
「着弾のズレ××メートル!」「あいよ、修正して撃つぜ!」
「当たってるよ!その調子!」「あいよ、今の調子で撃ちまくるぜ!」
「無力化できたよ!撃ち終わっていいよ!」「OK」
- 迫撃砲があることで何か得があるの?
- 身を晒すことなく安全な物陰から敵の頭上に爆弾をボンボン落とせる。
- 分解運搬型でも2~5km以上の射程があり、敵の射程外・長距離から一方的に攻撃できる。
- (大口径の砲を除いて)分解運搬できるため、徒歩・車両・ヘリでどこまでも持っていける。
- 構造が単純で安価、連続射撃速度もあるためコスパが良い。
- 上空から砲弾が降り注ぎ、周囲が爆発しまくるため相手はビビる。(プレッシャー)
- 榴弾(炸裂弾)の広範囲攻撃なので、歩兵を直撃しなくとも威力が高い。
- 戦車は破壊できる?
- 貫通力に特化していないため、装甲目標には直撃しても効かない。
- 上についてる重機関銃やペリスコープ(覗き窓)くらいは壊れるかもしれない。
- 迫撃砲自体は、精密にピンポイントで狙うものではない。
- 対戦車兵器、ロケットランチャー、対戦車ミサイルといった百科記事を参照。
構造
大まかな要素としては
- 『二脚(支持架)がついた短い砲身』
- 『砲身の底に付いた板(底盤)』
- 『砲弾は砲口から装填する(前装式)』
- 『砲身が上を向いている』 …の4つが挙げられるが、
いずれにしてもは前述の軽量を求められたが故であるがそれぞれ別の理由がある。
まず、最初の『短い砲身』は3番目の『前装式』に直結=運用する兵士が砲弾を装填しやすくすると共に遮蔽物や塹壕に隠匿しやすくするためである。
2番目の『底盤』は発射時に砲身にかかる反動を一度受け止めて地面に逃がす役目を担う。これは通常の大砲では反動を抑え、正確な射撃に必要な『姿勢維持』を担う『駐退機』が迫撃砲では基本的にないためである。4番目の理由にもこれは繋がっている。
また、4番目のもう一つの理由は『塹壕や遮蔽物の陰に潜む敵を真上から砲撃で撃破する』事である。
基本的に敵は正面の敵を警戒して壁の後ろや塹壕に潜むが真上は家屋でもない限り遮蔽物がないため上方から砲弾を撃ち込めば撃破は容易い上に正面から砲撃するより真上から撃ち込んだ方が危害範囲は広い。
そして前述の『軽量で運搬しやすい』は『(複数の)兵士が人力でも容易く運搬できる』事を指す。
100㎜クラスの重迫撃砲となると人力運搬は分解しても困難だが[1]、それ以下のサイズならば10人以下の人数で運搬が可能なため隠密行動や車両が使えない山岳地帯でも容易に展開が可能な利点がある。
なお、通常の大砲と同様に砲身後方から装填する迫撃砲も存在するがこちらは車両に搭載される型が大半を占め、正面射撃可能になっている物もある。
発射方法(撃発方法)
- 勝手に発射してくれるもの
- 砲口に入れるだけで発射(構造が単純)
- 自由なタイミングで発射できるもの
- 射撃用のハンドルやトリガーを操作するもの(個人携帯の軽迫撃砲など)
- 射撃用のハンドルにくくりつけた縄を引っ張るもの
厳密には1は墜発式、2の縄を引っ張るのは留縄式と呼ぶ。
単純なものは1だけだが、1・2を切り替えられるものもある。
運用
基本的には歩兵を中心とする軟目標への攻撃が主とされる。
これは使用する砲弾が基本的に榴弾(炸裂弾)を用いるからであり戦車やトーチカといった直撃+装甲を貫徹しなければ無力化できない硬目標には有効でないためである。
ただし周囲を絶え間なく砲撃して敵の連携を妨げている隙に死角に回り込み撃破に繋げる事は出来るため、榴弾だけでなく視界を遮る煙幕弾や夜間で視界を確保する照明弾も用いられる。
また、迫撃砲を車載する車両には本来兵士を輸送するAPCが用いられることが多いが普段は兵員室に収納し、射撃時に屋根を兼ねたハッチを開ける型が多い。この事から砲塔式の自走砲より隠密性が高い。
その反面、着弾の精度が悪い=命中率が低い事がジレンマだが運用が始められた第1次世界大戦においては広範囲に効果が見込まれる毒ガスの散布に用いられ戦間期に開発された迫撃砲の中にはその用途で開発されたものが多く冷戦期は核兵器の運用も想定されたが幸いなことにその用途では使われることはなかった。
なお、着弾の精度に関しては21世紀に入ってレーザーやGPS、赤外線画像による誘導砲弾が開発された事で改善されている。
射撃順序
細かいことを除いた大まかな流れ。
- 現地から注文を受けて、照準する
- 試し撃ちして、現地の隊員が着弾のズレを伝える
- 着弾がOKであれば、そのままガンガンぶっ放す
- 撃ち方やめ
- FO:前進観測者(Forward Observer)
- 特殊部隊員などは技能を会得している場合も多い。
- 単純に着弾観測・射弾観測・前線観測員とも呼ばれることもある。
- FDC:射撃指揮所(Fire Direction Center)
- 迫撃砲を発射する兵士はそのものは指揮下の部隊。
- FDCに連絡=迫撃砲側に連絡…で一応だいたいあってる。(射撃許可はFDCが出す)
| 火力要求 |
FO:どこに対して、何をどんな感じで撃ってほしいのかを注文する
FDC:目標の位置座標、弾種等、「撃ち方」を迫撃砲側に伝える
迫撃砲:
目標との相対位置に応じて砲の角度・方角・炸薬量を調整する。
準備が整ったら、射撃許可を待つ。 |
| 試射 |
まずは敵に向けて試し撃ちしてみる。 |
| 修正射 |
FO:観測班は着弾と敵の位置を確認し、ズレを報告する。
FDC:ズレに対して再度砲の角度・方角を調整し再度射撃を行う。 |
| 効力射 |
FO:
「OK!着弾位置バッチリ!そのままバンバン撃ち込んで!」である。
…試射の段階で命中していればそのまま効力射になる。
FDC:照準調整せず、そのまま「撃ち方」に則って砲を撃ちまくる。 |
| (終了) |
撃ち方やめ。
命令された「撃ち方」が終わる、敵を無力化する、中止命令を受けるなどして終了。 |
- 【注意】
- 試射して着弾した時点で敵に攻撃を察知されてしまう
- 修正射をモタモタしていると逃げられ、隠れられてしまう
- 現在は対砲・対迫レーダーの発達によって射撃位置がバレてしまい、逆に砲弾を撃ち込まれる
- 遠距離からの砲撃だが、結果的にスピードと正確性が要求される
利点
- ほぼ真上から砲弾が落ちてくるため、物陰の後ろや塹壕に隠れていても命中する
- 一度上空を飛ぶため、発射地点~着弾地点間の地形(河川・瓦礫・断崖)に左右されない
- 斜め~真上に発射するため、身を乗り出すことなく物陰や塹壕から敵を一方的に攻撃できる
- 分解運搬型でも2~5km以上の射程があり、敵の通常兵器の射程外・死角から攻撃できる
- 個人携行可能な軽迫撃砲においても1km程度の射程はある
- 敵からすれば突然頭上から爆弾の雨が降ってくるようなもの
- 運よく隠れても砲撃が止むまで身動きが取れず、次弾が命中する危険性もある
- 砲弾内にも炸薬をギッシリ充填できるため威力が高い
- 殺傷・加害半径が広く、命中せずとも高いプレッシャーを与えられる
- 信管設定によっては曳火射撃(空中炸裂)が可能で、効率的に相手を無力化できる
- 通常の榴弾(炸裂弾)でも、直撃させる必要はなく広範囲攻撃が可能
- 構造が単純
- 基本的にはただの金属の筒+α
- 大型の火砲・榴弾砲と比較し小型安価ながら、数km以上の射程をもつコスパの良さ
- 取り扱い・メンテナンス・教育も比較的容易
- 技量によってはかなり正確に撃ち込める
- 砲口に砲弾を入れるだけで次々と次弾を発射でき、口径の割に射撃速度が速い
- 多種多様な弾種を切り替える事が可能で、戦略の幅が大きく広がる
- 個人携行・分解携行可能な小型なものは神出鬼没に上記の利点を実現しやすい
- 分解携行可能なことで、地形を問わずほぼどこからでも射撃が可能
- 分解携行可能なサイズであれば、車両・航空機についでに積み込むことも可能
- 大口径の榴弾砲と比較し、小型軽量で連射性能が高く、柔軟な運用がしやすい
欠点
- 通常の大砲と比べて着弾の精度や砲弾の射程で劣る
- 高い命中精度の実現には個人の技量に大きく左右される
- 大きな放物線を描く以上、着弾までにタイムロスがあるため移動目標には不向き
- 構造が単純な反面、範囲攻撃を目的としているため、誤差がありピンポイントの砲撃には限度がある
- 天候や飛翔中の横風の影響を受けるため、現場の気象情報がなければそれだけで精度は落ちる。
- 目標との相対位置を正しく計算し、適切な射角・発射装薬を調整しなければ命中しない
- 数学が苦手な人には厳しい。(相対位置・射角・着弾誤差の計算など)[2]
- 目標が視認できないため、標的/着弾を発見・報告(評定)する前線観測員が必要
- 敵の位置や着弾のズレを正確に判断できない場合には効果が激減する
- 前線観測できる位置へ近づく前に敵に発見されるなど、観測員の危険が大きい
- 前線観測員がやられるなど、情報・連絡がなければ運用以前にただのでかい筒になりうる
- 有効な攻撃のためには大量の砲弾を必要とする為兵站(補給/後方支援)側に多大な負担をかける
- 絶え間なく砲弾を撃ち込むため射撃速度が速い反面、時間当たりの弾薬消耗が激しい
- 気前よく発射していると、持ち込んだ砲弾があっという間に底をついてしまう
- 補給が受けられる車両の傍らや拠点ならまだしも、携行運搬できる砲弾数には限りがある
- 構造が簡素なことから極端な例として日曜大工レベルの工作技術で充分な殺傷力を持つ兵器が容易く作れる
=テロリストが隠匿・運搬・利用しやすい
- 通常の火砲のように直射できるものは少なく、近距離の敵には対応できない
- 敵味方・民間人が近接した状況下においては誤爆の危険があり使用できない
- 安全そうな遠距離からの砲撃とはいえ、計算/射撃のスピードと精度が要求される
- 着弾した時点で敵に攻撃を察知されるため、逃げられる、隠れられてしまう
- 現在は対砲・対迫レーダーの発達により、モタモタしていると逆探知され砲撃される(対砲兵射撃)
- 貫通力に特化していないため、強固な目標、装甲目標には直撃しても効果は限定的
- 榴弾(炸裂弾)においては広範囲攻撃が可能なものの、窪みや障害物のある地形によっては大きく効果を削がれてしまう欠点もある。
- 大口径の榴弾砲には射程・威力ともに劣る
形式
なお、先に述べた4つの特徴を持つ方式の迫撃砲は『ストークス・モーター(ストークス式迫撃砲)』と呼ばれる型となるが世界的に普及することになった第1次世界大戦では以下の形式が登場していた。
| 呼称 |
特徴 |
デメリット |
ミーネンヴェルファー
(爆薬投射機) |
独・墺の主力迫撃砲で命中精度
は高い。
砲兵との管轄の兼ね合いから
この呼称となった。 |
重量があり複雑な機構
だったことから戦後消滅。 |
スピガッド・モーター
(差込式迫撃砲) |
砲身に対して砲弾が大きく
ストークス式より口径当たりの
威力で勝る。
後に小銃擲弾や携帯式対戦車火器
対潜兵器に発射方式が受け継がれた |
射程距離と速射性で劣って
おり、迫撃砲としては廃れて
いった。 |
これらの事から現在の迫撃砲はストークス式が主流になっている。
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関連項目
脚注
- *大口径なものはタイヤがついており、車両や大勢の歩兵に牽引されて移動する。
- *照準を行わない運搬や警戒といった隊員であれば問題ないが、照準が可能な隊員を失うとただの筒になってしまう。